東京都内で医療機器分野に参入したいものづくり企業にとって、初期試作や技術検証は時間も費用もかかります。医療機器等開発着手支援助成事業は、本格開発の前段階で行う技術検証と初期試作に必要な経費を助成し、プロジェクトマネージャーの支援も受けられる制度です。令和8年度第1回は、申請前に事前ヒアリングを受け、電子申請システムjGrantsで申請します。1
この記事では、募集要項と申請書類に基づき、対象要件、対象経費、申請から採択後までの流れを、取り違えやすい論点も含めて整理します。1
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名(正式名称) | 医療機器等開発着手支援助成事業 |
| 対象年度/公募回(同定キー) | 第23回 令和8年度第1回 |
| 最終更新日 | 2026年2月25日 |
| 所管/実施機関/事務局 | 所管 東京都 / 実施機関 公益財団法人東京都中小企業振興公社 取引振興課 医療機器産業参入促進助成担当1 |
| 補助上限額/補助率(類型差があれば併記) | 上限500万円 下限50万円 / 助成率2分の3以内1 |
| 申請期間(開始/締切) | 申請書類の提出期間 令和8年4月1日から令和8年4月14日1 |
| 公式一次資料(PDF/Word)のリンク集(募集要綱/手引き/FAQ/様式 等) | 公募ページ / 募集要項 第23回 令和8年度第1回 PDF / 申請書 第23回 Excel / 申請書記入例 第23回 Excel / 同意書 代理申請用 Word / 事業紹介チラシ PDF |
| 免責 | 申請可否や経費判断は、当該年度の募集要領・交付要綱等と事務局の案内で最終確認してください。 |

制度の全体像
どんな開発段階を支援する制度か
この助成事業が支援するのは、上市を目的とした「本格開発」に入る前の取り組みです。募集要項では、初期試作に引き続く工程としての本格開発を「上市を目的とした製品開発」と定義し、その前段階で行うアイデア・構想の技術検証と初期試作に要する経費の一部を助成するとしています。1
助成対象事業として満たすべき条件は大きく2つです。1つ目は本格開発に着手する前の取り組みであること、2つ目は病院や診療所の臨床ニーズに基づいた開発であることです。1 そのため、単に試作品を作るだけでなく、臨床現場の課題に根差した検証テーマを置き、期間内に「第三者が達成判断できる」形で成果を示すことが求められます。1
医療機器産業参入促進助成事業の中での位置づけ
公社の公募ページでは、医療機器産業参入促進助成事業として複数メニューが案内されています。2 同じページ内に名称が似た資料が並ぶため、ダウンロードする募集要項の名称が「開発着手支援」になっているかを最初に確認してください。
同一企業が同一公募回で「医療機器等事業化支援助成事業」と「医療機器等開発着手支援助成事業」の両方に申請することはできません。テーマが異なっていても申請できません。1 まずは自社の開発段階が「本格開発の前」かどうかで切り分け、該当するメニューに絞って準備を進めるのが安全です。
支援内容
助成率と助成限度額
助成率は2分の3以内で、助成対象経費に助成率を乗じて助成金額を算出します。1 助成限度額は上限500万円、下限50万円です。1 申請書では、対象経費を「原材料・副資材費」と「委託・外注費」に分けて入力し、経費明細を作成します。3
ここで重要なのは、交付決定は支払いを保証するものではない点です。募集要項は、交付決定は助成金の上限額などを示すものであり、検査の結果、金額が減額になることがあると説明しています。1 実際の支払いは、実績報告と検査を経て金額が確定した後に行われます。1
助成対象期間と完了条件
助成対象期間は、交付決定日(令和8年10月1日予定)から令和9年9月30日まで最長1年間です。1 申請時に期間を設定する形になっており、達成目標に合わせて必要最小限の期間と経費に落とし込むことが基本になります。1
完了条件として「達成目標」が強く位置づけられています。申請時に達成目標を設定し、助成対象期間中にそれらすべての目標を達成する必要があります。完了検査で公社が達成を確認できたときに事業完了となり、達成目標の全内容について達成確認ができない場合は事業完了とならず助成金は交付されません。1 目標は第三者が到達を明確に判断できる必要があるため、評価方法と証拠が揃う形にしておくことが重要です。1
プロジェクトマネージャーのハンズオン支援
