石川県なりわい再建支援補助金は、令和6年能登半島地震および令和6年奥能登豪雨で被害を受けた事業者の施設や設備の復旧を支援する補助金です。令和8年度も公募回制で受付が行われ、能登3市3町では事前着手制度の適用も継続されています。結論として、申請前に最も重要なのは、自社の地域、被災内容、所有関係、復旧内容、支払時期を早めに確認し、証憑書類をそろえながら資金繰りも同時に検討することです。
本記事では、令和8年度の公式公募情報をもとに、補助対象者、補助率、対象経費、事前着手、必要書類、実績報告、よくある注意点を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 石川県なりわい再建支援補助金 |
| 対象年度または公募回 | 令和8年度 第1次から第7次まで公募予定あり |
| 所管または実施機関または事務局 | 石川県 商工労働部経営支援課 金沢事業者支援センター |
| 補助上限額または補助率 | 補助上限額は1事業者あたり15億円。中小企業者は補助対象経費の4分の3、中堅企業およびみなし中堅企業等は2分の1。特定被災事業者に該当する場合は5億円を上限に定額補助を選択できる場合があります。 |
| 申請期間 | 第1次は令和8年4月1日から4月30日、第2次は5月1日から5月29日、第3次は6月1日から6月30日、第4次は7月1日から7月24日、第5次は7月27日から8月21日、第6次は8月24日から9月18日、第7次は9月24日から10月30日です。 |
| 公式一次資料 | 石川県公式公募ページ 2026年5月15日更新 HTML / 事業実施の手引き 令和8年4月版 PDF / 令和8年度公募スケジュール 2026年3月30日版 PDF / 石川県なりわい再建支援補助金交付要綱 令和7年4月1日施行 PDF / 石川県なりわい再建支援補助金Q&A 令和7年度版 PDF / 事前着手について PDF |
| 免責 | 申請可否や経費判断は、当該年度の募集要領・交付要綱等と事務局の案内で最終確認してください。 |

制度の全体像
どのような補助金か
石川県なりわい再建支援補助金は、令和6年能登半島地震および令和6年奥能登豪雨により被災した中小企業者等の施設や設備の復旧整備を支援する制度です。石川県の事業実施の手引きでは、原状回復に要する費用に対する助成を基本とし、対象経費は修繕費を原則としています。1
ここでいう原状回復とは、被災前の状態に戻す考え方です。たとえば、被災した店舗、工場、倉庫、生産設備、加工設備、販売施設などを、事業再開に必要な範囲で修繕または復旧する費用が中心になります。単に新しい設備を導入したい、店舗を刷新したいという投資ではなく、被災した施設や設備の復旧が出発点になります。
奥能登豪雨の復旧費については、対象地域が能登3市3町に限定されています。対象となるのは、七尾市、輪島市、珠洲市、志賀町、穴水町、能登町です。令和6年能登半島地震による被害については、石川県内の被災事業所が対象となり、地域や市町による限定はありません。2
申請で最初に確認したいこと
申請前に確認したいのは、被災したものが事業用の施設または設備かどうかです。補助対象となる経費は、令和6年能登半島地震等による被災前に所有していた施設や設備で、被災により損壊、滅失、または継続使用が困難になったもののうち、県知事が補助対象としたものです。3
そのため、申請時には、所有関係、事業利用、被災状況、復旧内容、見積額を資料で説明できる状態にする必要があります。施設なら名寄帳兼課税台帳等、設備なら償却資産台帳など、事業用資産であることを示す資料が重要になります。被災状況の写真、罹災証明書または被災を証する書類、見積書、図面なども必要になります。4
この補助金は、採択や交付決定だけで完結する制度ではありません。交付申請、交付決定、復旧工事または設備復旧、支払い、実績報告、審査、現地確認、補助金額の確定、請求、支払いという流れで進みます。工事代金や設備代金は、原則として事業者が先に支払うため、補助金が入るまでの資金繰りを同時に考える必要があります。5
令和8年度の公募スケジュール
公募回と締切
令和8年度は、公募回制による申請受付が行われています。公式の令和8年度公募スケジュールでは、第1次から第7次までの受付期間と交付決定予定時期が公表されています。第7次以降の公募スケジュールについては、確定でき次第公表される案内です。6
| 公募回 | 受付開始 | 受付締切 | 交付決定予定 |
|---|---|---|---|
| 第1次 | 令和8年4月1日 | 令和8年4月30日 | 6月中旬 |
| 第2次 | 令和8年5月1日 | 令和8年5月29日 | 7月中旬 |
