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雇用調整助成金の申請ガイド

雇用調整助成金の対象要件を確認し、休業・教育訓練・出向の条件、中小企業と大企業の区分、助成額の上限と計算、計画届から支給申請までの期限と不正受給対策を公式資料で整理します。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年2月11日
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目次

  • 制度の全体像
  • 支援内容と助成額の考え方
  • 支給対象となる事業主の要件
  • 対象となる労働者の要件
  • 支給対象となる雇用調整の条件
  • 申請の流れと期限
  • よくある不備と注意点
  • 準備に使えるセルフチェックとテンプレ
  • よくある質問
補助金フラッシュ 事業計画

雇用調整助成金は、経済上の理由で事業活動が落ち込んだときに、解雇を避けるための休業や教育訓練、出向を行った事業主を支援する制度です。
要件は事業活動の縮小の確認から始まり、対象労働者や労使間の協定、計画届の提出期限まで、押さえるポイントが多くあります。
特に、計画届を出さずに休業等を先に実施すると支給対象にならないため、順序と期限の把握が重要です。
この記事では、厚生労働省の雇用調整助成金ガイドブック(令和7年8月1日現在版)を根拠に、助成額の考え方、対象要件、申請の流れ、つまずきやすい注意点を整理します。1

項目内容
制度名(正式名称)雇用調整助成金
対象年度/公募回令和7年度(令和7年4月1日以降の実施分を扱う資料に基づく。公募型ではなく要件充足後に申請する仕組み)1
最終更新日2026年2月10日
所管/実施機関/事務局厚生労働省 / 都道府県労働局・ハローワーク(受付・審査)1
補助上限額/補助率(類型差があれば併記)休業・教育訓練は助成率が中小企業2/3、大企業1/2。教育訓練実施率により中小企業1/2、大企業1/4が適用される場合がある。1人1日当たりの上限は雇用保険基本手当日額の最高額(令和7年8月1日時点で8,870円)。教育訓練は訓練加算が1,200円または1,800円。出向は出向元の賃金負担額(概ね1/2上限)に助成率を乗じ、上限は基本手当日額最高額×330/365×日数で算定する。1
申請期間(開始/締切)随時(計画届は休業等の初日の前日まで。初回は休業等初日の2週間前までを目処。支給申請は支給対象期間末日の翌日から2か月以内で、休業手当や賃金の支払い後に行う)1
公式一次資料(PDF/Word)のリンク集(募集要綱/手引き/FAQ/様式 等)雇用調整助成金 公式ページ 2026年2月閲覧 HTML / 雇用調整助成金ガイドブック 令和7年8月1日現在版 PDF / 様式ダウンロード 2026年2月閲覧 HTML / 教育訓練実施率等算定シート 参考様式 Excel
免責申請可否や経費判断は、当該年度の募集要領・交付要綱等と事務局の案内で最終確認してください。

目次

  • ●制度の全体像
  • 雇用調整助成金が支援する場面
  • 三つの雇用調整
  • 似た制度との違い
  • ●支援内容と助成額の考え方
  • 休業と教育訓練の助成額
  • 教育訓練実施率による助成率の変化
  • 出向の助成額
  • 対象期間と判定基礎期間の基本用語
  • 支給限度日数と支給日数の数え方
  • 残業相殺と所定労働日数の増加に伴う控除
  • ●支給対象となる事業主の要件
  • 経済上の理由と対象外になる縮小理由
  • 事業活動の縮小を判定する二つの指標
  • 雇用保険の適用事業主であること
  • 不支給要件
  • 中小企業と大企業の区分
  • ●対象となる労働者の要件
  • 対象労働者の基本
  • 対象外となる八つのケース
  • 親会社等と独立性の判断
  • ●支給対象となる雇用調整の条件
  • 休業の七条件
  • 短時間休業の扱い
  • 教育訓練の六条件
  • 助成対象外となる教育訓練
  • 出向の十四条件
  • ●申請の流れと期限
  • 全体の進め方
  • 計画届の提出期限
  • 支給申請の期限
  • 支給対象期間の選び方
  • 出向の支給対象期
  • ●よくある不備と注意点
  • 計画届より先に実施してしまう
  • 休業中の労働や教育訓練中の業務
  • 残業相殺の見落とし
  • 不正受給と調査
  • ●準備に使えるセルフチェックとテンプレ
  • 申請前セルフチェック
  • 証憑チェック
  • 公式様式の探し方
  • 教育訓練実施率の事前確認
  • ●よくある質問
雇用調整助成金の申請ガイド

