生産性向上が進まないときは、業務フロー図で可視化から始めよう

補助金検索Flash 士業編集部

毎日忙しいのに、仕事が前に進まない。残業を減らしたいのに、なぜか手戻りが増える。そんなときに必要なのは、根性でも新しいツールでもなく、仕事の流れを見える形にすることです。業務フロー図で現状を可視化し、止まる場所を認識にしてから改善に入ると、生産性向上の打ち手が選びやすくなります。

なぜ業務フロー図が生産性向上の近道になるのか?

価値を生む時間は、思っているより短い

現場の感覚では、作業している時間がほとんどに見えます。ところが、依頼が来てから完了するまでの時間のうち、実際に価値を生む作業は一部になりやすいと指摘されています。ある解説では、多くのプロセスで価値を生む作業は経過時間の1割未満で、残りは待ち時間や移動に消えていくと説明しています。1

この話が重要なのは、改善の当たりを付けられるからです。作業の速さだけを競っても、承認待ちや確認待ちが長いままだと、納期は縮みません。業務フロー図は、待ち時間が生まれる場所を見つけるための地図になります。まず地図を作ってから優先順位を決めたほうが、改善の議論が早く進みます。

見えない遅れは、引き継ぎと確認に潜む

仕事が止まりやすいのは、誰かが怠けているからとは限りません。実務では、担当が変わるタイミング、確認や承認のタイミング、問い合わせの往復が、時間を押し上げます。しかも、遅れの理由は個人のメモやメールの中に散らばり、全体像として共有されにくいまま残ります。

例えば見積作成で、担当者は当日中に下書きを作れたのに、確認が週末にずれ込み、差し戻しが入ってさらに数日かかる。こうした遅れは、個人の能力より、流れの設計で決まります。可視化の価値は、遅れを責めるためではなく、遅れの構造を共有するためにあります。ここまでで、改善の出発点は、速く働くことより流れを見える形にすることだと分かりましたので、次は業務フロー図をどこまで描けばよいかを具体化します。

業務フロー図は何を、どこまで描けばいい?

まずは範囲を一つの業務に絞る

業務フロー図が続かない理由の多くは、最初から大きく描きすぎることです。例えば受注から入金までを一枚にまとめると、部署も例外も増え、更新が難しくなります。最初は、止まりやすい業務を一つだけ選びます。毎月繰り返す作業、顧客対応に直結する作業、関係者が多い作業は、可視化の効果が出やすいです。

行政の資料でも、業務フローは一連の業務プロセスをフローにして可視化したものだと定義されています。2 入口から出口までを一本の道として描くと理解してください。入口と出口が決まると、何を描き、何を描かないかも決めやすくなります。関係者も、入口と出口に触れる人に絞れるので、話がまとまりやすくなります。

範囲を決めるときは、現状の流れを描くことを優先します。まずは、昨日やった手順をそのまま書けば十分です。理想の手順から入ると、現場の例外や苦労が消え、改善の出発点がずれます。まず現状を描き、次に理想との差をメモする順番にすると、話が現実的になります。

図に入れる情報を決めると、改善の話が通じやすい

業務フロー図は、絵が上手いかどうかでは決まりません。改善につながる図にするために、最低限そろえたい情報があります。ここでは細かな記号より、読み手が迷わないことを優先します。

  • 開始と終了(何が起きたら始まり、どこまで行けば終わりか)
  • 担当の区分(誰がやるかをレーンで分ける。スイムレーンと呼ぶ)
  • 判断の分岐(はい、いいえで流れが変わる場所)
  • 成果物(その工程で何が出来上がるか。書類、データ、メールなど)

加えて、工程名は名詞ではなく動詞で書くと、作業の抜け漏れが見つかります。例えば書類作成ではなく、申請書を作る、添付を集める、提出するのように書きます。粒度をそろえることも大切で、一つだけ細かすぎたり、逆に大ざっぱすぎたりすると、議論がかみ合いません。待ちや連絡も工程として書くと、見落としが減ります。

ここまでできたら、図は完成です。図を見ながら、新しく入った人に業務の説明ができるなら、粒度は十分です。図があると、引き継ぎの抜け漏れが減り、改善の効果も追いやすくなります。次は、図から改善点を読み取る段階に進みます。

可視化した業務フロー図をどう読めば改善につながる?

まず探すのは、ボトルネックより止まる場所

改善の会議でありがちなのは、いきなり解決策を出し合うことです。先にやるべきなのは、どこで止まっているかを合意することです。ここでいうボトルネックは、流れを詰まらせる場所という意味です。品質分野の解説では、フローチャートを作った後に、ボトルネック、遅れの原因、手戻り、重複、引き継ぎ過多などを見直すとよいと整理しています。3

ポイントは、時間や回数を細かく測る前に、場所を特定することです。矢印が行ったり来たりする所、確認が何度も挟まる所、担当が変わる所は、止まりやすい候補です。例えば請求書発行なら、入力ミスの差し戻しが多い所、添付が足りない所、承認が滞りやすい所を囲います。囲った場所ごとに、止まる理由を一文で書けると、改善案の検討が楽になります。

可能なら、図の脇に簡単なメモを残します。完了までに何日かかるか、差し戻しがどこで起きるか、この2つだけでも十分です。大がかりな測定より、図と一緒に見返せる情報を残すほうが、改善の継続に向きます。数字が曖昧でも、最近の平均的な感覚を書けば出発点になります。

責任とルールを矢印にひもづける

止まる理由が見えても、改善が進まないことがあります。多いのは、誰が決めるかが曖昧なケースです。承認者が複数いる、差し戻し条件が人によって違う、例外処理が口伝えになっている。こうした曖昧さは、作業者の努力では埋まりません。