| 第3次 | 令和8年6月1日 | 令和8年6月30日 | 8月中旬 |
| 第4次 | 令和8年7月1日 | 令和8年7月24日 | 9月中旬 |
| 第5次 | 令和8年7月27日 | 令和8年8月21日 | 10月中旬 |
| 第6次 | 令和8年8月24日 | 令和8年9月18日 | 11月中旬 |
| 第7次 | 令和8年9月24日 | 令和8年10月30日 | 12月中旬 |
このスケジュールは、切れ目のない公募スケジュールとして案内されています。ただし、期日内に提出しても、書類の不備などで補正が終わらない場合は、次回以降の交付決定になる可能性があります。申請書類を提出する日だけでなく、補正対応が終わる時期まで見込んで準備することが大切です。6
相談は通年で受け付け
公式ページでは、補助金活用に向けた相談は通年で受け付ける案内です。申請そのものは公募回ごとに区切られますが、復旧内容の整理や必要書類の確認は、締切直前ではなく早めに相談しておく方が進めやすくなります。2
相談窓口は、金沢事業者支援センター、能登事業者支援センター、能登地区の商工会や商工会議所で開催される出張個別相談会などが案内されています。提出先は石川県庁の経営支援課 金沢事業者支援センター宛です。事業実施の手引きでは、原則として郵送による提出、正本1セットの提出、副本の保管が案内されています。7
事前着手の扱い
能登3市3町では令和8年度も継続
事前着手とは、交付決定より前に着手した復旧工事等について、一定の条件のもとで補助対象になり得る特例的な取扱いです。令和8年度からは、事前着手の適用地域が大きく変わっています。事業実施の手引きでは、令和8年度より事前着手の適用は能登3市3町においてのみ認められると案内されています。対象は、珠洲市、輪島市、能登町、穴水町、七尾市、志賀町です。1
| 地域区分 | 令和8年度以降の事前着手の扱い |
|---|---|
| 能登3市3町 | 当面の間、事前着手制度の適用を継続 |
| 能登3市3町以外の地域 | 令和8年3月31日までの申請をもって事前着手制度の適用を終了 |
| 能登3市3町以外で令和8年4月1日以降に行う復旧 | 原則として交付決定後に着手する工事のみ申請可能 |
事前着手に関する公式資料では、能登3市3町以外の地域について、令和8年4月以降は交付決定後に着手する工事のみ申請可能と案内されています。また、液状化被害が甚大な地域の事業者などについては、個別の状況を確認したうえで、特例的に認めるかを個別案件ごとに判断する案内もあります。8
事前着手でも証拠資料が必要
事前着手が認められる可能性がある場合でも、写真や書類等により被災の事実が確認でき、復旧内容が適正であることが前提になります。交付決定前に工事を進めてしまった場合、契約書、発注書、見積書、請求書、支払資料、施工前後の写真などが不足すると、補助対象経費として確認できない可能性があります。3
これは制度上の義務を超えた実務上の注意点ですが、着手済みの工事がある場合は、時系列を一枚の表にしておくと確認しやすくなります。たとえば、被災日、写真撮影日、見積取得日、発注日、契約日、着工日、完了日、請求日、支払日、領収日を並べて、関連書類の有無を確認します。事前着手の申請では、すでに工事が進んでいる分、あとから足りない資料を補うのが難しくなりやすいためです。
補助対象者
基本となる対象者
補助対象者は、原則として石川県内に事業所を置く中小企業者等です。交付要綱では、中小企業者、小規模企業者、特定事業者、特定貸与事業者などの定義が置かれています。特定事業者は、中小企業者および小規模企業者以外の事業者で、資本金または出資金が10億円未満の事業者です。9
Q&Aでは、補助対象事業者の要件として、中小企業者、中堅企業およびみなし中堅企業等、中小企業者が事業活動を行う上で必要な施設や設備を貸し付けている大企業およびみなし大企業が挙げられています。個人事業主については、農家、漁業者、開業医など、業種や職種を問わず、開業届を提出している個人事業主も対象になる案内です。10
| 区分 | 考え方 | 補助率 |
|---|---|---|
| 中小企業者 | みなし大企業またはみなし中堅企業を除く中小企業者 | 4分の3 |
| 中堅企業およびみなし中堅企業 | 中小企業者以外で資本金または出資金が10億円未満の事業者等 | 2分の1 |
| 大企業およびみなし大企業 | 原則対象外。ただし、中小企業者が事業活動を行う上で必要な施設や設備を貸し付けている場合は対象になり得ます。 | 2分の1 |
