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ソフトバンク・NEC・ホンダの国産AI新会社はどんな会社?概要や3社の役割分担、今後の見通しについて解説

国産AI新会社は何を作り、誰が何を担うのか。ソフトバンク、NEC、ホンダの役割分担と、1兆円支援や2030年度実装をどう見ればよいかを、初めて追う人向けに整理します。

補助金フラッシュ 士業編集部

国産AIの新会社という言葉だけを見ると、ChatGPTの日本版を作る話に見えるかもしれません。ただ、今回の注目点は会話AIそのものではなく、工場、車、ロボットなどを動かすためのフィジカルAIです。
中心にあるのは、ソフトバンクが計算基盤、NECが基盤モデルと業務AI、ホンダが車両への実装を担うという分業の見方です。1兆円支援や2030年度という数字は魅力的ですが、現時点では採択、開発、実装の段階を分けて見る必要があります。
まずは、確認できる事実と見通しを切り分けながら、この新会社がなぜ注目されているのかを見ていきましょう。

まず確認したい新会社の実像

法人情報で確認できること

公開されている法人情報では、株式会社日本AI基盤モデル開発という法人名、法人番号、本店所在地が確認できます。所在地は東京都渋谷区渋谷2丁目24番12号で、法人番号は4010401195731です。事業内容や株主構成の詳細は法人情報だけでは十分に分からないため、ここでは法人情報、報道、政府公募の資料を分けて読む必要があります。1

報道では、ソフトバンク、NEC、ホンダ、ソニーグループを中心に、国産AIを開発する新会社として設立されたとされています。ソフトバンクとNECがAIの基盤開発を担い、ホンダとソニーグループが自動運転やゲームなどの応用に使う方針だという説明も出ています。つまり、この会社は単なる研究組織ではなく、開発したAIを実際の製品や産業現場に載せる構想まで含んでいる点が特徴です。また、1兆パラメータ級(AI内部で調整される値が1兆規模)という開発目標も報じられていますが、数字の大きさだけで実用性が決まるわけではありません。23

1兆円はそのまま新会社の決定額ではない

序盤で押さえておきたいのは、1兆円がこの会社にそのまま確定しているわけではないということです。報道では、政府が5年間で1兆円規模の支援を用意し、新会社が応募する見通しだとされています。2 一方、一次資料で確認できる数字を見ると、2026年度予算案としてAIロボット、フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業に3,873億円が計上され、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構、国の研究開発支援機関)の公募要領では提案1件あたりの2026年度予算額は原則3,834億円以下とされています。456

この違いは小さくありません。1兆円という数字は政策全体の規模感を示す言葉として理解した方が安全です。採択されるか、どの範囲にいくら配分されるか、毎年度の審査で継続されるかは別の問題です。新会社の評価では、出資社名よりも、公募の採択結果、契約額、年度ごとの進捗確認を見ることが大切になります。

ここまでで、ニュースとしての派手さと、制度上の確定事項には差があることが分かりました。次に、そもそも何を作ろうとしている会社なのかを整理します。

何を作る会社なのか?

対話AIではなく機械を動かす土台

今回のキーワードは、フィジカルAI(現実の機械や設備を認識し、判断し、制御するAI)です。その土台になる基盤モデルとは、多くの用途に使える共通AIモデルを指します。NEDOの資料では、工場の自律制御や最適化、ロボットの自律制御、自動運転などを実現するための基盤として位置づけられています。7

ここが、一般的な対話AIとの大きな違いです。文章で質問に答えるだけなら、主な入力は文字です。工場や車に使うAIでは、カメラ映像、機械の動作音、温度や振動のセンサー情報、部品の形状、作業手順などを同時に扱う必要があります。人に返事をするAIから、機械の動きを支えるAIへという変化が、今回の構想の中心にあります。

マルチモーダルが必要になる理由

マルチモーダルとは、文字、画像、動画、音声、センサー情報など、複数種類のデータをまとめて扱うことです。例えば工場の検査ロボットなら、作業指示書の文字だけでは不十分です。部品の画像、ラインの映像、異常音、過去の不良記録も合わせて判断しなければ、現場で使える精度には届きにくくなります。

