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ブログ|補助金・税制ガイド

オープンイノベーション促進税制は誰が使う制度か? スタートアップ投資の要件と手続きの流れ

スタートアップに出資する会社は、どこまで要件を確認すべきか。新規出資型とM&A型の違い、協業の実態、令和8年度改正の注意点、証明書申請から確定申告までの流れを整理します。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年5月29日更新日: 2026年6月1日
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目次

  • 制度の主役は出資する会社
  • 所得控除の仕組みと2つの型
  • 対象になるための要件
  • 手続きの流れ
  • 令和8年度改正で見る注意点
  • まとめ
補助金フラッシュ 事業計画

オープンイノベーション促進税制は、名前だけを見るとスタートアップを支援する制度に見えます。たしかに資金を受けるのはスタートアップですが、税制上のメリットを受ける主役は出資する会社です。
この制度を使うには、出資額だけでなく、協業の中身、株式の取得方法、保有予定、証明書申請の流れまで確認する必要があります。単なる投資や、後から理由を整えるだけの案件では、制度の趣旨から外れるおそれがあります。
この記事では、オープンイノベーション促進税制の基本的な仕組み、スタートアップ側と出資側の要件、手続きの流れを、初めて確認する人にも分かるように整理します。

目次

  • ●制度の主役は出資する会社
  • スタートアップは制度の受け皿
  • ただの投資ではなく協業が前提
  • ●所得控除の仕組みと2つの型
  • 取得価額の一部を所得から差し引く仕組み
  • 新規出資型とM&A型の違い
  • ●対象になるための要件
  • 出資側とスタートアップ側の確認
  • 株式取得の形と目的の確認
  • ●手続きの流れ
  • 事前相談から証明書交付申請
  • 確定申告とその後の管理
  • ●令和8年度改正で見る注意点
  • マイノリティM&Aの対象化
  • 最新資料で確認したい実務上の差
  • ●まとめ
  • 確認の順番
オープンイノベーション促進税制は誰が使う制度か? スタートアップ投資の要件と手続きの流れ

制度の主役は出資する会社

スタートアップは制度の受け皿

最初に押さえたいのは、オープンイノベーション促進税制は、スタートアップが直接お金を受け取る補助金ではないということです。制度を使うのは、スタートアップに出資する国内の事業会社や、一定の要件を満たす国内CVC(コーポレートベンチャーキャピタル、事業会社が関与する投資組織)です。国税庁の説明でも、青色申告書を提出する対象法人が特定株式を取得し、一定額を特別勘定として経理した場合に損金算入できる制度として整理されています。1

つまり、スタートアップは制度の中心に見えても、税務上の適用を受ける主体ではありません。出資する会社が、なぜそのスタートアップの技術や事業と組むのかを説明し、経済産業大臣の証明書を取得し、法人税の申告に反映する流れになります。ここを取り違えると、条件を満たす株式取得なのか、単なる投資なのかの判断があいまいになります。

ただの投資ではなく協業が前提

この制度の目的は、外部の技術や事業モデルを取り込み、出資する会社の新規事業や生産性向上を進めることです。経済産業省の新規出資型ガイドラインでは、オープンイノベーション要件として、高い生産性が見込まれる事業または新たな事業の開拓を目指すこと、スタートアップの経営資源が出資側に不足し革新的であること、出資側からスタートアップにも必要な協力を行うことが示されています。2

例えば、製造業の会社が、検査工程を自動化するスタートアップに出資する場合を考えます。出資側が工場データや実証環境を提供し、スタートアップの技術を使って新しい検査サービスを作るなら、協業の説明がしやすくなります。一方、将来の値上がりや配当だけを狙うなら、制度の趣旨とは合いません。

ポイント

この制度の出発点は、節税できる投資先を探すことではありません。先に確認すべきなのは、自社がどの事業を伸ばしたいのか、そのためにスタートアップのどの技術や人材が必要なのか、自社は相手に何を提供できるのかです。税制は、その協業を後押しする仕組みとして考えると理解しやすくなります。

所得控除の仕組みと2つの型

取得価額の一部を所得から差し引く仕組み

オープンイノベーション促進税制は、税額そのものを直接差し引く税額控除ではなく、所得から一定額を差し引く所得控除の制度です。所得とは、法人税を計算する前の利益に近いものです。たとえば対象株式の取得価額の25%を所得控除できる場合、税額が25%分そのまま減るのではなく、課税対象となる所得をその分だけ小さくするイメージです。

