医療機器や体外診断用医薬品を実用化につなげる段階では、臨床研究や治験の費用と体制づくりが大きな壁になります。AMEDの医療機器開発推進研究事業は、薬機法の承認申請や企業への導出を見据えた臨床研究・治験等を推進するための公的支援です。令和8年度公募では、分野と研究ステージごとに研究開発費の規模、期間、提出書類が細かく定められています。
この記事では、令和8年度の公募要領と公募ページにもとづき、対象分野、上限額の考え方、応募要件、提出書類、審査観点、経費の扱いを実務向けにまとめます。123
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 医療機器開発推進研究事業 |
| 対象年度/公募回 | 令和8年度 公募 |
| 最終更新日 | 2026年2月18日 |
| 所管/実施機関/事務局 | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 |
| 補助上限額/補助率 | 支援形態は委託研究開発。研究開発費の規模は1課題あたり年間15,000千円〜80,000千円(間接経費を含まず、分野・分類・クラス等で異なる) |
| 申請期間 | 令和7年10月29日〜令和7年11月26日 12時 |
| 公式一次資料 | 公募ページ 令和8年度 HTML / 公募要領 令和8年度 PDF / 公募説明会資料 令和8年度 PDF |
| 公式一次資料 | 事業ページ HTML / 事務処理説明書・様式集 令和7年度 HTML / よくあるご質問 委託研究開発契約・補助事業 HTML |
| 免責 | 申請可否や経費判断は、当該年度の募集要領・交付要綱等と事務局の案内で最終確認してください。 |

制度の全体像
この事業が支援する範囲
医療機器開発推進研究事業は、医療機器や体外診断用医薬品の実用化に向けて、臨床研究、医師主導治験、企業治験、性能評価試験、患者レジストリ活用など、臨床評価の局面を中心に支援する事業です。公募ページでも、開発フェーズとして非臨床研究・前臨床研究、臨床試験、治験が示され、e-Radから提案書類を提出する方式です。12
研究室内のシーズ探索や試作品の初期開発だけを対象にする事業ではありません。公募要領では、他のAMED事業での開発支援を受け、臨床研究や治験の開始に必要な研究開発が終了したシーズであることを重視しています。どの段階の支援を探しているかで、他事業の方が合うケースもあります。2
令和8年度公募の対象分野
令和8年度公募では、募集する研究開発課題が6分野に分かれています。分野ごとに狙いと対象が異なるため、まず自社・自施設のテーマがどこに入るかを決めることが最初の分岐点です。12
| 分野 | 主な対象 | ポイントの例 |
|---|---|---|
| 分野1 | 医療負担の軽減に資する医療機器の実用化を目指す臨床研究・治験等 | 医療従事者の負担軽減や効率化、患者負担の軽減などを意識したテーマが中心 |
| 分野2 | 革新的医療機器の実用化を目指す臨床研究・治験等 | 治療用・診断用の区分が出てくる。臨床評価準備では新規原材料インプラントの扱いに注意 |
| 分野3 | 小児用医療機器の実用化を目指す臨床研究・治験等 | 探索的フェーズの期間がSaMDかどうかで分かれる |
| 分野4 | 高齢者向け・女性の健康や疾病向け、または在宅医療分野の推進に資する医療機器の実用化を目指す臨床研究・治験等 | 医療提供の場の変化や対象者特性に合わせた提案が求められる |
| 分野5 | 疾患登録システム(患者レジストリ)を活用した医療機器の実用化を目指す研究等 | 既存レジストリを使うのか、薬機法申請に資するレジストリ構築まで含むのかで分類が分かれる |
| 分野6 | 医療ニーズの高い体外診断用医薬品の開発 | 令和7年度公募から支援対象に含まれる。臨床性能試験の位置づけが中心 |
分野5は特に取り違えが起きやすい領域です。レジストリを研究データベースとして活用する提案なのか、薬機法申請に使える信頼性要件を満たすレジストリを構築する提案なのかで、求められる相談や成果が変わります。公募要領の採択条件と成果要件を先に読み、該当する分類を確定させてから提案書に落とし込みます。2
似た名称のAMED事業との違い
医療機器領域のAMED事業は複数あり、名称だけでは区別しにくいことがあります。医療機器開発推進研究事業は、臨床研究や治験を実施し、承認申請や企業導出に近づける段階の支援が中心です。一方で、公募要領では医療機器等研究成果展開事業、次世代型医療機器開発等促進事業、医工連携グローバル展開事業などで開発支援を受けたシーズであることを重視しています。つまり、前段の開発支援を経て、臨床評価フェーズに進む入口として位置づけると理解しやすくなります。2
支援内容
研究開発費の規模と研究期間
