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持株会社を活用した事業承継は本当に有利か? 仕組みとメリット、デメリットを整理

持株会社を活用した事業承継で、何が楽になり、どこで失敗しやすいかが分かります。節税効果を過信しないための仕組み、メリット、デメリット、導入前の確認点を整理しました。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年3月28日
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目次

  • そもそも持株会社を使うと何が変わるのか?
  • どんな会社でメリットが出やすいか?
  • どこでデメリットが大きくなるのか?
  • 導入前に確認すべきこと
補助金フラッシュ 事業計画

後継者は決まっているのに、株をどう渡すかで事業承継が止まる会社は少なくありません。持株会社は、その問題をまとめて解く候補ですが、節税になるから作るという発想だけで進めると失敗しやすい仕組みです。
実際には、株の集約、資金調達、将来のグループ経営をどう設計するかが中心で、税効果は方法次第でプラスにもマイナスにも振れます。
この記事では、持株会社を活用した事業承継の仕組みとメリット、デメリットを、導入前に確認すべき順番で整理します。

目次

  • ●そもそも持株会社を使うと何が変わるのか?
  • 持株会社は、株を受ける器と返済の器を分ける仕組み
  • 相続税が自動で軽くなるわけではない
  • ●どんな会社でメリットが出やすいか?
  • 親族内承継で株を散らしたくない会社と相性がいい
  • 複数事業や将来の再編を考える会社でも使い道がある
  • ●どこでデメリットが大きくなるのか?
  • 譲渡のやり方を間違えると、税負担が出る
  • 返済原資と管理負担を軽く見ると、後で苦しくなる
  • ●導入前に確認すべきこと
  • 最低でも比べたい3つの数字
  • 事業承継税制の締切を確認する
持株会社を活用した事業承継は本当に有利か? 仕組みとメリット、デメリットを整理

そもそも持株会社を使うと何が変わるのか?

持株会社は、株を受ける器と返済の器を分ける仕組み

持株会社は、自社で商品を売ったり工場を動かしたりするより、子会社の株式を持ってグループを束ねるための会社です。

中小企業庁のガイドラインが示す典型例では、後継者が株主となる持株会社を作り、その会社が金融機関から借り入れて、現経営者から事業会社の株式を買い取ります1。現経営者の手元には株ではなく現金が残るため、相続の場面で株式が細かく分かれにくくなります。

日本政策金融公庫の融資制度でも、事業会社の株式や事業用資産を取得する持株会社を対象に入れており、持株会社は資金調達の器としても想定されています2。

相続税が自動で軽くなるわけではない

ここで見落とされやすいのが、持株会社は魔法の節税箱ではないという点です。中小企業庁のガイドラインは、現経営者が株式を持株会社へ譲渡する時点で譲渡所得課税が生じ得るうえ、売却後に残った現金には相続時に相続税がかかるため、持株会社スキームでは相続税の軽減効果を期待しにくいという指摘を紹介しています1。

さらに国税庁は、取引相場のない株式の評価で、株式保有割合が一定以上の会社を特定の評価会社とし、原則として純資産価額方式で評価すると案内しています3。純資産価額方式とは、会社の資産と負債を洗い直して株価を出す方法です。つまり、持株会社を間に入れれば必ず株価が下がる、という理解は大ざっぱすぎます。

たとえば、製造事業を営む会社の株を現社長が個人で持ち、不動産や余剰資金も同じ会社にたまっているケースでは、事業承継の論点が一つに見えても、実際には株の承継、納税資金、将来の設備投資が絡み合います。

持株会社を使うと、この論点を親会社の株主設計と子会社の事業運営に分けて考えやすくなります。逆に言えば、論点が一つしかない会社では、持株会社を作っても複雑さだけが増えることがあります。

ここまでで分かるのは、持株会社の本質が税金の近道ではなく、所有と資金の流れを組み替える設計だということです。次に、その設計がどんな会社で役立ちやすいのかを見ます。

どんな会社でメリットが出やすいか?

親族内承継で株を散らしたくない会社と相性がいい

親族内承継で一番起きやすいのは、株式が相続人に分かれてしまい、承継後の意思決定が重くなることです。中小企業庁は、株式が分散すると株主管理コストが増え、場合によっては買取請求による資金流出が起こり、円滑な承継を妨げる可能性があると整理しています1。

この点、後継者が持つ持株会社の下に事業会社を置けば、後継者は親会社の支配を通じて経営権を握りやすくなります。株を誰に集めるかを先に決めたい会社ほど、持株会社は使い道がはっきりします。

特に、事業を継ぐ子と継がない子がいる家庭では、会社の株と家族間の公平感をどう両立させるかが難題になります。

持株会社を使えば、その問題が自動で解けるわけではありませんが、少なくとも経営権を持たせる相手を明確にしやすくなります。そのうえで、現金や保険、他の資産と組み合わせて分け方を設計する方が、株そのものを人数で割るより整理しやすい場面があります。

複数事業や将来の再編を考える会社でも使い道がある

持株会社の価値は、親族内承継だけにとどまりません。中小企業庁のガイドラインは、複数の投資先子会社を持つ持株会社が、管理機能などの共通基盤を親会社に集約しつつ、各社を併存させることでグループ全体の最適化やリスク分散を図る例を紹介しています1。

つまり、複数事業を分けて持つ、一社だけを売却する、ある事業だけ外部資本を受け入れる、といった動きがしやすくなります。

加えて、子会社から持株会社に上がる配当には、法人税の受取配当等の益金不算入という仕組みがあります。

国税庁資料では、100パーセント保有の完全子法人株式等と、3分の1超保有の関連法人株式等は、いずれも原則100パーセントが益金不算入で、後者には負債利子の調整が入ると説明されています4。

個人に配当する時の税金まで消えるわけではありませんが、グループ内で資金を上に集め、再投資先を選びやすくなる点は、持株会社の実務上の強みです。

メリットが出る場面は確かにあります。ただし、持株会社が役に立つ会社ほど、導入の手順を誤ったときの痛みも大きくなります。そこで次は、失敗しやすい場所を先に押さえます。

どこでデメリットが大きくなるのか?