所得控除を受けるには、取得株式の取得価額の一定割合を特別勘定として経理する必要があります。特別勘定とは、後で売却や配当などが起きたときに、過去に控除した金額を管理するための区分です。国税庁も、譲渡その他の一定の取崩し事由に該当した場合は、その事由に応じて特別勘定を取り崩し、益金に算入すると説明しています。1

新規出資型とM&A型の違い

制度には、大きく分けて新規出資型とM&A型(合併や買収を使って株式を取得する類型)があります。新規出資型は、スタートアップが新しく発行する株式を、出資側が現金の払込みにより取得する場面です。M&A型は、既存株主から発行済株式を取得し、スタートアップの成長に資するM&Aを行う場面です。経済産業省のM&A型ガイドラインでは、発行済株式の取得が対象になる点が強調されています。3

種類対象株式主な場面確認したいポイント
新規出資型新しく発行される株式共同開発や新規事業のために資金を入れる場合現金払込み、出資額、3年以上の保有予定、協業の実態
M&A型既存株主から取得する発行済株式スタートアップを子会社化する、または段階的に支配を強める場合取得割合、取得額、5年以上の保有予定、成長投資や事業成長
令和8年度改正後の新枠50%以下の発行済株式3年以内に過半数取得が見込まれる段階取得取得価額の20%枠、3年以内の過半数取得見込み

令和8年度税制改正では、M&A型について、3年以内に議決権の過半数を有することが見込まれる50%以下の発行済株式取得も対象に加えられました。財務省の大綱では、この新枠について取得価額の20%以下の金額を特別勘定として経理した場合に損金算入できるとされています。4

対象になるための要件

出資側とスタートアップ側の確認

出資側は、青色申告書を提出する法人であり、スタートアップとのオープンイノベーションを目指す法人であることが前提です。株式会社だけでなく、一定の相互会社、中小企業等協同組合、農林中央金庫、信用金庫なども対象に含まれます。CVCを通じる場合もありますが、国内の組合であることや出資割合などの要件を満たす必要があります。2

スタートアップ側にも要件があります。典型的には、未上場で、既に事業を開始しており、設立10年未満である会社が想定されます。一定の場合には設立15年未満まで対象になることがありますが、研究開発費率や赤字などの条件を伴います。経済産業省のM&A型ガイドラインでは、同省が個別にスタートアップ企業を認定するわけではないとも説明されています。3

株式取得の形と目的の確認

新規出資型では、資本金の増加を伴う現金出資により、スタートアップの新規発行株式を取得することが基本です。経済産業省のガイドラインでは、一定額以上の現金払込み、3年以上の保有予定、純投資等を目的としないことなどが出資要件として示されています。現行ガイドラインでは、国内スタートアップへの出資額について、大企業は1件あたり1億円以上、中小企業は1,000万円以上、海外スタートアップは一律5億円以上とされています。2

ただし、令和8年度改正では一部の下限額が見直されています。財務省の大綱では、中小企業者以外の法人が取得する内国法人株式について、新規出資型の取得価額要件を2億円以上に引き上げ、過半数取得のM&A型は7億円以上、50%以下の段階取得の新枠は3億円以上とする内容が示されています。4 そのため、実際に使う場合は、出資日、株式の種類、取得割合に応じて、最新のガイドラインや税理士の確認を挟むことが重要です。

手続きの流れ

事前相談から証明書交付申請

手続きでは、税務申告だけを見ていても足りません。経済産業省のガイドラインでは、新規案件の場合、必ず事前相談を行うこととされています。事前相談では、案件概要スライドをもとに、オープンイノベーション要件などが確認されます。2

申請前に社内でそろえたい情報は、次の4つです。

  • 自社が伸ばしたい新規事業や生産性向上の内容
  • スタートアップの技術や事業が自社に不足している理由
  • 自社がスタートアップに提供するデータ、販路、実証環境などの協力内容
  • 株式の種類、払込日、取得額、保有予定、契約上の注意点

