海外投資や部材調達の話になると、日本政策投資銀行(DBJ)、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)という名前を見かけます。ところが、3機関とも国が関わる支援なので、違いが見えにくいと感じる人は少なくありません。
3機関は同じ支援策ではなく、DBJは出資、JBICは海外向け融資と保証、NEXIは海外リスクを引き受ける保険という役割で動いています。読み終える頃には、自社の案件で最初にどこを調べるべきかがかなり見えてきます。

そもそも3機関の支援は何が違うのか?
共通点は、民間資金を動かす仕組みであること
まず押さえたいのは、3機関の支援が補助金の代わりではないことです。たとえばDBJの特定投資業務は、民間だけでは出しにくい成長資金を時限的に供給する仕組みとして設けられ、2025年3月末までに258件、1兆3,773億円の投融資を決定し、民間投融資7兆9,980億円を誘発したと公表しています。政策金融の狙いは、国が全部出すことではなく、民間が入りにくい局面のリスクを一部引き受けて資金の流れを作ることにあります。
JBICの協調融資や保証、NEXIの保険も同じ方向を向いており、民間の銀行や投資家が動ける条件を整えるための仕組みだと考えると、3機関の違いがぐっと分かりやすくなります。1
違いは、出資、融資、保険の3層に分かれること
違いはシンプルです。DBJは優先株式などを通じて資本性の高いお金を入れ、JBICは海外案件に対して長期融資や保証を組み立て、NEXIは輸出、投資、融資に伴う回収不能やカントリーリスクを保険で引き受けます。
JBIC自身も、産業分野で日本企業のグローバルなサプライチェーン強靱化や再構築を支援すると説明しており、NEXIは民間保険では救済しにくい海外取引リスクをカバーする制度だと明記しています。23
つまり、3機関は競合というより縦に重なる道具箱です。資本が足りないならDBJ、海外事業の資金を組みたいならJBIC、融資は見えているがリスクが重いならNEXI、という見方が出発点になります。
実際の案件では、JBICと民間銀行の融資にNEXIの保険が付くように、複数の仕組みが並走することも珍しくありません。
ここから先は、どの場面でどの道具が前に出るのかを順番に見ていきます。4
DBJが向いている案件を見分ける
まず見るべきは、資金が足りない理由
DBJの強みは、長期で回収する大型投資に対して初期リスクを引き受ける点にあります。特定投資業務は国の一部出資を活用しながら、民間だけでは組みにくい成長資金を供給する制度で、DBJは2024年2月にサプライチェーン強靱化とインフラ高度化を重点分野とするファンドを設けました。支援対象には、重要物資の安定供給や物流、デジタル基盤の強化に資する案件が並びます。1
ここで大事なのは、業種名よりも資金の性質です。銀行融資だけでは返済条件が重すぎるが、事業の戦略性は高い。そんなときに、借金だけでは重いが、普通株だけでも薄まりすぎるという悩みに対応しやすいのがDBJです。補助金の有無より、資本構成をどう組むかが論点になる案件ほど、DBJを調べる意味が大きくなります。
旭化成の事例は、DBJの役割を分かりやすく示す
実例として分かりやすいのが、旭化成のリチウムイオン電池用セパレータ事業です。DBJは2024年4月、北米投資に向けて設立される旭化成バッテリーセパレータに対し、280億円の優先株式引受による出資方針を決定しました。10月には、DBJ サプライチェーン強靱化・インフラ高度化ファンドを活用して出資を実行しています。56
ここで重視されたのは企業の成長だけではありません。日本にとって重要な蓄電池部材の供給力強化に資するかどうかも判断材料になっています。DBJが単なる大型案件の資金手当てではなく、戦略物資の供給網を太くする投資に資本を入れていることが、この事例からよく分かります。
次に見るJBICは、その資金の流れを海外の現場まで伸ばす役割を担います。
JBICは海外案件のどこを支えるのか?
