原油高騰、資材不足、災害による休業が重なると、黒字か赤字かより先に、手元資金が足りるかどうかが問題になります。そこで名前が出やすいのがセーフティネット保証ですが、4号と5号、公庫のセーフティネット貸付が混ざって理解されがちです。
大切なのは、どの制度が有利かではなく、資金繰り悪化の原因をどの要件で説明できるかです。災害で地域が指定されているなら4号、原油高騰や業種全体の悪化なら5号を先に確認する、という順番で考えると迷いにくくなります。
この記事では、中小企業や個人事業主が金融機関へ相談する前に、4号と5号の違い、原油高騰時の使い方、用意すべき資料を実務の流れに沿って整理します。

まず確認したい保証と融資の違い
認定書は借入の入口
セーフティネット保証は、国や自治体が直接お金を貸す制度ではありません。取引先の倒産、災害、業種全体の悪化などで経営に支障が出た中小企業が、信用保証協会の保証付き融資を受けやすくするための制度です。全国信用保証協会連合会も、セーフティネット保証を使うには、市区町村の担当窓口で認定を受ける必要があると説明しています。1
ここで誤解しやすいのは、認定書を取れば融資が決まるわけではないということです。中小企業庁の手続き案内でも、認定後に希望する金融機関または信用保証協会へ申し込み、保証協会や金融機関の審査を受ける流れになっています。2 認定はスタート地点であり、融資実行の約束ではありません。
保証は銀行融資を受けやすくする仕組み
信用保証協会の保証は、金融機関が中小企業へ融資しやすくするための仕組みです。通常の保証枠とは別の枠を使えるため、すでに保証付き借入がある会社でも、追加の資金調達を検討できる場合があります。北海道経済産業局の制度説明では、一般保証の限度額に加えて、別枠保証限度額として普通保証2億円、無担保保証8,000万円が示されています。3
ただし、別枠があることと、必要額をそのまま借りられることは別です。金融機関は、直近の売上、利益、既存借入、返済予定、資金の使い道を見ます。例えば燃料費が上がった運送業なら、燃料費の増加だけでなく、運賃改定の見込みや返済原資も説明できると、相談の質が上がります。
4号と5号の違い
4号は地域指定された災害の影響
4号は、自然災害などの突発的な事由で売上高などが減少した中小企業を支援する制度です。中小企業庁は、指定を受けた災害の影響後、原則として最近1か月の売上高などが前年同月比20%以上減少し、その後2か月を含む3か月間も前年同期比20%以上減少する見込みであることを要件として示しています。2
2026年4月には、岩手県大槌町の林野火災について、災害救助法の適用を踏まえた支援措置が公表されました。この中で、同町の火災の影響により売上高などが減少している中小企業、小規模事業者を対象に、セーフティネット保証4号を適用するとされています。4 4号の入口は、まず地域と災害が指定されているかです。
5号は指定業種と業況悪化
5号は、全国的に業況が悪化している業種に属する中小企業を支援する制度です。ここでの最初のハードルは、会社の事業が指定業種に入っているかどうかです。中小企業庁は、日本標準産業分類で細分類番号を特定し、その番号が指定業種リストにあるか確認する手順を示しています。5
| 判断項目 | 4号 | 5号 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 災害などの突発的な影響 | 業種全体の悪化、原油高騰など |
| 最初に見るもの | 指定地域と指定災害 | 指定業種と認定要件 |
| 売上要件の目安 | 原則20%以上の減少 | 売上5%減、原油高要件、利益率要件など |
| 保証割合の考え方 | 100%保証 | 原則80%保証 |
保証割合は、4号が100%保証、5号が原則80%保証という違いもあります。36 4号と5号は、似た名前でも見ている原因が違います。災害で店舗が休業した、仕入先が被災して販売が落ちた、といった場合は4号の可能性を見ます。一方、原油高騰で燃料費や石油系材料の仕入単価が上がり、採算が悪化している場合は、5号の指定業種と認定要件を先に確認します。
なお、4号と5号は併用できる場合がありますが、別々に2倍の枠が使えるという意味ではありません。中小企業庁の4号概要資料では、5号とは併用可能だが同じ枠になると示されています。6 複数制度を同時に考えるときほど、保証枠と返済力を分けて見ることが大切です。
原油高騰時に5号で確認する順番
業種番号と指定期間の確認
5号で意外と見落とされるのは、対象業種が固定ではないということです。例えば中小企業庁の2026年4月1日から同年6月30日までの指定業種一覧では、520の細分類が掲載されています。指定期間とは、市町村長または特別区長へ認定を申請できる期間を指すと説明されています。7
つまり、過去に対象だった業種が、今回も対象とは限りません。反対に、普段は対象外と思っていた事業が、指定期間内には入っていることもあります。5号では、会社名や取引先名より先に、事業内容を細分類番号まで落とし込む作業が必要です。
兼業している会社では、さらに注意が必要です。中小企業庁の5号ページでは、指定事業と非指定事業を行っている場合、指定事業の売上高などが会社全体の5%以上を占めることなども要件に含まれています。5 製造と小売、工事と保守、卸売と運送を併せて行う会社は、事業ごとの売上を分けておくと判断しやすくなります。
売上、原油、利益率のどれで説明できるか
