中小企業が融資を考えるとき、最初に不安になりやすいのが担保や保証人です。土地や建物がない、家族に保証人を頼めないという理由で、申し込み前にあきらめてしまう人もいます。
ただ、担保や保証人は融資の絶対条件ではありません。信用保証協会や日本政策金融公庫の制度、経営者保証を付けない融資の仕組みを使えば、別の形で信用を補える場合があります。
この記事では、担保や保証人が必要になる場面と、代替策を使える場面を分けて整理します。融資を受ける前に、どの条件を確認すべきかを考える材料にしてください。

担保、保証人なしの選択肢が増えている背景
担保や保証人より先に見られる返済可能性
事業融資で金融機関が見ているのは、担保そのものではなく、貸したお金を返せる見込みです。担保は、返済が滞ったときに回収するための手段です。保証人も、会社だけでは返済できない場合に別の返済先を確保するための手段です。つまり、担保や保証人は信用を補う方法の一つであって、融資判断の中心は返済可能性にあります。
そのため、同じ中小企業でも、事業の年数、売上の安定度、決算内容、資金の使い道、借入後の返済計画によって求められる条件は変わります。創業直後なら実績が乏しいため公的融資を使う、成長途中なら信用保証協会を使う、決算内容が整ってきたらプロパー融資(信用保証協会の保証を付けない融資)を目指す、という順番で考えると理解しやすくなります。
見落としやすいのは、信用保証協会の保証が付いても、返済義務が消えるわけではないということです。中小企業庁は、信用保証協会が事業者の借入れに対して保証し、返済が滞った際には代わって債務の支払いを行う仕組みを説明しています1。ただし、信用保証協会が金融機関に支払った後は、信用保証協会が中小企業者に対して求償権を取得し、回収を行います2。
担保や保証人がない場合でも、融資を検討できる制度はあります。ただし、制度を使えば審査がなくなるわけではありません。大切なのは、担保の代わりに何で信用を補うのかを説明することです。信用保証協会、公庫融資、経営者保証なしの制度は、そのための選択肢として考えます。
信用保証協会が担保、保証人の代替策になる仕組み
公的な保証人として銀行のリスクを補う仕組み
信用保証協会は、中小企業者が金融機関から事業資金を借りるときに、公的な保証人として資金繰りを円滑にする役割を持ちます。申込後、信用保証協会が信用調査と審査を行い、保証を適当と認めた場合に金融機関へ信用保証書を発行します。金融機関は、その信用保証書に基づいて融資を行います2。
中小企業庁の説明では、一般保証は融資額の80%を信用保証協会が保証し、20%を金融機関が負担する仕組みです。ただし、小規模事業者や創業者などに対する保証は100%保証とされています1。ここで重要なのは、保証割合が高いほど必ず借りやすいという意味ではないことです。金融機関と信用保証協会の両方が、資金使途や返済計画を確認します。
保証付き融資でも審査と保証料が必要
信用保証協会付き融資では、担保や第三者保証人の負担を減らせる場合があります。一方で、保証を受けるには条件があります。例えば、保証対象になる中小企業の規模、事業所の所在地、対象業種、資金の使い道、許認可の有無などが確認されます。福岡県信用保証協会の例では、資金使途は事業を遂行するために必要な事業資金に限られ、生活資金や投機資金など事業に直接関係しない資金は原則対象外です3。
また、信用保証協会の保証には信用保証料がかかります。保証料率は経営状況などに応じて決まり、制度によっては負担を軽くする設計がされている場合もあります4。担保についても不要と決まっているわけではなく、必要に応じて不動産や有価証券などの提供を求められる場合があります3。つまり、信用保証協会は担保や保証人を完全になくす制度ではなく、金融機関が融資を検討しやすくする補完策です。
創業期に使える日本政策金融公庫の融資
創業期は原則として無担保、無保証人
創業前後の資金調達では、民間金融機関だけで実績を示すのが難しい場合があります。そこで候補になるのが、創業者や小規模事業者向けの融資を扱う日本政策金融公庫です。日本政策金融公庫の創業融資の案内では、新たに事業を始める人、または事業開始後に税務申告を2期終えていない人は、原則として無担保、無保証人で各種融資制度を利用できるとされています5。
新規開業・スタートアップ支援資金では、利用対象は新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人です。融資限度額は7,200万円で、設備資金は20年以内、運転資金は10年以内の返済期間が示されています6。この7,200万円は制度上の上限であり、誰でも上限まで借りられるという意味ではありません。必要額、使い道、売上見込み、返済原資が審査で確認されます。
上限額より事業計画と返済力の確認
創業期の融資で注意したいのは、担保や保証人が不要でも、事業計画の説得力は必要だということです。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金では、適正な事業計画を策定しており、その計画を遂行する能力が十分あると認められることが条件として示されています6。販売先が決まっていない、仕入れや人件費の見通しが粗い、売上が出るまでの資金繰りが説明できない場合は、担保の有無とは別に審査上の不安が残ります。
