補助金を使うときに迷いやすいのが、どの支出が補助対象経費になり、どの支出が対象外経費になるのかという判断です。機械、広告、ホームページなど、名前だけを見ると対象になりそうでも、実際には認められない場合があります。
大事なのは、品目名だけで判断しないことです。目的、時期、支払いの証拠がそろって初めて、補助対象経費として認められる可能性が出てきます。
この記事では、補助対象経費と対象外経費の基本的な考え方を、代表的な補助金の例を使って整理します。

補助対象経費の基本的な見方
対象かどうかを分ける条件
補助対象経費とは、補助金の目的に合った事業を進めるために必要で、制度が認めている支出のことです。たとえば、小規模事業者持続化補助金の第20回公募では、機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託、外注費が対象経費として示されています。1
ただし、経費区分に名前が載っていれば必ず対象になるわけではありません。同じ広告費でも、新商品の販路開拓に使うチラシは対象になり得ますが、会社案内だけのパンフレットや求人広告は対象外になり得ます。補助金は通常の経費を幅広く補てんする制度ではなく、公募要領で定められた事業目的に合う支出だけを支援する制度だからです。
ここで初心者が見落としやすいのは、対象経費の判断が、買うものの名前だけで決まらないということです。小規模事業者持続化補助金の第20回公募要領では、補助対象となる経費の条件として、本事業の遂行に必要と明確に特定できること、交付決定日以降に発生し補助事業期間中に支払いが完了すること、証憑資料等で支払金額が確認できることが示されています。1
補助対象経費かどうかは、品目名だけでは決まりません。制度の目的に合っているか、交付決定後に発注しているか、支払いを証明できるかを同時に見ます。見積書の段階では対象に見えても、発注日や支払方法を誤ると実績報告で否認されることがあります。
採択通知と交付決定の違い
補助金で特に注意したいのが、採択通知を受けた後すぐに発注してよいとは限らないことです。採択は、審査を通過して交付候補者になった段階です。一方、交付決定は、申請した経費の内容などが確認され、補助事業を開始できる段階です。
小規模事業者持続化補助金の第20回公募要領では、交付決定通知書に記載された交付決定日から補助事業を開始できると示されています。1ものづくり補助金の第23次公募要領でも、交付決定日より前に発注、契約、購入を行った経費は、いかなる理由があっても補助対象外になると明記されています。2
つまり、設備投資や広告制作を急ぎたい場合でも、発注、契約、購入のタイミングは慎重に扱う必要があります。発注先とのやり取り、社内承認、契約書の日付が交付決定前になっていると、実際に使った費用であっても補助対象経費として認められない可能性があります。
制度ごとに変わる経費区分の例
持続化補助金の対象経費
小規模事業者持続化補助金は、主に販路開拓や、その取組とあわせて行う業務効率化を支援する制度です。そのため、チラシ、広告、展示会、ウェブサイト、店舗改装など、売上拡大に関係する取組の経費が中心になります。
ただし、近い名前の経費でも扱いは細かく分かれます。第20回公募では、広報費のみによる申請はできず、広報費の補助金交付申請額の上限は30万円税込です。また、ウェブサイト関連費も単独での申請はできず、同じく補助金交付申請額の上限は30万円税込とされています。1ホームページを作るだけで補助金を使いたい、と考えている場合は、この制限を先に確認する必要があります。
| 制度の例 | 対象になり得る経費 | 対象外になり得る経費 |
|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託、外注費 | 単なる会社PRの広告、求人広告、名刺、金券、既に導入しているソフトウェアの更新料など |
| ものづくり補助金 | 機械装置、システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費など | 建物取得費、基礎工事、事務用品、飲食費、自動車等車両の購入費、修理費、汎用性が高い機器など |
この表は、制度ごとの考え方の違いを見るためのものです。実際の可否は公募回、枠、経費区分、補助事業の内容によって変わります。特にホームページ、広告、ソフトウェア、機械装置は、制度ごとに対象範囲や上限が変わりやすい領域です。
