経営革新計画の認定を受けると、融資や信用保証だけでなく、知的財産まわりの支援も気になってきます。特に特許を出す予定がある会社にとって、特許料の減免は費用計画に直結します。
ただし、認定後に自動で特許料が半額になるわけではありません。制度上の対象、発明と計画の関係、納付時の手続を確認して、初めて使える支援です。
この記事では、経営革新計画の認定後に特許料の減免を検討する人に向けて、どこまでが半額対象で、どこでつまずきやすいのかを整理します。

経営革新計画承認後に受けられる支援制度
特許料の減免だけでなく、様々な支援を受けられる
経営革新とは、事業者が新事業活動を行い、経営の相当程度の向上を図る取り組みを指します。経営革新計画が承認されると、さまざまな支援策を受けられる可能性が出てきます。1
ここで最初に押さえたいのは、承認は支援の入口であって、支援そのものの決定ではないということです。中小企業庁のガイドブックでも、計画の承認は支援を保証するものではなく、支援ごとに別途審査が必要になる旨が示されています。2 特許料の減免も同じで、特許庁への手続の中で条件を満たしていることを示す必要があります。
新減免制度に変わっている
意外と見落とされやすいのは、経営革新計画の承認よりも、どの出願に、どの要件で減免を使うのかが重要になるということです。例えば、承認された計画の中に新商品の販売方法の工夫だけがあり、技術に関する研究開発がない場合、経営革新計画を根拠にした研究開発型中小企業のルートには合いにくくなります。
一方で、現在の新減免制度では、一般的な中小企業の要件を満たす会社も、審査請求料と第1年分から第10年分の特許料について2分の1軽減の対象になり得ます。3 つまり、経営革新計画があるから使える場合と、そもそも中小企業として使える場合があり、入口を混同しないことが大切です。
判断の順番としては、まず自社が一般の中小企業要件で対象になるかを確認し、次に承認経営革新計画に基づく研究開発型中小企業の要件が関係するかを見ると整理しやすくなります。経営革新計画は、減免のためだけに見る書類ではなく、発明の背景を説明する資料として扱うと実務に合います。
何が、どこまで減免されるのか?
審査請求料と第1年分から第10年分の特許料
特許庁の新減免制度では、中小企業など一定の対象者について、審査請求料と特許料の軽減が用意されています。研究開発型中小企業の場合、審査請求料は2分の1、特許料は第1年分から第10年分まで2分の1に軽減されます。3
ここでいう審査請求料は、出願した発明について特許庁に審査を求めるときの料金です。特許料は、審査を通って権利を登録し、維持するために納める料金です。出願料や弁理士報酬まで半額になる制度ではないため、費用見積もりを作るときは、どの費用が対象外なのかも分けておく必要があります。
初心者が混乱しやすいのは、特許の手続が一度で終わらないことです。大まかには、出願時に出願料を払い、審査を受けると決めた段階で審査請求料を払い、特許として認められた後に特許料を納めます。減免を使う場面も、それぞれの支払時期に合わせて確認します。特に特許料は、登録時に第1年分から第3年分をまとめて納め、その後も権利を維持する年数に応じて支払いが続きます。
請求項が増えるほど重くなる費用
特許費用が読みにくい理由の一つは、請求項の数で料金が変わることです。請求項とは、発明の保護範囲を文章で区切って書く項目です。製品そのもの、製造方法、制御方法などを別々に守ろうとすると、請求項が増える場合があります。
特許庁の料金表では、平成16年4月1日以降に審査請求をした出願について、第1年分から第3年分の特許料は毎年4,300円に請求項数×300円を加えた額、第10年分以降は毎年59,400円に請求項数×4,600円を加えた額です。4
例えば請求項10の特許なら、第1年分から第10年分までの特許料は合計313,600円になり、2分の1軽減を使うと納付額は156,800円になる計算です。金額だけで判断せず、長く維持する特許ほど減免の意味が大きくなると考えると、制度の位置づけが見えやすくなります。短期の試作で終わる発明と、主力製品の基礎になる発明では、同じ半額でも事業上の意味が変わります。
経営革新計画ルートで確認したい条件
技術に関する研究開発との結び付き
経営革新計画を根拠に研究開発型中小企業として減免を考える場合、中心になるのは技術に関する研究開発との関係です。特許庁の説明では、承認経営革新計画に従って行われる経営革新のための事業のうち、技術に関する研究開発に係るものの成果である発明などが対象として示されています。5
例えば、承認計画の中で新しい加工装置の開発を進め、その装置の制御方法について発明が生まれた場合、計画と発明のつながりを説明しやすくなります。反対に、計画には店舗運営の改善だけを書いており、後から別の技術発明を出願した場合、経営革新計画との関係を根拠にするのは難しくなります。
