山梨県で農業を営みながら、ワイン醸造用のぶどう栽培を効率化したい、加工品を作って6次産業化に踏み出したいと考えていても、設備投資にかかる費用がネックになり動き出せないという農業者は少なくありません。施設園芸のハウス資材やスマート農業機器は高額になりがちで、自己資金だけで導入するにはリスクが大きいと感じる方もいるでしょう。
この記事では、山梨県の農業者が申請できる返済不要の補助金5件と奨励金1件を紹介します。スマート農業機器の導入から施設園芸の省エネ対策、事業拠点の新設支援まで、対象者・金額を制度ごとに整理しました(補助金検索フラッシュ掲載データ、2026年4月時点)。
あわせて、補助金では足りない場合に検討できる農業向けの公的融資制度にも触れています。
山梨県の農業者が申請できる返済不要の補助金・奨励金6選
以下で紹介する制度の細かい要件等については、各支援事業の募集要項でご確認ください。公募は定期的に更新されるため、最新の募集状況は公式ページでご確認ください。山梨県内の農業者向け支援制度は補助率2/3の制度が多く、施設園芸の設備更新からスマート農業機器の導入、事業拠点の新設まで幅広い用途に対応しています。
施設園芸等経営強化支援事業費補助金 1
燃油価格や農業用資材の高騰、夏秋の猛暑といった影響を受ける施設野菜・花き生産者の経営強化を目的とした補助金です。生産コストの削減および生産性向上に役立つ資材・機器の導入費用を支援します。山梨県内に居住するか、県内に事業所の本社を置く生産者が対象で、農事組合法人や農地所有適格法人も申請できます。
この制度の特徴は、対象経費の範囲が広い点です。資材・機器代に加え、付帯設備や設置工事費(電気工事含む)まで補助率2/3でカバーされます。ハウス栽培で使う内張カーテンや遮熱資材の更新を検討している場合に活用しやすい制度といえます。補助金の下限が10万円に設定されているため、小規模な機器導入から申請できるのもありがたい点です。対象ハウスで今後5年以上の生産継続が条件となっている点は押さえておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 山梨県内に居住または県内に事業所本社を置く施設野菜・花き生産者(農事組合法人・農地所有適格法人を含む) |
| 補助率・金額の上限 | 2/3以内、上限250万円(下限10万円) |
| 補助金詳細ページ | 施設園芸等経営強化支援事業費補助金 |
施設野菜及び花き経営強化支援事業費補助金 2
農業生産資材等の価格高騰の影響を受ける農業者を支援する山梨県の補助事業です。省エネおよび生産性向上に役立つ資材・機器の新規導入や高度化に要する経費を助成します。生産コスト削減と環境負荷の低減を同時に進められる制度設計になっています。
先に紹介した施設園芸等経営強化支援事業費補助金と似た制度ですが、こちらは加温栽培を行う施設野菜・花き生産者に限定されている点が異なります。対象経費には外張被覆、内張カーテン、遮熱被覆資材、細霧装置、LED装置(花きのみ)などが含まれており、加温に伴う燃料コストの削減に直結する設備が中心です。特に冬場の暖房費が経営を圧迫している施設園芸農家にとって、省エネ設備の導入コストを2/3まで抑えられるのは大きなメリットです。なお果樹生産者は対象外となっているため、ぶどう農家の方はご注意ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 施設野菜及び花きの加温栽培を行う生産者(果樹生産者は対象外) |
| 補助率・金額の上限 | 2/3、上限250万円 |
| 補助金詳細ページ | 施設野菜及び花き経営強化支援事業費補助金 |
次に紹介するのは、スマート農業の導入を支援する制度です。
スマート農業の推進に係る補助金 3
山梨県がスマート農業機器の導入を支援し、省力化・低コスト化・高品質化によって農業の生産性向上を図る制度です。県内の事業実施主体が先進技術を実装した機器類を整備する経費を補助します。対象となる事業実施主体は、農業協同組合、農業者等が組織する団体(3者以上)、農業法人などです。
注目したいのは、上限が500万円と農業向けの県内制度としては高額な点です。導入できる機器は農林水産省の製品・サービス集やスマート農業技術カタログ等に掲載されている製品、または実証プロジェクト等で有効性が認められている製品に限られます。たとえば環境モニタリングセンサーや自動灌水装置、ドローンによる農薬散布システムなど、ぶどう栽培やワイン醸造の品質管理・省力化にも活用できる可能性があります。1機器あたり5万円(税別)以上であることが申請条件です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 農業協同組合、農業者等が組織する団体(3者以上)、農業法人、その他知事が適当と認める団体等 |
| 補助率・金額の上限 | 2/3以内、上限500万円 |
| 補助金詳細ページ | スマート農業の推進に係る補助金 |
