F-LINEの共同配送は何が違うのか? 食品メーカー5社が物流を競争から外した理由
2017年ごろの記事を見ると、F-LINE(エフライン)は味の素、カゴメ、日清フーズ、ハウス食品の4社による共同物流として紹介されています。ところが現在のF-LINEを調べると、食品メーカー5社の会社として説明されるため、どちらが正しいのか迷いやすいテーマです。
先に結論を書くと、どちらも正しく、見ている段階が違います。F-LINEの事例が示しているのは、共同配送はトラックを一緒に使うだけでは続かず、拠点、データ、納品条件まで共通基盤にできて初めて持続可能なサプライチェーンになるということです。
F-LINEとは?
6社のプロジェクトから始まった物流会社
F-LINEの流れは、2015年に食品メーカー6社が物流の共通基盤づくりに合意したところから始まります。翌2016年には北海道で6社共同配送が始まり、2017年には味の素、カゴメ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社の4社が、北海道と九州の地域会社としてF-LINE株式会社、九州F-LINE株式会社を発足させました。
さらに2018年には、食用油大手の日清オイリオグループを加えた5社が、2019年4月に全国規模の物流会社を立ち上げる契約を締結しています。
その後、味の素物流、カゴメ物流サービス、ハウス物流サービスの一部、旧F-LINE、九州F-LINEの物流事業を統合した新生F-LINE株式会社が実際に発足しました。1234
競合同士なのに、なぜ共同配送が成り立ったのか?
北海道で見えたのは、拠点集約だけで台数が減るということ
F-LINEのわかりやすい成果は北海道です。共同配送の開始時には、6社合計で4か所あった配送拠点を2か所に集約し、共同保管と共同配送を行うことで、CO2排出量を約15%削減する計画が示されました。
実際に国土交通省のインタビュー記事では、1日に必要なトラック台数が75台から60台へ減り、CO2排出量も約15%削減できたと紹介されています。
さらに2023年には、北海道で分散していた2拠点を1拠点に集約する再構築まで進み、CO2排出量の約16%削減が見込まれると公表されました。共同配送の成果は配車の工夫だけではなく、どこに在庫を置き、どこから届けるかという拠点設計で大きく決まるわけです。456
本当に差が出たのは、伝票、データ、納品条件をそろえたこと
もっと重要なのは、F-LINEが車両の共有だけでなく、業務の前提をそろえたことです。北海道で共同配送を始める際には、各社の情報システムを連結し、物流情報を一元化したと国土交通省の取材記事で説明されています。
カゴメのサステナビリティページでも、F-LINEプロジェクトの柱は共同配送だけでなく、中長距離幹線輸送の再構築と、伝票電子化や外装サイズなどの標準化だと整理されています。
つまり、F-LINEは最初から、トラック台数の削減だけでなく、物流の前提条件そのものを合わせる設計で動いていました。57
九州での展開も同じ発想です。国土交通省のインタビューによると、2018年10月に誕生した福岡第一物流センターは加工食品120万ケースを保管でき、6社の在庫を一つの拠点に集約できるようになりました。
しかもセンター開設にあわせて納品伝票の書式も統一され、2019年1月に共同配送が本格化しています。倉庫を一つにするだけではなく、倉庫の中で流れる書類の形まで合わせることが、共同配送を日常業務に変えたわけです。5
この考え方は今も変わっていません。F-LINEの公式サイトでは、発注単位をパレット(荷物を載せる台)の積載単位に合わせることで積み替え作業をなくした事例や、納品先で長時間待機や荷下ろし以外の付随作業が起きている相手を一覧化し、メーカーと連携して得意先や業界団体と交渉した取り組みが紹介されています。
ALISという情報提供システムでは、在庫、入出荷実績、EDI(受発注データの電子交換)も関係者で共有できます。物流の共同化は、トラックを一緒に走らせる前に、情報とルールをそろえる仕事だと見ると、F-LINEの本質がよく分かります。89
ここまでを見ると、F-LINEの強さは物流会社を一社作ったことだけではありません。拠点、書類、データ、納品現場の作業まで、分断されていた工程を少しずつ共通化してきたことにあります。共同配送という言葉だけを見ていると見落としがちですが、実際に成果を左右しているのはその裏側の標準化です。
なぜ今もF-LINEが参考になるのか?