譲渡のやり方を間違えると、税負担が出る

持株会社化は方法を誤ると税負担が増えることがあります。典型例は、現経営者が事業会社株式をそのまま持株会社へ売る形です。この場合は譲渡所得課税が先に出る可能性があり、その後の相続や贈与まで含めて見ないと、有利不利を判断できません1。

一方で、持株会社化の方法は売買だけではありません。国税庁は、一定要件を満たす株式交換では旧株の譲渡がなかったものとみなし、株式移転でも同様の特例があると案内しています56。

株式交換は、既にある親会社の株と子会社株を入れ替える方法です。株式移転は、新しく親会社を作ってその株を受ける方法です。どちらを使うかで、現経営者の税負担も、後継者側の持株比率も変わります。

返済原資と管理負担を軽く見ると、後で苦しくなる

もう一つの落とし穴は、返済原資を楽観的に見積もることです。中小企業庁のガイドラインが示す持株会社スキームは、事業会社から持株会社への配当を返済原資にする前提ですが、業績悪化で必要額の配当が出せなければ返済が滞るおそれがあると明記しています1。

持株会社を作れば借入先が自動で増えるわけではなく、金融機関は結局、事業会社の収益力とグループ全体の返済可能性を見ます。

さらに、法人が一つ増える以上、登記、決算、税務申告、銀行対応、役員会運営、契約管理は確実に増えます。

中小企業庁も、個別事情に合わない持株会社スキームを使った結果、後日資金繰りの問題や課税上の疑義が生じた事例があると注意を促しています1。持株会社を作ること自体が目的になると、管理の二重化だけが残りやすいのです。

失敗の多くは、制度理解の不足より、目的と数字が曖昧なまま話を進めることから起こります。最後に、導入前に最低限そろえたい確認項目を整理します。

導入前に確認すべきこと

最低でも比べたい3つの数字

持株会社の提案を受けたら、まずは3つの数字を同じ紙に並べてください。

  • 現状のまま相続や贈与をした場合の株価と税額
  • 持株会社を使う場合の譲渡税、相続税、返済計画の総額
  • 持株会社を維持する年間コストと、管理にかかる時間

大事なのは、持株会社案だけを見るのではなく、現状維持、生前贈与、自己株式取得、株式交換、株式移転まで含めて横に並べることです。

国税庁が示すとおり、株式交換や株式移転は一定要件のもとで譲渡をなかったものとみなす余地があり、持株会社化の入口で税負担が大きく変わります56。

税理士に相談する前でも、少なくともこの比較表があれば、議論が節税の掛け声から設計の話に変わります。

この段階で、どの数字が一番重いかも見えてきます。税額が重いのか、返済年数が長すぎるのか、維持コストのわりに得られる経営上の自由度が小さいのかで、選ぶべき手段は変わります。持株会社が向く会社は、だいたいこの比較をした段階で、作る理由が数字と文章の両方で説明できる会社です。

事業承継税制の締切を確認する

持株会社の話と、法人版事業承継税制は同じではありません。法人版事業承継税制は、一定の要件を満たす非上場株式の相続税や贈与税の納税を猶予する制度ですが、持株会社を作れば自動で使える制度ではありません7。

しかも足元では制度案内の更新が続いています。2025年4月時点の国税庁タックスアンサーでは特例承継計画の提出は2026年3月31日までとされていますが7、2026年2月の中小企業庁資料では、その提出期限を2027年9月末まで延長する方向が示されています8。

こうした動きがある以上、最新の公表資料を確認することと、都道府県窓口、税理士、金融機関に同時に当たることは、実務ではほぼ必須です。

持株会社は、税金を小さくするための裏技ではなく、株を誰に集め、資金をどこで調達し、事業をどう残すかを整理するための器です。親族内承継で株を散らしたくない会社や、複数事業の整理まで見据える会社では有力な選択肢になります。

一方で、税額試算と返済計画が弱いまま導入すると、むしろ重荷になりやすい仕組みでもあります。

最初に考えるべき問いは、持株会社でいくら得をするかではなく、持株会社がないと何が困るかです。そこが言葉で説明できるなら、初めて持株会社は有力な候補になります。

出典・参考資料

  1. 「事業承継ガイドライン」中小企業庁 ↩

  2. 「事業承継・集約・活性化支援資金」日本政策金融公庫 ↩

  3. 「No.4638 取引相場のない株式の評価」国税庁 ↩

  4. 「受取配当等の益金不算入」国税庁 ↩

  5. 「No.1526 株式交換により株式を譲渡した場合の譲渡所得等の特例」国税庁 ↩

  6. 「No.1527 株式移転により株式を譲渡した場合の譲渡所得等の特例」国税庁 ↩

  7. 「No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)」国税庁 ↩

  8. 「今後の検討の方向性について (事務局資料①)」中小企業庁 ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年3月28日

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