創業融資では、担保や保証人の代わりに、事業計画そのものが信用の材料になります。どの商品やサービスを、誰に、いくらで売るのか。入金までに必要な運転資金はいくらか。返済はどの売上から行うのか。この説明が弱いと、無担保、無保証人の制度でも希望額に届かないことがあります。
経営者保証なしを選ぶための条件
会社と個人のお金を分ける準備
中小企業の融資で保証人といったとき、多くの場合に問題になるのは経営者保証です。経営者保証とは、会社の借入れについて代表者個人が保証することです。会社と経営者のお金が混ざっていると、金融機関は会社単体の返済力を判断しにくくなります。そのため、経営者保証を外したい場合は、会社と個人のお金を分ける準備が欠かせません。
日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度では、税務申告を2期以上実施している法人について、法人と代表者の一体性の解消が一定程度図られていること、最近2期の減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと、または直近決算で債務超過でないことなどが要件として示されています7。創業前後の法人でも、法人と代表者の一体性の解消などを確認できる場合は対象になり得ます。ここでいう準備は、代表者への不要な貸付をなくす、個人支出を会社経費に混ぜない、決算書を期限どおり提出する、といった日々の管理です。
保証料上乗せで選べる制度の確認
信用保証付き融資でも、経営者保証を付けない制度が広がっています。中小企業庁は2024年3月15日から、一定の要件を満たす法人が保証料率の上乗せを条件に、保証人による保証を提供しないことを選べる制度を開始しました8。要件には、金融機関の求めに応じて決算書などを提出していること、代表者への貸付金などがないこと、直近決算で債務超過でないこと、または直近2期で減価償却前経常利益が連続赤字でないことなどが含まれます。
この制度では、要件の満たし方に応じて信用保証協会所定の保証料率に0.25%または0.45%が上乗せされ、保証人は不要とされています8。追加コストは発生しますが、個人保証を避けたい法人にとっては検討材料になります。特に、事業承継や追加投資を考えている会社では、経営者個人のリスクをどこまで抑えるかが資金調達の重要な判断になります。
申し込み前に整理したい判断材料
保証付き融資とプロパー融資の使い分け
担保や保証人をどう考えるかは、どの融資を選ぶかによって変わります。最初からプロパー融資だけにこだわると、金融機関が負うリスクが大きくなり、実績の少ない会社では審査が難しくなる場合があります。一方で、保証付き融資を使いながら返済実績を積むと、将来、プロパー融資を相談しやすくなります。
| 選択肢 | 向きやすい場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 信用保証協会付き融資 | 実績や信用力を補いながら銀行融資を受けたい場合 | 保証料がかかり、保証協会と金融機関の審査がある |
| 日本政策金融公庫の創業融資 | 創業前後で民間金融機関に実績を示しにくい場合 | 制度上の上限額と実際の融資額は別に考える |
| 経営者保証なしの制度 | 個人保証を避けながら法人として借りたい場合 | 決算書提出、法人と個人の分離、財務条件が見られる |
| プロパー融資 | 返済実績や財務内容が整ってきた場合 | 金融機関が直接リスクを負うため、審査は厳しくなりやすい |
金融機関に伝える説明材料
融資の相談では、制度名を先に探すより、まず自社の説明材料を整理する方が実務的です。金融機関や信用保証協会は、会社が何にお金を使い、どの売上で返すのかを確認します。最低限、次の内容は一つの資料として整理しておくと、担保や保証人の必要性を相談しやすくなります。
- 借入金の使い道と必要額
- 売上、粗利、入金時期を踏まえた返済原資
- 既存借入、税金、社会保険料の支払い状況
- 会社資金と代表者個人資金の分離状況
特に、会社と個人のお金の分離は後回しにされがちです。しかし、経営者保証なしを目指す場合、法人から代表者への貸付金や仮払金が残っていると説明が難しくなります。融資の直前だけで整えるのではなく、月次の会計処理、役員報酬の決め方、個人利用分の経費処理から見直すことが大切です。
担保、保証人の有無より大切な説明
返済力を示すための条件整理
担保や保証人は、中小企業の融資で必ず必要になるものではありません。信用保証協会は銀行融資のリスクを補い、日本政策金融公庫は創業期の無担保、無保証人融資を用意しています。さらに、一定の要件を満たす法人は、保証料の上乗せなどにより経営者保証なしを選べる場合があります。
ただし、どの代替策にも審査があります。保証付き融資なら保証料や対象業種、資金使途が確認されます。公庫融資なら創業計画の実現性が見られます。経営者保証なしを選ぶなら、会社と個人のお金を分け、決算内容を説明できる状態が求められます。担保や保証人がないことを弱点として見るだけでなく、返済力をどう示すかに置き換えて準備することが、融資前の最初の一歩です。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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