本事業では、プロジェクトマネージャーが事業完了に向けたハンズオン支援を行います。1 経営、技術、知的財産、販路開拓など、必要に応じて既存施策の紹介やアドバイスを受けられる枠組みです。1 資金面だけでなく、医療機器特有の進め方に慣れていない企業にとって、計画の詰めや証憑管理のリスクを下げる効果が期待できます。
対象者と申請要件
申請者の区分と全体像
申請要件は(1)〜(5)の全要件を満たす必要があり、助成期間の途中で要件を満たさなくなった場合は助成金が交付されません。原則として助成期間終了まで要件を満たし続ける必要があります。1
申請の実務では、申請者がどちらの区分に当たるかを最初に確定します。募集要項は、医療機器製販企業等が申請する場合の要件(要件3)と、ものづくり企業が申請する場合の要件(要件4)を分けて示しています。1 また、用語説明の「連携体」表では、申請者がものづくり企業の場合と医療機器製販企業等の場合で、申請者側と連携先側の要件が整理されています。1
連携体と会員登録の要件
本事業では、申請者と連携先で構成する開発の実施体制を「連携体」と呼び、連携体の構築にあたり所定の要件確認が必要です。連携先の企業には助成金は交付されません。1 つまり、連携先の費用を申請者が立替えて支払う場合でも、対象経費として認められるかどうかは契約・請求・支払・成果物の帰属などを含め、募集要項のルールに沿って説明できる状態が必要になります。1
会員登録については、申請者区分により求められる登録先が異なります。ものづくり中小企業が申請者の場合は「医療機器産業参入支援事業」への会員登録が必要です。医療機器製販企業等が申請者の場合は「東京都医工連携HUB機構」への会員登録が必要で、連携先(連携予定先)側に会員登録が必要になるケースもあります。1 会員登録の窓口はそれぞれ公式サイトから案内されています。45
都内で実質的に事業を営む要件と実施場所
要件2では「都内で実質的に事業を営んでいる」ことが求められます(創業予定者を除く)。1 募集要項は、単に登記や建物があることだけではなく、客観的に見て都内に根付く形で事業活動が行われていることを指すとし、申請書、ホームページ、名刺、看板や表札、電話等連絡時の状況、事業実態や従業員の雇用状況等から総合的に判断するとしています。1
また、当該申請案件に係る事業の実施場所は、自社の事業所または工場等であり、原則として都内です。状況により首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、山梨県、群馬県、茨城県、栃木県)の実施場所でも要件を満たすとされており、申請書記載の設備等購入物品、開発人員および成果物等が確認できることが条件になります。1 ファブレス企業も申請可能ですが、仕様策定等の主要部分や成果物の検品等を自社で実施できることが前提です。1
都内のバーチャルオフィスのみの場合は、検査等を行うことができる場所の設定と、成果物や財産、帳票類等の保管場所の確保が必要です。1 申請前に、検査や保管の現実性を説明できる状態にしておくことが欠かせません。
併願と重複助成に関する注意点
申請書の提出・対面受付に関する注記として、同一企業が同一公募回で「事業化支援」と「開発着手支援」の両方に申請することはできない旨が示されています。テーマが異なっていても申請できません。1 また、申請前確認書では、同一テーマ・内容で公社・国・自治体などから助成を受けていないこと、同一テーマ・内容で公社が実施する他の助成事業に併願申請していないことを確認項目として求めています。3
申請の入口で判断が分かれやすいのが「同一テーマ」の扱いです。制度上、同一テーマであっても開発ステージや対象経費が明確に区分できる場合は例外扱いになる旨が申請前確認書に記載されています。3 ただし、どこまでが同一テーマかの判断はケースにより揺れやすいため、事前ヒアリングで説明できる資料を用意し、テーマと経費の切り分けを明確にしておくことが重要です。
対象事業の範囲
助成対象事業として満たすべき2条件
助成対象事業は「以下の2点を満たす事業」として定義されています。1 1つ目は本格開発に着手する前の取り組みであること、2つ目は臨床ニーズに基づいた開発であることです。1 本格開発は初期試作に引き続く工程としての製品開発であり、上市を目的とする点が明確に示されています。1
この2条件を申請書上で具体化するためには、臨床現場の課題をどう把握したか、課題に対して今回の技術検証と試作でどこまで確かめるか、そして次工程の本格開発に何を引き渡すかを一本の線で説明できる必要があります。1
助成対象事業にならない例から逆算する
募集要項は、助成対象事業とならない場合の例を複数挙げています。1 代表的なポイントは、事前検証以外の経費を目的としている、成果物自体の販売を目的としている、事前検証の主要部分を申請者以外が行う、すでに本格開発段階または事業化済み、技術的開発要素がない、申請時点で前工程が概ね終了している、期間内に完了見込みがない、などです。1
