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中小企業の第三者承継(M&A)で先に知っておきたい仕組みとメリット、デメリット

中小企業の第三者承継M&Aを、廃業以外の選択肢としてどう見極めるかが分かります。仕組みの違い、メリット・デメリット、相談前に確認したい注意点を実務目線で整理しました。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年3月27日
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目次

  • 後継者不在なら、廃業しかないのか?
  • 第三者承継の仕組み
  • メリットとデメリット
  • なぜ悪いイメージが消えにくいのか?
  • 最初に着手すべきこと
補助金フラッシュ 事業計画

M&Aという言葉に、良い印象を持っていない経営者も少なくありません。ですが、後継者不在の局面で第三者承継を最初から外してしまうと、最後に残る選択肢はかなり狭くなります。第三者承継(M&A)は現実的な選択肢です。
ただし、悪いイメージが消えないのも理由があります。仕組みが複雑で、相談の仕方を間違えると、途中で身動きが取りにくくなるからです。
本記事では、中小企業の第三者承継の仕組み、メリット・デメリット、検討の最初に確認したいことを順に見ていきます。

目次

  • ●後継者不在なら、廃業しかないのか?
  • 直近データでは、後継者不在は約5割
  • 廃業と比べると、残せるものが違う
  • ●第三者承継の仕組み
  • 株式譲渡と事業譲渡の違い
  • 成約後の統合作業
  • ●メリットとデメリット
  • メリットは、会社の価値を残しやすいこと
  • デメリットは、見えない負担が後から重くなること
  • ●なぜ悪いイメージが消えにくいのか?
  • 不安を強くするのは、相談しにくい契約構造
  • トラブルを避けるには、違和感の段階で止まる
  • ●最初に着手すべきこと
  • 相談先を探す
  • 支援機関を選ぶときに確認したいこと
中小企業の第三者承継(M&A)で先に知っておきたい仕組みとメリット、デメリット

後継者不在なら、廃業しかないのか?

直近データでは、後継者不在は約5割

全国ベースの直近調査では2024年の後継者不在率は52.1%でした1。しかも2025年版中小企業白書では、後継者不在率は改善傾向にある一方、中小企業経営者の年齢はなお高く、60歳以上が過半数を占めると整理されています2。問題が軽くなったのではなく、時間切れが近づいていると見る方が実態に近いはずです。

そのため、第三者承継は例外ではなくなりつつあります。中小機構の2025年報告書でも、事業承継・引継ぎ支援センターへの相談者数は2年連続で2万3千者を超え、第三者承継に関する相談が増加していることから、中小企業にとってM&Aが事業承継の手段として一般化してきたとされています3。

廃業か親族承継かの二択ではないという前提から考え直す必要があります。

廃業と比べると、残せるものが違う

国の事業承継ガイドラインは、承継の基本類型を親族内承継、従業員承継、社外への引継ぎ(M&A)の三つに分けています4。

実務では、この三つのどれも取りにくいときに、初めて廃業が現実味を帯びます。順番が逆になると、まだ残せたはずの雇用や取引先との関係まで、一緒に手放すことになりかねません。

社外への引継ぎには、親族や社内に適任者がいなくても候補を外部に広げられること、現経営者が売却益を得られること、事業改革のきっかけになり得ることがあると、国のガイドラインは明記しています4。

2025年版中小企業白書でも、離島のスーパーが地元の運送会社に承継され、看板と従業員19名の雇用が守られた事例が紹介されました2。第三者承継の価値は、会社を売ることではなく、事業を残すことにあります。

第三者承継の仕組み

株式譲渡と事業譲渡の違い

第三者承継では、実際に使われることが多いのは株式譲渡と事業譲渡です4。株式譲渡は、株主が変わるだけで会社そのものは残る形なので、資産、負債、従業員、取引契約、許認可が原則そのまま続きやすく、手続も比較的シンプルです4。

一方で、簿外債務や偶発債務まで引き継ぐ可能性があるため、見た目が分かりやすいから安全とは限りません4。

事業譲渡は、事業の一部または全部を切り出して移す方法です。必要な資産や事業だけを譲る設計ができる反面、契約や債務、雇用、許認可を個別に移す必要があり、債権者や従業員の同意、登記などの手続が増えます4。

許認可も自動で付いてくるとは限りません4。仕組みの違いを知らずに進めると、後から想定外の負担が噴き出します。

成約後の統合作業

ここまでで、第三者承継は相手を見つければ終わりという話ではないと分かります。実務では、トップ面談、基本合意、デューデリジェンス(Due Diligence、買い手が会社の中身を詳しく確かめる調査)、最終契約、クロージングと段階が続きます5。

しかも中小PMIガイドラインでは、成約はスタートラインで、その後の統合作業(PMI、Post Merger Integration)がM&Aの目的を実現し、効果を最大化するために必要だとされています6。

この統合作業は、成約後に慌てて始めるものではありません。国のガイドラインは、M&Aの検討段階からPMIを意識した準備を進めることが成功の鍵だと示しています6。

従業員への説明、人事制度の扱い、主要取引先との関係、経営理念のすり合わせまで含めて考えないと、契約は終わっても事業は落ち着きません。ここが、一般に想像されるM&Aよりはるかに実務的な部分です。

メリットとデメリット

メリットは、会社の価値を残しやすいこと

第三者承継のいちばん大きな利点は、現経営者が引退しても、会社に蓄積された経営資源をまとめて残せることです。

従業員の雇用、取引先との関係、ブランド、許認可、ノウハウは、単独では売りにくい一方、事業としては価値を持ちます。親族や従業員に継ぐ相手がいなくても、外部の譲受先に引き継げれば、廃業より残せるものが多いのです。

