大学進学の費用を考えるとき、子どもが3人以上いる家庭では、多子世帯向けの大学無償化が大きな判断材料になります。制度のポイントは、2025年度から多子世帯の学生について、所得制限なく授業料と入学金の減免を受けられるようになったことです。ただし、どの学校でも学費がすべてゼロになる制度ではありません。
この記事では、多子世帯の大学無償化について、対象条件、優遇措置の中身、申込み前に確認したい注意点を整理します。進路を決める前に、家庭でどこまで負担が下がるのかを見積もるための材料にしてください。

大学無償化で最初に確認したい誤解
完全ゼロではなく上限までの減免
多子世帯の大学無償化という言葉だけを見ると、授業料が全額なくなる制度だと受け取りやすいかもしれません。実際には、文部科学省は令和7年度から、多子世帯の学生について、大学等の授業料と入学金を国が定める一定額まで無償にすると説明しています。ここが最初の注意点です。1
たとえば、国公立大学の授業料であれば、国の減免上限と実際の授業料が近いため、家計の負担はかなり小さくなります。一方で、私立大学や専門学校では、学校ごとの授業料が上限額を超えることがあります。その場合、上限を超えた差額や施設費などは家庭の負担として残ります。
この制度を使うときに大切なのは、無償化という名前だけで判断しないことです。確認すべきなのは、進学先の学費総額と、制度で減免される上限額の差です。授業料だけでなく、入学金、施設費、実習費、教材費、通学費も含めて見ると、進学後の資金計画が立てやすくなります。
2025年度から広がった所得制限なしの支援
高等教育の修学支援新制度は、2020年4月に始まった制度です。大学、短期大学、高等専門学校、専門学校への進学を支えるため、授業料と入学金の減免、返還不要の給付型奨学金を組み合わせています。文部科学省は、2025年度から多子世帯の学生等に対して、所得制限なく授業料と入学金を一定額まで減免するとしています。1
ここで混同しやすいのが、年収の目安です。多子世帯については、2025年度から所得制限なしの扱いです。つまり、制度の中心は、世帯年収が特定の金額まで緩和されたという理解ではなく、子どもを3人以上扶養している世帯について、所得制限を外したという理解に近いです。
多子世帯の大学無償化は、授業料と入学金を国の上限額まで減免する制度です。所得制限なしという点は大きな優遇措置ですが、学校に支払う費用がすべて消えるわけではありません。進学先ごとの学費と減免上限を並べて確認することが、家計負担を見誤らないための第一歩です。
多子世帯として認定される対象条件
子ども3人以上の数え方
多子世帯として扱われるかどうかは、単に子どもが3人いるという感覚だけでは決まりません。日本学生支援機構は、多子世帯に属しているとは、申込者本人が生計維持者に扶養されており、かつ一定の方法で数えた子どもの数が3以上である場合だと説明しています。2
判定では、申込時に入力した扶養親族のうち生計維持者の子どもに該当する人数と、住民税情報における扶養親族の数が見られます。両方の情報を使うため、家庭で考える人数と、制度上の人数がずれることがあります。たとえば、上の子が就職して扶養から外れた場合、きょうだいは3人でも、制度上は多子世帯に当たらなくなる可能性があります。
一方で、判定に使う時点によっては、家族の現在の状況と制度上の判定が一時的にずれることもあります。日本学生支援機構の2025年度適格認定では、在籍報告等で入力された2024年12月31日時点の扶養親族や、2025年度の市町村民税情報が使われると案内されています。3 そのため、年の途中で家族の扶養状況が変わった場合は、学校の奨学金窓口で扱いを確認するのが安全です。
扶養されている本人という条件
もう一つ見落としやすいのが、申込者本人の扱いです。多子世帯支援では、申込者本人が生計維持者に扶養されていることが条件になります。生計維持者とは、学費や生活費を負担する人のことで、一般的には父母が想定されています。4
つまり、きょうだいの人数だけでなく、本人が扶養に入っているかが重要です。子どもが3人いる家庭でも、進学する本人がすでに扶養から外れている場合は、制度上の対象にならない可能性があります。逆に、本人を含めて扶養されている子どもが3人以上であれば、多子世帯として判定される余地があります。
この条件は、家族の実感とずれやすい部分です。家計では同じ家族として支えていても、制度は住民税情報や申告内容をもとに判断します。申込みの前に、誰が扶養親族として申告されているかを確認しておくと、申請後の認定結果に驚くリスクを減らせます。
優遇措置の中身と対象となる学校
授業料と入学金の減免上限
多子世帯に該当すると、所得制限なく授業料と入学金の減免を受けられます。日本学生支援機構は、学校種別ごとの上限額を示しており、金額は国公立か私立かで変わります。2
| 学校種別 | 国公立の入学金 | 国公立の授業料 | 私立の入学金 | 私立の授業料 |
|---|---|---|---|---|
| 大学 | 28万円 | 54万円 | 26万円 | 70万円 |
| 短期大学 | 17万円 | 39万円 | 25万円 | 62万円 |
| 高等専門学校 | 8万円 | 23万円 | 13万円 | 70万円 |
| 専門学校 | 7万円 | 17万円 | 16万円 | 59万円 |
