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ブログ|経営・労務

会社法に中小企業の定義はあるのか?監査と会計基準が決まる仕組みを整理

会社法に中小企業の定義がない理由と、監査の要否、会計基準の選び方を整理します。会計監査人設置会社が中小会計指針を使えない背景も含め、社内説明に使える判断材料が揃います。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年2月11日
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目次

  • 会社法に中小企業の定義はあるのか?
  • 監査の要否はどこで決まるのか?
  • 会計基準は何に準拠すればいいのか?
  • 会社法を前提にした決算はなぜ重くなるのか?
  • 実務で迷わないための確認手順
補助金フラッシュ 事業計画

中小企業向けの制度を調べていると、会社法でも中小企業の定義があるはずだと考えがちです。ところが、会社法の条文は企業の大小を中小企業と大企業で分けません。代わりに大会社などの区分と、会計監査人を置くかどうかで、監査や会計基準の扱いが変わります。
この記事では、区分の考え方と、会計監査や会計基準の選択が実務に与える影響について整理します。

目次

  • ●会社法に中小企業の定義はあるのか?
  • 会社法が見ているのは中小かではなく大会社かどうか
  • 中小企業基本法の定義は政策の原則であり、制度ごとに異なる
  • ●監査の要否はどこで決まるのか?
  • 大会社などは会計監査人を設置する必要がある
  • 公開会社=上場企業ではない
  • ●会計基準は何に準拠すればいいのか?
  • 会社法は企業会計の慣行という枠だけを示す
  • 会計監査人設置会社は中小会計指針を使えない
  • ●会社法を前提にした決算はなぜ重くなるのか?
  • 後戻りを減らすには決算と税務を分けて考える
  • ●実務で迷わないための確認手順
  • 最初に区分判定、監査の有無、読み手を確認する
  • 顧問や監査人に相談するときは前提条件を言語化する
会社法に中小企業の定義はあるのか?監査と会計基準が決まる仕組みを整理

会社法に中小企業の定義はあるのか?

会社法が見ているのは中小かではなく大会社かどうか

最初に押さえたいのは、会社法には中小企業という定義がありませんという点です。会社法が用意しているのは、株式会社の機関設計や計算書類のルールを決めるための区分です。代表例が大会社です。大会社は、資本金や負債の規模で判定されます。1

たとえば、資本金が5億円以上、または貸借対照表の負債の部の合計が200億円以上になると大会社に該当します。1 逆に、従業員が多くても資本金と負債が基準を下回れば、大会社には当たりません。会社法の区分は、規模感をざっくり測るためのものではなく、計算書類と機関設計のルールを切り替えるスイッチだと捉えると理解が進みます。

ここで大事なのは、会社法の区分は税制優遇や補助金の対象を決めるためのものではないことです。会社法の目的は、会社が作る計算書類や、株主への説明の土台を整えることにあります。そのため、一般的にイメージされる中小企業と、会社法上の大会社に該当する会社は、必ずしも一致しません。こうした区分が、次の章で見る監査の要否を左右します。

中小企業基本法の定義は政策の原則であり、制度ごとに異なる

一方で、世の中でよく使われる中小企業の定義は、中小企業基本法を起点に整理されます。業種ごとに資本金や従業員数の基準が置かれており、政策対象の原則として示されています。たとえば製造業などでは、資本金3億円以下または従業員300人以下といった基準が使われます。2

ただし、中小企業庁自身も、中小企業基本法の定義はあくまで原則であり、法律や制度によって中小企業として扱う範囲は変わり得ると明記しています。2 つまり、補助金、税制、金融支援などの文脈では、同じ会社でも扱いが変わる可能性があります。補助金の要件確認や税制判断では、会社法の区分に読み替えず、制度側の定義をそのまま確認する方が安全です。

会社法の実務で迷いやすいのは、ここで基準が二重になることです。会社法の区分と、政策や税務の区分は目的が違うため、同じ言葉でも結論がずれます。だからこそ、会社法の話をするときは会社法の物差しに戻る必要があります。

監査の要否はどこで決まるのか?

