最低賃金の引上げや人材確保のために賃上げが必要だと分かっていても、利益を確保しながら人件費を増やすのは簡単ではありません。特に中小企業では、賃上げが直接的に経営を圧迫するリスクもあります。省力化投資や生産性向上を通じて業績を高め、その成果を賃上げに還元する仕組みを支援する制度が複数用意されています。
この記事では、全国の中小企業が申請できる賃上げ関連の補助金5件と融資1件を紹介します。いずれも2026年3月時点で申請を受け付けている制度です。対象者・金額を制度ごとに整理しているので、自社の規模や状況に合った制度をすぐに確認できます(補助金フラッシュ掲載データ、2026年3月時点)。
賃上げに活用できる返済不要の補助金5件
ここで紹介する5件はいずれも返済不要の補助金です。省力化と賃上げをセットで行う場合は最大50億円の制度もあります。細かい要件等については、各支援事業の募集要項でご確認ください。公募は定期的に更新されるため、最新の募集状況は公式ページでご確認ください。
中堅・中小・スタートアップの賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金
中堅・中小企業等による人手不足への対応や成長を目的とした大規模投資を支援し、持続的な賃上げの実現を目指す補助金です。補助率は1/3以下、上限は50億円と非常に大きな規模です。
この制度の特徴は、省力化投資と賃上げを一体で推進する点にあります。地方での持続的な賃上げを実現することが目的で、中堅企業にも門戸が開かれています。工場の自動化ラインの導入やロボット設備の大規模更新など、投資規模の大きい省力化を計画している事業者にとって、賃上げの原資確保を後押しする制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 公募要領に記載の応募資格を満たす中堅・中小企業等 |
| 補助率・金額の上限 | 1/3以下、上限50億円 |
| 公式ページ | 大規模成長投資補助金 |
大規模成長投資補助金の詳細を見る
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)
人手不足の状態にある中小企業等がIoTやロボットなどの汎用製品をカタログから選んで導入する際の経費を補助する制度です。上限は1,500万円(賃上げ要件を満たした場合に引き上げ)、補助率は1/2です。
この制度が面白いのは、カタログから選ぶだけで簡易に申請できる点です。大がかりなオーダーメイドの設備投資ではなく、即効性のある省力化を実現できます。従業員数に応じて補助上限額が段階的に設定されており、賃上げ要件を満たすことで上限が引き上がります。賃上げに取り組むインセンティブとしても機能する設計になっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 人手不足の状態にある中小企業等(カタログに登録された製品を導入) |
| 補助率・金額の上限 | 1/2、上限1,500万円(賃上げ要件を満たした場合に引き上げ。従業員数に応じて上限が設定) |
| 公式ページ | 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型) |
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)の詳細を見る
中小企業成長加速化補助金
売上高100億円超を目指す中小企業の大胆な投資を支援する補助金です。賃上げへの貢献、輸出による外需獲得、域内の仕入れによる地域経済への波及効果が大きい取組が対象となります。上限は5億円です。
申請時までに「100億宣言」を公表していることが要件で、成長意欲の高い中小企業に特化した制度です。賃上げだけでなく、輸出による外需獲得や域内の仕入れによる地域経済への波及効果も評価軸に含まれています。事業拡大と賃上げを同時に進めたい企業に適しており、大胆な投資で事業の成長基盤を固めながら従業員の処遇改善を図る設計になっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 売上高100億円超を目指す中小企業(「100億宣言」の公表が必須) |
| 補助率・金額の上限 | 公式ページを確認、上限5億円 |
| 公式ページ | 中小企業成長加速化補助金 |
中小企業成長加速化補助金の詳細を見る
中小企業新事業進出補助金
中小企業等が既存事業と異なる新たな事業へ挑戦する取組を支援する制度です。上限は9,000万円、補助率は1/2で、新市場や高付加価値分野への進出を後押しします。
賃上げとの接点として、この制度は生産性向上や賃上げの実現を目的に含んでいます。新分野に進出することで付加価値の高い事業を構築し、その収益を賃上げの原資に充てる流れをつくれます。既存事業の利益率が低く賃上げが難しい場合に、より付加価値の高い事業への転換を後押しする仕組みです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 新たな事業へ挑戦する中小企業等 |
| 補助率・金額の上限 | 1/2、上限9,000万円 |
| 公式ページ | 中小企業新事業進出補助金 |
中小企業新事業進出補助金の詳細を見る
観光地・観光産業における省力化投資補助事業
