商用車の電動化を考えると、BEV、PHEV、FCVという言葉がよく出てきます。どれも環境負荷を下げるための車両ですが、走る仕組みも、向いている使い方も同じではありません。
補助金を使う場合に大切なのは、車両の略称だけで対象になると判断しないことです。国の商用車等の電動化促進事業では、車両の種類に加えて、用途、事前登録、申請者、充電設備との関係まで確認する必要があります。
この記事では、BEV、PHEV、FCVの違いを整理しながら、補助金の対象車両を確認するときの見方をわかりやすく取り上げます。

BEV、PHEV、FCVの違いで最初に見るポイント
動く仕組みの違い
BEVは、電池にためた電気でモーターを動かす車です。エンジンを併用しないため、走行時に排気ガスを出さない点が特徴です。PHEVは、外部から充電できる電池とエンジンを併用する車です。FCVは、水素と酸素の化学反応で発電する燃料電池を使い、モーターで走る車です。
| 種類 | 正式な意味 | 走る仕組み | 確認したい使い方 |
|---|---|---|---|
| BEV | 電気自動車 | 電池の電気でモーターを動かす | 充電時間と航続距離 |
| PHEV | プラグインハイブリッド車 | 電池とエンジンを併用し、外部充電もできる | 電気走行と燃料走行の使い分け |
| FCV | 燃料電池自動車 | 水素で発電し、モーターを動かす | 水素ステーションの利用しやすさ |
見落としやすいのは、補助制度の対象が常にこの3分類だけとは限らないことです。令和7年度補正予算のタクシー、バス向け公募要領では、BEV、PHEV、FCVに加えて、水素内燃機関型自動車も対象自動車として列挙されています。これは、水素を燃料にする点はFCVと近くても、燃料電池で発電するのではなく、内燃機関を使って走る車です。1
同じ電動車でも向いている場面の違い
BEVは、営業所や車庫で充電でき、走行ルートが比較的読みやすい用途と相性があります。例えば、毎日同じ範囲を回る配送車や、車庫に戻って夜間に充電できる車両では、運用計画を立てやすくなります。
PHEVは、外部充電を使いながら、必要に応じてエンジンでも走れる点が特徴です。すべてを電気だけでまかなう前提ではなく、充電環境が十分でない地域や、走行距離が日によって変わる用途で検討されやすい車両です。FCVは、水素を短時間で補給できる可能性がある一方で、水素を入れられる場所が限られるため、導入前に運行エリアとの相性を確認する必要があります。
商用車では、車両そのものの価格だけでなく、止めずに使えるかが大きな判断材料になります。BEVは充電時間を業務の外側に置けるか、PHEVは燃料走行に頼りすぎない運用ができるか、FCVは水素の補給場所まで含めて計画できるかが重要です。補助金は導入の負担を軽くする制度ですが、毎日の運用に合わない車両を選ぶと、補助後の負担が残ります。
特に、車両を複数台まとめて更新する場合は、最初の1台だけで判断しない方がよいです。充電口数、乗務員の交代時間、予備車の使い方まで含めて見ると、車両の種類ごとの向き不向きがよりはっきりします。
BEV、PHEV、FCVは、環境性能の優劣を一列に並べる言葉ではありません。どのエネルギーを積み、どの仕組みで走るかを分ける分類です。補助金では、この分類に加えて、車両用途、事前登録、申請者、充電設備との関係を合わせて確認します。
電動化促進補助金で見る対象車両の範囲
トラック、タクシー、バスが中心
環境省の商用車等の電動化促進事業は、商用車や建設機械の電動化を支援する制度です。商用車では、トラック、タクシー、バスが中心に扱われ、BEV、PHEV、FCVなどの車両と、車両と一体的に導入する充電設備が支援対象に含まれます。環境省は、運輸部門が日本の二酸化炭素排出量の約2割を占めることを背景に、商用車の電動化を進める必要があると説明しています。23
ただし、同じ電動車でも、個人が乗る乗用車向けの補助金と、事業者が使う商用車向けの補助金は別に考える必要があります。タクシーやバスでは、旅客運送に使う車両であること、バス車両では乗車定員などの条件も関係します。制度名に電動化とあるからといって、すべての電動車が一律に対象になるわけではありません。1
事前登録された車両かどうか
補助金で最初に確認したいのは、車両が補助対象車両として事前登録されているかです。環境省も、令和7年度補正予算の対象車両について、トラック、タクシー、バスなどの事前登録受付を案内しています。4 タクシー、バス向けの執行団体である公益財団法人日本自動車輸送技術協会は、補助対象となるタクシーやバスについて、事前に車両情報を審査し、車両型式等と補助基準額を公開すると案内しています。5
この仕組みがあるため、BEVだから対象、FCVだから対象と単純には判断できません。車名、型式、用途、登録時期などが制度上の条件と合っているかを確認する必要があります。
対象車両一覧を確認するときは、車名だけで判断しないことも重要です。同じブランド名でも、型式、乗車定員、用途、登録時期が違えば扱いが変わる可能性があります。見積書や発注書に記載された車名、通称名、型式が一覧の情報と合っているかを確認し、販売店やリース会社にも補助金申請で使う表記を確認しておくと、差し戻しを防ぎやすくなります。