大企業およびみなし大企業は、原則として補助対象になりません。ただし、補助対象事業者となる中小企業者に対して、その中小企業者が事業活動を行う上で必要な施設や設備を貸し付けており、その施設や設備の復旧を行う場合は、所有者である大企業等が補助対象事業者になる扱いです。11
所有者が申請者になる点に注意
この補助金では、復旧整備する施設や設備について、原則として所有者が交付申請を行います。Q&Aでは、法人が使用する施設の所有者が法人代表者個人である場合、代表者個人が交付申請を行う必要があり、賃貸借契約書や使用貸借契約書など、代表者個人と法人との貸付関係を確認できる資料の提出が必要と案内されています。11
共有財産の場合は、共有者の代表者が代表して申請できる場合があります。その場合、代表者が共有者全員から同意を取得し、共有者全員の納税証明書、暴力団排除に関する誓約書、役員名簿などが必要になります。相続が発生している施設では、相続人が確定していれば相続人名義で申請でき、実績報告の際に相続後の建物登記簿謄本を提出する案内です。11
所有関係は、補助金申請で詰まりやすいポイントです。店舗を法人が使っていても、建物の名義が代表者個人、親族、共有者、貸主、リース会社になっているケースがあります。この場合、実際に使っている事業者と、補助金を申請できる所有者が一致しないことがあります。申請前に、登記、名寄帳兼課税台帳、償却資産台帳、リース契約、賃貸借契約を確認してください。
対象外となる事業者
交付要綱では、暴力団排除条例に規定する暴力団または暴力団員等、県税に未納がある者は交付申請できないとしています。事業実施の手引きでは、暴力団排除条例に規定する暴力団または暴力団員等、県税に未納がある者、特定の風俗営業事業者、任意団体、宗教団体、地方公共団体が補助対象とならない事業者として挙げられています。12
風俗営業に関しては、すべての飲食店が対象外になるわけではありません。Q&Aでは、スナックについて、風営法第2条第1項第1号許可対象事業者である社交飲食店に該当しなければ補助対象になる案内があります。料理店、深夜酒類提供飲食店営業、風営法関連の申請や届出を行っていない事業者など、営業実態により判断が分かれます。11
補助率と補助上限額
通常の補助率
補助上限額は1事業者あたり15億円です。補助率は、中小企業者が補助対象経費の4分の3、中堅企業およびみなし中堅企業が2分の1です。大企業またはみなし大企業で、中小企業者が事業活動を行う上で必要な施設や設備を貸し付けている特定貸与事業者についても、補助率は2分の1です。13
補助金額は、補助対象経費に補助率をかけて計算します。補助対象経費には消費税等を含めません。事業実施の手引きでは、すべての積算は消費税等抜きの数字となるため、見積額が内税の場合は1.1で割り戻して税抜価格として積算する案内があります。14
| 事業者区分 | 補助率 | 補助上限 |
|---|---|---|
| 中小企業者 | 4分の3 | 1事業者あたり15億円 |
| 中堅企業およびみなし中堅企業 | 2分の1 | 1事業者あたり15億円 |
| 特定貸与事業者に該当する大企業等 | 2分の1 | 1事業者あたり15億円 |
| 特定被災事業者に該当する場合 | 5億円を上限に定額補助を選択できる場合あり | 定額補助部分を含め、制度全体の上限に注意 |
複数の事業所を被災した場合でも、石川県における上限は1事業者15億円です。Q&Aでは、石川県と富山県にそれぞれ被災施設等を有する場合、富山県における上限額は3億円、石川県における上限額は富山県分と合わせて15億円という例が示されています。15
特定被災事業者の定額補助
特定被災事業者に該当する場合、5億円を上限に定額補助とすることができます。補助金額が5億円を超える場合、超えた部分の補助率は、中小企業者は4分の3以内、中小企業者以外は2分の1以内となります。13
特定被災事業者は、交付要綱で複数の要件を満たす事業者として定義されています。主な要件には、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたこと、過去数年以内に発生した災害で事業用資産に被災があること、その災害からの復旧や復興に向けて国等が実施した支援を活用したこと、売上高が20%以上減少している復興途上の事業者または厳しい債務状況にあり経営再建等に取り組んでいる事業者であること、過去災害からの復旧や復興に向けた債務を抱えていること、令和6年能登半島地震等で施設または設備が被災し復旧または復興を行おうとすることが含まれます。16
定額補助は、通常の補助率と比べて自己負担が大きく変わり得るため、該当可能性がある事業者は早めに確認したい部分です。ただし、要件確認には定額補助要件確認様式、企業再建計画、認定経営革新等支援機関による確認書などが関係します。単に被災しただけで自動的に定額補助になるわけではありません。17
