卵子凍結の助成金について、国のモデル事業の内容が見えてきました。助成額だけを見ると上限20万円という印象が先に立ちますが、実際には対象年齢、婚姻状況、指定医療機関、調査協力などの条件を満たす必要があります。
今回の制度は、単なる費用補助ではなく、卵子凍結の課題を検証するためのモデル事業という性格を持っています。つまり、受け取れる金額だけでなく、どの順番で手続きするか、どの自治体で実施されるかを確認することが大切です。
この記事では、卵子凍結の助成金について、国の制度と自治体制度の違い、受け取れる助成額、申請の流れを制度に詳しくない人にもわかるように整理します。

卵子凍結助成金の全体像
助成だけでなく検証も目的
国の卵子凍結助成は、こども家庭庁の母子保健医療対策総合支援事業の中に置かれた、卵子凍結による妊孕性(妊娠する力)温存等に係る課題検証のためのモデル事業です。実施主体は都道府県で、希望する都道府県が事業を行い、自治体が指定する医療機関で実施した卵子凍結などの費用を助成する形です。こども家庭庁の実施要綱では、事業の目的として、卵子凍結に関するデータを集め、課題を検証することが明記されています。1
ここで押さえたい意外な点は、助成金をもらって終わりではないことです。実施要綱では、卵子凍結後おおむね10年間、年次調査に参加することが前提とされています。年次調査とは、凍結した後の状況を一定期間確認する調査です。助成を受ける代わりに、制度の検証にも協力する仕組みになっていると考えると理解しやすくなります。1
国のモデル事業と自治体制度の違い
卵子凍結の助成制度は、国のモデル事業だけでなく、すでに一部の自治体が独自に始めている制度もあります。東京都は制度開始時に、都内在住の18歳から39歳までの女性を対象に、卵子凍結を実施した年度の上限20万円などを公表しました。大阪府は、早発卵巣不全の診断を受けた人や、府の助成を受けてAMH検査(抗ミュラー管ホルモン検査)を受け、数値などの条件を満たした人を対象に、卵子凍結費用を上限20万円まで助成する制度を案内しています。23
| 制度の種類 | 主な対象の考え方 | 凍結時の助成額 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 国のモデル事業 | 原則18歳以上36歳未満で婚姻、事実婚をしていない人など | 上限20万円 | 希望する都道府県で実施、指定医療機関と調査協力が前提 |
| 東京都の制度 | 制度開始時は都内在住18歳から39歳までの女性 | 凍結年度は上限20万円 | 説明会、登録医療機関、調査回答などが条件 |
| 大阪府の制度 | 早発卵巣不全の診断やAMH検査結果などの条件を満たす人 | 上限20万円 | すべての18歳から39歳が対象ではなく、医療上の条件がある |
卵子凍結の助成金は、全国どこでも同じ条件で自動的に使える制度ではありません。国のモデル事業は都道府県が実施主体になり、既存の自治体制度も対象年齢や医療上の条件が異なります。まずは自分の居住地で、国のモデル事業に参加しているか、独自制度があるかを確認する必要があります。
対象者と助成額の確認ポイント
原則18歳以上36歳未満、未婚が基本
国のモデル事業で、病気などの特別な条件に該当しない人が卵子凍結の助成を受ける場合、実施要綱では、卵子凍結実施時に原則として18歳以上36歳未満であり、婚姻や事実婚をしていないことが条件とされています。一般的には18歳から35歳までと説明されることが多いですが、制度文書では36歳未満という書き方です。年齢は、申し込み時ではなく、実際に未受精卵子の凍結保存を実施した日の年齢で確認されます。14
ただし、対象者は健康な未婚女性だけに限られているわけではありません。良性卵巣腫瘍の手術予定、遺伝性疾患、自己免疫疾患、過去の医療行為による卵巣予備能の低下、早発卵巣不全など、早く妊娠する力が下がる可能性のある人も対象になり得ます。対象年齢の上限も、該当する理由によって異なります。自分がどの分類に当たるかは、指定医療機関での診察や検査を通じて確認する流れです。1
上限20万円でも全額補助とは限らない
助成額は、卵子凍結について1回20万円が上限です。対象になる費用は、卵子凍結と初回の凍結保存に必要な医療保険適用外の費用です。一方で、差額ベッド代、食事療養費、文書料、初回を除く凍結保存の維持費用などは対象外とされています。上限20万円は、20万円が必ず振り込まれるという意味ではなく、実際に対象となる費用の範囲内で助成される上限額です。1
また、採卵したものの卵が得られなかった場合などは、上限10万円とされています。卵胞が発育しない、排卵が終わっていた、体調不良などで採卵準備中に中止した場合は対象外になる扱いも示されています。助成回数は、対象者一人につき通算1回までです。医療機関に支払った費用が制度上の対象になるかどうかは、領収書の金額だけでは判断できないため、治療前に費用項目を確認しておくことが大切です。1
申請の流れと必要な準備
講習会、指定医療機関、認定番号の順番