令和8年度公募の研究開発費の規模は、分野と分類(臨床評価準備、探索的治験・臨床研究・性能評価試験、検証的治験など)で上限が異なります。公募ページと公募要領では1課題あたり年間○○千円(上限)として示され、ここでいう研究開発費は間接経費を含まない点に注意が必要です。提案額が上限を超える場合は受け付けないとしています。12
以下は、金額と期間を読み替えやすいように要点だけを表にまとめたものです。正式な分類と条件は必ず公募要領で確認してください。2
| 分野 | 分類 | 1課題あたり年間の上限 | 研究開発実施予定期間 | 新規採択予定数 |
|---|---|---|---|---|
| 分野1 | 臨床評価準備 | 15,000千円 | 令和8年4月〜令和9年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野1 | 探索的治験・臨床研究・性能評価試験 | 30,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野1 | 検証的治験 クラスⅡ | 46,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野1 | 検証的治験 クラスⅢ・Ⅳ | 80,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野2 | 臨床評価準備 新規原材料インプラント | 30,000千円 | 令和8年4月〜令和9年度末 | 治療用0〜3課題程度 診断用0〜3課題程度 |
| 分野2 | 臨床評価準備 上記以外 | 15,000千円 | 令和8年4月〜令和9年度末 | 治療用0〜3課題程度 診断用0〜3課題程度 |
| 分野2 | 探索的治験・臨床研究・性能評価試験 | 30,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野2 | 検証的治験 クラスⅡ | 46,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野2 | 検証的治験 クラスⅢ・Ⅳ | 80,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野3 | 臨床評価準備 | 15,000千円 | 令和8年4月〜令和9年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野3 | 探索的治験・臨床研究・性能評価試験 SaMD | 46,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野3 | 探索的治験・臨床研究・性能評価試験 SaMD以外 | 46,000千円 | 令和8年4月〜令和12年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野3 | 検証的治験 クラスⅡ | 60,000千円 | 令和8年4月〜令和12年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野3 | 検証的治験 クラスⅢ・Ⅳ | 80,000千円 | 令和8年4月〜令和12年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野4 | 臨床評価準備 | 15,000千円 | 令和8年4月〜令和9年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野4 | 探索的治験・臨床研究・性能評価試験 | 30,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野4 | 検証的治験 クラスⅡ | 46,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野4 | 検証的治験 クラスⅢ・Ⅳ | 80,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野5 | 臨床評価準備 | 15,000千円 | 令和8年4月〜令和9年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野5 | 既存レジストリデータを用いる | 30,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野5 | 薬機法申請に資するレジストリ構築 クラスⅡ | 46,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野5 | 薬機法申請に資するレジストリ構築 クラスⅢ・Ⅳ | 80,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