補助対象経費
施設と設備の復旧が中心
補助対象となる経費は、令和6年能登半島地震等による被災前に所有していた施設または設備で、被災により損壊、滅失、または継続使用が困難になったもののうち、県知事が補助対象としたものです。施設は、事務所、倉庫、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、原材料置場など、復興事業計画の実施に不可欠と認められる施設で、資産として計上してあるものです。設備は、復興事業に係る事業の用に供する設備で、資産として計上してあるものです。3
| 区分 | 対象となる主な内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 施設 | 事務所、倉庫、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、原材料置場など | 資産計上され、事業に不可欠な施設であることが必要 |
| 設備 | 復興事業に係る事業の用に供する設備 | 資産計上され、事業用に使う設備であることが必要 |
| 車両 | 事業用車両や特殊車両など、対象になり得る場合あり | 原則として石川県内での車両登録が必要 |
| 新分野事業 | 従前施設や設備への復旧に代えて新分野事業に要する施設や設備を整備する場合 | 従前の施設や設備への復旧等に要する経費に補助率を乗じた金額が上限 |
復旧した施設や設備は、補助事業の目的に沿って使用する必要があります。目的外使用、当初目的からの用途変更、県外移転など事業実施場所の変更は、補助金の返還対象になります。償却資産として資産計上されていない店舗備品、什器、事務用品、消耗品、在庫、陳列商品、原材料などは補助対象外です。3
原状回復を超える復旧
復旧を超える整備は、原則として補助対象外です。ただし、被災前に所有していた施設や設備について、防災や減災に資する改良、性能向上に資する機能付加や拡充を図ることは、原状回復に要する費用を上限として可能です。この場合、実際に行う工事等とは別に、原状回復工事の見積書の提出が必要になります。1
たとえば、被災した設備を修理する代わりに入替を行う場合、設備メーカー等による修理不能証明書があると、原状回復として入替できる場合があります。この場合、従前設備と同等または同等以下の設備であることを証する設備比較証明書の提出も必要です。修理が可能な場合でも、修理による原状回復に要する費用を上限として設備入替が認められる場合があります。18
施設の建替も同じ考え方です。復旧費の補助金であるため、現地建替が原則です。移転を伴う場合は、河川拡幅工事による立ち退き、市町による集団移転計画、液状化に伴う建築制限、ハザードマップによる災害想定地域以外への移転など、事業者の責めに帰さない他律的な要因や合理的な理由により現地復旧が困難な場合が想定されています。移転が認められるのは石川県内です。19
対象外になりやすい経費
補助対象となる経費は、事業者が保有し資産計上している施設や設備の復旧に要する工事費等です。被災状況調査などの事前調査や事前点検費用、仮設店舗や応急処置などの仮復旧費は対象外です。消耗品、陳列商品、在庫品、仕掛品、原材料、従業員給与、風評被害等による逸失利益、空き工場の家賃も対象外です。20
| 経費や資産の例 | 補助対象の考え方 |
|---|---|
| 事前調査や事前点検費用 | 対象外 |
| 仮設店舗や応急処置などの仮復旧費 | 対象外 |
| 消耗品 | 対象外 |
| 陳列商品や在庫品や仕掛品や原材料 | 対象外 |
| 従業員給与 | 対象外 |
| 風評被害等による逸失利益 | 対象外 |
| 家賃 | 対象外 |
| 土地代金 | 中古物件購入等の場合でも対象外 |
| 振込手数料 | 原則対象外。ただし取引価格の内数となっている場合は請求金額が対象になる扱いあり |
店舗兼住宅のように、事業用以外の用途にも使用されている施設では、事業用部分のみが補助対象です。利用状況や図面などにより補助対象部分を特定し、事業用面積比率などを使って補助対象経費を算出します。住居部分を含む建物全体の復旧費をそのまま補助対象にできるわけではありません。20
保険や共済の扱い
事業者規模に応じた付保割合
なりわい再建支援補助金で復旧した施設や設備については、自然災害による損害を補償する保険または共済に加入する必要があります。事業実施の手引きでは、小規模企業者は加入推奨で推奨付保割合30%以上、中小企業者等は30%以上が必須、中堅企業以上は40%以上が必須です。21