トラックについても、一般財団法人環境優良車普及機構が執行団体として情報を出しており、車両と充電設備で確認先が分かれます。63
補助額を見る前に外せない確認事項
基準額は車両ごとに公表
補助金を検討するとき、多くの人がまず金額に目を向けます。しかし、商用車の電動化促進補助金では、最初に見るべきなのは上限額の大きさではなく、対象車両一覧に載っているかです。タクシー、バス向けの公募要領では、自動車の基準額はJATAのホームページ上の補助対象車両一覧に記載され、その基準額が補助金の上限額になるとされています。1
ここで注意したいのは、補助金額が車両価格だけで機械的に決まるわけではないことです。公募要領では、値引きされていると判断される場合、補助対象車両一覧に記載された基準額から、値引額に応じた金額を差し引いた額を補助金額にするとしています。つまり、車両本体価格、値引き、補助対象経費の関係を見ないと、実際に受けられる金額は判断できません。1
充電設備との関係
BEVやPHEVを導入する場合は、車両だけでなく充電設備も重要です。タクシー、バス向けの公募要領では、充電設備等として急速充電器、普通充電器、V2H、外部給電器、高圧受電設備、バッテリー交換式電気自動車に必要な設備などが挙げられています。なお、充電設備は、対象車両と一体的に導入される場合に限られるという考え方が示されています。1
トラック向けの情報でも、充電設備は申請者の敷地などにトラックの充電に必要な設備として一体的に導入すること、車両数が充電口数以上であることなどが示されています。車両だけを先に決めてしまうと、充電設備の設置場所、受電容量、工事時期が後から問題になることがあります。電動車の導入では、車両と設備を別々に考えず、運用全体で見た方が安全です。7
導入前に決めておく実務の順番
使い方から車両を選ぶ
車両の種類を比べるときは、最初に運行の実態を決めることが大切です。1日の走行距離、車庫に戻る時間、充電や水素充てんに使える場所、繁忙期の運行本数を確認すると、BEV、PHEV、FCVのどれが合いやすいかが見えてきます。
例えば、車庫に長く戻る時間があり、決まった範囲を走る業務ならBEVを検討しやすくなります。長距離や突発的な運行が多く、充電だけでは不安が残る場合はPHEVが候補になります。水素供給の場所と運行ルートが合う場合はFCVも選択肢に入ります。ただし、どの種類でも、補助金の対象になるかどうかは公式の一覧と公募要領で確認する必要があります。
申請前に確認するチェックリスト
補助金の申請では、車両選びと同じくらい手続きの順番が重要です。タクシー、バス向けでは、車両を購入する前に行う通常申請と、補助対象車両を購入後に行う実績申請が分かれています。充電設備等については、実績申請ではなく通常申請の扱いになるため、発注や工事のタイミングを誤ると対象外になるおそれがあります。1
- 車両が補助対象車両一覧に掲載されているか
- 車名、通称名、型式が一覧と一致しているか
- 登録時期や納車時期が公募要領の範囲に入るか
- 充電設備を導入する場合、交付決定前に発注や工事をしていないか
- リースの場合、申請者や所有者の条件が合っているか
また、補助金は交付されて終わりではありません。タクシー、バス向けの公募要領では、補助金で取得した車両や充電設備を、処分制限期間内に譲渡、貸付、担保設定、廃棄などをする場合、事前の承認が必要になると説明されています。さらに、事業完了後もCO2削減効果の報告や、補助事業で導入したことを示す表示が求められます。補助対象車両を選ぶ段階で、導入後の管理まで見込んでおくことが大切です。1
車両選びでは、先に補助額を探すより、業務で使える車両かを確認する順番が安全です。航続距離、充電や水素充てんの場所、日々の運行時間、車両一覧への掲載、申請期限を一つずつ確認すると、制度の対象外になるリスクを減らせます。
まとめ、種類の違いは補助対象確認の入口
最後に残したい判断軸
BEV、PHEV、FCVの違いは、電動車を選ぶときの入口です。BEVは電池で走る車、PHEVは電池とエンジンを併用できる車、FCVは水素を使う燃料電池で発電して走る車です。まずはこの違いを押さえると、運行ルートや設備との相性を考えやすくなります。
ただし、補助金で本当に重要なのは、略称ではなく制度上の対象確認です。対象車両一覧に載っているか、用途や登録時期が合っているか、充電設備を一体的に導入する場合の条件を満たすか。これらを確認してから補助額を見ると、導入計画のズレを減らせます。
電動化促進補助金は、車両価格を下げるためだけの制度ではありません。事業で使う車を脱炭素化し、継続して運用できる形に整えるための制度です。BEV、PHEV、FCVの違いを理解したうえで、自社の運行に合う車両と申請条件を照らし合わせることが、最初の一歩になります。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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