前編では、経営革新計画の認定後に信用保証の特例をどう使うかを見ました。後編で扱う高度化融資は、同じ資金調達の支援策でも、使いどころが大きく異なります。
高度化融資は、単独の会社が足りない運転資金を借りるための制度というより、複数の会社が共同で施設や設備を整えるための制度です。共同で何を作り、誰がどう使うかを説明できるかが、検討の入口になります。自社だけの設備投資なのか、地域や業界の共通課題を解く投資なのかを分けて読むと、制度の向き不向きが見えます。

高度化融資でまず確認したい対象者
経営革新計画の主な支援策として、信用保証の特例、日本政策金融公庫の特別利率による融資制度、高度化融資制度などが並んでいます。1 並び方だけを見ると同じ種類の制度に見えますが、実際には対象となる事業の形が違います。
共同で動くグループ向けの制度
高度化事業は、中小企業者が組合などを設立して工場団地や共同施設を整える事業などを、資金と助言の両面から中小機構と都道府県が支援する制度です。中小機構は、民間金融機関と比べて長期、低利の固定利率で貸付を受けられ、事業メニューによっては無利子もあると説明しています。2
ここで重要なのは、制度の中心が共同で取り組む設備投資にあることです。通常の融資では、借り手は一つの会社で、資金使途もその会社の事業に限られます。
一方、高度化融資では、物流センター、共同加工施設、研究施設、共同利用設備など、複数の会社が使う施設が候補になります。自社だけで使う機械を買いたい場合は、まず信用保証の特例や日本政策金融公庫の融資を検討するほうが自然です。3
組織を作らずに貸付対象となるケースがある
高度化融資は組合を作らないと使えない、と思われがちです。しかし、経営革新計画承認グループ事業では、一定の要件を満たせば、組合や会社などの組織を作らずに貸付対象となるケースがあります。中小機構は、経営革新計画承認グループであれば、組織を作る必要がなく課題解決につながると説明しています。4
主な要件として、承認経営革新計画に従って共同で事業を行う者が4者以上であること、参加者の3分の2以上が中小企業者等であること、大企業が含まれる場合は参加者の4分の1以内であることなどがあります。4 一社で大きく借りる制度ではなく、複数社で共通の投資を組み立てる制度だと理解すると、検討すべき会社が絞られます。
中小機構の活用事例には、宮崎カーフェリー株式会社が他の4社と経営革新計画承認グループとして高度化事業を利用し、新たな船舶を購入して宮崎県の農畜産物などの本州搬送や旅客輸送を強化した例が掲載されています。4
この事例が示すのは、単に安い借入を受けたという話ではありません。複数の事業者が関わる地域の重要なインフラを、共同事業として形にした点が重要です。では、どのような投資なら候補になるのでしょうか。
どんな投資なら候補になるのか?
土地、建物、設備など資産になるもの
経営革新計画承認グループ事業で貸付けの対象となる施設は、土地、建物、構築物、設備であって、資産計上されるものです。4 この点は、広告費、採用費、外注費、在庫資金などの運転資金と大きく違います。高度化融資は、共同で使う土台を整える資金に向いています。
たとえば、同じ地域の食品関連企業が共同の冷凍保管施設を整える場合、各社が個別に小さな設備を持つより、品質管理や物流の効率が上がる可能性があります。製造業のグループが共同の試験機器を導入する場合も、単独では高額で導入しにくい設備を使えるようになります。共同利用によって投資効果が広がるかが、制度との相性を判断する軸です。
共同利用の施設と各社単独投資の違い
同じ設備投資でも、各社が自社工場に機械を入れるだけなら、高度化融資の考え方とは距離があります。高度化事業の一覧には、共同施設事業、設備リース事業、施設集約化事業、経営革新計画承認グループ事業などがあり、いずれも個社の都合だけでなく、グループ全体の合理化や課題解決を見ます。2
そのため、申請の前に考えるべきなのは、設備の性能だけではありません。誰が使うのか、利用料をどう決めるのか、稼働率が低い場合に誰が負担するのか、成果物や研究開発成果の帰属をどう扱うのか。こうした共同利用のルールが曖昧なままだと、資金調達以前に事業運営でつまずきます。
共同利用のルールは、借入審査のためだけに作るものではありません。運用開始後に、繁忙期の利用順、故障時の修繕費、追加投資の負担、撤退する会社の扱いをめぐって不満が出ることがあります。
計画段階で細かい決め事を避けるほど、後から調整コストが増えます。高度化融資を検討する段階では、施設を作る前の合意書づくりが、設備の見積もりと同じくらい重要になります。ここからは、条件面の魅力と注意点を見ます。
融資条件の魅力と注意点
長期、低利、場合によって無利子
高度化融資の魅力は、条件の長さと低さにあります。中小機構の案内では、貸付期間は最長20年以内、うち据置期間3年以内、貸付割合は原則として貸付対象事業費の80%までです。令和8年度貸付決定分の貸付利率は1.35%とされ、特別な法律の認定に基づく事業計画などでは無利子になる場合があります。2
