福利厚生を見直すとき、食事補助サービスは候補に上がりやすい制度です。昼食代の負担を軽くでき、従業員が日々使いやすいからです。
ただし、導入で大切なのは有名サービスを選ぶことではありません。自社の働き方、非課税要件、運用負担の3つをそろえて考えることです。
この記事では、初めて食事補助を検討する企業向けに、比較の軸から導入手順、福利厚生費としての計上方法までを整理します。

なぜ食事補助は福利厚生として選ばれやすいのか?
毎日使う制度が評価に残る理由
食事補助は派手な制度ではありませんが、従業員の記憶に残りやすい福利厚生です。人材サービスのマンパワーグループが2015年に実施した調査では、実際にあった福利厚生でよかったものとして、食堂、昼食補助が17.1%で最多でした。調査時点は古いものの、毎日の支出を支える制度が評価されやすいことを示す材料になります1。
この結果をそのまま導入理由にするのは早計です。食事補助は、全員が同じ時間に同じ場所で昼食をとる会社なら使いやすい一方、外勤や在宅勤務が多い会社では社員食堂型が合わないこともあります。昼食を持参する人が多い職場では、弁当を配るより、持参した食事に足せる惣菜や飲み物の方が使われる場合もあります。制度の満足度は、補助額よりも使える人の広さで決まりやすいと考えると、比較の見方が変わります。
健康経営と生活支援の交差点
食事補助は、単なるランチ代の割引だけではありません。経済産業省は健康経営を、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することと説明しています2。食事補助は、食費の支援と健康的な食事環境づくりを同時に扱えるため、健康経営の入口にもなります。
ただし、健康を掲げるほど、制度は押しつけになりやすくなります。例えば、野菜や低糖質メニューを重視するサービスを入れても、利用者が昼食の量や価格に不満を持てば定着しません。ここまでで、食事補助は人気があるから入れる制度ではなく、働き方と食事の実態に合わせて設計する制度だと分かります。次に、非課税で扱うための条件を確認します。
非課税で計上する前に確認したい条件
上限7,500円だけでは足りない理由
2026年4月1日以後に支給する食事から、食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額は、月額3,500円から月額7,500円へ引き上げられました3。ただし、上限が広がったからといって、会社が食事代を全額負担してよいわけではありません。国税庁は、役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担すること、そして会社負担分が1か月当たり7,500円以下であることを、給与として課税されない要件として示しています4。
例えば、1か月の食事価額が税抜15,000円の場合、従業員が7,500円以上を負担し、会社負担が7,500円以下であれば、要件を満たす設計になります。一方、会社が10,000円を負担し、従業員負担が5,000円にとどまると、半分以上の本人負担という条件も、会社負担の上限も外れます。ここを誤ると、従業員のための福利厚生として始めた制度が、給与課税の確認対象になり得ます。非課税で計上する設計の核心は、半額以上の本人負担と月額7,500円以下の会社負担を同時に満たすことです。
現金支給と現物支給の違い
初心者がつまずきやすいのは、食事補助と食事手当の違いです。給与に上乗せして現金を渡す食事手当は、原則として給与として課税されます。例外として、深夜勤務者に夜食を現物で出せない場合に、1食当たり650円以下の金銭を支給する扱いがありますが、通常の昼食補助とは分けて考える必要があります4。
非課税を意識するなら、食事そのもの、弁当、社員食堂、食事用途に管理されたカードやアプリなど、食事の提供として説明できる形を選ぶことが出発点です。経理処理でも、会社が何を負担し、従業員がいくら払ったのかを確認できる記録が必要です。ここで制度の枠が見えました。次は、サービスをどう比較するかを見ます。
食事補助サービスの比較軸
サービス名より先に働き方
食事補助サービスは、大きく分けると、カードやアプリ型、設置型、提供型、デリバリー型に整理できます。カード型のチケットレストランは、公式サイトで導入実績4,000社以上、全国25万店舗以上対応とうたっています5。設置型では、オフィスおかんが1品100円の想定利用価格と24時間利用を示し、OFFICE DE YASAIは冷蔵と冷凍の2プラン、約140品の月替りメニューを掲げています67。
| タイプ | 向いている職場 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| カード、アプリ型 | 外勤、出張、在宅勤務が多い | 食事以外の利用を防ぐ仕組み |
| 設置型 | 休憩時間が分散する、夜勤がある | 冷蔵庫や電子レンジの場所 |
| 提供型 | 同じ時間に昼食をとる人が多い | 提供時間と最低食数 |
| デリバリー型 | オフィス勤務が中心で外出を減らしたい | 配送エリアと注文締切 |