スマート農業推進事業費補助金 4
山梨県が物価高騰の影響を低減し、生産性の向上を図るため、スマート農業等の先進技術を実装する機器類の整備経費を支援する制度です。製品化され一般に販売されている機器類が対象で、1機器あたりの価格は5万円以上(税別)である必要があります。
前述のスマート農業推進制度と対象者や補助率は近いですが、こちらは補助金額の下限が100万円に設定されている点が特徴です。つまり100万円以上500万円以下の範囲で補助されるため、ある程度まとまった規模の機器導入を検討している団体・法人に適しています。少額の機器を1台だけ導入するというよりも、複数の機器をまとめて整備する場合に使いやすい設計です。農業協同組合や組合・団体等も申請可能で、個人事業主単体ではなく複数の農業者が連携して導入する場合に活用しやすい制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 農業協同組合、農業者等が組織する団体(3者以上)、農業法人、組合・団体等 |
| 補助率・金額の上限 | 2/3以内、上限500万円(下限100万円) |
| 補助金詳細ページ | スマート農業推進事業費補助金 |
ここからは、農業に限定されない支援制度を紹介します。
笛吹市企業立地奨励金 5
笛吹市内に事業所等を新設する事業者に対し、投下固定資産に応じた企業立地奨励金と、一定の市民雇用を達成した場合の雇用奨励金を交付する制度です。農業・林業だけでなく製造業や卸売業・小売業なども対象業種に含まれており、農業法人が加工施設や直売所を新設する場合にも該当する可能性があります。
笛吹市はぶどうや桃の産地として知られており、6次産業化を目指して市内に加工場や販売拠点を構える場合に検討する価値のある制度です。ただし、敷地面積2,000平方メートル超、延べ床面積500平方メートル超、投下資産3,000万円以上、雇用者20人以上(うち10人以上が笛吹市民)と要件のハードルは高めです。雇用奨励金は常用雇用者1人あたり10万円で上限200万円が企業立地奨励金とは別に支給されます。創業開始の前後3か月以内に市民を10人以上常用雇用し、12か月以上継続することが雇用奨励金の条件です。市税を完納していることも求められます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 笛吹市内に事業所等を新設する法人(敷地面積2,000平方メートル超、投下資産3,000万円以上、雇用者20人以上等の要件あり) |
| 補助率・金額の上限 | 投下固定資産の10%、上限500万円(企業立地奨励金)。雇用奨励金は別途上限200万円 |
| 補助金詳細ページ | 笛吹市企業立地奨励金 |
危機管理対策促進事業(BCP実践促進助成金等) 6
東京都中小企業振興公社が実施する危機管理対策促進事業の一環で、BCP実践促進助成金やLED照明等節電促進助成金、サイバーセキュリティ対策促進助成金といった助成金を受けた事業者向けの制度です。東京都だけでなく山梨県を含む関東圏の事業者も対象地域に含まれています。
この制度は新規の助成金申請ではなく、すでに助成事業が完了し助成金が支払い済みの事業者が、事業者変更申請や財産処分申請(承認申請・結果報告)、実施結果の状況報告などの事後手続きを行うためのものです。公社から通知を受けた事業者のみが対象となります。BCP実践促進助成金やLED照明等節電促進助成金を過去に受けた経験がある農業法人は、必要な事後手続きに漏れがないか確認しておくとよいでしょう。申請受付期間は2029年12月31日までと余裕があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 東京都中小企業振興公社のBCP関連助成事業が完了し、公社から通知を受けた事業者 |
| 補助率・金額の上限 | 対象助成金による(上限1,500万円) |
| 補助金詳細ページ | 危機管理対策促進事業 |
山梨県の農業者が利用できる融資制度
ここから紹介するのは返済が必要な融資制度です。補助金とは異なり、借入金として返済する必要があります。利率が低い、無担保で借りられるなど、通常の融資より有利な条件が設定されています。
山梨県の農業者が6次産業化やスマート農業の導入を進める際、補助金だけでは初期投資をまかないきれないケースがあります。たとえばワイン醸造施設の建設や大型のハウス設備の全面更新など、数千万円規模の投資が必要な場面では、補助金と融資を組み合わせるのが現実的な選択肢になります。ここでは、山梨県の農業者が利用できる代表的な公的融資制度を紹介します。
まず検討したいのが、日本政策金融公庫が取り扱う農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)です。認定農業者が対象で、農地の取得から施設・設備の整備、長期運転資金まで幅広い用途に利用できます。個人は3億円、法人は10億円を融資限度額とし、長期かつ低利で借り入れできる点が特徴です。6次産業化に必要な加工施設や貯蔵施設の整備にも活用できるため、ぶどうからワインへの加工事業を拡大したい場合にも対応可能です。返済期間は資金使途によって異なりますが、農地取得では25年以内、施設整備では20年以内が一般的な設定になっています。