物流の2024年問題で、共同配送は実験ではなくなった
F-LINEが今も参照されるのは、ドライバーの時間外労働規制強化などで輸送力不足が起こりやすくなる物流の2024年問題が、現実の課題になったからです。
農林水産省の白書では、何も対策を講じなければ2024年度に輸送能力が14.2%不足し、2030年度には34.1%不足する可能性があると紹介されています。同じ白書では、物流の2024年問題への対応として必要な対策の上位に、共同配送の活用が25.9%で挙がっています。共同配送は、もう一部企業の先進的な試みではなく、運べる体制を守るための現実的な選択肢になりました。10
しかも白書では、荷主や物流事業者向けのガイドライン策定や自主行動計画づくりが進んだことも紹介されています。農林水産省は、共同輸配送や中継共同物流拠点の整備を補助対象にしており、制度面でも共同化を前提にした物流網の再設計を後押ししています。各社が自社ごとに最適化するやり方のまま耐えるのではなく、共同で運ぶ前提へ政策も動いているわけです。
F-LINEが今読み直されるべきなのは、物流危機が大きく報じられる前から先に運び方を変えていたからであり、共同配送は物量が詰まってから始めるのでは遅いと、実務の視点から教えてくれるからです。1011
フェリーや中継リレーで、トラック一本に頼らない形へ進んでいる
最近のF-LINEを見ると、共同配送の意味がさらに広がっています。2024年3月には、中部・関西から九州への600キロから750キロ程度の輸送で、関西と九州を結ぶフェリーを使った定期海上輸送を開始しました。
別の事例では、関東と中部の中間地点でトラックを交換する中継リレー輸送も紹介されています。前者は輸送の安定化とCO2排出量の削減に役立ち、後者は日帰り運行と復路の荷物確保に役立ちます。F-LINEは共同配送を、単なる共同配車ではなく、輸送手段を増やし、BCP(事業継続計画)にも役立つ基盤として使っているのです。1213
持続可能なサプライチェーンを作るなら、何から始めるべきか?
まず、競争する部分と一緒に持つ部分を分けて考える
F-LINEの設立理念は、端的です。「競争は商品で、物流は共同で」。商品そのもの、価格、販促は各社が競争しながら、保管、幹線輸送、納品条件、情報連携のような基盤部分は共同化する。
この切り分けがあるから、競合同士でも連携が続きます。競争領域と協力領域を先に分けたからこそ、後からルールやシステムをそろえる議論が進めやすくなったと考えられます。14
もちろん、このモデルをそのままどの業界にも移せるわけではありません。F-LINE自身も、常温加工食品で築いた基盤を広げてきたと説明しています。
常温品と低温品では倉庫設備も配送条件も変わり、納品頻度や荷姿が違えば共通化の難しさも一気に上がります。共有しやすい領域から始めるという順番が必要で、F-LINEをまねるなら、まず何が似ていて何が違うのかを見極めるところから入るべきです。15
ここで重要なのは、共同化できない部分を無理に混ぜないことです。価格政策、販促計画、商品ごとの在庫戦略まで一気に共有しようとすると、協業はかえって進みにくくなります。先に共通化するのは、あくまで運ぶための基盤であり、商品の競争力そのものではありません。
拠点、情報、納品条件の順にそろえる
自社で応用するなら、見る順番はシンプルです。第一に、配送先やエリアが重なる相手と拠点の重なりを確認すること。第二に、在庫や入出荷の見える化、EDI、伝票の電子化など、情報の形式を合わせること。第三に、待機時間や積み替え作業が発生している納品条件を見直すことです。
F-LINEも最初から全国一斉ではなく、北海道、九州、関東中部間の幹線と、課題ごとに段階を踏んで広げてきました。157891213
経営判断に落とし込むなら、まずは主要な納品先を上位20件ほど並べ、配送時間帯、温度帯、荷姿、待機時間、積み替えの有無を見える化してみることです。そこに重なりが多い相手がいれば、共同化の有力な候補になります。
さらに、その相手と同じ伝票形式でやり取りできるか、同じパレット単位で納品できるかまで確認できると、検討は一気に具体化します。共同配送の成否は、会議で理念を共有できるかより、現場の条件がどれだけそろっているかに強く左右されます。
この順番を飛ばして、いきなり共同配送だけを始めても長続きしません。F-LINEの事例が教えてくれるのは、持続可能なサプライチェーンは、物流を裏方のコストではなく、複数社で設計する運営基盤として扱ったときに初めて形になるということです。
明日から最初にやるなら、配送先と納品条件の重なりを一枚の表に落とすところから始めてください。共同化できる場所は、そこから見えてきます。
「国内食品メーカー4社、物流事業の合弁会社発足に合意~食品物流の諸課題に対し、更なる食品メーカー協働の取り組みを推進~」味の素株式会社 ↩
「~持続可能な食品物流を目指して~国内食品メーカー5社、2019年4月に全国規模の物流会社を発足 食品メーカー協働により物流諸課題への対応を加速」味の素株式会社 ↩
「~持続可能な物流体制の構築に向けて~国内食品メーカー6社、2016年4月より北海道で共同配送を開始 配送拠点・配送車両の共同利用により輸送効率を改善し、CO2排出量を削減」味の素株式会社 ↩
「令和5年度物流革新に向けた生鮮食料品等サプライチェーン緊急強化総合対策事業のうち中継共同物流拠点施設緊急整備事業の公募の実施について(令和5年度補正)」農林水産省 ↩
執筆者:補助金検索Flash 士業編集部
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