| 事業者区分 | 保険または共済の扱い |
|---|---|
| 小規模企業者 | 加入推奨。推奨付保割合は30%以上 |
| 中小企業者等 | 30%以上が必須 |
| 中堅企業以上 | 40%以上が必須 |
付保割合は、補助対象経費部分だけではなく、補助対象物全体に対して判定します。施設の修繕であっても、施設であれば建替えた場合の費用全額、設備であれば入替えた場合の費用全額に対して、付保割合を満たす保険または共済への加入が事業報告書の提出までに必要です。21
小規模企業者は保険加入が義務ではありませんが、令和6年能登半島地震等で得られた教訓を踏まえ、保険または共済加入に代わる取組を実施する必要があります。手引きでは、県が定めるBCP計画や事業継続力強化計画の策定などが取組例として挙げられています。21
保険金を受け取った場合
保険または共済の対象となっている施設や設備も補助対象になり得ます。ただし、補助金の自己負担分を超える受取保険金や共済金がある場合は、超える部分の保険金や共済金額の2分の1を補助金額から控除し、残りの額が補助金額になります。交付申請時に控除していない場合は、実績報告時に差し引く扱いです。3
被災により保険金が請求できるにもかかわらず請求しない場合、その物件は補助対象外となり、補助金を申請できない案内があります。保険の有無、請求状況、受取予定額、受取済み額は、申請前に整理しておく必要があります。20
申請の流れ
交付申請から支払いまで
補助金が支払われるまでの流れは、交付申請から始まります。Q&Aでは、交付申請、交付決定通知、復旧工事の着手、復旧工事と支払いの完了、実績報告書の提出、審査と現地確認、補助金額の確定通知、補助金の請求、補助金支払いという流れが示されています。5
| 段階 | 主な手続き | 事業者側の注意点 |
|---|---|---|
| 交付申請 | 申請書類を県へ提出 | 所有関係、被災状況、復旧内容、見積額の整合を確認 |
| 交付決定 | 県から交付決定通知 | 能登3市3町以外では、令和8年4月以降は交付決定前着手に注意 |
| 復旧事業実施 | 施設復旧や設備復旧を進める | 発注書、契約書、納品書、完成届、写真、請求書を保存 |
| 支払い | 工事業者や設備業者へ支払い | 原則として補助金受領前に事業者が支払う |
| 実績報告 | 完了後に実績報告書を提出 | 事業完了から15日以内または令和8年12月28日のいずれか早い日まで |
| 完了確認検査 | 書類検査や現地検査 | 証憑の原本確認に対応できるよう保管 |
| 額の確定と請求 | 確定通知後に補助金請求 | 確定額が交付決定額と異なる場合あり |
| 補助金支払い | 県から支払い | 精算払いが原則 |
令和8年度版の事業実施の手引きでは、実績報告書の提出期限は、事業完了の日から15日以内の日、または令和8年12月28日のいずれか早い日までです。事業が予定期間内に完了しない場合は、遅延の理由を立証する書類の添付を求められることがあります。22
補助金は原則として精算払い
この補助金は、原則として精算払いです。事業実施の手引きでは、県から補助事業者への補助金の支払いは、補助対象経費のうち支出済みの経費のみが対象であり、すべての事業が完了し補助金額が確定した後の精算払いが原則とされています。つまり、発注業者等への支払いは、補助金の受領前に事業者が行います。14
ただし、一定の要件のもとで概算払いを請求できる場合があります。概算払いは、交付決定日から実績報告書提出日までの間に各補助事業者につき1回です。支払いには2か月程度を要する場合があり、対象経費は補助対象経費のうち支出済みの経費です。概算払いを希望する場合は、事前に県の担当者に相談する必要があります。23
資金繰りの観点では、補助上限額や補助率だけでなく、自己負担分、消費税分、保険金控除、支払から補助金入金までの期間を見込む必要があります。これは制度要件ではありませんが、金融機関や公的融資制度への相談も含めて、復旧工事を始める前に資金計画を作成しておくと安心です。
必要書類と準備の順番
主な添付書類
Q&Aでは、交付申請に必要な主な添付書類として、事業用で使用することが分かる書類、被災を受けたことが分かる書類、被災箇所の写真、復旧に係る見積書、施設復旧の場合の平面図、県税に未納がないことの証明書が挙げられています。施設を復旧する場合は、実績報告の際に復旧施設の建物登記簿謄本の提出が必要です。4
| 確認項目 | 主な資料 |
|---|---|
| 事業用で使用すること | 名寄帳兼課税台帳等、償却資産台帳 |
| 被災を受けたこと | 罹災証明書、被災証明書、提出できない場合の理由書、被災を証する書類 |