| 観点 | 対象外になりやすい状態 | 申請書での見せ方の方向性 |
|---|---|---|
| 目的のズレ | 開業資金や運転資金、生産設備導入が中心になっている1 | 検証と試作の範囲を限定し、対象経費がその範囲に収まる形にする |
| 成果物の扱い | 成果物自体の販売を目的にしている1 | 最終成果物は目標達成に必要最小限の数量にする1 |
| 外注の比重 | 検証の主要部分を全部または大部分外注する1 | 申請者が担う主要工程と外注の補助工程を分けて説明する |
| 開発段階 | すでに本格開発段階、または事業化して収益を上げている1 | 今回の取り組みが本格開発前である根拠を工程と成果物で示す |
上表は考え方の整理であり、個別の可否は募集要項と事前ヒアリングで確認する必要があります。対象外例に該当しないことを「言い切る」より、工程と成果物で自然に伝わる形にしておくほうが、審査・検査まで見据えた申請になりやすいです。
対象経費
対象経費に共通する4条件
助成対象経費は、原則として次の条件をすべて満たす必要があります。助成対象期間内に発生し、助成対象事業に必要であり、支払いや内容を証拠書類で確認でき、かつ目標達成に直接必要で最小限の経費であることが求められます。1 ここでいう証拠書類は、見積書から支払証拠書類まで取引の流れを確認できるものを想定しており、実績報告時に提出して検査を受けます。1
助成対象経費は大きく「原材料・副資材費」と「委託・外注費」に区分されます。1 申請書でも、この2区分で資金支出明細を作る形になっています。3
原材料と副資材費
原材料・副資材費は、試作品の製作に必要な材料、部品、消耗品などが想定されます。募集要項は、目標達成に直接必要で最小限の数量・経費のみが助成対象になる考え方を示しており、最終成果物(試作品)の数量も必要最小限としています。1 在庫が残るような買い方や、将来の量産を見越した仕入れは、説明が難しくなりやすい領域です。
また、申請前確認書の観点でも、助成対象期間内に目標達成と成果物完成を求める構造になっているため、材料調達の遅れがそのまま完了条件の未達につながります。1 申請前の段階で、納期、加工可否、試験方法までの道筋をできるだけ短くしておくことが、結果的にリスクを下げます。
委託と外注費と共同研究費
委託・外注費は、試作加工、設計、評価試験、共同研究、調査、知財関連の外部サービスなど、外部に依頼して行う作業が対象になり得ます。募集要項では、共同研究費、顧客ニーズ調査、先行特許調査なども含めて例示しています。1 一方で、事前検証の全部または大部分を委託・外注するものは対象外例として挙げられています。1 外注は「補助的に使う」位置づけに収め、申請者が主要部分を担う構成にしておくことが基本です。
外注契約の実務では、検査で説明できる形に整えることが重要です。募集要項は、実績報告時に取引の流れを確認できる経費関係書類の提出を求めています。1 契約書や仕様書が曖昧だと、何に対する支払いかが説明しにくくなるため、成果物、検収方法、納品物の形式まで合わせておくと後工程が安定します。
対象外になりやすい経費の典型例
募集要項は「助成対象外となる経費」を具体的に示しています。1 ここでは典型例として整理しますが、可否の最終判断は必ず募集要項の該当箇所で確認してください。1
| 区分 | 対象外になりやすい例 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 期間と関連性 | 助成対象期間外の支出、助成対象事業と直接関係しない支出1 | 発生日と目的が説明できるかが起点になる |
| 証拠書類 | 書類不備、取引の流れが確認できない支出1 | 見積〜発注〜納品〜検収〜請求〜支払がつながる形が必要1 |
| 支払方法 | 現金払い等、説明と証拠が弱い支払1 | 原則は金融機関からの振込払い6 |
| 間接費 | 消費税相当額、振込手数料、旅費交通費等の間接費1 | 対象経費の区分外になりやすい |
この表は抜粋です。申請時点で迷う支出がある場合は、見積の取り方や経費区分の説明資料の作り方も含め、事前ヒアリングで確認するのが確実です。1
証憑チェックの基本
実績報告では、取引の流れを確認できる経費関係書類と成果確認書類を提出し、検査を受けます。検査後に助成金額が確定し、交付予定額から減額されることがあります。1 そのため、経費の妥当性と適切な経理処理を第三者に対して合理的に説明・立証できる状態を、申請時点から意識しておく必要があります。6
