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ブログ|経営・労務

株式譲渡と事業譲渡の違いは何か? M&Aと事業承継で迷ったときの判断軸

株式譲渡と事業譲渡の違いを、税金だけでなく契約、許認可、従業員承継、買い手のリスクまで整理。M&Aや事業承継で、どちらを選ぶ前に何を確認すべきかを分かりやすく解説します。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年3月27日
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目次

  • そもそも何が動くのか?
  • 税金は誰にかかるのか?
  • それでも買い手が事業譲渡を選ぶ理由
  • 株式譲渡一択と決めない方がいい場面
  • 迷ったときは何から決めればいいのか?
補助金フラッシュ 事業計画

M&Aや事業承継の話になると、株式譲渡の方が得、事業譲渡は損、という言い方を見かけます。たしかに、売り手の手取りだけを見ると、株式譲渡が有利になりやすい場面は多くあります。
ですが、実際の案件では、税金だけで結論を出すと後で契約、許認可、従業員承継で詰まりやすくなります。
この記事では、株式譲渡と事業譲渡の違いを、売り手と買い手の両方から整理します。読み終える頃には、どちらを選ぶ前に何を確認すべきかが見えてきます。

目次

  • ●そもそも何が動くのか?
  • 株式譲渡は会社ごと引き継ぐ
  • 事業譲渡は必要な事業だけ切り出す
  • ●税金は誰にかかるのか?
  • 株式譲渡は売り手個人の税率が読みやすい
  • 事業譲渡は売却代金の全額に消費税が付くわけではない
  • ●それでも買い手が事業譲渡を選ぶ理由
  • 買い手は隠れた負債を切り分けたい
  • ●株式譲渡一択と決めない方がいい場面
  • 不動産税の特例や欠損金で結論が変わる
  • ●迷ったときは何から決めればいいのか?
  • 最初に確認したい3つの質問
株式譲渡と事業譲渡の違いは何か? M&Aと事業承継で迷ったときの判断軸

そもそも何が動くのか?

最初に押さえたいのは、譲る対象がそもそも違うという点です。株式譲渡は会社そのものを引き継ぐ方法で、事業譲渡は必要な事業だけを切り出して渡す方法です。ここを曖昧にしたまま税金の話から入ると、論点がずれてしまいます。

最初の一問目は、どちらが得かではなく、何を誰に渡すのかです。ここが定まると、後の比較がかなり楽になります。たとえば、会社全体を次のオーナーに渡したいのか、一部事業だけを残して売りたいのかで、出発点から選ぶ方法が変わります。1

株式譲渡は会社ごと引き継ぐ

株式譲渡では、変わるのは株主です。会社という箱はそのまま残るため、会社が持つ資産、負債、従業員、取引先との契約、許認可は原則としてそのまま続きます。

中小企業庁の整理でも、株式譲渡は他の手法に比べて手続が相対的に簡便とされます。取引先との契約や営業許可をなるべく切らしたくない案件では、この連続性が大きな意味を持ちます。さらに、会社が同じまま続くため、現場の運営を止めずに引継ぎやすいのも利点です。

ただし、簿外債務と偶発債務、つまり帳簿に出にくい負担や後から発生し得る負担も引き継ぎやすく、過去の未払残業代や後で問題化する契約違反まで買い手が抱えることがあります。

株式譲渡が楽に見えるのは事実ですが、買い手にとっては楽な分だけ丸ごと引き受ける方法でもあります。賃貸借契約などに支配権変更に関する条項が入っていると、株式譲渡でも事前協議が必要になるため、思ったほど完全自動ではありません。1

事業譲渡は必要な事業だけ切り出す

事業譲渡では、資産、負債、契約、許認可を個別に動かします。譲る事業を選べるので、買い手は欲しい事業だけを取り込めますが、その代わり契約の切替え、債権者や従業員の同意、不動産があれば登記の手続が必要になります。

厚生労働省は、事業譲渡で労働契約を承継させる場合、承継予定の労働者から承諾を得る必要があると明示しています。

さらに、許認可は譲り受け側に承継されないことが多く、買い手が新たに取得し直さなければならない場合があります。会社法上、全事業の事業譲渡では株主総会の特別決議が要る場面もあり、契約をまとめるだけでは終わりません。

部分売却がしやすいのは長所ですが、手続の重さまで含めて価格とスケジュールに影響しやすい方法です。12

税金は誰にかかるのか?