制度の全体像

雇用調整助成金が支援する場面

雇用調整助成金は、景気の低迷や産業構造の変化などの経済上の理由により、事業活動を縮小する必要があるときに、事業主が労働者を解雇せず雇用を維持するための雇用調整を支援する制度です。1
まず必要になるのは、事業活動の縮小が経済上の理由に当たるか、そして縮小の程度が指標要件を満たすかの確認です。ここが通らないと、休業や教育訓練を実施しても制度の対象になりません。1

三つの雇用調整

雇用調整助成金で助成対象になり得る雇用調整は、休業、教育訓練、出向の三つです。1
いずれも、対象労働者が雇用保険の被保険者であること、そして労使間の協定に基づいて実施することが前提になります。1

支援対象の整理は、次の表が出発点になります。

区分制度上の位置づけ助成の中心まず押さえる条件
休業所定労働日に働けない状態を作り、休業手当を支払う休業手当休業の7条件、休業等規模要件、計画届の事前提出1
教育訓練休業の代替として訓練を実施し、賃金を支払う賃金相当額と訓練加算教育訓練の6条件と対象外訓練の除外、実施率による助成率の変化1
出向雇用調整を目的に出向し、出向元が賃金の一部を負担賃金負担額出向の14条件、出向期間要件、独立性、上限制約1

この表は概要の見取り図です。実際の申請では、各条件の列挙を一つずつ確認する必要があります。1

似た制度との違い

雇用調整助成金は、設備投資や販路開拓に対する補助金とは性質が異なり、支給額は休業手当や賃金など人件費相当をベースに計算します。1
また、災害や感染症など特定の事由に関して、通常版とは別に特例の取扱い資料が公開されることがあります。自社が特例の対象になり得る場合は、通常版だけで判断せず、該当する資料を追加で確認してください。1

支援内容と助成額の考え方

休業と教育訓練の助成額

休業または教育訓練を実施した場合の助成額は、休業手当または賃金に相当する額に助成率を乗じて算定します。助成率は原則として中小企業2/3、大企業1/2です。1
ただし、1人1日当たりの助成額には上限があり、雇用保険基本手当日額の最高額が上限になります。ガイドブック(令和7年8月1日現在版)では、令和7年8月1日時点の最高額として8,870円が示されています。1

教育訓練を実施した場合は、さらに訓練費として1人1日当たり1,200円を加算します。短時間訓練は、時間の積み上げを代表的な1日の所定労働時間で除して日数換算します。1
教育訓練の加算額は、上限額の計算に含めません。つまり、日額上限に達している場合でも、訓練加算は別枠で加算されます。1

なお、休業や教育訓練を行った判定基礎期間内に、対象労働者が所定外労働等をしていた場合は、所定外労働等の時間相当分を助成額から差し引きます。これが残業相殺です。1

教育訓練実施率による助成率の変化

教育訓練を実施すると、常に中小企業2/3、大企業1/2になると理解されがちですが、ガイドブックには適用タイミングと分岐があります。1
支給を受けた日数が計30日に達した判定基礎期間の次の判定基礎期間から、当該判定基礎期間における教育訓練実施率によって、助成率と訓練加算が変わります。1

分岐は次のとおりです。

区分判定基礎期間における条件助成率訓練加算
A休業と教育訓練の合計日数のうち、教育訓練が1/10以上中小企業2/3 大企業1/2教育訓練が1/5以上なら1,800円、1/5未満なら1,200円1
B休業と教育訓練の合計日数のうち、教育訓練が1/10未満中小企業1/2 大企業1/41,200円1

実施前に教育訓練実施率を確認するための参考様式として、教育訓練実施率等算定シートが公開されています。実務上は、休業計画を作る段階でこのシートを使い、どの助成率が適用される可能性が高いかを早めに把握すると、資金繰り計画が立てやすくなります。2

出向の助成額

出向の場合の助成額は、出向元事業主の出向労働者の賃金に対する負担額(出向前の通常賃金の概ね1/2を上限)に、助成率(中小企業2/3、大企業1/2)を乗じて算定します。1
ただし、1人1日当たりの上限は、雇用保険基本手当日額の最高額に330/365および支給対象期の日数を乗じて得た額になります。1

出向は、休業や教育訓練と違い、支給申請の単位が支給対象期になります。最初の6か月が第1支給対象期、次の6か月が第2支給対象期です。途中で出向が終了する場合は、終了日までが支給対象期になります。1

