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企業価値担保権とは?事業性融資推進法で新設される権利の仕組みをわかりやすく解説

不動産担保や経営者保証がない企業は、融資をどう考えればよいのか。事業性融資推進法で始まる企業価値担保権の仕組みと、企業側が準備したい情報開示の考え方を整理します。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年5月20日
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目次

  • 不動産担保がなくても借りやすくなるのか?
  • 事業全体を担保にするとはどういう意味か?
  • 融資の現場では何が変わるのか?
  • 企業側は何を準備すればよいか?
  • 利用を考える前に確認したい条件
補助金フラッシュ 事業計画

銀行融資と聞くと、不動産担保や経営者保証を思い浮かべる人は多いはずです。土地や建物を持たない会社、社長個人の保証に頼りたくない会社にとって、資金調達は長く重い課題でした。
2026年5月25日に始まる企業価値担保権は、その前提を変えようとする制度です。ポイントは、担保の中心を不動産だけでなく、事業の将来性や無形資産を含む事業全体へ広げることにあります。
ただし、制度が始まれば誰でも簡単に大きな融資を受けられる、という話ではありません。金融機関の事業を見る力と、企業側の事業を説明する力が問われる制度として理解することが大切です。

目次

  • ●不動産担保がなくても借りやすくなるのか?
  • 制度開始は2026年5月25日
  • 担保なのに一般担保ではない理由
  • ●事業全体を担保にするとはどういう意味か?
  • 対象は会社の総財産
  • 信託会社と商業登記簿の役割
  • ●融資の現場では何が変わるのか?
  • 不動産担保との違い
  • 経営者保証との関係
  • ●企業側は何を準備すればよいか?
  • 目利き力だけでなく説明力
  • 無形資産を見える形にする準備
  • ●利用を考える前に確認したい条件
  • 向きやすい企業と向きにくい企業
  • まず棚卸ししたい資料
企業価値担保権とは?事業性融資推進法で新設される権利の仕組みをわかりやすく解説

不動産担保がなくても借りやすくなるのか?

制度開始は2026年5月25日

企業価値担保権は、事業性融資の推進等に関する法律で創設される新しい担保権です。金融庁はこの制度を、事業の将来性に基づく融資を後押しする新たな選択肢として説明しており、2026年5月25日にスタートすると案内しています。1

ここでいう事業性融資とは、会社の決算書や担保だけを見るのではなく、事業の内容、顧客、収益の見通し、経営課題への対応力などを踏まえて融資を判断する考え方です。たとえば、優れた技術や顧客基盤を持つ会社でも、不動産を持たないために融資を受けにくいことがあります。企業価値担保権は、こうした会社の事業価値を資金調達に結びつけやすくするための制度です。

担保なのに一般担保ではない理由

序盤で押さえたい意外な点があります。企業価値担保権という名前ですが、金融庁のFAQでは、企業価値は一般担保としては扱えないと整理されています。一般担保とは、不動産のように客観的な処分可能性が比較的見込みやすい担保を指します。企業価値は将来見通しに大きく左右され、事業が止まると価値を見込みにくくなるため、不動産担保と同じようには扱えません。2

一方で、企業価値担保権付きの融資は、単なる無担保融資とも同じではありません。企業価値担保権は、他の無担保債権者より優先する仕組みや、事業継続を支えるための仕組みを持っています。つまり、この制度は不動産担保の代用品ではなく、事業を続けて価値を生むことを前提にした担保制度だと考えると分かりやすくなります。

事業全体を担保にするとはどういう意味か?