ものづくり補助金の対象経費
ものづくり補助金は、生産性向上に資する新製品、新サービス開発や海外需要開拓に必要な設備投資などを支援する制度です。第23次公募要領では、設備投資として単価50万円税抜き以上の機械装置等を取得し、納品、検収等を行うことが必要とされています。2
ここで重要なのは、同じ機械やシステムでも、単なる更新や通常業務のための購入では対象外になり得ることです。たとえば、古くなった機械を同じ用途で買い替えるだけでは、補助事業の目的に合わないと判断される可能性があります。一方で、新製品の開発や生産性向上のために必要な設備であり、事業計画との関係を説明できる場合は、対象経費として検討できます。
また、ものづくり補助金では、支払いについても厳格な確認があります。第23次公募要領では、補助対象経費は補助事業実施期間内に補助事業のために支払いを行ったことを確認できるものに限られ、原則として銀行振込の実績で確認するとされています。現金払いやクレジットカード払いは原則不可とされているため、支払方法まで含めて設計する必要があります。2
対象外経費になりやすいパターン
品目より目的が合わない支出
対象外経費とは、制度の対象経費区分に入らない支出、または一見対象に見えても補助事業の目的に合わない支出です。よくあるのは、通常の事業活動に必要な費用を、そのまま補助金でまかなおうとするケースです。
たとえば、パソコン、スマートフォン、プリンター、複合機のような汎用性が高い機器は、補助事業以外にも使いやすいため対象外になりやすい支出です。ものづくり補助金の第23次公募要領でも、汎用性があり目的外使用になり得るものとして、事務用パソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン、デジタル複合機などが例示されています。2
目的が合わない支出も注意が必要です。持続化補助金では、商品やサービスの宣伝広告を目的としない広告、会社案内、求人広告などは対象外になり得ます。広報費という名前だけを見て申請すると、販路開拓との関係を説明できず、対象外になる可能性があります。経費区分を選ぶ前に、補助事業計画のどの取組に使う支出なのかを言葉で説明できる状態にしておくことが大切です。
時期と支払い方法のミス
対象外経費になりやすいもう一つの理由が、発注や支払いのタイミングです。補助金では、交付決定前に契約や発注をしている支出は対象外になるのが原則です。新事業進出補助金の公式FAQでも、応募申請前に契約していた経費は対象外であり、交付決定から補助事業実施期間までの期間に発注、検収、支払いをした経費が対象になると説明されています。3
支払い方法も見落とせません。同FAQでは、補助対象経費に関する支払いは銀行振込の実績で確認し、現金払い、相殺、代引き、手形、小切手、決済サービスなどは対象外であると示されています。3制度によって細部は異なりますが、実績報告では支払先、支払日、金額、支払方法を証明する資料が必要になります。
対象外経費の多くは、買うもの自体が悪いというより、補助金の目的、期間、証拠のいずれかに合わないことで生じます。採択された後に動けばよいと考えるのではなく、申請前の段階で発注日、契約日、支払日、支払方法を確認しておくことが重要です。
申請前に残しておきたい証拠書類
見積書と発注記録
補助対象経費として認められるためには、事業に必要な支出であることを説明するだけでなく、金額の妥当性も示す必要があります。ものづくり補助金の第23次公募要領では、発注先の選定にあたり、入手価格の妥当性を証明できるよう見積書を取得する必要があり、単価50万円税抜き以上の物件等は原則として2者以上から同一条件による見積りを取ることが必要とされています。2
見積書で大切なのは、金額だけではありません。品名、型番、数量、仕様、納期、発行日、見積条件などがそろっているかを確認します。システム開発であれば、何を作るのか、どこまでが委託範囲なのか、保守費や運用費が含まれているのかも確認が必要です。内容があいまいな見積書では、交付申請や実績報告の段階で、補助対象部分と対象外部分を分けられないことがあります。