| 分野6 | 体外診断用医薬品の開発 | 15,000千円 | 令和8年4月〜令和10年度末 | 0〜3課題程度 |
金額の上限は年あたりで示されています。研究開発期間が複数年度にわたる分類では、年度ごとの計画と予算配分を整合させる必要があります。また、研究開発費は間接経費を含まない前提のため、直接経費の積み上げと、間接経費の扱いを別で整理してから申請額を作ります。2
間接経費と一般管理費の扱い
公募要領では、研究開発費の費目構成を府省共通経費取扱区分表に準じて設定し、物品費、旅費、人件費・謝金、その他などの直接経費に加えて、間接経費があることを示しています。間接経費は直接経費に対して一定比率で手当され、上限は30%です。2
また、AMEDの事業には委託研究開発契約書に基づく委託と、補助金等取扱要領に基づく補助の2通りがあることが、事務処理説明書・様式集のページにまとめられています。どちらで実施するかで様式が異なる場合があるため、採択後はAMEDの案内に沿って契約・経理の実務を進めてください。3
新規採択予定数と審査スケジュール
公募ページでは、各分野の新規採択予定数は0〜3課題程度とされ、分野2の臨床評価準備では治療用と診断用の区分で0〜3課題程度が示されています。1
選考スケジュールは、公募要領で書面審査、ヒアリング審査、採択可否の通知などの流れが示されます。公募ページではヒアリング日程の予定日も公表され、ヒアリング日の指定はできないと記載されています。12
| 工程 | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 公募開始 | 令和7年10月29日 | e-Rad提出。様式は公募ページからダウンロード1 |
| 公募締切 | 令和7年11月26日 12時 | 締切後は一切受理しない。研究機関の承認まで完了が必要12 |
| 書面審査 | 令和7年12月上旬〜令和8年1月上旬 | 必要に応じて追加資料の提出を求める場合がある2 |
| ヒアリング審査 | 令和8年1月中旬 | 公募ページに予定日。指定日は選べない1 |
| 採択可否の通知 | 令和8年2月下旬 | 予定として示される2 |
| 研究開始 | 令和8年4月1日 | 契約締結等の手続後に開始2 |
公募説明会資料には、分野ごとの位置づけや提出のポイントがスライドでまとめられているため、全体像の確認に役立ちます。4
対象者と応募要件
応募資格者の要件
公募要領では、応募資格者を国内の研究機関等に所属し、主たる研究場所として研究計画の策定や成果取りまとめの責任を担う研究者(研究開発代表者)と定義しています。特定の研究機関に所属していない、または日本国外の研究機関に所属している研究者でも、採択後に一定の期限までに日本国内の研究機関に所属して研究を実施できる体制を取れる場合は応募できる一方、期限までに要件を備えない場合は採択取消しとなることがあります。2
応募できる研究機関等の類型は、大学、国立研究開発法人、独立行政法人、企業など幅広く列挙されています。申請時は研究開発代表機関と研究開発分担機関を切り分け、分担機関がある場合は承諾書の提出が必須です。2
医療機関と企業の連携要件
本事業は、医療機関(臨床医)と民間企業を含む連携体制で実施する研究開発課題であることを求めています。企業と連携する場合は、企業の役割を提案書に具体的に書き、企業を代表機関または分担機関として体制に参画させることが求められます。応募時点で企業連携がない場合でも、研究期間終了時までにどのように企業と連携していくかを提案書に具体的に書く必要があります。2
ここは、形式的な共同研究では通りません。例えば、治験依頼者側の業務(品質、製造、規制対応、保険償還、上市準備)や、導出後に誰がどの費用と責任を負うのかまで、ロードマップと整合する形で役割分担を示すことが重要です。
分野1から6の対象となる開発対象物
採択条件の一つとして、分野1〜5は開発対象が薬機法上の医療機器に該当すること(プログラム医療機器を含む)を求めています。医薬品、再生医療等製品、体外診断薬など医療機器に該当しないものは対象外です。分野6は、開発対象が薬機法上の体外診断用医薬品に該当するものを含むことが条件です。2
提案書には、開発対象物の概要と開発状況を明示し、一般的名称、クラス分類、効能・効果、対象疾患と患者数を記載することが求められます。一般的名称がない場合は、想定するクラス分類と判断理由を詳しく記載します。2
PMDA相談の事前要件
令和8年度公募では、探索的治験や検証的治験などの分類で、PMDAの対面助言を事前に完了していることを条件にする区分があります。公募要領には、分野と分類ごとに事前に完了しておくことが求められるPMDA相談の整理があり、探索的治験では開発前相談(RS戦略相談でも可)、検証的治験では開発前相談に加えてプロトコル相談(治験)を完了し、プロトコルについて合意済みであることが求められます。2