現地銀行を通じて、取引先や販売網まで支える
JBICの特徴は、日本企業の本社だけではなく、海外で動くサプライヤーや販売網まで視野に入れて資金を流せることです。2023年3月に締結されたインドのIndusInd Bank向け案件では、融資総額1億米ドルのうちJBIC分は6,000万米ドルで、みずほ銀行、静岡銀行、常陽銀行との協調融資として組成されました。
資金は、日系建機メーカーの現地サプライヤー、ディーラー、販売金融事業に必要な資金として使われます。支援先が日本企業そのものとは限らず、日本企業の現地エコシステム全体を支える設計になっているのがJBICらしい点です。7
2023年法改正で、外国企業や国内貸付けも視野に入った
JBICを理解するうえで見落としにくい転換点が、2023年法改正です。2023年10月1日に施行された改正法では、日本企業のサプライチェーンや海外事業に必要な基盤を支える外国企業が事業開発等金融の対象に追加され、日本企業のサプライチェーン強靱化のための海外事業資金は国内向け貸付けの対象にも広がりました。
JBIC Todayの解説でも、半導体や蓄電池のように国際分業が進んだ分野では、外国企業や海外子会社を含めて支えないと安定調達にならないと説明されています。
海外の重要な節点まで含めて金融支援する方向へ制度が広がったことが、今のJBICを理解する鍵です。89
NEXIは保険で何を変えるのか?
問題が資金不足ではなくリスクなら、NEXIが前に出る
NEXIは銀行ではありません。NEXIの役割は、海外取引で起きる回収不能や送金不能などのリスクを保険で引き受けることです。
公式サイトでも、輸出、投資、融資に伴う海外取引リスクをカバーする制度だと説明しており、NEXIは100%政府出資の特殊会社として国の政策を反映した引受基準のもとで運営されています。310
この違いは実務上かなり重要です。案件そのものは筋が良く、民間銀行も前向きだが、相手国リスクや信用リスクが重くて最後の一歩が出ない。そうした場面では、出資や融資を増やすより、リスクを保険で薄くするほうが効果的です。
サプライチェーン強靱化の議論でNEXIが入るのは、設備そのものより、そこで生じる不確実性を扱うからだと理解すると迷いにくくなります。
国内貸スキームで、日本企業向け融資にも保険が付く
2023年6月、経済産業省は貿易保険法施行規則を改正し、サプライチェーン強靱化、脱炭素、スタートアップの海外展開などに資する事業について、日本企業が日本の金融機関から海外事業資金を借りる場合も、NEXIの保険対象に加えると公表しました。NEXI自身も同年7月の制度改正で、国内貸スキームに対する支援拡充を明記しています。
しかも同年11月には、一定の重要案件について国内貸スキームの非常保険料率を75%割引する改正も行いました。制度改正後の第1号案件は、JERA向けのLNG輸入資金コミットメントラインで、極度額は1,000億円でした。11121314
相談前に作っておきたい整理メモ
相談先は、所在地よりも負ってほしいリスクで決まる
ここまでを一言でまとめるなら、所在地ではなく、誰に何のリスクを負ってほしいかで相談先が変わります。大型投資で資本性資金が必要ならDBJ、海外の生産や販売の仕組みに長期資金を流したいならJBIC、民間融資は見えているが海外リスクが重いならNEXIです。
実際には重なりもあり、NEXIはJBICと協調して融資する民間金融機関の融資部分に保険を付けることがあると説明しています。3機関の名前だけで判断するより、案件のどこで資金やリスクが詰まっているのかを先に見るほうが早道です。4
最初に作るべきは、リスク分担表
相談前に用意したいのは、立派な事業計画書より、まずリスク分担表です。最低限、次の3点がまとまっていれば、どの機関に近い案件かがかなり見えます。
- 資金を受ける主体は誰か。日本本社、海外子会社、現地の取引先、外国企業のどこか
- 資金の使い道は何か。工場新設、部材調達、販売金融、運転資金、資源確保のどれか
- いちばん重いリスクは何か。初期投資の回収、現地の信用リスク、カントリーリスクのどれか
サプライチェーン強靱化支援は、制度名だけ見ると似ています。けれど中身は、資本を入れる仕組み、融資を組む仕組み、保険で守る仕組みの組み合わせです。案件の構造をこの3つに分けて見れば、DBJ、JBIC、NEXIのどれに相談すべきかはかなり絞れます。
自社の案件で何が止まっているのかを書き出し、資金の受け手、使い道、止まりやすいリスクを一枚に整理したほうが、相談先との会話はずっと具体的になり、社内の判断も早くなります。
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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