| 被災箇所 | 被災状況が分かる写真 |
| 復旧内容と金額 | 見積書、見積書一覧表、見積書不足理由書 |
| 施設復旧 | 平面図、必要に応じて立面図、復旧施設の登記に関する誓約書 |
| 設備復旧 | 設備に係る被災を証する書類、修理不能証明書、設備比較証明書 |
| 新分野事業 | 新分野事業に係る経費の比較表、認定経営革新等支援機関による確認書 |
| 定額補助 | 定額補助要件確認様式、企業再建計画、企業再建計画確認書など |
申請様式は、石川県公式ページに共通、施設、設備、新分野、定額補助などに分けて掲載されています。公式ページでは、フローチャートの資料番号がチェックリストと対応しているため、まずフローチャートで自社の申請パターンを確認し、該当するチェックリストに沿ってそろえる進め方が分かりやすいです。24
図面と写真で詰まりやすい点
施設を復旧する場合は、従前施設の被災箇所および修繕箇所を明示した各階の平面図が必要です。外壁を修繕する場合は、被災箇所と修繕箇所を明示した立面図も必要です。施設の建替では、従前施設と新施設の双方の図面が必要になります。既存図面がない場合は、簡単な図面でも、各階の間取り、用途、面積が分かるように作成して提出します。4
写真は、原則として修繕等を行う被災箇所すべての写真が必要です。提出時には、見積項目に上がっている修繕内容ごとに、被災状況を写真で確認できるようにする必要があります。壁のひび割れなど、施設全体に及ぶ場合は、全景と主な被災箇所の写真で足りる場合があります。4
実務上は、見積書の項目番号、図面の修繕箇所番号、写真番号を対応させておくと、補正対応がしやすくなります。これは制度要件として独立して定められたものではありませんが、公式資料でも図面に見積書の整理番号と見積項目を可能な限り記載するよう案内されています。4
実績報告と証憑管理
施設費の証憑
事業実施の手引きでは、施設費について、仕様書作成、見積書徴取、発注、契約書または発注請書等の締結、施工管理、完了報告、検査、請求、支払という流れが示されています。見積書が1者の場合は、見積書不足理由書を作成する必要があります。25
施設費の書類整理では、取引ごとに項目と整理番号を付し、支払いを証する書類、請求書、完成写真、完成検査報告書、完成届、図面等関係書類、契約書や発注請書、発注書控、見積書や合見積書、仕様書を整理します。振込の場合は振込依頼書、通帳の写し、領収書、現金の場合は領収書と現金を引き出した通帳の写し、小切手や手形の場合は小切手帳や手形の控え、当座勘定照合表、領収書が例示されています。26
設備費の証憑
設備費は、仕様書作成、見積書徴取、発注、契約書または発注請書等の締結、納品、検収、請求、支払の流れで進めます。複数設備を整備または修理する場合は、内訳が分かるように仕様書を作成します。見積書は可能な限り補助対象設備のみで徴取し、補助対象とならない設備を含めないように案内されています。27
設備費の書類整理でも、取引ごとに項目と整理番号を付します。車両の場合は車検証の写しも添付します。支払いを証する書類、設備の写真、請求書、納品書、検収等、契約書や発注請書、発注書控、見積書や合見積書、仕様書などを整理します。28
証憑管理で重要なのは、支払済みであること、事業期間内の支払いであること、補助対象設備や施設と請求内容が一致することです。クレジットカードで支払う場合でも、口座からの引落日が事業期間内である必要があります。小切手や手形では、回し手形は使用できず、必ず事業期間内に振出と支払いがされる必要があります。14
変更や財産処分に関する注意点
事業内容を変更する場合
交付決定後に事業内容や経費配分を変更する場合は、事前に県知事の承認が必要です。事業実施の手引きでは、補助対象経費の30%以内の額の減少、補助目的に変更をもたらさない事業計画の細部の変更は軽微な変更として申請不要とされています。一方で、補助事業完了前に会社合併や相続などにより対象施設等の譲渡が生じ、補助事業者が変更となる場合は、変更申請が必要です。29
交付要綱でも、補助事業の内容の変更または経費の変更を行う場合は、軽微なものを除き、あらかじめ変更交付申請書を知事に提出し承認を受ける必要があります。軽微な経費変更は、補助対象経費の30%以内の変更です。30
実務上は、工事内容、工期、見積金額、発注先、所有者、設置場所が変わりそうな段階で、早めに相談してください。変更承認の手続きを経ないで実施した事業は、補助対象経費として認められないことがあります。29
財産処分の制限