分野5のレジストリ関連は、レジストリ活用相談、臨床試験要否相談など、レジストリに特有の相談区分が出てきます。ここは何をレジストリで証明し、承認申請にどう使うかを先に定めないと、相談計画も予算計画も崩れやすい領域です。2
| 対象 | 分類の例 | 事前に完了が求められる相談の例 |
|---|---|---|
| 分野1〜4 | 探索的治験・臨床研究・性能評価試験 | 開発前相談(RS戦略相談でも可) |
| 分野1〜4 | 検証的治験 | 開発前相談(RS戦略相談でも可)とプロトコル相談(治験) |
| 分野5 | 薬機法申請に資するレジストリ構築 | レジストリ活用相談と臨床試験要否相談 |
| 分野5 | 既存レジストリデータ活用の一部 | 分類により開発前相談等が必要になる場合がある |
| 分野6 | 体外診断用医薬品 | 事前完了の指定はない区分がある |
上表は全体像の把握のための要約です。分野5のように対象が治療用か診断用か、侵襲や介入があるかなどで必要な相談が変わるため、公募要領の該当箇所で必ず自分の提案に当てはめてください。2
非臨床試験の事前完了要件
採択条件の一つとして、医療機器に係る非臨床試験について、承認申請書添付資料の作成で留意すべき事項にある試験項目のうち、電気的安全性・電磁両立性と、生物学的安全性(non-GLPでも可)を終了していることが求められます。終了済みの試験は、所定の実施済みの非臨床試験一覧に記載して提出します。2
非臨床データが揃っていない段階で臨床研究・治験に進む計画を立てると、後から試験追加でスケジュールが崩れがちです。ここは採択後のリスクにも直結するため、提案前に現状のデータパッケージと不足分を棚卸ししておくことが重要です。
スタートアップ企業の留意点
公募ページでは、令和7年度公募からスタートアップによる企業治験等と体外診断用医薬品の開発が支援対象に含まれることが示されています。1
公募要領では、スタートアップ企業等を中小企業のうち設立10年以内と定義し、応募時や採択時、研究進捗確認時に財務状況の健全性を確認するとしています。さらに、研究開発代表者の所属機関がスタートアップ企業等の場合、財務状況資料や直近3年分の法人税申告書一式、資金繰り表などの提出を求める枠組みがあります。2
提出書類と作成のポイント
必須書類の一覧
公募要領では、必須書類が未提出の場合は不受理になると明記し、必要な提案書類を番号付きで整理しています。基本となるのは(様式1)研究開発提案書と、分担機関がある場合の(様式2)承諾書です。加えて、研究概要スライド、工程表、医療機器開発マネジメントに関するチェック項目記入表など、添付資料の提出が求められます。2
| 区分 | 書類 | 概要 | 注意点の例 |
|---|---|---|---|
| 必須 | (様式1)研究開発提案書 | 提案の本文 | e-Rad入力内容と一致させる2 |
| 必須 | (様式2)承諾書 | 分担機関がある場合に提出 | 分担機関ごとに作成。押印省略可2 |
| 必須 | (添付資料1)研究概要スライド | 対象疾患と既存療法、開発機器の概要などを2枚以内で作成 | パワーポイント2ページ相当2 |
| 必須 | (添付資料2)工程表 | 承認や導出までの全体スケジュールを示す | 提案が全体のどこに位置づくかを明示2 |
| 必須または不要 | (添付資料3)医療機器開発マネジメントのチェック項目 | 分野1〜5は提出必須、分野6は提出不要 | 該当分野で要否が変わる2 |
| 必須または任意 | (添付資料4)実施済みの非臨床試験一覧 | 非臨床の実施状況 | 分野や機器特性で必須・任意が分かれる2 |
| 必須または任意 | (添付資料5)PMDA相談資料一式 | 対面助言記録、相談資料、議事録など | 相談日程調整済みの場合は後日提出可とする扱いがある2 |
| 必須または任意 | (添付資料6)プロトコルまたはプロトコルコンセプト | 臨床研究等の計画 | 探索的・検証的などで提出必須になる2 |
| 必須 | (添付資料7)機器概要書 | 臨床試験に使用する機器の概要書相当 | 様式自由2 |
| 必須 | 費用見積もり等 | 非臨床・臨床研究にかかる費用の根拠 | 単価表を用いたシミュレーションでも可2 |
| 該当時必須 | ヒト全ゲノム解析プロトコール様式 | 該当する場合に提出 | 未提出は審査対象外になる旨の注意がある2 |
| 条件付き必須 | スタートアップ企業等の財務状況資料 | 財務スコアリング、法人税申告書、資金繰り表など | 所属機関がスタートアップの場合に求める2 |
必須または任意の行は、分野や対象(治療用・診断用、侵襲の有無など)で要否が変わります。提案書を書き始める前に、公募要領の該当箇所で自分の提案の分類と提出が必須の添付資料をチェックし、提出漏れをゼロにすることが最優先です。2
