後継者への引き継ぎを考え始めたものの、設備の更新やM&Aの専門家費用など承継にかかるコストが見えにくく、具体的な一歩を踏み出せない経営者は少なくありません。事業承継は終わりではなく、承継後の経営強化まで見据えた計画が求められます。
この記事では、全国の中小企業が申請できる事業承継関連の補助金4件と税制優遇1件、そして承継後の経営基盤強化に活用できる制度1件の計6件を紹介します。対象者・金額を制度ごとに整理しているので、自社に合う制度をすぐに確認できます(補助金フラッシュ掲載データ、2026年3月時点)。
事業承継に使える返済不要の補助金・税制優遇6件
ここで紹介する6件はいずれも返済不要の補助金または税制優遇です。事業承継・M&A補助金は通常枠と専門家活用枠をそれぞれ紹介します。細かい要件等については、各支援事業の募集要項でご確認ください。公募は定期的に更新されるため、最新の募集状況は公式ページでご確認ください。
事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)
事業承継やM&Aに際して行う設備投資や経営統合に係る経費を支援する制度です。上限は1,000万円、補助率は2/3(要件により1/2)で、個人事業主も対象に含まれます。
この制度は事業承継を包括的に支援する補助金の中核です。事業承継促進枠のほか、廃業・再チャレンジ枠やPMI推進枠も用意されています。承継に伴う設備の刷新や経営統合に必要な経費をカバーでき、承継の準備段階から活用できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 事業承継やM&Aを検討している中小企業・小規模事業者等(個人事業主も対象) |
| 補助率・金額の上限 | 2/3(要件により1/2)、上限1,000万円 |
| 公式ページ | 事業承継・M&A補助金 |
事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)の詳細を見る
事業承継・M&A補助金(専門家活用枠・買い手支援類型)
事業承継やM&Aの専門家費用を補助する枠です。上限は2,000万円、補助率は2/3で、FA(ファイナンシャルアドバイザー)やM&A仲介費用など、登録された支援機関への専門家費用が対象です。
この枠の特徴は、100億企業特例として上限2,000万円と通常より高い補助額が設定されている点です。M&Aを通じた事業承継では、専門家の起用が成功の鍵を握ります。デューデリジェンスや契約交渉など、専門的な支援にかかる費用を大幅に軽減できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 事業承継・M&Aに取り組む中小企業者・個人事業主(法人は設立登記・3期分の決算完了が条件) |
| 補助率・金額の上限 | 2/3、上限2,000万円 |
| 公式ページ | 事業承継・M&A補助金(専門家活用枠) |
事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)の詳細を見る
中小企業事業再編投資損失準備金(中堅・中小グループ化税制)
経営力向上計画の認定を受けた中小企業等が、株式取得によるM&Aを実施した場合に取得価額の一部を準備金として損金算入できる税制措置です。積立可能割合は条件により70%/90%/100%と異なります。
M&Aによる事業承継を検討している場合、取得にかかるコストの税負担を大幅に軽減できます。取得価額10億円以下のM&Aが対象で、特別事業再編計画の認定を受けた場合は認定後の回数に応じて積立割合が異なります。承継後のグループ経営に向けた制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 経営力向上計画の認定を受けた中堅・中小企業(株式取得によるM&A、取得価額10億円以下) |
| 補助率・金額の上限 | 積立可能割合70%/90%/100%(条件により異なる) |
| 公式ページ | 中堅・中小グループ化税制 |
中堅・中小グループ化税制の詳細を見る
ここからは承継後の経営強化に活用できる制度です。
中小企業組合等課題対応支援事業
中小企業組合などの連携組織が、新たな活路の開拓や課題解決に取り組む際の経費を支援する制度です。上限は2,000万円、補助率は6/10です。
事業承継後の経営強化との接点として、承継した事業を同業他社と連携して発展させる場合に活用できます。事業協同組合や商工組合として共同で販路開拓や課題解決に取り組むことで、承継後の事業基盤を強化できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 中小企業組合、一般社団法人、共同出資組織、任意グループ等の連携組織 |