実務では、計画書のどの項目に研究開発が書かれているか、発明がその成果だと説明できるかを先に確認します。承認書、計画書、研究開発の議事録、試作品の仕様書などがばらばらに保管されていると、後から関係を説明するのに時間がかかります。制度の対象になりそうな発明ほど、開発の経緯を残しておくことが大切です。
計画終了後2年以内という出願時期
もう一つの条件はタイミングです。特許庁の説明では、承認経営革新計画に従って行われた技術に関する研究開発の成果に係る発明について、当該計画の終了の日から起算して2年以内に出願されたものに限る、という条件が示されています。5
この条件は、認定後に特許出願を後回しにしてよいという意味ではありません。研究開発の途中で発明が生まれたら、公開前に出願する必要があるか、どの時点で権利化するかを早めに検討します。展示会、営業資料、Webサイトでの発表が先になると、新規性の問題が出る可能性もあります。制度の期限だけでなく、発明を外に出す前の知財判断も同時に見ておくべきです。
申請時に注意したい書き方とタイミング
特記事項欄に書くべきこと
2019年4月1日以降に審査請求をした案件では、新減免制度が適用されます。新減免制度では、減免申請書や証明書類の提出は不要とされ、出願審査請求書や特許料納付書の所定欄に、減免を受ける旨と減免申請書の提出を省略する旨を記載する方法が示されています。3
ここで注意したいのは、書類の提出が不要でも、手続が不要になるわけではないということです。特許料納付書に必要な記載を入れ忘れると、軽減を前提にした金額で処理できない可能性があります。自社で手続をする場合も、弁理士に依頼する場合も、減免を使う予定があることを納付前に共有しておく必要があります。
古い出願を扱う場合は、審査請求日にも注意が必要です。2019年3月31日以前に審査請求した案件は旧減免制度、2019年4月1日以降に審査請求した案件は新減免制度で判断されます。過去に出願したままになっている案件や、他社から承継した権利を扱うときは、出願日だけでなく審査請求日を確認してから進めると安全です。
件数制限と共同出願の確認
2024年4月1日以降に審査請求した出願については、審査請求料の減免に一部件数制限が設けられています。上限の対象となる中小企業などでは、申請人ごとに一年度あたり180件が上限です。ただし、特許庁のQ&Aでは、登録料や特許料はこの改正による件数制限の対象ではないとされています。6
多くの中小企業では180件に届くことは少ないかもしれません。それでも、大学や取引先との共同出願、グループ会社を含む複数出願がある場合は、誰が減免を受けるのか、持分はどうなっているのかを確認しておくと安心です。共同出願では、減免対象者ごとの持分や納付割合が料金計算に関係するため、契約書と出願書類を別々に扱わないことが重要です。
費用削減を知財戦略に変える次の行動
発明ごとの一覧表づくり
認定後にまずやるべきなのは、発明ごとに対応表を作ることです。表といっても複雑なものは必要ありません。どの発明がどの経営革新計画に関係するのか、出願予定日、審査請求予定日、特許料の納付時期、使う予定の減免要件を並べるだけで、確認漏れを大きく減らせます。
最初の確認項目は、次の四つで十分です。
- 発明の内容が、計画内の技術に関する研究開発と結び付いているか
- 出願日が、計画の実施中または終了後2年以内に収まるか
- 中小企業としての一般要件でも減免を使えるか
- 審査請求料と特許料のどちらで、いつ手続するか
この一覧を作ると、経営革新計画の承認書を持っているだけでは足りないことが自然に分かります。発明、計画、料金納付の三つを同じ表で見られる状態にしておくことが、認定後の実務では一番使いやすい管理方法です。
これから計画を作る段階なら、知財の予定も早めに書き出しておくと後で判断しやすくなります。新技術の開発を計画に入れる場合は、どの成果を特許で守るのか、どの成果は営業秘密として管理するのかを分けて考えます。すべてを出願するのではなく、競合に知られても権利で止めたい技術を優先する、という順番づけが必要です。
相談前にそろえる資料
弁理士、商工会議所、自治体の担当窓口に相談する前には、資料をそろえておくと話が早く進みます。特に、承認書だけでは発明との関係が分からないため、計画本文、研究開発の内容が分かる社内資料、発明の概要メモ、出願や納付の予定を一緒に準備しておくとよいでしょう。
特許料の減免は、単なる節約策ではありません。どの技術を長く守るのか、どの出願を優先するのかを考えるきっかけになります。減免で費用を抑えられるとしても、将来使わない特許を増やせば、管理の手間や更新判断は残ります。
経営革新計画の認定後は、支援策を探すだけでなく、計画から生まれる技術をどの順番で権利化するかまで確認しておくことが、費用を抑えながら事業を守る現実的な一歩になります。最終的に見るべきなのは、半額になるかどうかだけではなく、特許を持つことで新事業を守れるかどうかです。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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