対象期間と判定基礎期間の基本用語

雇用調整助成金は、対象期間や判定基礎期間など、期間の考え方が複数あります。ここを誤ると、計画届や支給申請のタイミングを外しやすくなります。1

用語意味実務上の注意点
対象期間事業主が自ら指定する1年間の期間で、休業・教育訓練・出向の対象枠になる休業等は対象期間内に実施する必要がある。対象期間をいつから始めるかで、支給限度日数やクーリング期間の見え方が変わる1
判定基礎期間休業等の実績を判定する1か月単位の期間原則は賃金締切日の翌日から次の締切日まで。締切日が特定されない場合などは暦月になる1
支給対象期間休業等の計画届や支給申請の単位になる一定期間1つの判定基礎期間、または連続する2つないし3つの判定基礎期間を、届出ごとに選択できる1
支給対象期出向の計画届や支給申請の単位になる一定期間出向開始日から最初の6か月が第1支給対象期、次の6か月が第2支給対象期1
クーリング期間前回の対象期間満了後、一定期間は新たな対象期間を設定できない期間最後の判定基礎期間末日または支給対象期末日の翌日から起算して1年間以上空ける必要がある1

用語の定義はガイドブックを基にしています。社内の締切日設定や出向開始日によって具体のカレンダーが変わるため、最初に自社の賃金締切日と対象期間の開始日を並べて確認してください。1

支給限度日数と支給日数の数え方

休業等に対する助成には上限日数があります。上限は、1年間で100日分、3年で150日分です。1
ここでいう日数は、休業等を実施した労働者が1人でもいた日を単純に1日と数えるのではなく、休業等の延べ日数を、対象労働者数で除した日数で計算します。1

ガイドブックの例では、対象労働者が10人の事業所で、そのうち6人が5日ずつ休業した場合、延べ日数は30人日になり、30人日÷10人で3日として扱います。1
支給日数の計算に使う対象労働者数は、判定基礎期間に属する暦月の末日現在の数を用います。1

また、3年150日の上限における過去3年以内の判断は、過去の対象期間の初日が、今回の対象期間の初日から起算して3年前の間にあるかで判断します。1
新型コロナウイルス感染症に係る特例事業主としての対象期間については、判定基礎期間の初日が令和4年12月1日以降の支給日数が3年150日の対象になる取扱いが示されています。1

残業相殺と所定労働日数の増加に伴う控除

残業相殺は、休業等をさせる一方で残業や休日出勤をさせた場合に、助成対象となる休業等延べ日数から、所定外労働等の時間分を控除する仕組みです。突発的・一時的であっても控除対象になります。1
具体の計算は、所定労働時間や所定外労働等の時間を使って行います。自社の勤怠管理の記録と突合できる状態にしておくことが重要です。1

また、対象期間の所定労働日数が合理的な理由なく直前の1年間よりも増加している場合、休業・教育訓練を行った日数から増加日数分を差し引く取扱いがあります。1
所定労働日の設定変更を予定している場合は、対象期間の設定前に影響を確認してください。

支給対象となる事業主の要件

経済上の理由と対象外になる縮小理由

雇用調整助成金は、景気の低迷、産業構造の変化、消費者物価や外国為替その他の価格の変動など、経済上の理由により事業活動を縮小する必要がある場合が対象です。1
一方で、次のような理由による縮小は、経済上の理由に当たりません。1

区分経済上の理由に当たらない縮小理由
1天候不順など自然現象による売上減など、季節的に起こる変動によるもの
2事故や災害などの発生によるもの
3法令違反による業務停止命令など、法令違反に伴うもの

縮小理由が混在している場合は、どの要因が主因かの整理が必要になります。制度上の判断は労働局の運用にも関わるため、判断に迷うときは早めに管轄へ確認してください。1

事業活動の縮小を判定する二つの指標

事業活動の縮小の判定は、生産指標要件と雇用量要件のいずれかで行います。1

要件判定の考え方数値基準
生産指標要件売上高または生産量など、事業活動を示す指標の最近3か月間の月平均を前年同期と比較する前年同期比で10%以上減少1
雇用量要件雇用保険被保険者数と受け入れている派遣労働者数の最近3か月間の月平均を前年同期と比較する大企業は5%を超えかつ6人以上、中小企業は10%を超えかつ4人以上増加していない1

ここで重要なのは、単に休業をさせたい事情があるだけでは足りず、事業活動の縮小という入口要件を満たす必要がある点です。1
生産指標を売上高で見るのか、生産量で見るのかなど、指標の選び方も申請の前提になります。

雇用保険の適用事業主であること

支給対象となる事業主は、経済上の理由による事業活動の縮小に加え、支給申請日および支給決定日の時点で雇用保険被保険者が存在する雇用保険適用事業主であることが要件です。1
雇用保険の適用関係や被保険者の状況は、支給申請の前に改めて確認してください。