| 補助率・金額の上限 | 6/10、上限2,000万円 |
| 公式ページ | 中小企業組合等課題対応支援事業 |
中小企業組合等課題対応支援事業の詳細を見る
酒類業振興支援事業費補助金≪第2期≫(令和8年度)
日本産酒類の輸出拡大や国内外の新市場開拓を支援する補助金です。上限は1,000万円、補助率は2/3(枠により異なる)で、酒類事業者が対象です。
酒蔵の事業承継後に経営改革や構造転換を進めたい場合に活用できる制度です。海外市場への販路拡大やブランディングの刷新など、承継を機に新しい事業展開を始める際の経費が補助されます。経営改革に資する取組も補助対象に含まれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 酒類事業者 |
| 補助率・金額の上限 | 2/3(枠により異なる)、上限1,000万円 |
| 公式ページ | 酒類業振興支援事業費補助金≪第2期≫(令和8年度) |
酒類業振興支援事業費補助金の詳細を見る
地域農業構造転換支援事業(令和7年度補正予算)
地域の中核となる担い手の経営改善を目的に、農業用機械や施設の導入にかかる経費を支援する制度です。上限は3,000万円、補助率は3/10です。
農業分野での事業承継では、後継者が地域の農地を引き受けて中核的な担い手になるケースが増えています。この制度を活用すれば、承継した農業経営の生産設備を近代化し、経営基盤を強化できます。市町村を経由して国に要望を提出する仕組みです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 地域で農地を集約し中核的に営農を行う担い手となる農業者(市町村を通じて申請) |
| 補助率・金額の上限 | 3/10、上限3,000万円 |
| 公式ページ | 地域農業構造転換支援事業 |
地域農業構造転換支援事業の詳細を見る
申請前に確認しておきたいポイント
対象要件を確認する
まず、自社が対象者の要件を満たしているかを確認しましょう。事業承継・M&A補助金の事業承継促進枠は中小企業・個人事業主が対象ですが、専門家活用枠は法人の場合3期分の決算完了が条件です。グループ化税制は経営力向上計画の認定が前提になります。補助金フラッシュなら業種・事業規模で絞り込み、自社に合った制度を確認できます。
書類を準備する
多くの制度で事業計画書や経営力向上計画の提出が求められます。事業承継・M&A補助金では承継の具体的な計画が必要で、グループ化税制では経営力向上計画の事前認定が条件です。作成に不安がある場合は、国が各都道府県に設置した無料相談窓口のよろず支援拠点を利用できます。具体的な進め方はよろず支援拠点で事業計画を磨く方法で解説しています。
スケジュールを確認する
事業承継・M&A補助金の事業承継促進枠と専門家活用枠は同じ時期に公募されていますが、締切日は同一とは限りません。電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必要で、発行まで数週間かかります。早めに準備しておきましょう。GビズIDの取得方法は補助金申請が忙しい時期に慌てないためのGビズIDの先回り準備をご覧ください。
まとめ
この記事では、全国の中小企業が申請できる事業承継関連の補助金4件と税制優遇1件、経営基盤強化に活用できる制度1件を紹介しました。
- 事業承継・M\&A補助金(事業承継促進枠): 承継に伴う設備投資・経営統合、上限1,000万円
- 事業承継・M\&A補助金(専門家活用枠): FA・M\&A仲介等の専門家費用、上限2,000万円
- 中堅・中小グループ化税制: M\&Aの株式取得価額を損金算入、積立割合最大100%
- 中小企業組合等課題対応支援事業: 連携組織による活路開拓、上限2,000万円
- 酒類業振興支援事業費補助金≪第2期≫: 酒類事業者の経営改革、上限1,000万円
- 地域農業構造転換支援事業: 農業の担い手への設備支援、上限3,000万円
事業承継は承継前の準備から承継後の経営強化まで一連の流れで捉えることが重要です。M&A補助金の複数枠やグループ化税制を組み合わせることで、承継にかかるコストを大幅に抑えられます。気になる制度があれば、各制度の公式ページから最新の公募情報を確認してみてください。
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