プロトコルとロードマップの書き分け
工程表(ロードマップ)は、承認申請や導出までの全体の道筋を示す資料です。公募要領では、年度ごとの計画と達成目標を、事後的に検証可能な客観的指標で書くことを求めています。つまり、工程表は単なるガントチャートではなく、規制対応、試験計画、被験者組入れ、データ固定、総括報告書、企業導出などの主要イベントが論理的につながっている必要があります。2
一方で、臨床研究等のプロトコルまたはプロトコルコンセプトは、科学的妥当性と実施可能性を示すための資料です。公募要領では、倫理指針、臨床研究法、GCP省令等に基づく審査委員会の承認が得られている、または得られる見込みであること、説明同意や利益相反などの扱いを含めて計画することが求められます。2
研究概要スライドで落としがちな点
研究概要スライドは、審査側が短時間で提案を把握する入口になります。公募要領は、対象疾患と既存療法(既承認品)、開発機器の概要、本研究開発の核となる部分が明らかになる2枚以内のスライドを求めています。2枚に収めるためには、主張を絞り、競合技術との差分と、臨床で評価する主要エンドポイントを前面に出す構成が有効です。2
これは制度要件ではありませんが、スライドの1枚目で誰のどんな課題を、何で、どこまで改善するかを1文で言い切れるようにしておくと、提案書本文との整合も取りやすくなります。
見積もりと経費内訳の作り方
費用見積もり等は必須提出書類です。公募要領では、研究実施施設の単価表などを用いたシミュレーションでもよいとしつつ、非臨床・臨床研究にかかる費用の根拠提示を求めています。2
金額を積み上げる際は、研究開発費の上限が年間かつ間接経費を含まない点を踏まえ、直接経費の内訳を年度ごとに作り、間接経費は別枠で扱うと破綻しにくくなります。経費の計上・精算は原則としてAMEDの事務処理説明書に従うため、採択後も見据えて早い段階で経理担当と共有しておくことが重要です。23
e-Rad提出と研究機関内手続の注意点
e-Rad提出の基本
提案書類の提出は受付期間内にe-Radで行い、締切直前はアクセス集中による不具合が起こり得るため、期限に余裕を持って提出することが公募要領で示されています。提出済みの提案書類を修正する場合は、受付期間内に引戻し操作を行い、修正後に再提出が必要です。受付期間終了後の差し替えには応じないことも明確です。2
提出ファイルはPDF形式でアップロードし、PDF変換によるページ繰りの変化や文字化けの可能性を踏まえて、変換後の内容確認を求めています。また、e-Radへの入力情報と提案書の内容を一致させることも要点です。2
研究機関の承認まで含めて締切
e-Radでの応募は、研究者が申請しただけでは完了しません。公募要領では、受付期間終了時点で申請ステータスが配分機関処理中 申請中または受理済になっていない提案は無効です。研究者の提出に加えて、研究機関事務代表者による承認が必要である点が、締切直前の不受理の主因になりやすいところです。2
公募ページでも、締切に間に合わず不受理となるケースが発生していること、特にe-Radの新規利用者は研究機関・研究者の新規登録手続に日数がかかることが注意喚起されています。1
e-Rad新規登録は二週間以上の余裕
公募要領は、研究機関の登録や研究者情報の登録に日数を要する場合があるため、二週間以上の余裕を持って手続するよう求めています。これは研究機関側の事務手続も含むため、研究者だけで完結しません。社内外の承認フローが長い組織ほど、早めに着手する必要があります。2
| 手続 | 担当 | 目安 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 研究機関の登録申請 | 研究機関事務代表者 | 二週間以上の余裕 | 代表機関・分担機関とも応募時までの登録が原則2 |
| 研究者情報の登録 | 研究機関事務代表者、研究者 | 二週間以上の余裕 | 代表者・分担者のID発行が必要2 |
| 応募申請の提出 | 研究開発代表者 | 締切前日までに完了推奨 | 締切直前の混雑・不具合を避ける2 |
| 研究機関の承認 | 研究機関事務代表者 | 締切前に完了 | 承認がないと応募は完了しない2 |
| ステータス確認 | 研究開発代表者、事務担当 | 締切当日まで | 配分機関処理中 申請中になっているか2 |
e-Radの登録と研究機関の承認は組織によって所要日数が大きく変わります。締切直前の手戻りを避けるため、研究機関の事務担当と早めにスケジュールをすり合わせてください。
審査で見られる観点
審査方法
公募要領では、書面審査に加えてヒアリング審査を行うことがあり、必要に応じて追加資料の提出を求める場合があるとしています。公募ページにもヒアリング日程が掲載され、日程の指定ができないことが示されています。12
審査項目と観点