不支給要件

ガイドブックでは、次の①〜⑧のいずれかに該当する事業主は支給対象にならないと示されています。1
実務上は、過去の不正受給や調査拒否などが関係するものが多く、グループ企業や役員の兼任関係まで含めて判断される項目があります。

番号不支給となる事業主の要件
①支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、次のいずれかに該当する事業主(イ 労働基準法等の労働関係法令違反を行い送検 / ロ 雇用保険法第7条の2第1項により滞納処分を受けたことがある / ハ 雇用保険法第79条の2により社労士等が代理した支給申請について不支給決定または支給決定取消 / ニ 雇用保険法第83条または第84条に基づく不正受給に係る不支給決定または支給決定取消 / ホ 雇用保険法第79条に基づく不正受給防止の調査への協力を拒否 / ヘ 役員等の兼任により他事業主と密接な関係を有する事業主(親会社等) / ト 役員等が暴力団員を兼ねる事業主)
②事業活動の改善を図るための計画を作成し、主たる事務所が所在する都道府県の労働局長に提出した事業主で、事業活動縮小の原因がその計画の作成を指示された日から起算して1年以内に生じたもの
③雇用調整助成金等の支給対象となる休業等や出向と同時期に、教育訓練給付に係る教育訓練を受けること等により、同一の教育訓練について教育訓練給付を受けようとする労働者がいる事業主
④不正受給による不支給決定または支給決定取消を受けたことがある事業主(a 不支給等を受けた支給申請を行った判定基礎期間の初日から1年以内の判定基礎期間の初日が属する対象期間を設定しようとする / b 不支給等を受けた支給申請を行った支給対象期の開始日の前日から起算して1年以内の日に開始する支給対象期を設定しようとする / c 不支給等を受けた支給申請を行った判定基礎期間の初日から起算して5年以内に雇用関係助成金等を支給申請する事業主で、(a)〜(e)のいずれかに該当)
④c(a)不支給等に係る不正受給を行った事業主
④c(b)不支給等に係る不正受給を行った事業主の役員等が役員等となっている事業主
④c(c)不正受給を行った事業主の役員等が他事業主の役員等を兼任し、当該他事業主と密接な関係を有する事業主
④c(d)不正受給を行った事業主が他事業主の役員等を兼任し、当該他事業主と密接な関係を有する事業主
④c(e)不正受給を行った事業主の役員等が暴力団員を兼ねる事業主
⑤役員等が雇用保険法第79条の2に規定するものとして厚生労働大臣が定める者に該当する事業主
⑥役員等が雇用保険法第79条の4に規定するものとして厚生労働大臣が定める者に該当する事業主
⑦暴力団関係事業主
⑧役員等が破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当する事業主
注意風俗営業等関係事業主は雇用調整助成金が支給されない

表はガイドブックの列挙を崩さずに整理したものです。特に①と④は、役員等の兼任やグループ関係が絡むため、形式的な確認だけでは足りないことがあります。1

中小企業と大企業の区分

助成率や一部の要件に関わるため、中小企業か大企業かの区分を確認します。ガイドブックでは、資本金または常時雇用する労働者数で区分します。1

業種中小企業に該当する基準
小売業および飲食店資本金または出資総額が5,000万円以下、または常時雇用する労働者数が50人以下1
サービス業資本金または出資総額が5,000万円以下、または常時雇用する労働者数が100人以下1
卸売業資本金または出資総額が1億円以下、または常時雇用する労働者数が100人以下1
その他の事業資本金または出資総額が3億円以下、または常時雇用する労働者数が300人以下1

どの業種に当たるかが曖昧な場合は、早めに管轄へ確認し、申請書類内の区分と矛盾が出ないようにしてください。

対象となる労働者の要件

対象労働者の基本

対象労働者は、支給対象となる事業主に雇用され、雇用調整(休業・教育訓練・出向)の対象となり得る雇用保険被保険者です。1
ただし、次の①〜⑧に該当する者は除かれます。1

対象外となる八つのケース

除外されるケースは列挙で示されており、ここを読み飛ばすと、申請対象者の選定を誤りやすくなります。1

番号対象労働者から除かれる者
①休業等を行った日の属する判定基礎期間の初日の前日、または出向を開始する日の前日まで、同一の事業主に引き続き被保険者として雇用された期間が6か月未満の者1
②解雇を予告されている者、退職を申し出た者、事業主による退職勧奨に応じた者(離職日の翌日に安定した職業に就くことが明らかな者を除く。これらの事実が生じた日までの間は対象労働者として扱う)1
③雇用保険法第37条の5第1項の申出をして高年齢被保険者となった者(特例高年齢被保険者)1
④日雇労働被保険者1
⑤特定求職者雇用開発助成金等の支給対象となる者1
⑥出入国管理及び難民認定法の定めにより国内で就労できない者1
⑦雇用保険被保険者になれない者(役員、同居の親族、個人事業主等)を、2以上の事業主間で相互に交換し雇い入れ、相互に労働者となっている場合の当該全ての労働者1
⑧事業主間の関係性において独立性を認められない事業主(親会社等)から、雇用保険被保険者になれない者(役員、同居の親族、個人事業主等)が労働者として送り込まれた場合の当該労働者1