提供型では、500円出張社員食堂のように、机2つ分のスペースで始められ、初期費用0円を打ち出すサービスがあります8。デリバリー型では、ごちクルNowのように、初期導入費用、月額利用料、送料を無料として、従業員が個人決済や会社補助を組み合わせられる仕組みを示すサービスもあります9。比較の起点は、どのサービスが有名かではなく、どこで食べる従業員が多いかです。
補助額、場所、運用負担の見える化
比較表を作るときは、価格だけで並べない方が実態に近くなります。見るべきなのは、従業員1人当たりの会社負担、従業員負担の回収方法、利用できる場所、注文や補充の手間、請求書と利用履歴の確認方法です。複数拠点がある会社では、東京本社では使いやすいサービスが、地方拠点ではほとんど使えないこともあります。特に非課税運用を考える場合、誰が、いつ、どの食事に、いくら使ったのかを後から確認できることが重要です。
税抜月額7,500円の会社負担は、20営業日で割ると1日当たり375円です。従業員も同額以上を負担する設計にすれば、1日750円程度の食事価額まで非課税要件を意識した制度にしやすくなります。10人なら会社負担は月75,000円、50人なら月375,000円が上限設計の目安です。金額だけを見ると小さく見えても、毎月続く固定的な支出になるため、利用率が低い制度は早めに見直す必要があります。もちろん、実際の税務判断は契約内容や運用で変わるため、補助額を増やす前に顧問税理士へ確認してください。社内説明では、従業員負担が必要な理由も合わせて伝えると誤解を減らせます。ここまでで比較軸が見えました。次は、導入の進め方を具体化します。
導入で失敗しない進め方
アンケートで確認する項目
導入前にやるべきなのは、サービス資料を集めることだけではありません。従業員がどのように昼食をとっているかを確認することです。社内アンケートでは、少なくとも次の4点を聞くと、サービス選定の迷いが減ります。
- 昼食をとる場所と時間帯
- 1食に出せる自己負担額
- よく使う店舗や欲しいメニュー
- 外勤、在宅勤務、夜勤の有無
この確認を省くと、制度はあっても使われない状態になりやすくなります。例えば、在宅勤務が多い会社でオフィス設置型だけを導入すると、制度を使える人が限られます。公平性は全員に同じ食事を出すことではなく、働き方が違っても利用機会を大きく偏らせないことです。
契約前に見る書類と運用ルール
候補を絞ったら、契約前に料金表、請求書の出方、利用履歴の確認方法、解約条件を確認します。設置型なら電源、冷蔵庫、電子レンジ、補充頻度を確認します。デリバリー型や提供型なら、最低注文数、キャンセル期限、配達できない日の扱いを見ます。カードやアプリ型なら、利用できる店舗、食事以外の購入を防ぐ仕組み、証憑確認の方法を確認します。
社内規程も先に整えます。対象者、会社負担の上限、従業員負担の回収方法、利用できる時間帯、食事以外に使った場合の扱いを書いておくと、総務と経理の判断がぶれにくくなります。特に希望者だけが利用する制度にする場合でも、希望できる機会を広く開いておくことが大切です。導入初月から完璧を目指すより、1〜2か月で利用率と不満を確認し、補助額や対象サービスを見直す流れを作る方が、長く続けやすくなります。
経理と総務が押さえる計上方法
会社負担分を見えるようにする記録
福利厚生費として処理する場合、経理で重要なのは会社負担分を見えるようにすることです。例えば、税抜15,000円分の食事を従業員1人に提供し、従業員が7,500円を負担し、会社が7,500円を負担する設計なら、会社負担分を福利厚生費として処理する考え方になります。従業員負担分を給与天引きで回収する場合も、食事の価額、本人負担、会社負担を分けて記録しておく必要があります。
現場では、請求書だけでは不十分なことがあります。利用者ごとの補助額、対象者、利用日、食事用途であることを確認できるデータがあると、後から説明しやすくなります。月次で確認する担当者を決め、上限超過や食事以外の利用があれば、外部向けの文書にはそのまま使わず、社内で原因を確認します。計上方法で迷ったときは、勘定科目名よりも、給与課税されない要件を満たす実態があるかを先に見ることが大切です。
導入後の見直し
食事補助は、導入して終わる制度ではありません。勤務形態が変われば、使いやすいサービスも変わります。出社中心だった会社が在宅勤務を増やすなら、設置型だけでは不公平感が出るかもしれません。反対に、オフィス回帰が進む会社では、提供型やデリバリー型の方が休憩時間を確保しやすくなることもあります。
最後に覚えておきたいポイントは3つです。サービスは働き方で比較すること、非課税は半額以上の本人負担と月額7,500円以下の会社負担を同時に確認すること、経理では会社負担分と利用実態を記録することです。さらに、制度の目的を社内に伝えることも欠かせません。生活支援なのか、健康的な食事環境づくりなのか、採用時の説明材料なのかによって、選ぶサービスも見るべき数字も変わります。食事補助サービスは、食事代を安くするだけの制度ではなく、働き方に合わせて生活支援を届ける制度です。まずは小さなアンケートと月額試算から始めると、自社に合う導入方法を選びやすくなります。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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