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ブログ|経営・労務

従業員承継はどこまで現実的か? 社内事業承継の仕組みやメリット・デメリット、注意点

従業員承継を検討するときの判断軸が分かります。親族承継やM&Aとの違い、社長交代だけでは足りない理由、株式移転や個人保証、使える支援策まで実務に沿って整理しました。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年3月27日
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目次

  • なぜ今、従業員承継を考える企業が増えているのか?
  • 従業員承継の仕組み
  • メリットとデメリット
  • 何から手をつければいいのか?
補助金フラッシュ 事業計画

親族に後継者がいないと、事業承継はM&Aしかないと思われがちです。しかし実際には、社内の役員や従業員に引き継ぐ従業員承継が、現実的な選択肢として広がっています。
ただし、社長を決めれば終わりではありません。株式の移転、資金調達、個人保証の整理まで設計して、ようやく承継が形になります。
本記事では、社内事業承継の仕組みとメリット、見落としやすいデメリット、最初に確認したい注意点を整理します。

目次

  • ●なぜ今、従業員承継を考える企業が増えているのか?
  • 2社に1社が後継者問題を抱えている
  • 代表者交代の流れは、親族中心から内部昇格へ
  • ●従業員承継の仕組み
  • 役員や従業員に経営・資産を引き継ぐ
  • 難所は後継者の能力より、資金設計
  • ●メリットとデメリット
  • メリットは、理念と現場理解をつなぎやすいこと
  • デメリットは、所有と経営がずれると不安定になりやすいこと
  • ●何から手をつければいいのか?
  • 候補者を決める前にすべきこと4つ
  • 公的支援を活用する
従業員承継はどこまで現実的か? 社内事業承継の仕組みやメリット・デメリット、注意点

なぜ今、従業員承継を考える企業が増えているのか?

2社に1社が後継者問題を抱えている

帝国データバンクの2025年調査では、後継者がいない、または未定の企業は50.1%でした。改善傾向とはいえ、まだ2社に1社が後継者問題を抱えています。12

数字の見方を間違えると、危機を必要以上に煽るか、逆に安心しすぎるかのどちらかに振れます。大事なのは、危機の大きさよりも、親族以外への承継が現実の選択肢として広がっていることです。ここを押さえると、従業員承継を単なる代替案ではなく、自社に合う承継方法として検討しやすくなります。

代表者交代の流れは、親族中心から内部昇格へ

その変化は、代表者交代の実態にも表れています。2025年に代表者交代した企業の速報値では、血縁関係によらない役員や社員を登用した内部昇格が36.1%、同族承継が32.3%でした。

2024年実績でも両者の差は0.7ポイントまで縮んでおり、社内から後継者を立てる流れはかなり強くなっています。2

親族内承継が減り、いきなりM&Aに向かう企業ばかりが増えているわけではありません。まず社内で引き継げないかを探る企業が増えている、というのが今の実像に近いです。

ここまでで背景は見えました。次に、従業員承継が実際にどんな仕組みで進むのかを見ます。

従業員承継の仕組み

役員や従業員に経営・資産を引き継ぐ

従業員承継は、親族以外の役員や従業員に引き継ぐ方法です。経営能力のある人を選びやすく、長く社内で働いた人なら経営方針の一貫性を保ちやすいことが強みとされています。34

ただ、実務では経営の承継と所有の承継を分けて考える必要があります。社長に就いても、株式が先代や親族に残ったままなら、重要な判断のたびに調整が要ります。

逆に、株式まで一度に買い取ろうとすると、後継者の資金負担は一気に重くなります。従業員承継は人事の話に見えて、実際には資本の設計が中心にあります。

さらに中小企業庁のガイドラインは、承継すべきものを人、資産、知的資産の三つに分けています。知的資産とは、取引先との信頼、営業のやり方、現場に蓄積したノウハウのことです。従業員承継がうまくいく企業は、肩書と株式だけでなく、この見えにくい資産も計画的に渡しています。4

難所は後継者の能力より、資金設計

ここで難所になるのが資金設計です。中小企業庁のガイドラインでも、役員買収(MBO)や従業員買収(EBO)では、株式や事業用資産の取得資金をどう調達するかが大きな壁だと整理されています。

金融機関からの借入れ、報酬の引上げ、会社からの借入れ、特別目的会社(SPC)やファンドを使う方法まで選択肢はありますが、どれも法務、税務、返済計画を合わせて見なければなりません。4

最近は、後継候補はいるのに株式の承継が進まない企業向けに、金融機関が支援の仕組みを作る動きも出ています。

2026年には野村ホールディングス、伊藤忠商事、三井住友信託銀行が、内部承継と事業成長を支援するファンドの設立を公表しました。従業員承継は、金融の設計が前提になる段階に入っています。5

また、株式を一度に渡せない場合は、種類株式や従業員持株会を使いながら、段階的に資本を移す考え方もあります。従業員承継の設計は一つではなく、時間を味方に付ける組み方ができます。4