申請で最も重要なのは、治療より前に必要な手続きを済ませることです。国のモデル事業では、居住地の都道府県が実施する講習会などを受講し、アンケートに回答した上で、指定医療機関で検査や診察を受けます。その後、診断書や対象者認定申請書を都道府県へ提出し、対象者認定番号を取得する流れです。1
- 居住地の都道府県が行う講習会などを受講し、アンケートに回答する
- 指定医療機関で検査や診察を受け、対象に当たるか確認する
- 診断書や対象者認定申請書を都道府県に提出する
- 対象者認定番号を取得してから、指定医療機関で卵子凍結を実施する
- 医療機関の証明書や領収書などを添えて、費用助成を申請する
順番を間違えると、対象外になる可能性があります。こども家庭庁のQ&Aでは、都道府県知事による指定が行われていない医療機関で受けた治療費は、後からその医療機関が指定を受けた場合でも助成対象外とされています。すでに受診を考えている医療機関がある場合でも、指定医療機関かどうか、指定された日がいつかを確認してから進める必要があります。4
支払い年度内の申請と証明書
助成金の申請期限にも注意が必要です。国のモデル事業では、卵子凍結や凍結卵子を用いた生殖補助医療にかかる費用の支払い日の属する年度内に、都道府県知事へ申請するとされています。年度内とは、一般に4月から翌年3月までの区切りです。たとえば1月に支払った費用なら、原則として同じ年度末までの手続きが必要になります。4
申請時には、医療機関が交付する証明書、領収書、必要な申請書類などが必要になります。大阪府のように、住民票、婚姻していないことを証する書類、検査結果、医療機関作成の証明書、領収書、振込口座の写しなどを求める自治体もあります。必要書類は自治体ごとに異なるため、国の制度名だけで判断せず、居住地の申請ページで最新版を確認してください。3
申請の流れでつまずきやすいのは、先に医療機関で治療を始めてしまうことです。講習会、指定医療機関、対象者認定番号、証明書、年度内申請という順番を外すと、内容としては同じ卵子凍結でも助成対象外になる可能性があります。費用を支払う前に、自治体の案内と医療機関の指定状況を確認しましょう。
申請前に知っておきたい注意点
継続調査と情報提供への同意
国のモデル事業では、卵子凍結実施時のアンケート回答、臨床情報などの提供、凍結後おおむね10年間の年次調査への参加、凍結卵子の売買や第三者提供をしないことなどへの同意が求められます。年次調査に毎年参加することは、将来、凍結卵子を用いた生殖補助医療の助成を受ける際にも関係します。正当な理由なく年次調査への参加が得られない場合、都道府県は助成費用の返還を求めることができるとされています。1
つまり、助成金の申請は、個人の費用負担を軽くする手続きであると同時に、長期的な調査に参加する意思を示す手続きでもあります。個人情報の取り扱いは制度上配慮されるべきものですが、どの情報が共有されるのか、誰に共有されるのか、どのくらいの期間回答が必要なのかは、申請前に確認しておくと安心です。迷う場合は、自治体の窓口と指定医療機関の両方に確認しましょう。
妊娠を約束する制度ではないこと
卵子凍結は、将来の選択肢を残すための医療行為ですが、妊娠や出産を約束する制度ではありません。日本産科婦人科学会も、ノンメディカルな卵子凍結を考える人向けに、メリットだけでなくデメリットや採卵の方法を含む情報提供を行っています。年齢を重ねてからの妊娠や出産には母体と赤ちゃん双方のリスクが高くなることも説明しており、卵子凍結をすれば年齢に関するリスクがなくなるわけではありません。5
そのため、申請前に確認したいのは、助成額だけではありません。採卵に伴う身体的な負担、通院回数、保管料、将来凍結卵子を使う場合の費用、凍結した卵子を使わない可能性も含めて考える必要があります。制度を利用するかどうかは、自治体の条件に合うかだけでなく、自分の健康状態や将来の希望を医師と話し合った上で判断することが大切です。
まとめ
迷ったときの確認順序
卵子凍結の助成金で最初に見るべきなのは、国のニュースだけではなく、自分が住んでいる都道府県の最新案内です。国のモデル事業は都道府県が実施主体であり、既存の自治体制度も対象者や手続きが異なります。上限20万円という金額だけで判断すると、年齢、婚姻状況、医療上の条件、指定医療機関、調査協力、申請期限を見落としやすくなります。
確認の順番は、居住地の自治体で制度が実施されているか、対象年齢と条件に合うか、講習会や説明会が必要か、受診予定の医療機関が指定されているか、申請期限と必要書類は何か、という流れが基本です。卵子凍結は費用面だけでなく、医療面、生活面、将来の選択にも関わるテーマです。助成金は判断材料の一つとして活用し、制度の条件と医師からの説明を合わせて確認することが、後悔しない進め方になります。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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