5号は、単に最近3か月の売上が前年同期比5%以上減っている会社だけの制度ではありません。中小企業庁の認定概要には、売上高要件のほか、原油高要件、利益率要件も示されています。原油高要件では、最近1か月の売上原価のうち原油等の仕入額が20%以上を占めること、原油等の仕入単価が前年同月比20%以上上昇していることなどが確認項目になります。8
この点は、原油高騰時の実務で重要です。売上はあまり落ちていないのに、燃料費や材料費が上がって利益が削られている会社では、売上減少だけで説明しようとすると制度に合わない場合があります。売上減少、原油高、利益率低下のうち、どのルートなら事実を示せるかを先に決めると、資料の準備が早くなります。
なお、日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金は、セーフティネット貸付とも呼ばれますが、保証協会のセーフティネット保証とは別の融資制度です。日本政策金融公庫は、外的要因により一時的に業況が悪化している事業者を対象とし、国民生活事業では融資限度額7,200万円、設備資金20年以内、運転資金10年以内などの条件を示しています。9 原油高騰の影響では、保証協会の5号と公庫の貸付を並行して相談する選択肢もあります。
中小企業庁は2026年4月更新の支援策で、中東情勢や原油価格高騰などにより影響を受ける中小企業向けに、特別相談窓口や政府系金融機関の対応を示しています。セーフティネット貸付についても、中東情勢により今後の影響が懸念される事業者へ支援対象を広げると説明されています。10 原油高騰では、目の前の赤字だけでなく、これから資金繰りが苦しくなる見込みも相談材料になります。
災害時に4号を使うときの注意点
売上減少の原因を資料で示す準備
4号では、売上が減ったことだけでなく、指定災害の影響で減ったことを説明する必要があります。例えば、被災地域で店舗営業が止まった、主要な納品先が休業した、交通規制で受注が減った、といった事情です。4号の概要資料では、災害救助法が適用された場合などに、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で借入債務の100%を保証する制度とされています。6
売上減少の数字は、最近1か月と、その後2か月を含む3か月の見込みで見られます。災害直後は売上集計が途中でも、見込みを説明する必要があるため、前年同月の売上、直近の売上、キャンセル状況、休業日数、受注残の変化を整理しておくと相談しやすくなります。原因と数字を同じ資料で見せることが、4号の準備では重要です。
借入以外の相談窓口
災害時は、新しい借入だけで資金繰りを支えるとは限りません。岩手県大槌町の林野火災に関する支援措置では、特別相談窓口、災害復旧貸付、既往債務の返済条件緩和、小規模企業共済の災害時貸付も並んで公表されています。4 すでに借入が重い会社では、追加融資より返済条件の見直しを先に相談した方がよい場合もあります。
特に災害後は、設備の修理、仕入の再開、人件費の支払いが同じ時期に重なります。資金繰り表を作ると、今すぐ必要な運転資金と、復旧後に必要な設備資金を分けて考えられます。保証制度は強い支えになりますが、借りる金額を増やす前に、返済の時期を調整できないかも確認しておきたいところです。
相談前にそろえる資料と返済計画
最初に用意したい数字
金融機関や自治体窓口に相談する前に、まず数字をそろえます。難しい資料を最初から完璧に作る必要はありませんが、口頭説明だけでは制度要件に合うか判断しにくくなります。用意する資料は、次の5つに絞ると始めやすいです。
- 直近3か月と前年同期の売上高
- 最近1か月と前年同月の売上高
- 原油等の仕入額、仕入単価、売上原価
- 主要な取引先、受注、キャンセルの変化
- 既存借入の残高、毎月返済額、返済予定表
これらの資料があると、4号で見るべきか、5号の売上要件で見るべきか、原油高要件や利益率要件で見るべきかを切り分けやすくなります。顧問税理士、商工会議所、商工会、金融機関に相談する場合も、同じ資料を見ながら話せるため、説明が行き違いにくくなります。
借りた後に資金が足りなくなる原因
セーフティネット保証を使う場面では、早く資金を確保したい気持ちが強くなります。ただ、借入は入金された瞬間に安心できますが、返済が始まると毎月の固定支出になります。売上が戻る時期、価格転嫁ができる時期、在庫を積み増す時期を見誤ると、せっかく借りても数か月後に資金が不足します。
最後に確認したいのは、制度名ではなく資金繰りの回復シナリオです。原油高騰なら、仕入単価の上昇を販売価格へどこまで反映できるか。災害なら、営業再開まで何週間かかり、再開後の売上がいつ前年水準へ近づくか。4号と5号は、資金繰りの時間を買う制度として使い、同時に売上回復や価格改定の計画を進めることが大切です。
セーフティネット保証の活用では、4号か5号かを早く決めるより、資金繰り悪化の原因を正しく分けることが先です。災害なら地域指定と売上減少、原油高騰なら指定業種と原油高要件、融資全体なら公庫のセーフティネット貸付も含めて確認する。この順番で準備すれば、制度の名前に振り回されず、自社に合う相談を始めやすくなります。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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