公募要領の審査項目は、(A)事業趣旨との整合、(B)科学的・技術的妥当性、(C)実施体制、(D)計画の妥当性、(E)実用化可能性、(F)予算の適切性、(G)社会的・倫理的観点など、複数の軸で評価します。医療機器は規制要件と臨床価値の両方が問われるため、どれか一つが強いだけでは不足しがちです。2
| 観点 | 審査で問われやすいポイントの例 |
|---|---|
| 事業趣旨との整合 | 分野の狙いに合い、求められる成果に到達する道筋があるか2 |
| 科学的・技術的妥当性 | 試験デザイン、エンドポイント、統計の考え方が妥当か2 |
| 実施体制 | 医療機関と企業を含む体制で、役割分担が明確か2 |
| 計画の妥当性 | 年度ごとのマイルストンと工程表が現実的か2 |
| 実用化可能性 | 承認申請や導出の方針、競合状況、知財の見通しが具体的か2 |
| 予算の適切性 | 経費内訳が目的に合い、上限・費目の考え方が適切か2 |
| 社会的・倫理的観点 | 倫理審査、説明同意、利益相反、データ取扱いが適切か2 |
審査は複数の観点で評価するため、提案書のどこで各観点に答えているかを自分で説明できる状態にしておくことが重要です。特に体制、規制対応、臨床評価の妥当性は、口頭での補足を求められやすい領域です。
ヒアリングに向けた準備
ヒアリングは提案書に書いた内容を口頭で補う場というより、計画の弱点がどこにあるかを短時間で見極める場になりやすいです。特に、PMDA相談で何が論点になり、どこまで合意できているか、未完了の論点をどう解消するかは質問の中心になりがちです。
これは制度要件ではありませんが、ヒアリング用に次の3点を1枚で説明できるようにしておくと議論がまとまりやすくなります。1つ目は対象患者と臨床課題、2つ目は開発品の差分と臨床評価の核心、3つ目は承認申請までの残課題と解消計画です。
採択後の実施と報告
研究開始時期と実施形態
公募要領は研究開始予定日を令和8年4月1日とし、採択後に契約締結等の手続を経て研究開発を開始する流れを示しています。AMEDの事業には委託と補助の2通りがあるため、採択後は契約類型に応じた様式と手続に従う必要があります。23
年度ごとの成果要求と継続判断
公募要領の求められる成果では、分類ごとに年度末までに達成すべき事項が示されています。例えば、探索的治験・臨床研究・性能評価試験の分類では、一定年度末までに治験届やIRB承認を得て試験を開始することを必須とし、未達の場合は翌年度以降の研究継続を原則認めない扱いがあります。検証的治験でも同様に、研究開始1年度目末までに治験を開始することを必須とし、未達の場合は継続を原則認めないとしています。2
このため、採択後の実務では年度内にどこまで到達するかを契約や予算だけでなく、治験・臨床研究の運用体制(CRC、モニタリング、データ管理、統計、品質保証など)まで含めて具体化する必要があります。特に多施設試験やレジストリ活用は、立ち上げに時間がかかりやすいので、開始前倒しの計画が重要になります。
情報公開と機密の考え方
公募要領では、採択課題に関する情報として、事業名、課題名、参加者情報、e-Rad番号、予算額、実施期間、研究概要や成果報告書などが、AMEDのウェブサイトやAMEDfind等で公開される場合があることを示しています。採択後は、情報公開の前提で公開してよい範囲と公開前提では困る情報を社内で切り分け、提案書に機微情報を詰め込みすぎない配慮が必要です。2
対象経費と経理の基本
直接経費の主な費目
公募要領は、研究開発費の費目構成として、直接経費の大項目を物品費、旅費、人件費・謝金、その他などに整理しています。例えば物品費には研究用設備・備品・試作品、ソフトウェア、材料・消耗品などが含まれ、旅費には研究参加者や外部専門家、臨床研究等の被験者・介助者の旅費などが含まれます。2
人件費では、当該研究開発のために雇用する研究員等の人件費に加え、PI人件費やバイアウト経費の扱いに触れています。詳細は事務処理説明書等を参照するよう示されています。23
間接経費の上限
間接経費は、直接経費に対して一定比率で手当され、上限は30%です。公募要領は、提案にあたって2.1に記載の研究開発費(間接経費・一般管理費を除く総額)を記載するよう注意喚起しています。2
契約や経費に関する疑問は、AMEDのよくあるご質問のページも確認すると、問い合わせ前の確認に役立ちます。5
実務上の証憑チェック
これは制度要件ではありませんが、委託研究開発や補助事業では、後日の精算や検査に備えて発注から支払いまでの流れを証明できる資料を整えておくと安心です。特に外注費や機器リース費用は、仕様、契約、検収の整合が問われやすいので、研究開始前に研究側と経理側で管理ルールを揃えておくことが有効です。事務処理説明書・様式集のページには、契約書雛型や各種様式が集約されています。3