この表を見ると、大学だけでなく、短期大学、高等専門学校、専門学校も対象になることが分かります。特に私立大学では授業料の上限が70万円です。年間授業料が70万円を超える場合、超えた部分は家庭で負担する必要があります。無償化の効果は大きいものの、進学先の学費によって残る負担は変わります。
また、給付型奨学金は別に判定されます。所得や資産の状況によっては、授業料等減免は受けられても、給付型奨学金の支給額が0円となる区分があります。授業料の減免と、生活費に使える給付型奨学金は、同じ制度の中にありますが、家計に与える意味は分けて考える必要があります。
専門学校は対象、大学院は別制度
対象となる学校にも注意が必要です。文部科学省の説明では、高等教育の修学支援新制度は、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を対象にしています。専門学校を進路に考える場合も、対象機関として確認を受けている学校であれば、制度の候補になります。1
一方で、大学院修士課程については、同じ多子世帯向けの授業料等減免として読むのは慎重にした方がよいです。日本学生支援機構には、大学院修士段階向けの授業料後払い制度がありますが、これは在学中に授業料相当額などの支援を受け、卒業後の所得等に応じて返還する仕組みです。5 返還不要の減免とは性質が異なります。
進路選択では、大学、専門学校、大学院をひとまとめにしないことが大切です。学部や専門学校の支援と、大学院修士段階の後払い制度では、卒業後の負担が変わります。学校種別ごとに、使える制度の名前、申込み先、返還の有無を確認しましょう。
申込み前に見るべき手続きの流れ
進学前は給付奨学金への申込み
多子世帯の授業料等減免を受けたい場合、進学前の予約採用では、日本学生支援機構の給付奨学金に申し込む必要があります。日本学生支援機構は、授業料等減免の申込希望者も、給付奨学金に申し込むよう案内しています。申込みは、在学している高校などを通じて行うのが基本です。6
ここで注意したいのは、授業料等減免だけを受けたい場合でも、手続き上は給付奨学金の申込みが関係することです。多子世帯の所得状況によっては、給付奨学金の支給額が0円になる場合があります。それでも、授業料等減免を受けるには、制度上の申込みと認定が必要になります。
進学後に申し込む在学採用の場合は、在籍している学校の奨学金窓口に申し出ます。学校によって締切や提出物が異なるため、合格後や入学後に落ち着いてから確認するのでは遅い場合があります。進学先が決まったら、学校の奨学金ページと窓口案内を早めに確認しておきましょう。
住民税、扶養、資産の確認
申込み前に家庭で確認したい情報は、制度名よりも具体的です。日本学生支援機構は、奨学金の採否や支給額の判定に、申込者本人と生計維持者全員の住民税情報を使うと案内しています。2026年度春の在学採用では、2025年度の住民税情報、つまり2024年1月から12月の所得に基づく情報を確認する流れです。4
申込み前には、次の点を家庭で確認しておくと、学校や日本学生支援機構への相談がしやすくなります。
- 生計維持者が誰になるか
- 扶養親族として申告されている子どもの人数
- 住民税情報や課税証明書の内容
- 進学先が修学支援新制度の対象校かどうか
資産の確認も忘れにくいところです。多子世帯の授業料減免では、資産額を判定するときに、奨学生本人と生計維持者の資産額の合計が3億円未満かどうかが確認されます。対象となる資産には、現金、預貯金、有価証券などが含まれ、不動産は対象外とされています。3
申込みで大切なのは、制度に当てはまりそうかを感覚で判断しないことです。多子世帯の判定には、扶養親族の人数、住民税情報、本人が扶養されているか、資産額などが関係します。特に、上の子の就職や扶養の変更がある家庭では、判定年度によって結果が変わることがあります。
まとめ、進路選びで使う制度の見方
家計負担を見積もる順番
多子世帯の大学無償化は、子どもが3人以上いる家庭にとって大きな優遇措置です。特に、2025年度から所得制限なしで授業料と入学金の減免を受けられるようになったことは、進路選択の幅を広げる可能性があります。ただし、制度を正しく使うには、無償化という言葉をそのまま受け取らない姿勢が必要です。
最初に確認するのは、進学先の学校種別と学費です。次に、国の減免上限と実際の授業料の差を見ます。そのうえで、本人が生計維持者に扶養されているか、扶養されている子どもの数が3以上か、住民税情報や資産要件に大きな問題がないかを確認します。
大学や専門学校の費用は、授業料だけで決まりません。施設費、教材費、通学費、一人暮らしの費用などもあります。多子世帯の支援で授業料負担が下がっても、家計全体の見通しを作ることは欠かせません。制度は進路を決めるための強い味方ですが、最終的には、学校の学費表、奨学金窓口の案内、家庭の扶養状況を合わせて確認することが重要です。
子どもが3人以上いる家庭では、進学をあきらめる前に、この制度を一度確認する価値があります。申込みの入口は分かりにくく見えますが、確認すべき点は、対象校、扶養人数、申込み時期、減免上限の4つに絞れます。早めに情報をそろえれば、進路選びは感覚ではなく、具体的な負担額を見ながら考えられます。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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