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サプライチェーンレジリエンスとは? 南鳥島のレアアースが示す、重要性と強化の進め方

サプライチェーンレジリエンスをどう強化すべきかが分かります。南鳥島のレアアースと各国制度の変化を手がかりに、重要性と実務で見直す順番、代替調達の考え方まで整理しました。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年3月13日
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目次

  • なぜ今、サプライチェーンレジリエンスが経営課題として注目されているのか?
  • サプライチェーンレジリエンスとは何を指すのか?
  • 何を強化すれば、実際に強くなるのか?
  • 国内回帰だけで足りるのか?
  • 最初に何から手をつければいいのか?
補助金フラッシュ 事業計画

サプライチェーンの混乱は、コロナ禍だけの一時的な例外ではなくなりました。南鳥島のレアアースが注目される背景を見ると、調達の評価軸がコスト最優先から、止まっても戻せるかへ変わったことが見えてきます。
要点は、供給網の復元力(サプライチェーンレジリエンス) は在庫を積み増す話ではなく、重要部材の依存先を見える化し、代替手段と復旧手順まで用意することだ、という点です。
本記事では、なぜ重要なのか、何を強化すべきか、どこから着手すればよいかを実務に寄せて整理します。

目次

  • ●なぜ今、サプライチェーンレジリエンスが経営課題として注目されているのか?
  • 南鳥島のレアアースが示した調達リスク
  • 各国が制度で調達の安定性を求め始めた
  • ●サプライチェーンレジリエンスとは何を指すのか?
  • 目標は、止まっても戻せること
  • コスト最安だけでは測れない理由
  • ●何を強化すれば、実際に強くなるのか?
  • まず洗い出すべきは、どこが一本でつながっているか
  • 次に用意すべきは、代替手段と復旧手順
  • ●国内回帰だけで足りるのか?
  • すべてを国内に戻す発想は、コストも柔軟性も失いやすい
  • 優先順位を分けると、投資は現実的になる
  • ●最初に何から手をつければいいのか?
  • 90日で決めたい3つの項目
サプライチェーンレジリエンスとは? 南鳥島のレアアースが示す、重要性と強化の進め方

なぜ今、サプライチェーンレジリエンスが経営課題として注目されているのか?

南鳥島のレアアースが示した調達リスク

2026年2月、海洋研究開発機構は南鳥島の排他的経済水域(EEZ)海域で、レアアース泥の揚泥を確認したと公表しました。まだ採鉱システムの接続試験の段階ですが、このニュースが大きく取り上げられたのは、単なる資源開発の話ではなく、日本の調達リスクを映す事例だからです。1

国際エネルギー機関によると、風力タービン向け磁石で使うレアアースでは、中国が採掘の60%、精製の90%を占め、レアアース磁石の生産もおよそ90%が中国にあります。

つまり問題の核心は資源の絶対量だけではなく、単一国への集中 が産業全体の止まりやすさを高めていることです。2

各国が制度で調達の安定性を求め始めた

この変化は市場の空気ではなく、制度にも表れています。日本では経済安全保障推進法のもとで特定重要物資の安定供給確保を進めており、EUの重要原材料法は単一の第三国への依存を65%以下に抑える目安や、供給網の耐性点検(ストレステスト)、戦略備蓄の考え方を打ち出しました。

米国でもクリーン車向け税制の運用で、重要鉱物の価値がどこで加わったかを追跡する仕組みが強まり、調達経路の説明責任が重くなっています。345

ここで押さえたいのは、サプライチェーンレジリエンスが一部の資源企業だけのテーマではないということです。部材、物流、認証、ソフトウェアのどれであっても、どこか一つに依存が偏れば、売上や納期だけでなく、補助金、税制、規制対応まで影響が及びます。

たとえば、重要部材が一つ欠けるだけで製品が出荷できず、保守部品も止まり、顧客側の設備停止にまで波及することがあります。

ここまでで、重要なのは安く買うことだけではないと分かります。次に、そもそも何をもってレジリエンスと呼ぶのかを整理します。

サプライチェーンレジリエンスとは何を指すのか?