| 費目の例 | 実務上そろえたい資料の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 物品費 | 見積、発注書、納品書、検収記録、請求書、支払記録 | 購入目的が研究に紐づく説明ができる形にする |
| 外注費 | 仕様書、見積、契約書、成果物、検収記録、請求書、支払記録 | 成果物の範囲と検収基準を曖昧にしない |
| 人件費 | 雇用契約、業務内容、従事記録、給与台帳 | 従事割合の説明ができるようにする |
| 旅費 | 出張命令、行程、領収書、報告書 | 研究目的との関連を明確にする |
| 被験者関連費用 | 規程、支払基準、同意資料、支払記録 | 研究倫理と整合する支払手順にする |
証憑の扱いは、契約類型や研究内容で求められる粒度が変わることがあります。詳細は事務処理説明書と研究機関内の運用ルールで確認し、迷う点は早めに事務担当や事務局へ相談してください。3
事務局に問い合わせる前に揃える情報
公募ページには、問い合わせ先としてAMED 医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課の連絡先が掲載され、問い合わせは原則E-mailで行うよう求めています。1
問い合わせの往復回数を減らすために、事前に次の情報を整理してから連絡すると、回答が得やすくなります。
| 整理しておきたい情報 | 例 | 目的 |
|---|---|---|
| 分野と分類 | 分野3の探索的 SaMD など | 要件と提出書類の判断が速くなる |
| 開発対象の概要 | 一般的名称、想定クラス、適応 | 対象範囲かどうかの確認に必要 |
| PMDA相談の状況 | 実施済みの相談区分、日程、論点 | 採択条件との整合確認に必要 |
| 非臨床の状況 | 電気安全、EMC、生物学的安全性の実施状況 | 採択条件との整合確認に必要 |
| 連携体制 | 医療機関、企業、ARO等の役割 | 体制要件の確認に必要 |
| e-Radの状況 | 研究機関登録、研究者番号、申請ステータス | 締切不受理の回避に必要 |
問い合わせに使った整理メモは、そのまま提案書の前提条件や添付資料の根拠として転用できます。早い段階で形にしておくと、申請書類の作成が重複しにくくなります。
申請前セルフチェック
申請準備の終盤は、内容の完成度よりも要件の取り違えと提出漏れが事故の原因になります。以下は、令和8年度公募の一次資料にもとづき、重要度が高い確認点を並べたセルフチェックです。12
| チェック項目 | 確認ポイント | 根拠の例 |
|---|---|---|
| 分野と分類の確定 | 分野1〜6とa〜c等の分類が確定している | 公募要領の研究開発費規模と採択条件2 |
| 対象物が範囲内 | 分野1〜5は医療機器、分野6は体外診断用医薬品を含む | 採択条件(対象物の条件)2 |
| 非臨床の前提 | 電気安全・EMC、生物学的安全性が終了している | 採択条件(非臨床)2 |
| PMDA相談の前提 | 必要な相談区分が事前に完了している分類か | 採択条件(PMDA相談)2 |
| 連携体制 | 医療機関と企業を含む体制、企業の役割が明確 | 留意事項(連携体制)2 |
| 導出方針 | 企業導出方針やビジネス面の記載が具体 | 留意事項(導出方針)2 |
| 知財 | 保有・ライセンス知財と他者知財調査の記載がある | 留意事項(知財)2 |
| 工程表 | 承認申請や導出までの工程表を添付し、位置づけが明確 | 添付資料2の指示2 |
| プロトコル | 該当分類でプロトコルまたはコンセプトを添付 | 添付資料6の指示2 |
| 費用根拠 | 見積や単価表で費用根拠を示している | 必須提出書類2 |
| e-Rad一致 | e-Rad入力と提案書の記載が一致している | e-Rad注意事項2 |
| 研究機関承認 | 締切までに研究機関事務代表者の承認が完了する | e-Radステータス条件2 |
セルフチェックで未対応が残る項目は、先に分類の見直しや相談計画の再構築を行うと、後工程の手戻りを減らせます。特にPMDA相談と非臨床の前提は、後から埋めることが難しい要素です。
必要書類の準備タイムライン
公募締切までの逆算で、準備の順番を間違えると中身はできたのに不受理になり得ます。ここでは、制度要件ではなく実務の目安として、詰まりやすい順にタイムライン例を示します。日付は自組織の決裁・承認フローに合わせて調整してください。12
| 時期の目安 | やること | 成果物 |
|---|---|---|
| 締切の4〜6週間前 | 分野・分類を確定し、採択条件の要件を満たすか点検 | 分類メモ、要件ギャップ表 |
| 締切の3〜5週間前 | 連携体制の役割分担と導出方針をすり合わせ | 体制図、役割分担、導出の方針 |
| 締切の3〜4週間前 | 工程表を先に作り、マイルストンと予算を当てる | 工程表、年度計画、概算予算 |