NEDOの基本計画は、最終目標を2031年3月とし、言語情報に加えて画像、動画、音声、物理特性を含む実空間の情報を統合的に扱うモデルの開発を掲げています。さらに、学習済みの重みを日本のモデル開発や利活用を行う事業者に広く提供することも計画に含まれています。7 これは、一社だけが使う専用AIというより、国内企業が特化型AIを作るための土台を整える構想に近いものです。

何を作るかが見えてくると、なぜソフトバンク、NEC、ホンダ、ソニーという組み合わせなのかも理解しやすくなります。

役割分担をどう見ればよいか?

3社は同じ仕事をするわけではない

報道上の役割分担を見ると、3社は同じ作業を横並びで進めるわけではありません。大きく見ると、ソフトバンクは計算基盤と事業推進、NECは基盤モデルと企業向けAIの知見、ホンダは車両やモビリティへの応用先を持つ立場です。計算基盤、モデル、実装先を分けて見ると、この座組みの狙いが見えてきます。23

企業役割の見方根拠になる動き
ソフトバンク大規模計算基盤と事業推進シャープ堺工場の土地と建物を取得し、AIデータセンターを整備する計画を公表
NEC基盤モデル開発と業種別の業務AINEC開発のAIコア技術cotomiで、業種特化モデルや業務導入を展開
ホンダ車両、移動サービスへの応用ASIMO OSをHonda 0シリーズに搭載し、自動運転や先進運転支援の動作基盤にする構想を公表

ソフトバンクについては、2025年3月にシャープ堺工場の約45万平方メートルの土地と延べ床面積約84万平方メートルの建物などを取得する契約を結び、受電容量約150メガワット規模のAIデータセンターを2026年中に稼働させ、将来は250メガワット超まで拡大する見込みを示しています。AI開発は計算資源の確保が前提になるため、ここは新会社構想を読むうえで重要です。8

NECは、生成AIのAIコア技術cotomiを展開し、業種特化モデルの開発や導入から運用までの支援を示しています。ホンダは、車両全体を制御する基本ソフトウェアであるASIMO OSをHonda 0シリーズに搭載し、自動運転や先進運転支援、車内体験などの動作基盤にすると説明しています。910 基盤モデルを作るだけでなく、現場や車両に組み込む出口があることが、この取り組みの意味を大きくしています。

ソニーを含めると現場の出口が広がる

ソニーグループも中核企業として報じられています。ソニーを含めて見ると、出口は自動車だけではありません。ソニーグループで半導体事業を担うソニーセミコンダクタソリューションズのAITRIOSは、エッジAIデバイス(現場側の機器でAI処理をする装置)やロボット開発向けのRobotics Packageを展開しており、センシング、ナビゲーション、制御系サブシステムなどを製品化に必要な基本機能として提供しています。11

このため、3社だけで見た場合よりも、応用先は広くなります。自動車、工場、ロボット、センサー、映像、エンターテインメントまで、現実世界からデータを取り、現実世界に動きを返す領域が対象になり得ます。新会社の本当の見どころは、AIを作ることよりも、どの現場で使える形にするかにあります。

役割分担が分かったら、次に見るべきなのは将来の期待値です。ここで大切なのは、開発計画と実用化を同じものとして扱わないことです。

今後の見通し

2030年度までの計画と中間チェック

NEDOの公募ページでは、事業期間は2026年度から2030年度までとされています。基本計画では、2029年3月の中間目標と2031年3月の最終目標が置かれています。中間段階では、言語、画像、動画、音声などを対象に認識と論理推論ができ、企業モデルや高効率モデルの学習に必要な合成データを生成、供給する基盤として使えることが目標です。合成データとは、実データを補うために作る学習用データです。47