大会社などは会計監査人を設置する必要がある

会社法の監査で中心になるのが会計監査人です。会計監査人は、公認会計士または監査法人が就き、計算書類などを監査します。会社法では、大会社など一定の会社に会計監査人の設置を求めています。1 そのため、監査の有無を判断するときは、まず大会社に当たるかどうかを確認し、次に会社が選んだ機関設計(任意で会計監査人を置いたか)を確認します。

ここで注意したいのは、会計監査人を置く会社は大会社だけではないことです。非上場でも、金融機関からの要請や内部管理の強化のために、任意で会計監査人を置くケースがあります。会計監査人を置いた瞬間から、決算の作り方も説明の仕方も、監査を前提に設計し直す必要が出てきます。監査契約の締結や会計方針の見直しなど、導入時の作業も想定しておくと現場が混乱しにくいです。

監査があると、証憑の整備や見積り根拠の文書化など、日々の経理のやり方にも影響します。数字が合っているだけでは足りず、なぜその数字になったのかを説明できる状態が求められます。続いて、公開会社という言葉の意味も確認します。

公開会社=上場企業ではない

会社法で出てくる公開会社は、株式の譲渡制限がない株式会社を指します。一般に使われる公開企業や上場企業という言い方とは、切り口が違います。1 上場していなくても公開会社に該当し得ますし、逆に上場していても定款や制度設計の文脈で説明が必要になる場面があります。

実務でのポイントは、会計や監査の論点を話すときに、公開会社という言葉を上場と読み替えないことです。公開、非公開という言葉だけで判断せず、会社法の定義に戻るのが近道になります。次は、会計基準をどう選ぶかを整理します。

会計基準は何に準拠すればいいのか?

会社法は企業会計の慣行という枠だけを示す

会社法は、株式会社の会計は一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うと定めています。1 さらに会社計算規則では、規定の解釈や適用にあたって、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準などを斟酌すべきとしています。3 ここから分かるのは、会社法が特定の会計基準を一つに固定していないことです。

とはいえ、自由に選べるという意味でもありません。会社法の計算書類は、株主や金融機関に説明するための文書です。読み手が理解でき、比較できる枠組みで作る必要があります。計算書類は貸借対照表や損益計算書などを含み、承認手続や外部説明の土台になります。

ここで登場するのが、上場企業向けの企業会計基準(日本基準、JGAAP)と、非上場の中小企業向けに整理された中小会計指針や中小会計要領です。4 中小会計指針は、計算書類の作り方や注記の考え方まで一定の水準で整理した枠組みです。一方の中小会計要領は、より簡便に使えることを意識した枠組みとして公表されています。5 この枠の中で、監査の有無や利害関係者の期待が実務の選択肢を狭めます。

会計監査人設置会社は中小会計指針を使えない

中小企業の会計に関する指針は、適用対象から会計監査人を設置する会社を除くと明記しています。しかも、大会社以外で任意に会計監査人を設置する株式会社も含むと書かれています。6 このため、非上場であっても会計監査人を置くと、中小会計指針を前提にした運用は基本的に選べなくなります。

では、その場合に何に準拠するのか。監査実務の整理として、日本公認会計士協会のQ&Aは、会計監査人設置会社では我が国で一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(JGAAP)が計算書類にも適用されると説明しています。4 ここが、非上場の会計監査人設置会社が会計基準選択で迷いやすい理由です。

たとえば、非上場で株主も限られているものの、金融機関との契約条件やグループ内方針の都合で会計監査人を置いた会社を想像してみてください。規模感としては中小企業基本法の基準に収まっていても、会計監査人を置いた時点で中小会計指針の想定外になります。6 この場合は、監査人と共通言語になりやすい枠組みとしてJGAAPを前提にし、会計方針、見積りの根拠、注記の省略可否などを早めに決めた方が、決算期末に慌てずに済みます。4 会計基準の選択は監査の受け方とセットで決まるため、次に決算実務の組み方を確認します。

会社法を前提にした決算はなぜ重くなるのか?