補助金で復旧や取得をした施設や設備は、一定期間、補助目的どおりに使用する必要があります。交付要綱では、取得価格または効用の増加価格が単価50万円以上の機械、器具、その他の財産について、処分制限期間が設けられています。処分を行う場合は、あらかじめ知事に申請し承認を受けなければなりません。31
処分とは、補助金の目的に反して使用すること、譲渡、交換、貸付、担保提供、取り壊しなどを含みます。補助金で復旧した施設や設備を売却したり、用途を変えたり、県外に移転したり、担保に入れたりする場合は、事前相談が必要です。交付要綱では、処分により残存簿価相当額、鑑定評価額、処分により得られた収入または見込まれる収入額の全部または一部を県に納付させることがあると定めています。31
よくある申請ミスと対策
申請金額と資料の不一致
公式概要資料では、補助金申請にあたってのポイントとして、令和6年能登半島地震等で損壊または使用困難となった建物や設備を復旧する申請内容になっているか、チェックリストに沿って提出書類に不備がないか、申請金額や対象経費が提出書類全般で一致しているかが挙げられています。32
見積書、申請書、事業費入力シート、按分計算書、図面、写真、契約書、請求書の数字がずれていると、補正が必要になります。税込と税抜の混在、値引き前後の金額の混在、補助対象外経費の混入、住宅部分と事業部分の按分漏れなどが起こりやすい点です。
早期申請と分割申請
公式概要資料では、復旧事業がすべて完了していなくても、復旧事業に着手または着手可能な状態で補助金申請が可能と案内されています。経費の対象範囲を分割し、復旧工事計画が立つ部分から申請する、または工期を分割して申請するなどの分割申請も可能です。33
これは、被災事業者の早期復旧支援だけでなく、申請時に必要書類を紛失するリスクを下げる意味もあります。特に、すでに復旧工事に着手している場合、契約書や写真が後から不足しやすいため、完了を待たずに相談し、申請できる範囲から整理することが有効です。
申請前セルフチェック
自社が確認すべき項目
申請前には、制度の対象になるか、補助対象経費として説明できるか、支払いまでの資金を準備できるかを確認します。とくに、所有者と使用者が異なるケース、店舗兼住宅、リース物件、共有財産、相続が絡む施設、保険金を受け取る施設や設備は、早めに相談した方がよい分野です。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 被災原因 | 令和6年能登半島地震または令和6年奥能登豪雨による被害か |
| 対象地域 | 地震被害は石川県内事業所か。豪雨被害は能登3市3町か |
| 所有者 | 申請者が復旧する施設または設備の所有者か |
| 事業利用 | 施設または設備が事業用として使われていたか |
| 資産計上 | 施設または設備が資産として計上されているか |
| 被災証明 | 罹災証明書または被災を証する書類を用意できるか |
| 写真 | 被災箇所の写真を見積項目ごとに説明できるか |
| 見積 | 復旧内容が分かる見積書を用意できるか |
| 事前着手 | 交付決定前に着手している場合、地域と時期の要件を確認したか |
| 資金繰り | 補助金入金前に支払う資金を確保できるか |
| 保険金 | 保険や共済の請求状況と受取額を整理したか |
| 保険加入 | 復旧後に必要な付保割合を満たせるか |
| 実績報告 | 契約書、発注書、請求書、領収書、通帳写しなどを保存できるか |
このチェックで一つでも迷う項目がある場合は、申請書を作り始める前に相談窓口へ確認することをおすすめします。これは制度要件ではありませんが、補正対応や対象外経費の発生を減らすうえで有効です。
相談先と提出先
問い合わせ先
令和8年度版の事業実施の手引きでは、問い合わせ先として金沢事業者支援センターが案内されています。電話番号は0120-867-100、対応時間は10時から17時までで、土日祝日は除きます。対面相談を希望する場合も、事前予約制で金沢事業者支援センターや能登事業者支援センターの案内があります。7
能登事業者支援センターは、石川県奥能登総合事務所4階に設けられています。所在地は石川県輪島市三井町洲衛10部11番地1で、電話番号は0120-262-380、受付終了は16時です。7
書類提出先
書類提出先は、石川県金沢市鞍月1丁目1番地の石川県庁 経営支援課 金沢事業者支援センターです。封筒には、石川県なりわい再建支援補助金申請書類在中と記載します。提出は原則として郵送です。添付資料が不足している場合は受付ができないため、チェックリストで提出書類を確認してから送付してください。7
よくある質問
Q1. 石川県なりわい再建支援補助金は何を補助する制度ですか。