| 確認する資料 | 見るべきポイント | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 見積書 | 品名、型番、数量、仕様、金額、発行日 | 同一条件で比較できるか、対象外経費が混ざっていないか |
| 発注書、契約書 | 発注日、契約日、発注先、業務範囲 | 交付決定前の日付になっていないか |
| 納品書、検収書 | 納品日、検収日、成果物の内容 | 補助事業期間内に完了しているか |
| 振込記録、請求書、領収書 | 支払日、支払先、金額、名義 | 銀行振込で確認できるか、別名義の支払いになっていないか |
申請前に見積書を集めること自体は、補助事業の準備として有効です。ただし、見積書を取ることと、発注することは別です。発注、契約、購入は、交付決定後に行う必要がある制度が多いため、発注先にも補助金のスケジュールを説明しておくと安全です。
実績報告で説明できる形
補助金は、採択されたらすぐ入金される仕組みではありません。小規模事業者持続化補助金の第20回公募要領では、補助金は後払いであり、補助事業の終了後に実績報告書や経理書類を提出し、補助金額の確定、請求、交付へ進む流れが示されています。1新事業進出補助金のFAQでも、補助事業完了後に実績報告書や証憑書類を提出し、確定検査を受け、補助金確定通知書を受領した後に精算払いの請求を行うと説明されています。3
そのため、申請時点では対象になりそうでも、実績報告で説明できなければ補助対象経費として認められない可能性があります。たとえば、動画制作費を申請する場合、何のための動画か、どこで公開したか、補助事業期間内に完成して使われたかを示す必要があります。ホームページ制作であれば、公開日、制作内容、成果物、請求内容の内訳が分かる資料を残しておくことが大切です。
証拠書類は、後からそろえようとすると不足しがちです。特に、社内承認の記録、仕様変更の履歴、発注先とのメール、納品物の画面キャプチャ、振込控えは、実績報告時に説明の助けになります。補助金の経費管理は、申請書を書く作業ではなく、発注から支払いまでの記録を残す作業でもあります。
補助対象経費を決めるときの考え方
公募要領から逆算する流れ
補助対象経費を決めるときは、最初に買いたいものを並べるのではなく、公募要領から逆算するのが安全です。まず、制度の目的を読み、次に対象事業、対象経費、対象外経費、補助事業実施期間、支払方法、必要書類を確認します。そのうえで、自社の事業計画に必要な支出だけを経費として組み込みます。
たとえば、店舗の販路開拓を目的にするなら、チラシ、展示会、ウェブサイト、店舗改装などが候補になります。ただし、広報費だけで申請できない、ウェブサイト関連費に上限がある、単なる店舗移転の工事は対象外になり得るなど、制度ごとの制限を見落とすと計画全体が崩れます。先に公募要領を読むことで、使える費用と使えない費用の整理がしやすくなります。
また、対象外経費の欄は必ず確認してください。対象経費の欄だけを見ると、都合のよい解釈をしてしまうことがあります。対象外経費の欄には、単なる更新、通常業務、汎用機器、親族や関係会社との取引、期間外の支出など、実務上の失敗が起きやすい項目が集まっています。ここを先に読むと、申請後の手戻りを減らせます。
迷ったときの確認先
判断に迷う経費は、自己判断で申請書に入れる前に、事務局や支援機関に確認することが大切です。特に、システム開発、広告運用、外注費、改装工事、リース、レンタル、中古設備は、対象部分と対象外部分が混ざりやすい経費です。見積書の内訳を分けてもらい、どの部分を補助対象経費として計上するのかを明確にしておきましょう。
最終的に覚えておきたいのは、補助金の対象経費は、単に必要な支出ではなく、制度の目的に合い、交付決定後に発生し、証拠で確認できる支出だということです。対象外経費を避けるには、買う前、契約する前、支払う前に、公募要領の対象経費と対象外経費を確認することが欠かせません。
補助金を活用する際は、申請額を大きくすることよりも、後で否認されにくい経費計画を作ることを優先しましょう。経費区分、発注時期、支払方法、証拠書類をそろえておくことで、採択後の実績報告まで見通しやすくなります。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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