宿泊業の人手不足解消に資する設備投資を支援し、サービス水準の向上と賃上げの実現を目的とする補助金です。上限は3,000万円、補助率は1/2です。
宿泊業界は人手不足が深刻で、賃上げなしでは人材確保が困難になっています。この制度を活用して省力化設備を導入し、人件費の効率化とサービス品質の向上を両立させることで、賃上げの余力をつくれます。参加申込と計画申請の両方を公募期間内に完了する必要がある点に注意が必要です。旅館業法に基づく許可を受けた宿泊事業者が対象で、住宅宿泊事業は対象外です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 宿泊事業者(旅館業法に基づく許可を受けた者) |
| 補助率・金額の上限 | 1/2、上限3,000万円 |
| 公式ページ | 観光地・観光産業における省力化投資補助事業 |
観光地・観光産業における省力化投資補助事業の詳細を見る
全国で利用できる融資・低利ローン
ここから紹介するのは返済が必要な融資制度です。補助金とは異なり、借入金として返済する必要がありますが、通常の金融機関の融資と比較して大幅に有利な条件が設定されています。既存の借入金の返済負担を軽減し、その分を賃上げの原資に回すという活用法が可能です。
民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度(コロナ借換保証)
民間ゼロゼロ融資等の返済負担が増大した中小企業者を支援するため、借換えや新たな資金需要に対応する信用保証制度です。金融機関との対話を通じて経営行動計画書を作成し、継続的な伴走支援を受けることで保証料が大幅に引き下げられます。
賃上げに取り組みたいが既存の借入金の返済負担が大きいという事業者にとって、借換えを通じて月々の返済額を軽減し、賃上げの原資を確保する手段になります。融資限度額は1億円で、保証料率は0.2%程度まで引き下がります。金融機関との継続的な伴走支援を受けながら経営行動計画書を作成するため、借換え後の経営改善にもつながる仕組みです。売上高や利益率が5%以上減少しているなどの要件を満たす必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 売上高や利益率が5%以上減少等の要件を満たす中小企業者(セーフティネット認定等が必要) |
| 融資限度額 | 1億円 |
| 利率 | 保証料率を引き下げ(例: 0.2%等) |
| 返済期間 | 金融機関との個別協議による |
| 公式ページ | コロナ借換保証 |
コロナ借換保証の詳細を見る
申請前に確認しておきたいポイント
対象要件を確認する
まず、自社が対象者の要件を満たしているかを確認しましょう。大規模成長投資補助金は中堅企業も対象ですが、成長加速化補助金は「100億宣言」の事前公表が必要です。省力化投資補助金(カタログ注文型)は人手不足の状態にあることが条件で、観光産業向けの省力化投資補助事業は旅館業法の許可を受けた宿泊事業者に限定されます。補助金フラッシュなら業種・事業規模で絞り込み、自社に合った制度を確認できます。
書類を準備する
多くの制度で事業計画書の提出が求められます。成長加速化補助金では「100億宣言」の事前公表が必須です。省力化投資補助金(カタログ注文型)ではカタログに登録された製品の選定と、導入後の省力化効果や賃上げ見通しを記載した計画書が必要になります。作成に不安がある場合は、国が各都道府県に設置した無料相談窓口のよろず支援拠点を利用できます。具体的な進め方はよろず支援拠点で事業計画を磨く方法で解説しています。
スケジュールを確認する
大規模成長投資補助金や成長加速化補助金、新事業進出補助金など、制度ごとに申請期限が異なります。電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必要で、発行まで数週間かかります。早めに準備しておきましょう。GビズIDの取得方法は補助金申請が忙しい時期に慌てないためのGビズIDの先回り準備をご覧ください。
まとめ
この記事では、全国の中小企業が申請できる賃上げ関連の補助金5件と融資1件を紹介しました。
- 大規模成長投資補助金: 省力化と賃上げをセットで行う中堅・中小企業、上限50億円
- 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型): IoT・ロボット等を導入する中小企業、上限1,500万円
- 中小企業成長加速化補助金: 売上高100億円超を目指す中小企業、上限5億円
- 中小企業新事業進出補助金: 新分野に挑戦する中小企業、上限9,000万円
- 観光地・観光産業における省力化投資補助事業: 宿泊事業者の省力化設備、上限3,000万円
- コロナ借換保証(返済あり): 借換えで返済負担を軽減する中小企業、融資限度額1億円
省力化投資で生産性を高め、その成果を賃上げに還元する流れをつくれるかが重要です。補助金で設備投資の自己負担を抑え、生産性向上による利益増を賃上げに充てる計画を立てることで、持続的な賃上げの実現に近づけます。自社の規模や業種に合った制度を選び、各制度の公式ページから最新の公募情報を確認してみてください。
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