そこで、フロー図の分岐や承認に、短いルールを添えます。例えば見積が50万円以上なら管理職が確認、添付がそろわない場合は依頼者に戻す、といった具合です。判断ルールは、誰が読んでも同じ結論になる言葉で書くと、後から揉めにくくなります。関西経済産業局の現場向け資料でも、手順書づくりを通じた実態把握が、生産性向上の経営判断や現場のコミュニケーションに役立つと述べています。4

この段階まで進むと、改善の論点が整理されます。改善案の良し悪しを、感覚ではなく流れで判断できるようになります。やるべきことは、担当者の頑張りを増やすことではなく、判断と引き継ぎのルールを減らして、分かりやすくすることです。次は、現場で作って回す方法に落とします。

現場で回る業務フロー図の作り方

3人、60分で作るワークショップ手順

業務フロー図は、作る人が一人だと現実からずれやすいです。短時間でよいので、実務を知る人同士で一気に形にします。集めるのは、実際に手を動かす人、確認や承認をする人、問い合わせを受ける人のうち、最低3人です。準備は、紙とペンでも、共有できるホワイトボードでも構いません。

おすすめは次の流れです。

  • 入口と出口を決め、対象業務を一つに絞る
  • 付せんに作業を書き出し、時系列に並べる
  • 担当者ごとにレーンを分け、矢印でつなぐ
  • 止まりやすい所に印を付け、原因を一言でメモする

この段階では、完成度を求めすぎないことが大切です。分からない所が残るのは正常で、そこが改善の入口になります。正確さより、現実に合わせることを優先してください。

更新を習慣にするための小さなルール

一度作った業務フロー図が放置されるのは、更新の担当とタイミングが決まっていないからです。更新を制度にするほど大げさにせず、ルールを二つだけ置きます。誰が直すかを決めることと、いつ直すかを決めることです。

例えば月次の締め作業なら、締め後の翌週に見直す。問い合わせ対応なら、クレームが起きたら当日中に追記する。こうしたきっかけがあると、図が現実からずれにくくなります。大規模な要件定義の調査報告でも、業務一覧や業務フローなどの資料を作り、全体像の把握と課題の洗い出しに利用したと説明されています。5

保管場所も決めておくと運用が楽です。紙で作った場合は写真に撮り、共有フォルダに置きます。更新するときは、誰がどこを直したかが分かるよう、更新日と更新者だけを残します。こうしておくと、業務フロー図が単なる資料ではなく、改善の台帳になります。

うまくいかない例を避けて、次の一歩へ進むには?

業務フロー図が形だけになるパターン

業務フロー図があっても成果が出ないのは、図が現実を写していないときです。会議用にきれいに整えた結果、例外処理や差し戻しが消え、現場は別の手順で動いている。これでは、改善の議論が空回りします。作る側は、見栄えより、現場が納得するかどうかを判断基準にしてください。

もう一つの落とし穴は、細かく描きすぎて更新できなくなることです。発生頻度が低い例外まで最初から盛り込むと、作るほどに疲れて止まります。日常の大半を占める流れをまず描き、例外は別紙でメモするくらいが現実的です。なお、単発で滅多に起きない業務や、状況が毎回違う業務は、無理にフロー図にせず、チェックリストのほうが向く場合もあります。

明日から試せる、小さな改善の選び方

可視化ができたら、改善は一気にやらないほうが続きます。最初は、止まりやすい所を一つだけ選び、手を入れます。例えば、承認の往復が多いなら承認条件を一行で決める。問い合わせが増えるなら、依頼フォームに必須項目を足す。担当者が迷うなら、判断の分岐に短い基準を書く。どれも小さな変更ですが、止まる場所に手を入れるので、実感が出やすいです。改善したら、該当する矢印やルールを業務フロー図に反映させ、次の改善の材料にします。

より厳密に描きたい場合は、業務プロセスを表す標準記法としてBPMN(Business Process Model and Notation)という考え方もあります。目的は、図の読み手によって解釈がぶれないようにすることです。6 ただし、最初から標準記法にこだわる必要はありません。生産性向上のための可視化は、現場が読めて更新できることが最優先です。

覚えておきたい要点は3つです。範囲を一つに絞って描くこと、止まる場所を合意してから改善すること、更新の担当とタイミングを決めることです。図が一枚あるだけで、会話の前提がそろい、改善の会議が短くなりやすく、次の手を決めやすくなります。まずは対象業務を一つ選び、60分だけ関係者で図にしてみてください。

  1. 多くのプロセスで価値を生む作業が経過時間の1割未満になりがちで、待ちと移動に注目すべきだと述べている。Lean Enterprise Institute(2019-11-22)

  2. 手続の業務フローを、行政手続に係る一連の業務プロセスをフローにして可視化したものと定義している。経済産業省 2022年度産業保安システム更改に係る要件定義書(2023-03-07)

  3. フローチャート完成後に見直す項目として、ボトルネックや遅れの原因などを挙げている。ASQ(American Society for Quality、2025年6月レビュー)

  4. 手順書づくりを通じた実態把握が、生産性向上の経営判断や現場のコミュニケーションに役立つと述べている。関西経済産業局 現場主導による業務プロセス可視化ツール(公開日不明)

  5. 業務一覧や業務フローなどの資料を作り、全体像の把握と課題の洗い出しに利用したと説明している。経済産業省 石油情報システムの更改に係る要件定義に関する調査報告書(2023-01-31)

  6. BPMNを、業務プロセスを始めから終わりまで表す標準的な表現方法で、曖昧さを減らす目的があると説明している。Microsoft Business process modeling and BPMN diagrams(更新日不明)

執筆者:補助金検索Flash 士業編集部

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