②の注記のように、一定の場合は除外されない取扱いもあります。該当可能性がある場合は、事実関係が発生した日付の整理が欠かせません。

親会社等と独立性の判断

⑧に関連して、親会社等に当たるかどうかは、議決権の過半数の保有関係や、取締役会の構成など、資本的・経済的・組織的関連性等から判断すると整理されています。1
出向の要件にも独立性が含まれるため、グループ会社間の出向を検討している場合は、早い段階で要件への当てはめを行ってください。1

支給対象となる雇用調整の条件

休業の七条件

助成対象となる休業は、次の①〜⑦のすべてを満たす必要があります。1

番号休業の条件
①労使間の協定によるものであること1
②事業主が自ら指定した対象期間内(1年間)に行われるものであること1
③判定基礎期間における対象労働者に係る休業または教育訓練の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の1/20(大企業は1/15)以上となること(休業等規模要件)1
④休業手当の支払いが労働基準法第26条の規定に違反していないこと(休業手当の額は平均賃金の6割以上)13
⑤所定労働日の所定労働時間内において実施されること1
⑥海外の拠点で実施される休業ではないこと1
⑦所定労働日の全1日にわたるもの、または所定労働時間内に当該事業所の対象労働者について1時間以上行われる短時間休業であること1

休業の定義に当たるかどうかは、ストライキや事業所の休業規則に基づかない休日など、対象外の例も含めて確認する必要があります。1

短時間休業の扱い

短時間休業は、個人ごと・日ごとに1時間以上行われる必要があります。1
1時間を30分単位で区切って実施することは可能ですが、30分未満は切り捨てになります。1

時間管理が曖昧だと、休業実績と勤怠記録が噛み合わず、後から説明に苦労しやすくなります。短時間休業を選ぶ場合は、開始と終了の時刻の管理方法を事前に決めてください。

教育訓練の六条件

助成対象となる教育訓練は、次の①〜⑥のすべてを満たす必要があります。1

番号教育訓練の条件
①労使間の協定によるものであること1
②事業主が自ら指定した対象期間内(1年間)に行われるものであること1
③判定基礎期間における対象労働者に係る休業または教育訓練の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の1/20(大企業は1/15)以上となること(休業等規模要件)1
④職業に関連する知識、技能または技術を習得させ、または向上させることを目的とする教育、訓練、講習等であること1
⑤所定労働日の所定労働時間内において実施されること1
⑥事業主が自ら実施する事業所内訓練、または事業所外訓練として、所定労働時間の全1日または短時間(2時間以上で所定労働時間未満)にわたり行われること1

教育訓練は、賃金相当額と定額の訓練加算で助成額を算定します。実費精算の制度ではないため、助成額の考え方を先に押さえてから研修計画を組むことが重要です。1

助成対象外となる教育訓練

ガイドブックには、教育訓練に該当しない、または助成対象にならない例が(1)〜(13)で列挙されています。1
教育訓練として計画しても、内容がここに当たると訓練加算だけでなく、教育訓練そのものが認められない可能性が出ます。

番号助成対象とならない例
(1)職業に関する知識、技能または技術の習得または向上を目的としないもの(例 意識改革研修、モラル向上研修、趣味・教養目的のもの等)1
(2)職業または職務の種類を問わず職業人として共通して必要となるもの(法令遵守のために必要な知識の習得目的のものは除く。例 接遇・マナー講習等)1
(3)実施目的が訓練に直接関連しない内容のもの(例 イベント、懇親会等)1
(4)通常の生産・事業活動と区別がつかないもの(例 自社の商品知識研修、QCサークル、通常必要となる知識の説明、訓練により生産されたものを販売して利益を得るもの等)1
(5)教育訓練の実施状況が確認できないもの(例 指導員や講師が不在の自習やビデオ視聴等)1
(6)対象労働者の要件等から対象外となるもの(例 入社時研修等)1
(7)法令で講習の受講が義務付けられているもの(資格取得・更新のための法定講習等である場合を除く。例 労働安全衛生法関係の教育等)1
(8)教育訓練実施時間中に業務が行われるもの(教育訓練の時間と区別可能な形で行われる場合を除く)1
(9)教育訓練科目、職種等の内容に関する知識または技能、実務経験、経歴を有する指導員または講師により行われないもの1
(10)再就職の準備のためのもの1
(11)過去に行った教育訓練を、同一の労働者に実施するもの1
(12)海外で行われるもの1
(13)外国人技能実習生に対して実施するもの1

