高等教育の修学支援新制度は、大学や専門学校などの進学費用を支える国の制度です。大学無償化という言葉で語られることがありますが、実際には授業料をすべて消す制度ではなく、授業料等減免と給付奨学金を組み合わせて負担を軽くする仕組みです。
2025年度からは多子世帯への支援も広がり、制度の対象は以前より広くなっています。ただし、世帯の状況、学校の種類、通学形態によって支援内容は変わります。この記事では、初めて制度を調べる人が迷いやすいポイントを、申請前に確認する順番まで絞って整理します。

高等教育の修学支援新制度で支えられる費用
制度開始後に進学率が変わった背景
まず押さえたいのは、この制度が単なる奨学金制度ではなく、進学の機会を広げるための仕組みとして作られたことです。文部科学省は、高等教育の修学支援新制度を、授業料と入学金の免除または減額、返還を要しない給付型奨学金により、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を支援する制度として説明しています。制度は2020年4月に始まりました。1
ここでいう大学等には、大学だけでなく短期大学、高等専門学校の4年生と5年生、専門学校も含まれます。大学院の進学費用はこの制度とは別に確認が必要です。
意外に見落とされやすいのは、制度開始後の変化です。こども家庭庁の令和7年度予算案資料では、令和5年度に約34万人へ支援を実施し、住民税非課税世帯の進学率は2018年度の40%から2023年度の69%へ上がったとされています。全世帯の大学等への進学率84%とはまだ差がありますが、低所得世帯の進学機会を広げる制度として一定の役割を持っていることが分かります。2
授業料等減免と給付奨学金の違い
制度の中身は、大きく2つに分かれます。1つ目は、学校に納める授業料や入学金を減らす授業料等減免です。2つ目は、学生生活に必要な費用を支える給付奨学金です。給付奨学金は返済不要ですが、貸与奨学金のように卒業後に返すお金とは性質が違います。
| 支援の種類 | 支える費用 | 主な窓口 | 見落としやすいこと |
|---|---|---|---|
| 授業料等減免 | 授業料、入学金 | 進学先または在籍校 | 学校が制度の対象校である必要がある |
| 給付奨学金 | 生活費など | 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) | 支援区分と通学形態で月額が変わる |
JASSOは、授業料と入学金の免除または減額は確認大学等が行い、給付型奨学金の支給はJASSOが行うと説明しています。つまり、制度を使うときは、学校への申請とJASSOの手続きがつながっていると考えると理解しやすくなります。3
高等教育の修学支援新制度は、現金が一括で振り込まれる制度ではありません。授業料や入学金は学校側で減免され、給付奨学金は学生生活の支えとして支給されます。大学無償化という言葉だけで判断せず、学費のどの部分が減るのか、生活費の支援はいくらかを分けて見ることが大切です。
対象者を決める3つの条件
収入基準は年収だけで決まらない
対象になるかどうかを考えるとき、多くの人は年収だけを見ようとします。しかし、JASSOの家計基準では、提出されたマイナンバーにより、対象年度の住民税情報から算出される支給額算定基準額で判定されます。年収の目安はありますが、世帯構成、控除、保険料、住民税の情報によって結果が変わるため、同じ年収でも対象になる人とならない人が出ることがあります。4
支援区分は、第1区分から第4区分までに分かれます。第1区分は市町村民税所得割が非課税であることが基本で、第2区分、第3区分、第4区分は支給額算定基準額の範囲で判定されます。第4区分は中間所得層への拡充で使われる区分で、多子世帯など一定の条件と組み合わせて見る必要があります。
学ぶ意欲と学業状況の確認
この制度は、家計だけで自動的に決まるものではありません。JASSOは、世帯収入の基準を満たしていれば、成績だけで判断せず、学ぶ意欲があれば支援を受けられると説明しています。一方で、進学後は学修状況も確認されるため、入学後にまったく学業を続けられない状態になれば、支援の停止や対象外につながる可能性があります。3
在学採用の学力基準を見ると、1年次では高校等の評定平均値や入学者選抜試験の成績のほか、学修計画書等で学修意欲が確認できることも基準に含まれます。2年次以上では、GPAが上位2分の1の範囲に入ること、または標準単位数以上を修得し、学修意欲が確認できることなどが示されています。5
いくら支援されるのか
授業料、入学金は学校種ごとに上限
大学無償化という言葉で誤解されやすいのは、すべての学費が無条件でゼロになるわけではないことです。授業料等減免には上限額があります。多子世帯支援のページでは、大学の場合、国公立は入学金28万円、授業料54万円、私立は入学金26万円、授業料70万円が上限として示されています。短期大学、高等専門学校、専門学校でも、学校種ごとに上限が分かれています。6
ここで重要なのは、授業料以外の費用です。施設設備費、教材費、実習費、通学費、ひとり暮らしの初期費用などは、学校や学部によって負担が残ることがあります。授業料等減免で大きく軽くなる部分はありますが、進学費用全体を見積もるときは、学校に納める総額と生活費を分けて確認する必要があります。