株式譲渡と事業譲渡の差が大きく見えるのは、同じ会社を売る話でも、誰に課税されるかが違うからです。株式譲渡では主に株主側の税金が問題になります。事業譲渡では、まず事業を持っている会社側に売却益が立ち、そのうえで消費税や不動産関連の税金が論点に入ります。

だから、同じ売却額でも、税金が立つ場所が違えば最終的な残り方も変わります。株主が売るのか、会社が売るのかという違いは、税率そのもの以上に重要な出発点です。3456

株式譲渡は売り手個人の税率が読みやすい

オーナーが自社株を売る株式譲渡では、株式の譲渡益は申告分離課税で計算され、税率は所得税15%と住民税5%が基本です。

平成25年から令和19年までは、ここに復興特別所得税が上乗せされます。しかも、株式などの有価証券の譲渡は消費税の非課税取引です。売り手から見ると、税金の設計が比較的読みやすいため、いわゆる2割前後で把握しやすいのが株式譲渡の強みです。

もっとも、買い手が簿外債務を強く警戒すると価格や売り手が契約で約束する保証条項で調整されるため、税率だけ見て得だと決め切れない点には注意が必要です。売り手にとって見やすい税率と、最終契約で残る手取りは、必ずしも同じではありません。371

事業譲渡は売却代金の全額に消費税が付くわけではない

ここは、経験者でも意外と誤解しやすいところです。事業譲渡では、売却代金の全額に消費税が付くわけではありません。国税庁は、土地の譲渡や株式などの有価証券の譲渡を非課税取引としています。

一方で、事業に使っていた建物、機械、車両などの譲渡は消費税の課税対象です。つまり、土地は非課税でも建物は課税され得るというように、資産ごとに見分ける必要があります。

事業譲渡の損得を見たいなら、大ざっぱな税率比較より先に、何をいくらで動かすのかを資産ごとに分解する方が実務的です。価格の内訳が曖昧なまま基本合意を結ぶと、後から税額の見込みがずれて、売り手も買い手も不満を抱えやすくなります。745

それでも買い手が事業譲渡を選ぶ理由

売り手だけを見ると株式譲渡に気持ちが傾きやすいのですが、買い手の立場に立つと景色が変わります。買い手が見ているのは節税だけではなく、将来の事故をどこまで引き受けるかです。価格交渉で揉めるのも、結局はこのリスクの配分が原因であることが少なくありません。

ここまでで、譲る単位と税金の立ち方が分かりました。次は、買い手がどこで事業譲渡を選ぶのかを見ます。売り手が感じる有利不利と、買い手が感じる安心感は、しばしば一致しません。1

買い手は隠れた負債を切り分けたい

事業譲渡の大きな魅力は、特定の事業や資産だけを選んで買えることです。中小企業庁の資料でも、事業譲渡は買い手にとって簿外債務や偶発債務のリスクを遮断しやすいと整理されています。過去の労務問題、訴訟リスク、不要な資産、使わない部門を持ち込みたくない買い手にとっては、この点がかなり大きいのです。

赤字部門や遊休資産を抱えたまま買うのか、核となる事業だけを切り出して買うのかで、買収後の立て直しやすさは大きく変わります。買い手が事業譲渡にこだわるのは、買収後の統合を楽にしたいからでもあります。ここは見落としがちです。

株式譲渡か事業譲渡かは、税率の勝負ではなく、リスクをまとめて引き継ぐか、切り分けて引き継ぐかの選択でもあります。1

株式譲渡一択と決めない方がいい場面

SNSでは、事業譲渡は4割、株式譲渡は2割、という形で語られがちです。感覚としては分かりやすいのですが、制度上はそこまで単純ではありません。少なくとも、4割対2割は固定の税率表ではないと理解しておいた方が安全です。

売り手が個人か法人か、資産の中身に不動産があるか、欠損金が使えるかで結論は動きます。言い換えると、同じ事業を同じ価格で売るとしても、案件の形が違えば税負担の見え方はかなり変わります。だから、短い言い切りほど慎重に扱う必要があります。3689