後戻りを減らすには決算と税務を分けて考える

会社法を意識した決算では、会計帳簿を締めて計算書類を形にしたうえで、税金計算のための調整を入れる流れになります。ところが実務では、申告書の作成を優先して、会計の確定と税務の調整が混ざりやすいです。混ざると、税金仕訳の入れ直しや、注記の作り直しが起きやすくなります。たとえば、棚卸の評価や貸倒引当金の見積りを会計として先に固めず、申告調整の都合で後から動かすと、監査で必要な根拠資料の整合も取り直しになります。

会計監査がある会社は、ここに監査対応が乗ります。監査に出す数字をどこで固定するか、固定した数字が株主総会の資料にどう反映されるかまで、順番を決めておかないとスケジュールが崩れます。決算の段取りは、税務作業とは別に設計するという発想が役立ちます。

もう一つの落とし穴は、株主総会や金融機関への提出期限を後から思い出すことです。計算書類の承認手続や監査報告の受領が必要な会社では、書類の完成日が一日でもずれると、関連する日程が連鎖的にずれます。社内の締め切りを決めるときは、提出先の期限から逆算し、会計の確定日と税務の提出日を別々に管理すると混乱が減ります。作業量だけでなく後戻りを減らす設計が鍵になるので、次に確認手順をまとめます。

実務で迷わないための確認手順

最初に区分判定、監査の有無、読み手を確認する

会社法周りで迷ったときは、会計処理の細部から入らない方がうまくいきます。最初に、次の三つを棚卸しすると、相談の論点が整理できます。

  • 会社法上の区分:大会社に当たるか、公開会社かどうか1
  • 会計監査人の有無:設置義務なのか、任意で置いているのか1
  • 計算書類の読み手:株主、金融機関、取引先など、誰が理解すべき文書か

この三点が固まると、会計基準の選択肢が見えてきます。会計監査人設置会社ならJGAAPが前提になりやすく、非設置会社なら中小会計指針や中小会計要領も選択肢になります。4 この前提が揃ったうえで、決算と説明の運用を設計します。 この三点を一枚のメモにして共有すると、経理と経営の前提がずれにくくなります。

顧問や監査人に相談するときは前提条件を言語化する

会計基準の議論が空回りするのは、前提条件が共有されていないときです。相談時には、次のように条件を先に出すと議論が進みます。

  • 会計監査の有無と、監査の目的(法定か、任意か)
  • 計算書類を誰に見せるか、どの水準の比較可能性が必要か
  • 税務の合理化と、会社法上の表示や注記のどちらを優先するか

中小会計指針や中小会計要領は、非上場の中小企業が使いやすいよう設計された枠組みです。65 ただし、会計監査人を置くなら対象外になります。ここを押さえるだけでも、制度の読み違いによる手戻りを減らせます。

最後にもう一度まとめると、会社法の世界では中小企業の定義を探すより、大会社かどうかと会計監査人の有無を先に確認する方が、監査と会計基準の判断が速くなります。1 定款と直近の貸借対照表、会計監査人の設置状況を用意して相談すると、論点がぶれにくいです。 会社法の用語に合わせて説明できると、監査人や金融機関との会話も早くなります。特に初年度は効果が大きいです。

出典・参考資料

  1. 会社法の定義規定(公開会社、大会社など)と、会計の原則や会計監査人の設置義務が規定されている。e-Gov法令検索(2024年5月22日) ↩

  2. 中小企業基本法に基づく中小企業者の定義(業種別の資本金・従業員基準)と、制度により範囲が異なる旨を示している。中小企業庁 ↩

  3. 会社計算規則における解釈・適用上の斟酌規定(第3条)が掲載されている。e-Gov法令検索 ↩

  4. 会社法に基づく計算書類の財務報告の枠組みをQ&A形式で整理し、会計監査人設置会社ではJGAAPが計算書類にも適用されると説明している。日本公認会計士協会(2022年10月13日) ↩

  5. 非上場の中小企業向けに作られた中小会計要領の位置づけと入手方法を説明している。中小企業庁 ↩

  6. 中小会計指針の適用対象から、金融商品取引法適用会社と会計監査人設置会社(任意設置を含む)を除外すると明記している。日本公認会計士協会ほか(2025年9月19日修正) ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年2月11日

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