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なぜ海外のBGM使用料が日本の歌手に届きにくかったのか?音楽利用に関する法整備の日本と海外の違い、相互主義

海外の店舗で日本の楽曲が流れたとき、対価は誰に届くのか。レコード演奏・伝達権の改正案をもとに、日本と海外の音楽利用の法整備、相互主義、店舗BGMで起きる変化を整理します。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年5月20日
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目次

  • 海外で流れた日本の曲の対価が戻りにくかった理由
  • 相互主義で何が起きるのか?
  • 改正案で新しく設けられる権利の中身
  • 店舗や事業者が確認しておきたいこと
  • 日本の音楽を海外で伸ばすための制度整備
補助金フラッシュ 事業計画

カフェ、ホテル、商業施設で流れる音楽は、作品の宣伝であると同時に、誰かの創作と演奏で成り立つ事業資産でもあります。ところが日本では、店舗などで音源が使われたときの対価が、作詞家や作曲家には届いても、歌手や演奏家、レコード製作者には届きにくい構造が残っていました。
今回の著作権法改正案の焦点は、音楽を作った人だけでなく、音楽を実際に演奏した人と音源を作った人にも対価を戻す仕組みを整えることです。特に重要なのが、海外との関係で働く相互主義です。
この記事では、音楽利用に関する日本と海外の法整備の違いを、店舗BGMと海外還元の流れに絞って整理します。

目次

  • ●海外で流れた日本の曲の対価が戻りにくかった理由
  • 作詞家、作曲家と実演家、レコード製作者の違い
  • 142か国で導入済という制度差
  • ●相互主義で何が起きるのか?
  • 自国に権利がないと海外からも受け取りにくい仕組み
  • 海外展開の問題は人気ではなく権利の出口
  • ●改正案で新しく設けられる権利の中身
  • レコード演奏、伝達権という二次使用料の権利
  • 指定団体と使用料規程の仕組み
  • ●店舗や事業者が確認しておきたいこと
  • 対象になり得る利用と例外
  • 今すぐ断定せず施行までの情報を追う
  • ●日本の音楽を海外で伸ばすための制度整備
  • 還元の道筋を作ることが海外展開の条件
  • 音楽利用をコストではなく権利処理として見る視点
なぜ海外のBGM使用料が日本の歌手に届きにくかったのか?音楽利用に関する法整備の日本と海外の違い、相互主義

海外で流れた日本の曲の対価が戻りにくかった理由

作詞家、作曲家と実演家、レコード製作者の違い

最初に押さえたいのは、音楽には複数の権利者が関わるということです。曲そのものを作る作詞家や作曲家は著作権者です。一方、歌う人、演奏する人、録音された音源を制作するレコード会社などは、著作隣接権者と呼ばれます。著作隣接権とは、作品を世の中に届ける実演や録音制作を守るための権利です。

従来の日本では、店舗などで音楽CDや配信音源がBGMとして再生された場合、作詞家や作曲家などの著作権者には権利がありました。しかし、実演家やレコード製作者には、同じ場面で二次使用料を受け取る権利が十分には整っていませんでした。文部科学省は、今回の法案で、音楽CDやインターネット配信音源などがレストランや店舗などでBGMとして利用された場合に、実演家やレコード製作者へ対価を還元できる仕組みを導入すると説明しています。1

誤解されやすいのは、実演家やレコード製作者の権利がまったく存在しなかったわけではないということです。現行法でも、放送事業者や有線放送事業者が商業用レコードを使う場合には、実演家やレコード製作者に二次使用料を支払う仕組みがあります。2 ただし、店舗、ホテル、商業施設などで音源を公に再生する場面は、今回の改正案が埋めようとしている空白に近い領域でした。

142か国で導入済という制度差

この論点が注目されるのは、日本だけの国内問題ではないからです。文部科学省の改正案概要では、同様の制度は142か国で導入済みであり、OECD加盟国では日本と米国のみ未整備とされています。3 つまり、日本で人気のある音楽を海外に売り込む以前に、権利制度の土台が海外とそろっていなかったわけです。

ここでいうレコードは、日常会話で使うアナログ盤だけを指す言葉ではありません。法律上の議論では、商業用に発行された音源全般が中心になります。例えば、店舗が市販の音源やBGMサービスを通じて音楽を流す場合、どの権利者に使用料が届くのかが問題になります。日本と海外の違いは、単に使用料の金額の違いではなく、誰に権利があると法律上認めるかの違いです。

相互主義で何が起きるのか?