A. 令和6年能登半島地震および令和6年奥能登豪雨により被災した中小企業者等の施設や設備の復旧整備を支援する制度です。原状回復に要する費用が基本で、修繕費を原則とします。1
Q2. 補助上限額はいくらですか。
A. 補助上限額は1事業者あたり15億円です。複数の事業所を被災した場合でも、石川県における上限の考え方に注意が必要です。15
Q3. 補助率はいくらですか。
A. 中小企業者は補助対象経費の4分の3、中堅企業およびみなし中堅企業は2分の1です。大企業等が特定貸与事業者として対象になる場合も2分の1です。13
Q4. 令和8年度の公募はいつまでありますか。
A. 令和8年度は、第1次から第7次までの公募スケジュールが公表されています。第7次は令和8年9月24日から10月30日までです。第7次以降は確定でき次第公表される案内です。6
Q5. 交付決定前に着手した工事は対象になりますか。
A. 令和8年度から、事前着手の適用は能登3市3町においてのみ認められています。能登3市3町以外では、令和8年3月31日までの申請をもって事前着手制度の適用が終了し、令和8年4月以降は原則として交付決定後に着手する工事のみ申請可能です。8
Q6. 能登3市3町とはどこですか。
A. 珠洲市、輪島市、能登町、穴水町、七尾市、志賀町です。奥能登豪雨の復旧費は、この6市町が対象です。2
Q7. 個人事業主も対象になりますか。
A. 開業届を提出している個人事業主は対象になり得ます。Q&Aでは、農家、漁業者、開業医なども例示されています。10
Q8. 建物の所有者と事業者が違う場合はどうなりますか。
A. 原則として、復旧整備する施設や設備の所有者が申請者になります。法人が使用する施設を代表者個人が所有している場合は、代表者個人が申請し、貸付関係を確認できる資料が必要です。11
Q9. 設備を修理ではなく入替にできますか。
A. 修理不能証明書がある場合など、原状回復として入替が認められる場合があります。従前設備と同等または同等以下であることを示す設備比較証明書が必要です。修理可能な場合でも、修理による原状回復費用を上限として入替できる場合があります。18
Q10. 消費税は補助対象になりますか。
A. 消費税および地方消費税は補助対象外です。内税見積の場合は、税抜価格に割り戻して積算します。14
Q11. 補助金は先に入金されますか。
A. 原則として精算払いです。補助対象経費のうち支出済みの経費のみが対象で、すべての事業が完了し補助金額が確定した後に支払われます。14
Q12. 概算払いは使えますか。
A. 一定の要件を満たす場合、交付決定日から実績報告書提出日までの間に1回、概算払いを請求できる場合があります。支払いには2か月程度を要する場合があり、事前に県の担当者へ相談が必要です。23
Q13. 実績報告書はいつまでに提出しますか。
A. 令和8年度版の事業実施の手引きでは、事業完了の日から15日以内の日、または令和8年12月28日のいずれか早い日までです。22
Q14. 補助金で復旧した設備をあとで売却できますか。
A. 取得価格または効用の増加価格が単価50万円以上の機械、器具、その他の財産には処分制限があります。売却、譲渡、貸付、担保提供、取り壊しなどを行う場合は、事前に知事の承認が必要です。31
Q15. 申請支援業者に依頼してもよいですか。
A. 依頼自体は禁止されていませんが、公式資料では、高額な成功報酬や経費の水増しを提案する悪質な業者への注意が案内されています。まずは、県の相談窓口、商工会、商工会議所などの公的機関に相談してください。1
まとめ
石川県なりわい再建支援補助金は、被災した事業者の施設や設備の復旧にとって大きな支援策です。一方で、補助対象は原状回復を基本とし、所有者、資産計上、被災証明、写真、見積、図面、支払い証憑、実績報告など、多くの確認事項があります。令和8年度は公募回制で受付が行われており、能登3市3町では事前着手制度が継続される一方、それ以外の地域では令和8年4月以降の事前着手の扱いに注意が必要です。
申請を検討する場合は、まず自社の被災内容と所有関係を整理し、復旧内容が補助対象になるかを確認してください。あわせて、補助金は原則として後払いであるため、自己負担分、消費税分、補助金入金までの立替資金を含めた資金計画を立てておくことが重要です。書類の不備や補正によって交付決定が次回以降にずれる可能性もあるため、締切直前ではなく、早めに相談窓口へ確認しながら準備を進めましょう。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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