目標は、止まっても戻せること

経済協力開発機構(OECD)は、サプライチェーンレジリエンスを、混乱のあとに通常の運用へ戻る力と定義しています。

分かりやすく言えば、災害、輸出規制、品質問題が起きても、どの部材をどこから代替し、誰が判断し、何日で復旧するかが決まっている状態です。止まっても戻せること が、止まらないこと以上に大切になります。6

この考え方に立つと、国内で全部そろえることだけが正解ではありません。OECDは、レジリエンスはリスクをなくすことではなく、管理することだと整理しており、貿易から全面的に引くことが必ずしも強さにはならないと示しています。7

そのため、レジリエンスを測る指標も変わります。平時の購買単価だけではなく、代替先へ切り替えるまでの日数、輸送ルートを変えたときの追加コスト、品質の再確認に必要な時間まで見ないと、強さは分かりません。調達部門だけでなく、設計、品質保証、営業が同じ前提で話せるようにすることが欠かせません。

コスト最安だけでは測れない理由

実際、企業の行動も変わり始めています。ジェトロの2024年度調査では、アジア・オセアニアに進出する日系製造業の71.5%が、直近5年間で新しい調達先を開拓したと回答しました。

2025年度調査でも、新しい調達先を検討する際に、品質や価格に加えて安定性 と 地理的近接性 を重視する傾向が確認されています。89

ここでのポイントは、コストを無視することではありません。価格は引き続き重要ですが、今は価格だけで比較すると、供給停止時の損失や切り替えの遅れが見えなくなります。

したがって、調達の評価表そのものを見直し、平時の単価と有事の復旧速度を一緒に見る必要があります。次は、そのために何を強化すべきかを具体化します。

何を強化すれば、実際に強くなるのか?

まず洗い出すべきは、どこが一本でつながっているか

最初にやるべきなのは、調達先の数を数えることではありません。売上、顧客契約、法令対応に直結する部材や工程について、どこが 一本でつながった依存先 になっているかを洗い出すことです。一次サプライヤーが複数いても、精製地、認証機関、輸送港、特定ソフトウェアが一つしかなければ、実質的には単線のままです。

米国の重要鉱物ルールが調達経路の詳細な追跡を求めているのは、まさにこの見えにくいボトルネックを把握するためです。自社でも、部材表、加工地、代替可否、再認証にかかる日数、緊急時の決裁者をひと続きで見られるようにすると、何が本当の弱点なのかが見えてきます。5

実務では、地図のような一覧表があると整理しやすくなります。どの製品が、どの部材に依存し、その部材がどの国で加工され、どの港を通り、止まった場合に誰が代替を承認するのかまで並べると、現場の感覚では見えにくかった一本しかない構造が浮かび上がります。

次に用意すべきは、代替手段と復旧手順

弱点が見えたら、次は代替手段です。米国エネルギー省は、強い供給網を作る方向として、供給源を広げる、代替材料を育てる、材料効率を高める、再利用と再資源化を進める、という四つの柱を示しています。企業の実務に置き換えると、代替調達だけでなく、代替設計も持つ ことが重要だという意味です。10

たとえば、同じ部材を別地域から調達できるようにするだけでなく、性能を満たす代替材を事前承認しておく、回収材や再生材を使える製品設計に変える、使用量そのものを減らす、といった打ち手が考えられます。

在庫の積み増しも有効ですが、それは最後の安全弁です。仕様変更や物流迂回の手順まで決まっていないと、在庫が尽きた時点で再び止まります。

さらに言えば、台帳を整えずに高度なシミュレーションへ進んでも、前提が崩れて正しい判断ができません。まず必要なのは、重要部材、リードタイム、代替条件、連絡先がそろった状態をつくることです。

その上で机上演習やシステム上のシナリオ検証に進むと、投資の順番がぶれにくくなります。

ここまでで、強化とは仕入先を増やすことだけではないと分かります。では、国内回帰を急げば解決するのでしょうか。

国内回帰だけで足りるのか?