だから、候補者の資金力だけで諦めるのは早い一方、借りられるから進めればよいわけでもありません。返済原資をどこから生むのか、先代がどこまで関与するのかまで決めておかないと、承継後の経営が苦しくなります。資金調達は承継の最後に処理する作業ではなく、最初から中心に置く論点です。4

メリットとデメリット

メリットは、理念と現場理解をつなぎやすいこと

従業員承継の大きなメリットは、会社の文脈を残しやすいことです。取引先との付き合い方、現場の癖、暗黙の判断基準は、外から来た人より社内の人の方が引き継ぎやすい場面があります。

親族内に適任者はいないが、会社の文化や地域との関係は守りたい。そういう企業では、従業員承継はM&Aと親族承継の間にある現実的な選択肢になります。34

もう一つの利点は、承継前に候補者を見極めやすいことです。現場での判断、部門横断の調整、数字への向き合い方を日常の仕事の中で見られるため、外部採用よりも人物評価の精度を上げやすい面があります。これは後継者教育を進めやすいという意味でも大きな利点です。

ただし、すべての企業に向くわけではありません。社内に引き受け手がいない場合や、事業の再編や成長のために外部資本や販路が必要な場合は、M&Aの方が合うこともあります。4

デメリットは、所有と経営がずれると不安定になりやすいこと

一方で、デメリットもはっきりしています。代表権だけを先に渡し、株式は後から移す形になると、所有と経営のずれが起きやすくなります。株主の監視が働くことで透明性が上がる面はありますが、先代や他の株主の意向が強すぎると、後継者の意思決定は不安定になります。

中小企業庁のガイドラインでも、所有と経営の分離は慎重に判断すべきだと整理されています。4

見落としやすいのは、後継者本人だけの問題ではないことです。ガイドラインでは、親族株主の了解、他の役員や従業員との関係、個人保証の扱いが重要な留意点とされています。

特に個人保証は、後継者の家族が不安を感じて承継自体が止まることもあるため、最後に処理する論点ではありません。人選より先に、関係者の納得と保証の整理を並行して進める必要があります。4

何から手をつければいいのか?

候補者を決める前にすべきこと4つ

では、何から始めるべきでしょうか。最初にやるのは、次の承継の論点を同じ紙に並べることです。

  • 誰に経営を渡すか
  • 株式と事業用資産をどう移すか
  • 個人保証と借入れをどう整理するか
  • 家族、親族株主、社内にどう説明するか

この四つを一緒に見る理由は単純です。人事、株式、借入れ、説明先が別々に動くと、どこかで話が止まるからです。社長候補だけ先に発表しても、株式の移し方や保証の整理が曖昧なら、社内も金融機関も動きにくくなります。

従業員承継で重要なのは、候補者選びの速さではなく、論点を分けずに扱う順番です。

準備の始点も重要です。中小企業庁のガイドラインでは、現経営者が引退時期を定め、そこから後継者育成に必要な期間を逆算して動くことが大切だとしています。

従業員承継は候補者を日常業務で見られるぶん、教育の計画を立てやすい反面、先延ばしにするとその利点が消えます。4

公的支援を活用する

相談先は、なるべく早く公的支援を使うのが安全です。事業承継・引継ぎ支援センターは全国47都道府県にあり、親族内承継、従業員承継、M&Aまで一貫して相談できます。中小企業庁の案内では、相談や計画策定支援などを原則無料で受けられます。67

税制面では、法人版事業承継税制の特例措置が親族外の後継者にも広がっており、使えれば贈与税や相続税の負担を大きく抑えられます。

ただし、特例承継計画は2026年3月31日まで、承継の実行は2027年12月31日までという期限があります。制度は強力ですが、期限管理まで含めて設計する必要があります。8

金融面も同時に確認しておくと、議論が止まりにくくなります。中小企業庁は、承継円滑化法に基づく金融支援や、相続税の支払いに向けた融資なども案内しています。

税理士、金融機関、支援センターを別々に回るのではなく、早い段階で同じ前提を共有する方が、後からの手戻りを減らせます。67

従業員承継は、親族に任せられないときの次善策ではありません。社内に任せたい人がいるなら、有力な選択肢です。

ただし、成功を分けるのは人物評価だけではなく、株式、保証、説明の順序を早めに固められるかどうかです。社長交代の話としてではなく、資本と統治の設計として着手すると、承継は前に進みやすくなります。

出典・参考資料

  1. 「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」中小企業庁 ↩

  2. 「全国後継者不在率動向調査(2025年)」株式会社帝国データバンク ↩

  3. 「事業承継を知る」中小企業庁 ↩

  4. 「事業承継ガイドライン(第3版)」中小企業庁 ↩

  5. 「中小企業内の役職員への事業承継を目的とした内部承継プラットフォーム投資事業有限責任組合を設立」NOMURA ↩

  6. 「事業承継を実施する」中小企業庁 ↩

  7. 「事業承継の支援策」中小企業庁 ↩

  8. 「法人版事業承継税制(特例措置)」中小企業庁 ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年3月27日

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