ただし、2030年度までの計画があるからといって、2030年度に完成品が一斉に市場投入されると読むのは早計です。公募要領では、採択後に最初に契約する期間は2027年度末までとされ、ステージゲート審査が毎年度実施されます。ステージゲート審査とは、途中の成果を見て、続けるか、見直すかを判断する仕組みです。5

注目点は資金よりデータと評価

見通しを見るときは、採択、データ、実装の順番で確認すると分かりやすくなります。まず、NEDO公募でどの体制が採択され、どの範囲が契約対象になるのか。次に、製造業や車両、ロボットの現場データをどこまで安全に使えるのか。最後に、試作モデルが工場設備や車両、ロボットでどの程度動くのかです。

もう一つの注意点は、評価の難しさです。NEDOの基本計画でも、マルチモーダル対応に関する性能指標は現時点で確立された指標が現存していないため、技術革新の動向に合わせて毎年度見直すとされています。7 つまり、1兆パラメータ級という大きさだけでは判断できません。工場で誤作動を減らせるか、車両やロボットで安全に判断できるか、運用コストを抑えられるかが、実用面ではより重要になります。

ここまで見ると、新会社の成否は大企業だけの話ではないことが分かります。現場データをどう扱うかは、製造業、建設業、物流業など多くの企業に関わるテーマです。

企業は今何を準備すればよいか?

社内データをAIが使える状態へ近づける

この新会社に直接参加しない企業でも、今からできる準備があります。最初に取り組みたいのは、自社データをどう使える状態にするかを決めることです。図面、作業手順書、検査記録、故障記録、設備のセンサー値、熟練者の判断メモなどは、将来の特化型AIにとって重要な材料になります。

ただし、機密データをそのまま外部のAIに入力すればよいわけではありません。誰が、どのデータを、どの目的で使ってよいかを明記し、機密情報や個人情報を外部向けの文書にはそのまま使わないようにする必要があります。例えば製造業なら、不良品の写真だけを集めるのではなく、不良の原因、検査条件、修正後の結果まで一緒に残すことで、AIが学習しやすいデータに近づきます。

導入判断は用途から逆算

国産AIという言葉に引っ張られて、何でも国産モデルを使うべきだと考える必要はありません。判断の出発点は、自社で何を改善したいかです。品質検査を早くしたいのか、設備停止を減らしたいのか、ロボットの動作を安定させたいのかによって、必要なAI、データ、責任体制は変わります。

今回の国産AI新会社は、日本のAI開発が会話や文書作成だけでなく、工場、車、ロボットへ広がる節目として見ると理解しやすいです。ソフトバンク、NEC、ホンダの役割分担は、その広がりを支えるための分業です。今後のニュースを追うときは、出資社名の大きさではなく、採択された事業内容、使われるデータの範囲、実際に動いた製品や設備の有無を見ることが、最も現実的な判断材料になります。

出典・参考資料

  1. 「株式会社日本AI基盤モデル開発 | 4010401195731」Gビズインフォ

  2. 「“国産AI”開発で新会社設立 ソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーグループ4社など中心に 日本AI基盤モデル開発」TBS CROSS DIG with Bloomberg

  3. 「ソフトバンク、NEC、ソニー、ホンダが国産AI開発の新会社日本AI基盤モデル開発 国内企業が結集して国産AIモデルで巻き返し」ビジネス+IT

  4. 「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業の公募について | 公募」NEDO

  5. 「AI ロボット・フィジカル AI を見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業の公募要領」NEDO

  6. 「AI・半導体産業基盤強化フレームにおける各予算事業について」経済産業省

  7. 「AI ロボット・フィジカル AI を見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業基本計画」NEDO

  8. 「AIデータセンターの構築に向けて、シャープ堺工場の土地や建物の取得に関する契約を締結」ソフトバンク

  9. 「NEC開発のAIコア技術cotomi: NEC Generative AI」NEC

  10. 「ASIMO OSを核としたHondaが目指すSDV|テクノロジー」Honda

  11. 「Robotics Package」Sony Semiconductor Solutions Group

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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