不動産税の特例や欠損金で結論が変わる

たとえば、事業譲渡で不動産を動かすと、不動産取得税や登記のコストが論点になります。大阪府の案内でも、不動産の取得には不動産取得税がかかると示されています。

他方で、中小企業庁は、一定の経営力向上計画に基づく事業譲渡等では、不動産取得税や登録免許税の軽減措置を案内しています。軽減後の不動産取得税は、土地と住宅で3.0%から2.5%、住宅以外の家屋で4.0%から3.3%になる仕組みです。

さらに、日本貿易振興機構の説明では、中小法人の例示でも総合税率には幅があり、東京都の例では22.40%、24.86%、36.80%と所得区分で差があります。事業譲渡だから常に4割、株式譲渡だから常に2割、とは言えません。610118

もう一つ大きいのが、繰越欠損金、つまり過去の赤字の繰越です。国税庁は、青色申告書を提出した法人に生じた欠損金額について、一定の条件の下で各事業年度開始の日前10年以内のものを損金算入できると案内しています。赤字が残っている会社では、事業譲渡で生じた利益をそのまま高い税率で負担するとは限りません。

逆に、欠損金がなく、不動産や課税資産が多い案件では、事業譲渡の負担感が一気に重く見えることがあります。ここまで分かると、雑な早見表より、案件ごとの試算表の方がずっと重要だと分かります。数字の比較は、SNSの相場観ではなく、対象資産の内訳と会社の税務状況を入れた試算で行うべきです。9

迷ったときは何から決めればいいのか?

結局のところ、先に税率表を見るより、先に案件の形を決める方が失敗しにくくなります。中小企業のM&Aでは、価格交渉の前に整理しておくべき論点がだいたい決まっています。ここを曖昧にしたまま大枠の条件を決める基本合意に進むと、後半で条件が崩れやすくなります。1

最初に確認したい3つの質問

判断の出発点は、次の3つです。

  1. 誰に税金が立つのか。 株主なのか、会社なのか、買い手側にも不動産関連の税負担が出るのかを先に分けます。36
  2. 何を確実に引き継ぎたいのか。 許認可、主要契約、従業員、不動産が核なら、株式譲渡の方が進めやすいことがあります。逆に一部事業だけ切り出したいなら、事業譲渡が候補になります。12
  3. 何を引き継ぎたくないのか。 過去債務、不要資産、採算の悪い部門を切り分けたいなら、事業譲渡の意味が出てきます。1

この3つを整理するためには、事業別の損益、主要契約の一覧、許認可の一覧、不動産の有無、従業員の配置を早めに並べておくのが有効です。資料がそろっていれば、税理士は税額の比較をしやすくなり、弁護士は承継できる契約と承継しにくい契約を分けやすくなります。方法論の議論を先にするより、前提条件をそろえる方が打合せは前に進みます。税理士だけ、弁護士だけに個別相談すると、税務と契約の前提がずれて結論が揺れやすいので、同じ資料を同じタイミングで共有するのが効果的です。

売り手の手取りだけなら株式譲渡が有力ですが、M&Aや事業承継の最適解はそれだけでは決まりません。誰に課税され、何を承継し、何を切り離したいのか。その順番で整理すると、株式譲渡と事業譲渡の違いは、税金の話から実務の話へつながって見えてきます。価格だけでなく、成立しやすさと引継ぎ後の運営まで含めて比べると、判断はかなりぶれにくくなります。12

出典・参考資料

  1. 「(参考資料1)中小 M&A の主な手法と特徴」中小企業庁 ↩

  2. 「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針の概要」厚生労働省 ↩

  3. 「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」国税庁 ↩

  4. 「No.3240 個人が事業用建物等を譲渡した場合の消費税」国税庁 ↩

  5. 「No.6931 消費税等と譲渡所得」国税庁 ↩

  6. 「不動産取得税」大阪府 ↩

  7. 「No.6201 非課税となる取引」国税庁 ↩

  8. 「3.3 法人所得課税の概要(法人税・法人住民税・事業税)」日本貿易振興機構(JETRO) ↩

  9. 「No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」国税庁 ↩

  10. 「事業承継等に係る不動産取得税の特例」中小企業庁 ↩

  11. 「事業承継に関する主な支援策 (一覧)」中小企業庁 ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年3月27日

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