対象は会社の総財産

企業価値担保権の対象は、会社の総財産です。法律上は、将来において会社の財産に属するものも含めて、一体として企業価値担保権の目的にできるとされています。金融庁のガイドラインも、企業価値担保権は個々の財産を固定的に積み上げるものではなく、将来キャッシュフローの源泉となる事業者の総財産を一体として捉えるものだと説明しています。34

ここで大切なのは、単に売掛金、設備、在庫を一つずつ担保に取る制度ではないということです。会社が持つのれん、ノウハウ、契約上の地位なども、事業価値を支える要素として見られます。たとえば、ソフトウェア企業が自社サービス、利用者基盤、継続課金の見通しを持っている場合、それらは土地や建物ではありませんが、事業の価値を説明する材料になります。

信託会社と商業登記簿の役割

企業価値担保権は、会社と企業価値担保権信託会社との信託契約を通じて設定される仕組みです。制度上は、企業価値担保権者が説明義務を負い、企業価値担保権は商業登記簿に登記されることも整理されています。13

商業登記簿に登記されるということは、会社の外部からもその担保権の存在が確認できるという意味を持ちます。ただし、担保を設定したからといって、日々の営業活動が止まるわけではありません。通常の事業活動の範囲であれば、会社は事業を続け、売上を作り、必要な支払いを行うことが前提になります。大きな事業譲渡など、事業計画の前提を超える重要な財産処分を行う場合には、企業価値担保権者との事前のコミュニケーションや同意が必要になるとされています。1

なお、企業価値担保権を設定しただけで、取引先や労働者との契約関係が自動的に移るわけではありません。ガイドラインは、事業譲渡の場面でも契約の相手方の個別同意が必要になる点を示しています。これは、担保権が事業全体を対象にしていても、取引先や従業員の権利関係を一方的に動かす制度ではないという意味です。4

融資の現場では何が変わるのか?

不動産担保との違い

従来の不動産担保では、金融機関は土地や建物の処分価値を見て、万一返済が滞った場合の回収可能性を考えます。これに対して企業価値担保権では、事業が続き、顧客との関係やノウハウが維持され、将来の収益が生まれることが価値の前提になります。

この違いは、企業にとっても金融機関にとっても大きな意味を持ちます。企業側は、保有している物の一覧だけでなく、なぜこの事業が続くのか、なぜ売上や利益が伸びるのかを説明する必要があります。金融機関側も、担保価値を単純に計算するだけではなく、事業計画、顧客基盤、競争力、経営体制を見て判断する必要があります。担保の中心が物から事業に移るほど、対話の質が重要になります。

もう一つ、企業価値担保権は、会社が苦しくなったときに個別資産をばらばらに売るためだけの制度ではありません。金融庁のガイドラインでは、労働者や商取引先を適切に保護し、金融機関による事業の継続と成長の支援を円滑にすることを目指す制度として位置づけられています。万一の場面を考えるときも、事業を止めずに価値を残すという発想が背景にあります。4

経営者保証との関係

企業価値担保権は、経営者保証に頼りすぎない融資を広げる制度としても期待されています。金融庁の資料では、活用例としてスタートアップ企業への融資、地域の中小企業や中堅企業への融資、事業再生、事業承継などが挙げられ、負債再構築の場面では経営者保証の解除も例示されています。1

ただし、企業価値担保権が始まれば経営者保証がすぐに不要になる、とは言い切れません。金融機関は、会社の情報開示、財務管理、資金使途、返済原資を見ながら判断します。制度の目的は、社長個人に過度なリスクを負わせない方向へ融資慣行を変えていくことですが、実際に保証が外れるかどうかは、会社の状況や金融機関との協議によって変わります。

企業側は何を準備すればよいか?