| 締切の2〜3週間前 | 提案書本文と研究概要スライドを作成 | 様式1ドラフト、スライド |
| 締切の2〜3週間前 | e-Radの研究機関登録・研究者登録を完了させる | ID発行、研究者番号確認 |
| 締切の1〜2週間前 | 添付資料と必須提出書類を揃え、提出漏れを消す | 添付資料一式、見積根拠 |
| 締切の3〜5日前 | PDF化して表示崩れや文字化けを確認 | 提出用PDF一式 |
| 締切の前日まで | e-Radで提出し、研究機関承認まで完了 | ステータス確認 |
| 締切当日 | 最終ステータス確認 | 配分機関処理中 申請中確認 |
締切当日は最終確認だけにできるよう、提出は前日までに終える計画が安全です。提出後はステータスを確認し、研究機関の承認まで完了していることを必ず確かめてください。2
よくある質問
Q1. この事業は補助金ですか。委託ですか。
A. 公募ページでは当該事業を委託事業として案内しています。AMEDには委託と補助の2通りがあるため、採択後はAMEDの案内に沿って契約類型と手続を確認してください。13
Q2. 研究開発費の上限は総額ですか。年あたりですか。
A. 令和8年度公募では1課題あたり年間○○千円(上限)として示されています。研究開発期間が複数年度にわたる場合でも、年度ごとの上限と計画を整合させる必要があります。12
Q3. 上限額に間接経費は含まれますか。
A. 公募ページと公募要領では、研究開発費の規模は間接経費を含まずとして示されています。間接経費は別枠で扱い、直接経費に対して上限30%の範囲で手当されます。12
Q4. 医療機器ではなく医薬品の開発でも応募できますか。
A. 分野1〜5は医療機器が対象で、医薬品や再生医療等製品など医療機器に該当しないものは対象外です。体外診断用医薬品は分野6が対象です。2
Q5. 企業単独で応募できますか。
A. 本事業は医療機関(臨床医)と民間企業を含む連携体制を求めています。企業が代表機関になる場合でも、医療機関を含む体制と役割分担を提案書に具体的に書く必要があります。2
Q6. 応募時点で企業パートナーが未確定でも応募できますか。
A. 応募時に企業連携がない場合でも、研究期間終了時までにどのように企業と連携するかを提案書に具体的に書くことが求められます。実務上は、導出先の探索計画と、導出に必要な知財・規制対応の体制も合わせて示すことが重要です。2
Q7. PMDA相談は必ず事前に完了していないといけませんか。
A. 分類によって扱いが異なります。探索的治験や検証的治験など、事前に完了が求められる相談区分がある一方で、臨床評価準備など指定がない分類もあります。必ず公募要領の該当分類で確認してください。2
Q8. 非臨床試験はどこまで終わっている必要がありますか。
A. 採択条件として、電気的安全性・電磁両立性と、生物学的安全性(non-GLPでも可)を終了していることを求めています。終了済みの試験は非臨床試験一覧として提出します。2
Q9. 提出書類の必須と任意はどこで確認できますか。
A. 公募要領の応募に必要な提案書類と研究開発提案書以外に必要な提出書類等に、必須・任意の区分と、分野別の要否が表で示されています。必須書類の未提出は不受理になります。2
Q10. e-Radで提出したのに不受理になる典型例は何ですか。
A. 研究者の提出だけで終わり、研究機関事務代表者の承認が締切までに完了していないケースが典型です。締切時点でステータスが所定の状態になっていない提案は無効です。締切直前の混雑もあるため、早めの提出とステータス確認が重要です。12
Q11. 採択後に研究概要や成果は公開されますか。
A. 公募要領では、採択課題の事業名、課題名、参加者情報、予算額、実施期間、研究概要や成果報告書などがAMEDのウェブサイトやAMEDfind等で公開される場合があることを示しています。2
Q12. どこに問い合わせればよいですか。
A. 公募ページに、AMED 医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課の問い合わせ先が掲載されています。連絡は原則E-mailで行うよう案内されています。1
まとめ
医療機器開発推進研究事業の令和8年度公募は、臨床研究・治験等を通じて承認申請や企業導出に近づける提案を対象にしています。分野と分類で上限額や期間、必須書類、PMDA相談の前提が変わるため、最初に分類を確定し、採択条件と提出漏れのリスクを潰すことが重要です。
具体的な判断は、必ず公募要領と事務局の案内で確認し、特にe-Radの研究機関承認を含めた締切管理を徹底してください。12
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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