給付奨学金は通学形態で月額が変わる
給付奨学金の月額は、支援区分、学校の設置者、通学形態によって変わります。たとえば私立の大学、短期大学、専修学校専門課程では、第1区分の自宅通学が月額38,300円、自宅外通学が月額75,800円と示されています。国公立の場合は、同じ第1区分でも大学、短期大学、専修学校専門課程で自宅通学が月額29,200円、自宅外通学が月額66,700円です。7
この差は、ひとり暮らしをする学生の生活費を考慮しているためです。ただし、自宅外通学として扱われるには、生計維持者と別居していることや家賃を支払っていることなど、別途確認が必要になります。通学形態を自己判断で決めず、学校から案内される書類やJASSOの説明を確認することが大切です。
多子世帯への拡充で変わったこと
所得制限なしでも給付奨学金は別扱い
2025年度から、多子世帯に属する学生等は、所得制限なく授業料等減免を受けられるようになりました。文部科学省も、令和7年度から多子世帯の学生等について、所得制限なく、国が定める一定額まで大学等の授業料や入学金を無償とすることを示しています。1
ただし、ここでいう所得制限なしは、主に授業料等減免の話として理解する必要があります。JASSOは、収入が第4区分を超える人や、資産の合計額が5,000万円以上3億円未満の人でも、多子世帯に属していれば多子世帯の支援区分になる一方、この区分では給付奨学金は支給されないと説明しています。6
多子世帯の拡充で、授業料や入学金の支援は大きく広がりました。ただし、給付奨学金まで同じように受け取れるとは限りません。授業料等減免の対象か、給付奨学金の対象かを分けて確認すると、期待していた金額との差を避けやすくなります。
扶養されている子どもの数の見方
多子世帯かどうかは、単に兄弟姉妹が3人いるかだけで決まるわけではありません。JASSOは、多子世帯に属している条件として、申込時に申告した生計維持者の扶養親族のうち子どもに該当する者の数と、生計維持者全員の住民税情報における扶養親族の数の合計のうち、小さい方が3以上であり、本人が生計維持者に扶養されている場合と説明しています。6
たとえば、3人きょうだいでも、上の子が就職して扶養から外れている場合は、判定が変わることがあります。逆に、住民税情報が確定した後に新たに生まれた子どもがいる場合などは、加算の扱いが示されています。家族の人数ではなく、扶養の情報で確認されることを押さえておきましょう。
申請前に確認したい順番
学校、家計、通学形態を順番に確認
制度を調べるときは、先に支援額だけを見ると混乱しやすくなります。最初に確認すべきなのは、進学予定または在籍中の学校が対象校かどうかです。文部科学省の支援対象校一覧では、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校の対象校を検索できます。対象校でなければ、本人が家計基準を満たしていても制度を使えない場合があります。8
次に、家計基準と多子世帯の判定を確認します。年収の目安だけで決めつけず、JASSOの進学資金シミュレーターや学校の案内を使って、おおよその該当可能性を見ます。そのうえで、自宅通学か自宅外通学か、学校に納める費用のうち何が減免対象なのかを確認すると、支援後の負担額が見えやすくなります。
- 進学予定校または在籍校が制度の対象校か確認する
- 世帯の住民税情報と扶養状況を確認する
- 自宅通学か自宅外通学かを学校の案内に沿って確認する
- 予約採用または在学採用の申請時期を学校で確認する
申請の窓口は、進学前なら高校等を通じた予約採用、進学後なら大学等を通じた在学採用が中心になります。給付奨学金の申込みと授業料等減免の申請が関係するため、片方だけ確認して終わらせないことが大切です。学校ごとに締切や提出書類が違うため、公式サイトだけでなく、学校から配られる案内も必ず確認しましょう。
まとめ、制度を使えるか確認するための考え方
大学無償化という言葉だけで判断しない視点
高等教育の修学支援新制度は、授業料等減免と給付奨学金を組み合わせて、進学や在学中の負担を軽くする制度です。覚えておきたいのは、授業料や入学金の減免、返済不要の給付奨学金、対象者判定の条件を分けて見ることです。
特に多子世帯への拡充により、所得制限なしで授業料等減免を受けられるケースが広がりました。一方で、給付奨学金の有無や月額は別に判定されるため、大学無償化という言葉だけで家計計画を立てると、生活費や対象外費用を見落とすおそれがあります。
まずは、対象校かどうかを確認し、次に家計基準と扶養状況、最後に通学形態と支援額を確認する。この順番で見れば、制度の全体像をつかみやすくなります。進学費用を考えるときは、制度で減る費用と、家庭で準備が必要な費用を分けて整理することが、現実的な第一歩になります。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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