ただし、ここで勘違いしたくないのは、第三者承継が高値売却の近道という意味ではないことです。

譲渡価格は、財務状況、将来収益、許認可の承継可否、経営者保証の扱い、PMIのしやすさまで含めて見られます46。売れるかどうかより、引き継げる状態に整っているかが先に問われます。

デメリットは、見えない負担が後から重くなること

悪いイメージのかなりの部分は、ここから生まれます。中小M&Aガイドラインでも、経営者へのヒアリングだけでリスクを評価することには限界があるとされ、調査が十分でない場合には、最終契約で売り手が負う表明保証や補償の負担が重くなり得ると注意しています5。財務だけでなく、法務、税務、事業の実態まで見られるのは、そのためです。

さらに中小企業庁は、不適切な買手とのM&A後に、経営者保証が解除されないまま売り手が債務を負った事例や、分割払いの譲渡対価や退職慰労金の後払いが履行されなかった事例を公表しています7。

怖いのは、確認不足のまま進むことです。見えにくい負担は、いつも契約の細部に潜んでいます。だからこそ、次に大事になるのは誰に相談できるかです。

なぜ悪いイメージが消えにくいのか?

不安を強くするのは、相談しにくい契約構造

ここまでで仕組みの難しさは見えました。次に大きいのが、相談のしにくさです。中小M&Aガイドラインは、仲介契約やFA契約で専任条項や秘密保持条項があると、他の支援機関へ重ねてマッチング支援を依頼することが難しくなるのが通常だと明記しています5。つまり、ある支援機関に入ったあとで、別の見方を取りにくくなる場面が実際にあります。

一方で国は、その状態を放置してよいとはしていません。経営者保証の扱いなど重要な論点では、士業や事業承継・引継ぎ支援センター、金融機関への相談を秘密保持条項の対象から除外した上で行うべきだと示しています5。相談できないまま進めないことが大切です。

トラブルを避けるには、違和感の段階で止まる

支援機関や買手に少しでも違和感があるとき、遠慮して進める必要はありません。中小企業庁は、不適切な買手とのトラブルに注意を促し、違和感がある場合は弁護士や事業承継・引継ぎ支援センターに相談するよう案内しています7。

ここで大切なのは、契約直前まで進んだから後戻りできないと考えないことです。特に経営者保証を残したままのクロージングや、後払い条件への過度な依存は慎重に見るべきです。

国のガイドラインでも、保証の解除や移行を想定するなら、最終契約に明確に位置付け、クロージング条件や不履行時の条項まで検討すべきだとされています5。怖がるべき場面は、確認を飛ばして前に進むときです。

最初に着手すべきこと

相談先を探す

では、最初の一歩はどこからか。最初の一歩は相談先探しです。 売却先探しから入る必要はありません。

中小企業庁は、事業承継・引継ぎ支援センターを全国47都道府県に置き、事業承継全般の相談、計画づくり、M&Aのマッチング支援を原則無料で行っています89。何から始めればよいか分からない段階でも使えるので、社内だけで抱え込むよりはるかに安全です。

そこで、税理士、弁護士、金融機関、必要に応じて公認会計士と役割分担を決めます。M&A仲介会社や助言役のFA(フィナンシャル・アドバイザー)は重要ですが、全てを一社に任せ切る必要はありません5。

公的窓口を入口にすると、相場観のないまま民間支援だけで走り出す状態を避けやすくなります。

支援機関を選ぶときに確認したいこと

支援機関を選ぶときは、安いか高いかだけでは足りません。中小企業庁は、契約前に手数料の算定基準、発生タイミング、提供業務の範囲、担当者の資格や経験年数、成約実績まで具体的に説明することを求めています10。

加えて、登録支援機関データベースでは、手数料体系の公表も始まっています11。

最初に確認したいのは、次の4点です。

  • 仲介なのか、FAなのか
  • どの工程まで支援し、どこからは外部専門家に任せるのか
  • 手数料は何を基準に計算し、いつ発生するのか
  • 弁護士や税理士、金融機関への相談を妨げない契約になっているか

もう一つ大事なのは、最初から一社に判断を預けないことです。中小企業庁のガイドラインも、必要に応じてセカンド・オピニオンを取ることを想定しています510。

候補先探し、企業価値の見方、契約条件の妥当性は、それぞれ別の専門性が要るからです。誰に相談してよいか分からない段階ほど、公的窓口と既存の顧問を起点にした方が判断を誤りにくくなります。

第三者承継は、廃業を避けるための苦しまぎれの手段ではありません。早めに比較し、相談できる相手を確保し、仕組みを理解して進めれば、中小企業の事業承継として十分に現実的です。廃業しかないと決める前に、第三者承継を検討する価値はあります。

出典・参考資料

  1. 「全国後継者不在率動向調査(2024年)」帝国データバンク ↩

  2. 「2025年版 中小企業白書(HTML版) 第9節 事業承継」中小企業庁 ↩

  3. 「令和6年度に認定支援機関等が実施した事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書」独立行政法人中小企業基盤整備機構 ↩

  4. 「事業承継ガイドライン」中小企業庁 ↩

  5. 「中小 M&A ガイドライン(第3版)」中小企業庁 ↩

  6. 「中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~」中小企業庁 ↩

  7. 「M&Aに関するトラブルにご注意ください」中小企業庁 ↩

  8. 「事業承継を実施する」中小企業庁 ↩

  9. 「事業承継の支援策」中小企業庁 ↩

  10. 「中小M&Aガイドライン改訂(第3版)に関する概要資料」中小企業庁 ↩

  11. 「M&A支援機関登録制度ホームページにおいて、登録支援機関の手数料体系の公表を開始しました」中小企業庁 ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年3月27日

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