表は列挙の全項目をそのまま写し替えています。教育訓練として認められるかの判断が難しい場合は、内容が(1)〜(13)のどれにも当たらないことを説明できる状態にしておくと、相談が進みやすくなります。1

出向の十四条件

助成対象となる出向は、次の①〜⑭のすべてを満たす必要があります。1

番号出向の条件
①雇用調整を目的として行われるもので、人事交流・経営戦略・業務提携・実習のため等に行われるものではなく、かつ出向労働者を交換しあうものでないこと1
②労使間の協定によるものであること1
③出向労働者の同意を得たものであること1
④出向元事業主と出向先事業主との間で締結された契約によるものであること1
⑤出向先事業所が雇用保険の適用事業所であること1
⑥出向元事業主と出向先事業主が、資本的、経済的・組織的関連性等からみて独立性が認められること1
⑦出向先事業主が、出向開始日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過した日までの間に、当該出向者の受入れに際しその雇用する被保険者を事業主都合により離職させていないこと1
⑧事業主自らが指定した対象期間(1年間)内に開始されるものであること1
⑨出向期間が3か月以上1年以内で、出向元事業所に復帰するものであること1
⑩本助成金等の対象となる出向の終了後6か月以内に当該労働者を再度出向させるものでないこと1
⑪出向元事業所が出向労働者の賃金の一部(全部を除く)を負担していること1
⑫出向労働者に出向前に支払っていた賃金と概ね同じ額の賃金を支払うものであること1
⑬出向元事業所で雇入れ助成の対象となる労働者や、他の事業主から本助成金等の支給対象となる出向労働者を受け入れていないこと1
⑭出向先事業所で出向者の受入れに際し、自己の労働者について本助成金等の支給対象となる出向を行っていないこと1

出向は契約、同意、独立性、復帰など、書面で確認されやすい要件が多いのが特徴です。制度要件としての列挙を満たすかを先に固めてから、出向の実務手続きを進めてください。1

申請の流れと期限

全体の進め方

申請の流れは、計画届を提出し、その計画に基づいて実施した実績に応じて支給申請するのが基本です。1
休業等は支給対象期間、出向は支給対象期という単位を使うため、どの単位で申請するかを決めてからスケジュールを組みます。1

段階やること期限の要点つまずきやすい点
事前準備事業活動の縮小要件の確認、対象期間と支給対象期間の設計、労使協定の整備実施前に整理しておく縮小要件の未確認のまま休業等を先行させる1
計画届休業等実施計画(変更)届または出向等実施計画(変更)届の提出休業等の初日の前日まで。初回は2週間前までを目処提出が遅れ、実施分が支給対象にならない1
実施計画どおり休業・訓練・出向を実施し、手当や賃金を支払う支払後でないと支給申請に進めない休業中の労働や訓練中の業務で適否が崩れる1
支給申請支給申請書類を提出支給対象期間末日の翌日から2か月以内(休日なら翌開庁日)期限徒過、帳票不整合、残業相殺の見落とし1
審査と支給労働局等の審査追加資料の提出や確認が入ることがある不備対応が遅れ、審査が長期化する1

表は制度の順序を示すものです。自社の賃金締切日や出向開始日によって、判定基礎期間と支給対象期間の切り方が変わるため、最初にカレンダーへ落とし込むのが有効です。1

計画届の提出期限

休業等実施計画(変更)届は、原則として休業等の初日の前日までに提出します。初回の計画届は、休業等の初日の2週間前までを目処に届け出るよう案内されています。1
そして、事前に計画届の提出がなかった休業等は、支給対象にならないと示されています。1

ここは実務上の落とし穴になりやすく、特に急な受注減や資材不足などで、現場の判断だけで休業に入ってしまうと後追いでは救えないケースがあります。実施前に提出する運用を社内ルールとして固定してください。

支給申請の期限

支給申請は、支給対象期間末日の翌日から起算して2か月以内に行います。休業手当または賃金の支払い後に申請する必要があります。1
期限の末日が行政機関の休日に当たる場合は、その後最初の開庁日が期限になります。1

期限管理は、賃金締切日、給与支払日、支給対象期間末日が絡むため、担当者が一人で抱えると漏れやすくなります。支給対象期間ごとに、締切の基準日を社内共有しておくのが安全です。

