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銀行は何を見るのか?事業性融資審査で伝わる事業計画書の書き方

融資用の事業計画書は、成長性だけでなく返済の確実性をどう示すかが重要です。金融機関が重視するポイントを、事業性融資審査の流れに沿って整理し、下振れ時の見せ方や融資時の注意点も扱います。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年5月20日
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目次

  • なぜ同じ事業計画書を投資家と金融機関に出しにくいのか?
  • 事業性融資審査で最初に直したい数字
  • 金融機関が重視するポイントの見せ方
  • ポジティブだけの計画書が不安を残す理由
  • 融資時に注意したい提出前の確認項目
補助金フラッシュ 事業計画

融資を受けるための事業計画書は、成長の夢を大きく描けばよい資料ではありません。金融機関に伝えるべき中心は、事業が伸びる可能性だけでなく、想定どおりに進まない場合でも返済できる道筋です。
投資家向けの資料と、融資審査向けの資料では、読まれる視点が違います。この記事では、事業性融資審査で金融機関が重視するポイントを、事業計画書の書き方と融資時の注意点に絞って整理します。

目次

  • ●なぜ同じ事業計画書を投資家と金融機関に出しにくいのか?
  • 投資家向けは成長余地、融資向けは返済可能性
  • 金融機関側にも業種別の着眼点
  • ●事業性融資審査で最初に直したい数字
  • 売上予測より先に返済原資
  • 資金使途と返済期間のつながり
  • ●金融機関が重視するポイントの見せ方
  • 財務情報は過去、現在、将来をつなぐ材料
  • 非財務情報は強みではなく根拠として提示
  • ●ポジティブだけの計画書が不安を残す理由
  • 複数シナリオで悪化時の手当て
  • 平時から共有する進捗と見直し
  • ●融資時に注意したい提出前の確認項目
  • 保証、担保、情報開示の前提整理
  • 提出後の対話まで含めた設計
銀行は何を見るのか?事業性融資審査で伝わる事業計画書の書き方

なぜ同じ事業計画書を投資家と金融機関に出しにくいのか?

投資家向けは成長余地、融資向けは返済可能性

ベンチャーキャピタルなどの投資家は、将来の大きな成長によって株式価値が上がるかを見ます。そのため、投資家向けの資料では、市場の広がり、競合優位性、急成長のシナリオが中心になりやすいです。多少リスクがあっても、成功したときの伸びが大きければ評価される場面があります。

一方、銀行、信用金庫、信用組合などの金融機関は、融資したお金が約束どおり返ってくるかを見ます。成長性は大切ですが、金融機関が見たいのは、売上が計画より下振れしたときの返済原資や、資金繰りが苦しくなったときの対応策です。つまり、融資向けの事業計画書は、明るい未来を語る資料ではなく、事業の実態と返済可能性を説明する資料です。

金融機関側にも業種別の着眼点

意外に見落とされがちなのは、金融機関側にも事業を見るための資料や着眼点が整備されていることです。金融庁は、金融機関等の現場職員が事業性を理解し、事業者支援能力を高めるために、飲食業、小売業、建設業、製造業などの業種別に支援の着眼点を公表しています。さらに、融資相談業務で使えるように、資金別、業種別のポイントをまとめた逆引き着眼点も公表されています。12

これは、金融機関が決算書だけを機械的に見ているという意味ではありません。むしろ、事業の実態、業種ごとの利益の出方、資金使途、返済の見通しを確認しようとしているということです。事業計画書を作る側も、金融機関が確認したい問いに答える形に組み直す必要があります。

事業性融資審査で最初に直したい数字

売上予測より先に返済原資

事業計画書で最初に確認したいのは、売上予測の大きさではありません。売上がいくら伸びるかより先に、借入金を返す原資がどこから生まれるかを示すことが重要です。返済原資とは、簡単にいえば、事業を続けた結果として返済に回せるお金です。利益だけでなく、運転資金の増減、設備投資、税金、既存借入の返済も合わせて考える必要があります。