自国に権利がないと海外からも受け取りにくい仕組み

相互主義とは、簡単にいえば、相手国が自国の権利者を保護してくれるなら、自国も相手国の権利者を保護するという考え方です。著作隣接権の国際的な扱いでは、この発想が実務上とても重要になります。

実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)の第15条は、商業上の目的で発行されたレコードを放送または公衆への伝達に使う場合、実演家とレコード製作者が衡平な報酬を請求する権利を持つと定めています。ただし、同条約は、締約国がこの規定の適用を制限したり、適用しないと宣言したりする余地も認めています。4

このため、日本にレコード演奏・伝達権にあたる制度がない状態では、海外で日本の音源が店舗BGMなどに使われても、相互主義により日本側へ二次使用料が戻りにくくなります。楽曲の人気があっても、受け取る権利の窓口が国内法にないと、海外の徴収、分配の仕組みに乗りにくいのです。

海外展開の問題は人気ではなく権利の出口

海外で日本の音楽が聴かれる機会が増えるほど、権利の出口は重要になります。配信、ライブ、グッズ、広告利用などは比較的イメージしやすい収益源です。一方、店舗や施設で日常的に流れるBGMの対価は、利用者から見えにくく、権利者にも分かりにくい収益源になりがちです。

今回の改正案が意味を持つのは、海外での人気を国内の権利者に戻すための制度面の穴を埋めようとしている点です。日本の音楽が海外の商業空間で使われても、制度が未整備であれば還元の道は細くなります。海外展開を支える法整備とは、単に保護を強めることではなく、利用された分を正しく集め、正しく分ける通路を作ることだと考えると分かりやすくなります。

改正案で新しく設けられる権利の中身

レコード演奏、伝達権という二次使用料の権利

改正案では、商業用レコードに録音されている実演を公に再生した人は実演家に、商業用レコードの音を公に再生した人はレコード製作者に、それぞれ二次使用料を支払う仕組みが盛り込まれています。また、公衆送信される音源を受信装置で公に伝達する場合も、同様に二次使用料の対象になり得ます。5

ここで大事なのは、新しい権利が、利用を一つひとつ止める許諾権としてではなく、利用後に対価を受け取る二次使用料の仕組みとして設計されていることです。店舗が音楽を使うたびに、個別の歌手やレコード会社へ直接連絡する形では、利用者側の手続きが重くなりすぎます。そこで、制度は利用しやすさと対価還元の両立を目指しています。

指定団体と使用料規程の仕組み

改正案のもう一つの柱は、文化庁長官が指定する団体がある場合、その指定団体のみが権利を行使できるという仕組みです。指定団体は、二次使用料の額などを記載した二次使用料規程の案を作成して公示します。利用者代表から協議を求められた場合には応じる必要があり、協議がまとまらない場合には文化庁長官の裁定を求める流れも用意されています。5

この仕組みは、権利者だけで金額を決める制度ではありません。店舗、施設、BGMサービスなどの利用者側にも影響があるため、料金の決め方や公表の手続きが重要になります。読者が事業者側であれば、改正案の成立そのものだけでなく、どの団体が指定され、どの利用区分で、どの使用料規程になるかを追う必要があります。

店舗や事業者が確認しておきたいこと

対象になり得る利用と例外

店舗や事業者にとって最初に確認すべきなのは、自社の音楽利用が公の場での再生や伝達に当たるかどうかです。カフェでBGMサービスを使う、ホテルのロビーで配信音源を流す、商業施設の共用部で音楽を流すといった場面は、制度の対象として検討されやすい領域です。