この条件だけを見ると、かなり魅力的に映ります。ただし、長期で借りられるということは、長期で共同事業を続ける責任を負うということでもあります。
参加企業の一社が撤退した場合、施設の利用量が落ちた場合、代表者が変わった場合にどうするかを先に決めておかなければなりません。低利は強みですが、共同運営の設計が弱いと負担も長く残るということです。
診断助言がある分、計画の粗さが見えやすい
高度化事業では、事業計画の作成段階から貸付後の経営アドバイスまで、中小企業診断士などによるサポートを受けられるとされています。貸付けを希望する者は、高度化事業計画を作成する初期段階から都道府県に相談して助言を受けることになります。2
これは利用者にとって心強い点ですが、同時に、計画の粗さが早い段階で見えるという意味でもあります。共同施設の利用見込みが楽観的すぎる、参加企業の役割分担が弱い、資金負担の決め方が不透明といった点は、助言の中で確認されます。自社だけの事業計画より、関係者の合意形成に時間がかかるため、締切ありきで急いで進める制度ではありません。
また、共同事業では、合意形成そのものに時間がかかります。各社の決算期、投資余力、役員会の承認時期、担保や保証への考え方がそろわないからです。単独の借入なら一社の判断で進められても、高度化融資では参加企業の足並みが事業の進み方を左右します。次に、前編で見た信用保証の特例との使い分けを整理します。
信用保証の特例との使い分け
単独投資は保証、共同インフラは高度化融資
信用保証の特例と高度化融資は、どちらも経営革新計画の認定後に検討される資金調達策です。けれども、使う場面は違います。単独の会社が新サービスを開発し、広告費や採用費、設備資金を借りたい場合は、信用保証の特例や日本政策金融公庫の新事業活動促進資金が候補になります。新事業活動促進資金では、経営革新計画の承認を受けた方が対象の一つに含まれます。3
一方で、複数の会社が共同で使う物流拠点、試験設備、加工施設、研究施設を整えるなら、高度化融資を検討する余地があります。誰が借りるかより、誰が共同で使い続けるかが判断の中心です。会社単体の資金繰り改善を目的に高度化融資を探すと、制度の入口でずれてしまいます。
認定後ではなく構想段階で相談
経営革新計画の承認後に支援策を探す流れは自然ですが、高度化融資では少し遅い場合があります。なぜなら、共同事業の内容、参加企業、代表者、貸付けの相手方、施設の使い方、費用負担を早くから調整する必要があるためです。
中小機構の説明でも、高度化事業では基本的にグループを支援し、中小機構が都道府県へ財源を貸し付け、都道府県から事業者へ貸し付ける仕組みが示されています。2
この仕組みを考えると、認定後に資料を持ち込むだけではなく、構想段階で都道府県窓口や中小機構の情報を確認することが大切です。経営革新計画そのものにも、共同事業としての内容や必要資金を反映させる必要があります。最後に、実際に検討を始めるときの準備をまとめます。
そのため、早い段階で相談先を一本に絞らず、都道府県窓口、金融機関、参加企業の担当者が同じ前提を共有する場を作ることが大切です。
明日から進める準備
参加企業の役割と費用負担の確認
高度化融資を検討するなら、最初にやるべきなのは制度名を調べることではなく、参加企業の合意を作ることです。経営革新計画承認グループ事業では、貸付けの相手方として、参加者のうち一の代表者、参加者全員の連名、参加者であるそれぞれの者などが示されています。代表者を選ぶ場合は、参加者全員の総意に基づき書面で決議されていることも求められます。4
また、共同で実施する事業内容、実施体制、施設の利用方法や処分、研究開発成果の帰属などについて、書面で確認されていることも必要です。4 ここまでを見ると、高度化融資は資金調達であると同時に、共同事業の契約設計でもあります。誰がどれだけ使い、誰がどれだけ負担し、途中で事情が変わったときにどうするか。お金の前に合意の設計が必要です。
準備を始めるときは、参加企業ごとに得たい効果を言語化します。物流費を下げたい会社、品質を安定させたい会社、研究開発の速度を上げたい会社では、同じ施設を使っていても期待する成果が異なります。期待が違うまま資金調達だけを進めると、完成後の使い方でずれが出ます。
後編のまとめ
経営革新計画の認定後に使える制度を考えるとき、信用保証の特例と高度化融資を同じ資金調達メニューとして並べるだけでは不十分です。信用保証の特例は、単独企業の新事業資金に使いやすい制度です。高度化融資は、複数の会社が共同で施設や設備を持ち、長く使い続けるための制度です。
判断の順番は、まず単独事業か共同事業かを分けることです。次に、資金使途が運転資金なのか、資産になる施設や設備なのかを分けます。最後に、参加企業の合意形成にどれだけ時間をかけられるかを見ます。経営革新計画は承認で終わる書類ではありません。認定後の資金調達まで見据えて、どの制度を使うと事業が現実に進むのかを選ぶことが大切です。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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