新規就農者の場合は青年等就農資金も選択肢に入ります。就農に必要な施設や機械の取得に無利子で貸付を行う制度で、融資限度額は3,700万円です。返済期間も最長17年(うち据置期間5年)と長めに設定されており、就農初期の資金繰りを支えてくれます。山梨県で新たに農業を始め、ワイン用ぶどうの栽培に取り組みたい方にとって心強い制度です。認定新規就農者であることが要件となるため、市町村の農業委員会を通じて青年等就農計画の認定を受ける必要があります。
さらに、6次産業化に特化した融資としては農林漁業施設資金があります。農産物の加工施設や直売施設の整備に使える融資で、農林漁業者が対象です。前述のH2①で紹介した補助金を活用する場合でも、補助率2/3であれば残りの1/3は自己負担となります。その自己負担分を融資でカバーする方法も一般的です。たとえばスマート農業推進事業費補助金で上限500万円の補助を受けた場合、事業費が750万円であれば残り250万円を融資で対応できます。
具体的な融資条件や手続きは、日本政策金融公庫の甲府支店や山梨県の農業経営相談窓口に問い合わせてください。各融資制度の金利や返済条件は時期によって変動するため、融資を検討する場合は最新情報の確認が大切です。
申請前に確認しておきたいポイント
対象要件を確認する
まず、自社が対象者の要件を満たしているかを確認しましょう。施設園芸等経営強化支援事業費補助金は個人の施設野菜・花き生産者も申請できますが、スマート農業推進事業費補助金は農業法人や3者以上で組織する団体が条件です。笛吹市企業立地奨励金になると投下資産3,000万円以上・雇用者20人以上と規模要件が大きく異なります。施設園芸関連の制度では果樹生産者が対象外になるケースもあるため、自社の栽培品目も含めて確認が必要です。補助金検索フラッシュなら業種・事業規模で絞り込み、自社に合った制度を確認できます。
書類を準備する
多くの制度で事業計画書の提出が求められます。スマート農業機器の導入では、農林水産省の製品・サービス集やスマート農業技術カタログに掲載されている機器であることの確認資料も準備しておく必要があります。施設園芸関連の補助金では、対象ハウスの図面や導入機器の見積書、今後5年以上の生産継続を示す計画書が求められるケースもあります。作成に不安がある場合は、補助金の無料サポートをご利用ください。専門家が補助金の申請をサポートします。
スケジュールを確認する
スマート農業推進事業費補助金は2026年4月20日が申請締切、施設園芸関連の2制度は2026年5月15日が締切です。笛吹市企業立地奨励金は2028年3月31日までと長期の受付期間が設定されています。電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必要で、発行まで数週間かかります。特にスマート農業関連は締切が迫っているため、該当する方は優先的に準備を進めましょう。GビズIDの取得方法は補助金申請が忙しい時期に慌てないためのGビズIDの先回り準備をご覧ください。
まとめ
この記事では、山梨県の農業者が申請できる返済不要の補助金5件と奨励金1件、あわせて農業向けの公的融資制度を紹介しました。
- 施設園芸等経営強化支援事業費補助金: 施設野菜・花き生産者向けの資材・機器導入支援、上限250万円
- 施設野菜及び花き経営強化支援事業費補助金: 加温栽培を行う施設野菜・花き生産者向け、上限250万円
- スマート農業の推進に係る補助金: 農業法人・団体向けのスマート農業機器導入支援、上限500万円
- スマート農業推進事業費補助金: 農業法人・団体向け(下限100万円)、上限500万円
- 笛吹市企業立地奨励金: 笛吹市内への事業所新設に対する奨励金、上限500万円(雇用奨励金は別途上限200万円)
- 危機管理対策促進事業: BCP関連助成金の事業完了後手続き、上限1,500万円
制度ごとに対象条件や補助額が大きく異なるため、自社の経営規模や導入したい設備に合った制度を選ぶことが重要です。施設園芸の設備更新なら上限250万円の経営強化支援事業が、スマート農業機器の一括導入なら上限500万円の推進事業費補助金が候補になります。6次産業化に向けた大型の設備投資では、補助金に加えてスーパーL資金などの公的融資を組み合わせる方法も検討してみてください。
スマート農業推進事業費補助金の申請締切は2026年4月20日と迫っているため、該当する方は早めに準備を進めましょう。気になる制度があれば、各制度の公式ページから最新の公募情報を確認してみてください。
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