ただし、すべての音楽再生が同じ扱いになるわけではありません。改正案要綱では、営利を目的とせず、聴衆や観衆から料金を受けずに公に再生した場合などは、一定の適用除外として整理されています。また、放送などを通常の家庭用受信装置で公に伝達した場合などにも例外が置かれています。5 そのため、実務では営利性、料金の有無、利用場所、使っている音源の種類を分けて見ることが大切です。

今すぐ断定せず施行までの情報を追う

もう一つ重要なのは、2026年5月時点では改正案の段階であり、制度の細部は今後の成立、公布、施行、規程整備を経て固まるということです。概要資料では、施行期日は公布日から3年を超えない範囲内で政令で定める日とされています。3 つまり、制度が動き出すまでには準備期間が設けられる予定です。

事業者側が今できることは、過度に不安がることではありません。まず、自社がどのように音楽を使っているかを棚卸しし、既に契約しているBGMサービスや著作権管理団体との契約内容を確認することです。その上で、指定団体や二次使用料規程が公表された段階で、既存の支払いと新しい負担の関係を確認します。音楽利用をやめる判断より、権利処理を見える化する準備が先です。

日本の音楽を海外で伸ばすための制度整備

還元の道筋を作ることが海外展開の条件

今回の法整備は、店舗BGMの使用料をめぐる国内の負担増だけで見ると、全体像を見誤ります。重要なのは、日本で制度を整えることにより、海外で日本の音源が使われたときの対価還元にも道が開ける可能性があることです。文部科学省の資料でも、改正後のイメージとして、利用状況などに応じて日本と海外の間で相互に支払う流れが示されています。3

特に、アニメやゲームをきっかけに日本の楽曲が海外で聴かれる場合、音楽そのものの売上だけでなく、商業施設でのBGM利用やイベント周辺での音源利用も増えます。人気が国境を越えるほど、権利情報が整っているか、どの団体が分配を受けられるかが収益化の条件になります。海外で使われた音楽の対価を国内に戻すには、作品の魅力だけでなく、権利処理の仕組みも輸出に耐える形にしておく必要があります。国内で店舗や施設を運営する事業者にとっても、同じ考え方が音楽利用の整理に役立ちます。

もちろん、制度ができれば自動的にすべての海外収益が戻るわけではありません。各国の管理団体との連携、音源情報の整備、利用実態の把握、分配ルールの透明性など、運用面の課題は残ります。それでも、国内法に権利がない状態と、権利があり指定団体が徴収、分配できる状態では、交渉の出発点が大きく変わります。海外展開を支える基盤として、相互主義に対応できる国内制度を持つ意味は小さくありません。

音楽利用をコストではなく権利処理として見る視点

音楽を使う事業者にとって、使用料は新たなコストに見えます。一方、音楽を制作する側にとっては、商業空間で使われ続ける音源から継続的に収入を得るための仕組みです。どちらか一方だけに寄せると、制度は使いにくくなります。

これから必要なのは、音楽利用を単なる経費ではなく、権利処理として設計する視点です。店舗や施設は、どの音源を、どの場所で、どの契約に基づいて使っているかを把握する。音楽ビジネス側は、徴収と分配の仕組みを分かりやすく示す。そうして初めて、国内の利用者にも、海外で活動するアーティストにも納得感のある制度に近づきます。

日本と海外の違いは、音楽文化への愛情の差ではありません。違いの中心にあるのは、使われた音楽の対価を誰に、どのルートで戻すかという法整備の差です。レコード演奏・伝達権の改正案は、その差を埋め、日本の音楽が海外で使われたときの還元を受け取りやすくするための一歩として理解すると、制度の意味が見えやすくなります。

出典・参考資料

  1. 「アーティスト等への適切な対価還元に向けて著作権法改正案閣議決定」文部科学省 ↩

  2. 「著作権法に基づくレコード製作者に係る二次使用料を受ける権利の行使に係る指定団体の指定」文部科学省 ↩

  3. 「著作権法の一部を改正する法律案(概要)」文部科学省 ↩

  4. 「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」公益社団法人著作権情報センター(CRIC) ↩

  5. 「著作権法の一部を改正する法律案(要綱)」文部科学省 ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年5月20日

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