例えば、売上が伸びる計画でも、在庫や売掛金が増えすぎると現金は不足します。利益が出ているのに資金繰りが苦しい会社は珍しくありません。融資審査向けの計画では、売上、粗利、人件費、外注費、在庫、売掛金、買掛金、毎月の返済額がつながっているかを見せる必要があります。

ここで役立つのが、月次の資金繰り表です。損益計画だけでは、入金と支払いのタイミングが見えません。毎月の現預金残高、入金予定、支払予定、借入返済を並べると、金融機関は、どの月に資金が不足しやすいか、今回の借入でどこを支えるのかを確認しやすくなります。返済原資は利益の説明ではなく、現金の流れの説明として示すことが大切です。

資金使途と返済期間のつながり

次に大切なのは、借りたお金を何に使い、その効果がいつ現れるかをそろえることです。設備投資のための借入なのに、売上効果が出る時期が曖昧なままでは、返済期間の妥当性を判断しにくくなります。運転資金の借入であれば、仕入れ、入金サイト、季節変動、既存の資金繰り表と結びつけて説明する必要があります。

日本政策金融公庫も、創業者向けに創業計画書の作成ページを設け、創業動機、取扱商品やサービス、資金計画、収支計画などの作成を案内しています。創業時であっても、事業の考え方だけでなく、資金計画と収支計画を合わせて説明することが求められます。3

資金使途は、見積書や発注予定だけで終わらせない方がよいです。新しい機械を買うなら、どの工程の能力が上がるのか、外注費がどれだけ減るのか、納期短縮でどの売上機会を取り込むのかまで書きます。金融機関は、借入金が消えていく費用なのか、将来の返済原資を生む投資なのかを見ています。

金融機関が重視するポイントの見せ方

財務情報は過去、現在、将来をつなぐ材料

金融機関に提出する事業計画書では、過去の数字を隠すより、過去の数字から何を学び、今後どう変えるかを示す方が伝わりやすくなります。過去の赤字や資金繰り悪化がある場合でも、原因が整理され、改善策と数値計画がつながっていれば、対話の土台になります。

経済産業省のローカルベンチマークは、企業の経営状態を把握する企業の健康診断ツールとして位置づけられています。財務面の6つの指標、商流や業務フロー、非財務面の4つの視点を使い、経営者と金融機関、支援機関が対話しながら現状や課題を理解するための仕組みです。4 この考え方は、融資用の事業計画書にも応用できます。

財務情報を書くときは、単年度の決算書を貼るだけでは不十分です。直近期、前期、今期見込み、来期計画を並べ、どの費用が増え、どの利益率が改善するのかを示します。数字の変化に理由がないと、計画は希望に見えます。数字の変化に施策が結びついていれば、計画は検証できる仮説になります。

非財務情報は強みではなく根拠として提示

技術力、顧客基盤、ブランド、取引先との関係は、決算書だけでは見えにくい情報です。ただし、非財務情報を強みとして並べるだけでは、金融機関には伝わりません。重要なのは、その強みが売上、粗利、継続受注、解約率の低下、仕入条件の安定などにどう結びつくかを説明することです。

非財務情報で避けたいのは、当社は技術力が高い、顧客から信頼されている、といった抽象表現で終わることです。金融機関は、その強みを否定したいわけではありません。審査で必要なのは、強みが将来の入金や利益にどう反映されるかです。取引年数、継続率、受注残、紹介件数など、確認できる材料に置き換えると、強みは説明しやすくなります。

たとえば、固定客が多い小売業なら、来店頻度、客単価、リピート率、主要商品の粗利を示すと、顧客基盤の強さが数字に変わります。製造業なら、特定技術を持っているという説明だけでなく、どの工程で不良率を下げているか、どの取引先から継続受注を得ているかを示すと、返済可能性の説明に近づきます。強みは、返済原資を生む仕組みとして書くことが大切です。

ポジティブだけの計画書が不安を残す理由

複数シナリオで悪化時の手当て

融資審査では、計画どおりに進むケースだけではなく、売上が下振れしたケースも見られます。金融庁が公表した事業性融資に関する基本的な考え方でも、事業者と金融機関が事業の実態と将来見通しを継続的に共有し、将来見通しや資金使途に見合った返済計画、融資手法を選ぶことが示されています。5