目利き力だけでなく説明力

企業価値担保権では、金融機関の目利き力が重要だと言われます。これは事実ですが、企業側にとってより現実的なのは、自社の事業価値を説明できる資料を持つことです。金融機関が事業を見る力を高めても、企業側が何を強みとしているのか、どの顧客に価値を提供しているのかを示せなければ、判断材料は不足します。

また、金融庁のFAQでは、金融機関が融資時に担保価値を算定すること自体は不要で、事業性の評価を行うことも想定されています。企業側から見ると、評価されるのは担保物の価格表ではなく、事業が将来どのように現金を生むのかという説明です。事業計画が数字だけでなく、販売先、単価、原価、人員体制と結びついているかが見られやすくなります。2

準備すべき内容は、難しい専門資料だけではありません。まずは、現在の売上がどの顧客や商品から生まれているのか、利益が出ている事業と出ていない事業はどこか、今後の投資で何が改善するのかを整理することが出発点です。特許や商標を持つ会社であれば権利の一覧、技術やノウハウが強みの会社であれば開発体制や導入実績、顧客基盤が強みの会社であれば継続率や主要顧客との関係を示す資料が役立ちます。

無形資産を見える形にする準備

無形資産は、目に見えないからこそ説明が難しい領域です。技術力、ブランド、顧客基盤、人材、業務ノウハウは、会社の価値を支えていても、決算書だけでは十分に伝わらないことがあります。企業価値担保権を資金調達の選択肢として考えるなら、無形資産を言葉と資料で見える形にする作業が欠かせません。

最初に整理したいのは、次のような情報です。

  • 売上や利益を生む主な商品、サービス、顧客層
  • 継続取引、解約率、受注残など将来収益を示す情報
  • 特許、商標、ソフトウェア、データ、ノウハウの一覧
  • 事業計画、資金使途、投資後に見込む改善内容
  • 経営管理体制、月次管理、資金繰り表の整備状況

この整理は、企業価値担保権を使うかどうかにかかわらず、通常の融資相談でも役立ちます。金融機関に説明するためだけでなく、経営者自身が自社の強みと弱みを見直す材料にもなります。制度対応の第一歩は、融資の申込書を書くことではなく、事業の価値を言語化することです。

利用を考える前に確認したい条件

向きやすい企業と向きにくい企業

企業価値担保権は、すべての事業者に同じように向く制度ではありません。法律上、企業価値担保権は会社の総財産を対象にする制度として設計されています。そのため、個人事業主がそのまま使える融資制度と理解するのは避けた方がよいでしょう。3

向きやすいのは、不動産などの有形資産は多くないものの、将来の収益を説明できる会社です。たとえば、継続課金型のサービスを持つ会社、知的財産や技術力を持つ会社、地域で安定した顧客基盤を持つ会社、事業承継や再生のために新たな資金が必要な会社などです。一方で、事業計画が曖昧で、資金使途や返済原資を説明できない場合は、企業価値担保権だけで資金調達が進むとは考えにくいです。

まず棚卸ししたい資料

公式資料では、活用例として既存借入の借り換えや、まだ借入がないスタートアップ等への融資の類型が示されています。これは、既存の担保や借入関係が複雑なまま部分的に追加する制度というより、金融機関との関係や資金調達全体を組み直す場面で検討されやすい制度だと見ることもできます。1

企業側が最初にやるべきなのは、金融機関に制度名を伝えることではありません。自社の事業計画、月次試算表、資金繰り表、主要顧客との取引状況、知的財産やソフトウェアの管理状況を棚卸しし、なぜ資金が必要なのか、資金を入れると事業価値がどう高まるのかを説明できる状態にすることです。企業価値担保権は、担保がない会社の抜け道ではなく、事業の中身を正面から見てもらうための制度です。

制度の本質は、不動産を持たない会社にも融資の可能性を広げることにあります。ただし、その可能性を実際の資金調達につなげるには、会社自身が事業価値を説明できなければなりません。これからの融資相談では、担保に差し出せる物があるかだけでなく、自社の事業がなぜ続き、どのように価値を生むのかを示す準備が重要になります。

出典・参考資料

  1. 「制度の概要」金融庁 ↩

  2. 「企業価値担保権に関するFAQ」金融庁 ↩

  3. 「事業性融資の推進等に関する法律」e-Gov 法令検索 ↩

  4. 「事業性融資の推進等に関する法律等に関する留意事項について(事業性融資の推進等に関する法律等ガイドライン)」金融庁 ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年5月20日

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