本申請は、出資を行った事業年度末にまとめて行います。新規出資型ガイドラインの手続フローでは、経済産業大臣への証明書交付申請は事業年度末日の60日前から30日後まで、証明書は申請から60日以内に交付される流れが示されています。申請方法は、法人向けの行政手続ログインIDであるgBizIDによる電子申請が原則です。2

確定申告とその後の管理

証明書が交付された後は、税務申告で制度を反映します。新規出資型ガイドラインでは、税務申告の際に、様式5、別表、法人税申告書別表を税務署に提出する流れが示されています。2 つまり、経済産業省への証明書交付申請と、税務署への法人税申告は別の作業です。

また、制度を使った後も管理が続きます。取得株式を一定期間内に売却した場合、配当を受けた場合、オープンイノベーションの継続が確認できない場合などには、特別勘定の取崩しが問題になります。M&A型では成長投資や事業成長の確認も関わるため、投資実行時だけでなく、取得後の数年間を見通した管理表を作っておく必要があります。3

ポイント

手続きは、出資して終わりではありません。事前相談、証明書交付申請、確定申告、取得後の継続管理までが一つの流れです。特に、協業内容を後から思い出して書く形では説得力が弱くなります。投資検討の段階から、事業目的、相互協力、保有方針を同じ資料で管理しておくことが大切です。

令和8年度改正で見る注意点

マイノリティM&Aの対象化

令和8年度改正で注目されるのは、M&A型の対象が広がったことです。経済産業省の税制改正資料では、3年以内に議決権の過半数を超えることが見込まれる50%以下の発行済株式取得を対象化し、吸収合併時には一括での益金算入から5年間での均等額の取崩しに見直すと説明されています。適用期限も2年間延長され、令和9年度末までとされています。5

これは、最初から過半数を取得するM&Aだけでなく、まず少数株式を取得し、その後に過半数取得を目指す段階的な買収にも制度を広げる方向です。ただし、50%以下なら何でも対象になるわけではありません。財務省の大綱では、3年以内に過半数を有することが見込まれること、取得直前に過半数を有していないこと、取得価額要件を満たすことなどが示されています。4

最新資料で確認したい実務上の差

注意したいのは、令和8年度改正の内容と、経済産業省サイトに掲載されている申請ガイドラインの更新時期が一致しない場合があることです。経済産業省の特設ページでは、出資日に応じて参照するガイドラインが分かれており、2024年7月時点のガイドラインは令和6年度税制改正の内容を反映したものとして掲載されています。6

実務では、まず自社の案件が新規出資型なのかM&A型なのかを分けます。そのうえで、出資日、取得株式が新規発行株式か発行済株式か、取得割合が50%超か50%以下か、取得価額が改正後の下限額を満たすかを順番に確認します。制度名だけで判断せず、取引の形を一つずつ分解することが、ミスを防ぐ近道です。

まとめ

確認の順番

オープンイノベーション促進税制は、スタートアップを応援する制度であると同時に、出資する会社が使う税制です。対象になるかどうかは、スタートアップの魅力だけで決まるのではなく、出資側の事業目的、相互協力、株式取得の形、保有予定、証明書申請まで含めて判断されます。

最初に考えるべきなのは、制度を使える投資先を探すことではありません。自社がどの事業を変えたいのか、なぜそのスタートアップと組む必要があるのかを明確にし、そのうえで新規出資型かM&A型かを見極めることです。令和8年度改正で対象範囲は広がりましたが、下限額や取崩し事由も含めて確認事項は増えています。

実際に検討する場合は、投資契約を固める前に、経済産業省の最新ガイドライン、税理士などの専門家、社内の事業部門と経理部門を同じテーブルに置くことが大切です。税制だけを後から確認するのではなく、事業計画と手続きを同時に設計することで、制度を活用できる可能性が高まります。

出典・参考資料

  1. 「No.5575 オープンイノベーションを促進するための税制」国税庁 ↩

  2. 「オープンイノベーション促進税制 (新規出資型) 申請ガイドライン(C)」経済産業省 ↩

  3. 「オープンイノベーション促進税制 (M&A型) 申請ガイドライン」経済産業省 ↩

  4. 「令和8年度税制改正の大綱(3/9)」財務省 ↩

  5. 「令和8年度 経済産業関係 税制改正について」経済産業省 ↩

  6. 「オープンイノベーション促進税制」経済産業省 ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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更新日:2026年6月13日
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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年5月29日
更新日: 2026年6月1日

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