そのため、事業計画書には、ポジティブ、標準、慎重のように複数のシナリオを置くと説明しやすくなります。慎重シナリオでは、売上が何%下がったら、どの経費を見直すのか、追加投資を延期するのか、役員報酬や在庫水準をどう調整するのかを示します。金融機関が知りたいのは、悪い数字そのものではなく、悪化を早く見つけて手を打てる管理体制です。

シナリオを作るときは、悲観的な数字を置くだけでは足りません。売上減少の理由、固定費を下げるまでの期間、在庫を圧縮できる時期、追加借入に頼らない範囲を合わせて書きます。金融機関は、経営者がリスクを把握しているかを見ています。楽観、標準、慎重の前提をそろえておくと、審査担当者は計画のぶれ幅を説明しやすくなります。

平時から共有する進捗と見直し

融資は、実行された時点で終わるものではありません。金融機関から見れば、融資後の進捗確認も審査の延長です。計画と実績の差が出たときに、経営者が早く説明し、修正策を出せるかどうかは、次の融資や条件変更の相談にも影響します。

中小企業庁の早期経営改善計画策定支援では、資金繰り計画、ビジネスモデル俯瞰図、アクションプラン、損益計画、資金繰表などを含む経営改善計画の策定を支援し、計画後の進捗確認や金融機関等への報告も位置づけています。6 これは、金融機関との対話では、提出時点の資料だけでなく、提出後に数字を追い続ける姿勢が重視されることを示しています。

融資時に注意したい提出前の確認項目

保証、担保、情報開示の前提整理

事業性融資では、担保や保証に過度に依存しない方向が重視されています。ただし、担保や経営者保証が不要になると決まっているわけではありません。中小企業庁は、経営者保証ガイドラインの3要件として、法人と経営者の資産やお金の明確な区分、法人のみの資産や収益力で返済できる財務基盤、金融機関への適時適切な財務情報の開示を示しています。7

提出前には、次の5点を確認すると、金融機関との会話が具体的になります。

  • 借入の目的と金額が、見積書や資金繰り表と一致しているか
  • 返済原資が、売上予測だけでなく現金の動きで説明されているか
  • 売上が下振れした場合の対応策が書かれているか
  • 法人と経営者個人のお金の流れが整理されているか
  • 融資後の報告頻度と管理資料が決まっているか

提出後の対話まで含めた設計

事業計画書は、きれいに作ることが目的ではありません。金融機関の担当者が上席や審査部門に説明しやすく、融資後も進捗を追いやすい資料にすることが目的です。資料の量を増やすより、資金使途、返済原資、悪化時の対応、月次管理の4点を明確にした方が、審査の論点は整理されます。

特に、担当者が社内で説明しやすい順番にすることが大切です。冒頭では、いくら借りたいか、何に使うか、なぜ必要か、どう返すかを1枚で示します。詳細資料では、売上根拠、主要取引先、設備投資の見積書、月次資金繰り表、シナリオ別の返済余力を補足します。読み手が探さないと分からない資料は、内容が正しくても評価されにくくなります。

最後に押さえたいのは、事業計画書は経営者自身が説明できる内容にするということです。専門家に作成を依頼する場合でも、経営者が数字の根拠、前提条件、下振れ時の対応を自分の言葉で話せなければ、金融機関の不安は残ります。銀行向けの事業計画書は、返済できる会社であることを対話で示すための台本です。作成の第一歩は、成長ストーリーを盛ることではなく、最悪時にも返済に向き合える計画へ書き直すことです。

出典・参考資料

  1. 「業種別支援の着眼点 ~事業性の理解と経営改善の視点~」金融庁 ↩

  2. 「『業種別支援の着眼点』に関する補足資料の公表について」金融庁 ↩

  3. 「創業計画の書き方」日本政策金融公庫 ↩

  4. 「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」経済産業省 ↩

  5. 「事業者と金融機関の信頼関係に基づく事業性融資に関する基本的な考え方(概要)」金融庁 ↩

  6. 「早期経営改善計画策定支援」中小企業庁 ↩

  7. 「経営者保証」中小企業庁 ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年5月20日

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