すべてを国内に戻す発想は、コストも柔軟性も失いやすい

答えは単純ではありません。OECDのレビューでは、サプライチェーンを国内回帰させる取り組みが、世界貿易を18%以上、世界の実質国内総生産(GDP)を5%以上押し下げる可能性がある一方で、レジリエンスを一貫して改善するわけではないと示されています。全面的な国内回帰が正解とは限らない のです。7

理由は明快で、供給網の強さは所在地だけで決まらないからです。国内に戻しても、部素材、設備、熟練人材、電力、物流のどこかが不足すれば別の詰まりが生まれます。

逆に、複数国にまたがっていても、代替先と切り替え条件が明確なら、復旧は速くなります。

優先順位を分けると、投資は現実的になる

そこで必要になるのが、優先順位を分ける ことです。影響が大きく、代替しにくく、再認証に時間がかかるものは、複線化や在庫、国内能力の確保まで含めて手厚く守るべきです。一方で、汎用品まで同じ濃さで守ろうとすると、費用だけが先に膨らみます。

大切なのは、すべてを同じ温度で守ることではなく、止まると困る場所だけを深く守ることです。結果として、在庫、複数調達、設計変更、国内投資のどれに資金を回すべきかが現実的に見えてきます。この整理ができると、経営会議でも現場でも、何に投資すべきかを説明しやすくなります。

最後に、最初の90日で何を決めればよいかをまとめます。

最初に何から手をつければいいのか?

90日で決めたい3つの項目

まず決めたいのは、完璧な全体最適ではなく、止まると困る箇所の把握です。最初の90日 では、次の3項目をそろえるだけでも判断の質が大きく変わります。

  • 重要部材の上位10件を決める。売上、顧客契約、法令対応に直結し、代替に時間がかかるものから並べます。
  • 代替ルートの承認条件を決める。代替サプライヤー、代替材、必要在庫日数、緊急時の決裁者を明文化します。
  • 月1回の演習を入れる。輸出規制、物流停止、品質不良の3場面で、誰が何を判断するかを確認します。

この3項目がそろうと、次に必要なのが在庫なのか、代替調達なのか、設計変更なのかを切り分けやすくなります。

逆に、この順番を飛ばして一律に在庫だけ増やすと、資金を寝かせた割に弱点が残りやすくなります。

南鳥島のレアアースの話は、夢のある資源開発のニュースとして読むこともできます。

ただ、企業実務に引き寄せて見ると、もっと重要なのは、自社の供給網にも同じような偏りがないかを点検することです。

サプライチェーンレジリエンスは保険のような周辺業務ではなく、売上と納期を守るための設計です。担当部署を一つに閉じず、購買、設計、品質保証が同じ表を見る状態をつくることが第一歩になります。

読み終えた今の段階で、まずは重要部材の上位10件を書き出すところから始めるのが現実的です。

出典・参考資料

  1. 「南鳥島EEZ海域でのレアアース泥採鉱システム接続試験の状況について(速報)」海洋研究開発機構 ↩

  2. 「Executive summary – Renewables 2025 – Analysis」IEA ↩

  3. 「サプライチェーン強靱化の取組(重要物資の安定的な供給の確保に関する制度)」内閣府 ↩

  4. 「Critical Raw Materials Act」European Commission ↩

  5. 「U.S. Department of the Treasury Releases Final Rules to Lower Consumer Costs, Continue U.S. Manufacturing Boom in Batteries and Clean Vehicles, Strengthen Energy Security」U.S. Department of the Treasury ↩

  6. 「Keys to resilient supply chains」OECD ↩

  7. 「OECD Supply Chain Resilience Review」OECD ↩

  8. 「2024年度 海外進出日系企業実態調査|アジア・オセアニア編 -景況感はインドで好調、ASEANで回復、中国で低迷-」日本貿易振興機構 ↩

  9. [「2025年度 第24回 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査 [速報版] ―チャンスとリスクの両面で際立つ米中の存在感―」日本貿易振興機構](https://www.jetro.go.jp/ext_images/_News/releases/2026/fb2468413e5d19f0/survey_v3.pdf) ↩

  10. 「Critical Minerals and Materials Program」U.S. Department of Energy ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年3月13日

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