支給対象期間の選び方

支給対象期間は、1つの判定基礎期間、または連続する2つないし3つの判定基礎期間のいずれかを、届出ごとに選択できます。1
短い単位で申請するか、まとめて申請するかで、事務負担と資金繰りのタイミングが変わります。制度上の選択肢として把握したうえで、自社に合う単位を検討してください。

出向の支給対象期

出向の支給対象期は、出向開始日から最初の6か月が第1支給対象期、次の6か月が第2支給対象期です。途中で終了する場合は終了日までが対象です。1
出向は要件が多く、契約や同意の整備に時間がかかることがあるため、出向開始日から逆算して準備を進める必要があります。

よくある不備と注意点

計画届より先に実施してしまう

制度の入口で最も多い失敗は、計画届を提出する前に休業等を開始してしまうことです。ガイドブックは、事前に計画届の提出がなかった休業等は支給対象にならないと示しています。1
現場判断で実施が先行しそうな場合は、実施日を確定させる前に、計画届の提出可否を確認してください。

休業中の労働や教育訓練中の業務

これは制度要件ではありませんが、実務上、休業中に業務が行われていた記録が残ると、休業実態の説明が難しくなります。教育訓練についても、訓練実施時間中に業務が行われるものは助成対象にならない例として列挙されています。1
在宅作業やチャット対応など、勤怠に残りにくい業務ほどリスクが上がるため、休業日と訓練時間帯の業務禁止を社内周知し、記録を残せる形にしておくと安心です。

残業相殺の見落とし

残業相殺は、助成額を計算するうえで見落としやすい論点です。休業等をさせながら残業や休日出勤をさせた場合、その分を休業等延べ日数から控除します。1
一部部署だけが忙しい状況でも控除対象になり得るため、休業対象者だけでなく、判定基礎期間全体の所定外労働等の発生状況を把握しておく必要があります。

不正受給と調査

雇用調整助成金は公的資金のため、不正受給の防止が重視されます。ガイドブックの不支給要件にも、送検、滞納処分、調査協力拒否、不正受給に係る不支給決定や支給決定取消などが列挙されています。1
不正受給関係の公式情報も公表されています。制度の理解だけでなく、記録管理や実態との整合が取れているかの確認が欠かせません。4

準備に使えるセルフチェックとテンプレ

申請前セルフチェック

次の表は制度要件のうち、特に抜けやすいポイントを確認するためのセルフチェックです。該当する一次資料の箇所はガイドブックで確認してください。1

チェック項目確認の観点根拠資料
縮小理由の整理季節変動・事故災害・法令違反が主因ではないかガイドブック1
縮小指標の充足生産指標10%以上減少、または雇用量要件の範囲かガイドブック1
対象労働者の選定除外8項目に当たる者が混ざっていないかガイドブック1
計画届の提出休業等初日の前日までに提出できるかガイドブック1
休業等規模要件延日数が所定労働延日数の1/20(大企業1/15)以上かガイドブック1
教育訓練の適否対象外(1)〜(13)に当たらないかガイドブック1
出向の適否14条件を全て満たすか、独立性があるかガイドブック1
支給申請期限支給対象期間末日の翌日から2か月以内を守れるかガイドブック1

この表は最低限の確認項目です。実際には、対象期間の設定や支給限度日数の残日数など、計算が絡む確認も必要になります。1

証憑チェック

これは制度要件ではありませんが、申請後に確認を求められたときに説明しやすくするため、次のような記録を揃えておくと安心です。内容は会社の実務運用により異なるため、提出書類として断定せず、整理の参考として扱ってください。

場面整理しておくと説明しやすい記録例目的
事業活動の縮小売上や生産量の集計表、根拠となる台帳指標要件の説明
労使協定協定書、対象者一覧、実施期間の整理条件①の説明
休業の実績勤怠記録、休業日・時間の集計休業実態の説明
休業手当や賃金賃金台帳、支払記録支払後申請の説明
教育訓練カリキュラム、講師情報、出席記録、実施時間の管理訓練の適否と実施状況の説明
出向出向契約、同意書、出向期間の管理、賃金負担の内訳出向要件と助成額の説明
所定外労働等残業・休日出勤の記録残業相殺の説明

証憑の整理は、結果として不正受給の疑義を避けることにもつながります。特に、休業日や訓練時間帯に業務が行われていないことを説明できる状態にしておくのが重要です。1

公式様式の探し方

申請に使う様式は、厚生労働省の様式ダウンロードページに掲載されています。休業等実施計画(変更)届と出向等実施計画(変更)届で様式が分かれるため、実施する雇用調整に合わせて取得してください。5
様式は差し替えが起こり得るため、過去にダウンロードしたファイルを使い回さず、提出直前に公式ページから再取得する運用が安全です。

教育訓練実施率の事前確認

教育訓練実施率によって助成率や訓練加算が変わる場面があるため、実施前に目安を確認しておくと資金繰りの見通しが立てやすくなります。1
参考様式として教育訓練実施率等算定シートが公開されているので、休業と訓練の計画日数を入れて試算し、AとBのどちらに近いかを確認してください。2

よくある質問

Q1. 売上は大きく減っていませんが、休業が必要です。申請できますか。
A. 雇用調整助成金は、経済上の理由による事業活動の縮小が入口要件です。売上や生産量などの指標で前年同期比10%以上の減少を確認するか、雇用量要件で判定します。まずは縮小要件を満たすかを確認してください。1

Q2. 計画届はいつまでに出す必要がありますか。
A. 休業等実施計画(変更)届は、原則として休業等の初日の前日までに提出します。初回は、初日の2週間前までを目処に提出するよう案内されています。事前提出がない休業等は支給対象になりません。1

Q3. 支給申請の期限はいつですか。
A. 支給申請は、支給対象期間末日の翌日から起算して2か月以内です。休業手当や賃金の支払い後に申請します。期限末日が休日の場合は、その後最初の開庁日が期限です。1

Q4. 教育訓練として認められやすい内容は何ですか。
A. 条件として、職業に関連する知識や技能、技術の習得または向上を目的とする教育、訓練、講習等であることが求められます。一方で、目的が職業能力の習得や向上といえないもの、通常業務と区別できないものなどは助成対象になりません。ガイドブックの(1)〜(13)の除外リストで確認してください。1

Q5. 教育訓練中に電話対応などの業務をするとどうなりますか。
A. 教育訓練実施時間中に業務が行われるものは、助成対象にならない例として列挙されています。訓練時間と業務の区別がつかないと判断されないよう、訓練中の業務禁止と記録の整備が必要です。1

Q6. 短時間休業は何分から数えられますか。
A. 短時間休業は、個人ごと・日ごとに1時間以上行う必要があります。1時間を30分単位で区切ることは可能ですが、30分未満は切り捨てになります。1

Q7. 休業手当は最低いくら支払えばよいですか。
A. 休業の条件の一つとして、休業手当の支払いが労働基準法第26条に違反しないことが求められます。労働基準法第26条は、平均賃金の6割以上の手当の支払いを定めています。13

Q8. 教育訓練を実施すると助成率は必ず2/3や1/2になりますか。
A. 支給を受けた日数が計30日に達した判定基礎期間の次の判定基礎期間から、教育訓練実施率によって助成率が変わります。教育訓練が1/10未満の場合は、中小企業1/2、大企業1/4が適用されます。1

Q9. 出向はどのくらいの期間が必要ですか。
A. 出向の条件として、出向期間が3か月以上1年以内で、出向元事業所に復帰するものであることが求められます。開始日と終了日を含め、支給対象期の単位も合わせて確認してください。1

Q10. 出向先がグループ会社でも使えますか。
A. 出向の条件には、出向元と出向先の独立性が認められることが含まれます。資本関係や役員兼任などから判断するため、グループ内出向は要件への当てはめが難しくなることがあります。早めに管轄へ相談してください。1

Q11. 以前に雇用調整助成金を受給しています。すぐにまた申請できますか。
A. 前回の対象期間満了後、最後の判定基礎期間末日または支給対象期末日の翌日から起算して1年間以上空けないと、新たな対象期間を設定できません。これがクーリング期間です。1

Q12. 残業が少しでもあると不利になりますか。
A. 判定基礎期間内に所定外労働等があった場合は、その時間相当分を助成額から差し引きます。突発的・一時的であっても控除対象になります。残業相殺の考え方を前提に、勤怠記録を整えてください。1

Q13. 不正受給と見なされないために特に注意する点はありますか。
A. 不支給要件には不正受給に関する項目や調査協力拒否が含まれています。実態と申請内容が一致していることを説明できるよう、休業や訓練の実施記録、賃金支払の記録、勤怠記録を整合させることが重要です。公式の不正受給関係情報も確認してください。14

出典・参考資料

  1. 雇用調整助成金ガイドブック 令和7年8月1日現在版 PDF ↩

  2. 教育訓練実施率等算定シート 参考様式 Excel ↩

  3. 労働基準法 e-Gov法令検索 HTML ↩

  4. 雇用調整助成金 不正受給関係 2026年2月閲覧 HTML ↩

  5. 雇用調整助成金 様式ダウンロード 2026年2月閲覧 HTML ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。

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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年2月11日

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