| 場面 | 最低限そろえたいもの | 不足すると困る理由 |
|---|---|---|
| 見積 | 仕様が分かる見積書、単価と数量の根拠 | 対象経費の最小限性が説明しにくくなる |
| 発注 | 注文書や契約書、仕様書 | 何を依頼した支出かが曖昧になる |
| 納品と検収 | 納品書、検収記録、成果物の確認資料 | 目標達成と支出の対応が切れやすい |
| 請求と支払 | 請求書、銀行振込の証拠 | 取引の流れが確認できない支出になり得る1 |
これは制度要件の文章をそのまま置き換えたものではありませんが、募集要項が求める「取引の流れが確認できる書類」1を現場で落とし込むときの目安として使うと、後戻りが減ります。
申請の流れ
全体スケジュールの把握
令和8年度第1回は、申請前に事前ヒアリングを受けることから始まります。予約期間と実施期間が定められており、申請書類の提出期間、対面受付、是正対応の期限、審査日程までが募集要項内に整理されています。1 日程は状況により変更する場合があるため、直前に公募ページの更新も確認してください。12
| 段階 | 時期 | ポイント |
|---|---|---|
| 事前ヒアリング予約 | 令和8年2月13日から3月23日 | 公社ホームページで予約し、事前ヒアリングシートの作成が必要1 |
| 事前ヒアリング実施 | 令和8年2月17日から3月31日 | 申請要件等を確認し、問題がなければ提出方法や対面受付日が案内される1 |
| 申請書類の提出 | 令和8年4月1日から4月14日 | 期日までにjGrantsで提出する1 |
| 対面受付 | 令和8年5月13日から5月22日 | 不備や不足の指摘を受け、是正対応が必要になる1 |
| 是正対応 | 対面受付後3営業日以内 | 不足の修正を期限内に完了させる1 |
| 一次審査 | 5月から6月 | 書類審査、結果発送は6月下旬予定1 |
| 二次審査 | 7月14日から7月22日 | 面接審査、指定日程のいずれかで実施1 |
| 結果通知 | 9月上旬 | 二次審査結果の発送予定1 |
| 事業開始 | 交付決定後 | 令和8年10月1日開始予定、10月中に事務手続きの説明1 |
表の次に、各段階で詰まりやすいポイントを順に説明します。
事前ヒアリングで何が確認されるか
募集要項は、申請要件等を確認するために事前ヒアリングを実施するとしています。予約期間内に公社ホームページから予約し、事前ヒアリングシートを作成して指定されたメールアドレスへ送付する流れです。1 事前ヒアリング実施時に対面受付日を調整する旨も示されています。1
事前ヒアリングの位置づけは、単なる相談ではなく、申請要件の確認と申請手続きの案内に直結します。1 連携体の構築方針、会員登録の状況、開発場所の確認可能性、テーマが本格開発前かどうか、臨床ニーズとの結びつきなど、要件に関わる情報は整理しておく必要があります。13
jGrants申請とgBizIDプライムの準備
申請書の提出は、デジタル庁が運営する補助金の電子申請システムjGrantsを使用します。申請時までにgBizIDプライムを取得する必要があります。1 jGrantsの概要はデジタル庁の案内ページでも確認できます。7
gBizIDはプライム、メンバー、エントリーの3種類があり、プライムは審査を行って作成する仕組みです。8 取得に時間がかかる場合があるため、事前ヒアリングの段階より前に着手しておくと、申請直前のリスクが下がります。8 jGrantsの操作は、事業者向けマニュアルも参照できます。9
対面受付と是正対応の意味
募集要項は、申請書類の提出後に対面受付があり、事務局が申請書の不備や不足を伝えるとしています。1 その後、対面受付後3営業日以内に是正対応を求めています。1 ここでのポイントは、対面受付が「提出書類の体裁チェック」で終わらず、申請内容を説明できる申請企業の担当者が対応することを前提にしている点です。1
申請書はExcelで作成し、表紙は押印してPDF化したものをjGrantsにアップロードし、表紙以外はExcelデータで提出するルールが申請書内に示されています。3 事前に記入例を参照し、提出形式の取り違えを防いでおくことが大切です。10
代理申請を使う場合の注意点
申請の確認・提出および申請受付以降の手続きは、申請事業者の代表者または従業員が行う必要があります。1 ただし、jGrants上の当初申請手続きに限り、第三者が代理申請機能を使用できるとされています。1
代理申請者になれない例として、連携体構成企業、臨床ニーズ確認者、外注先企業などが挙げられています。1 代理申請を行う場合は、同意書(代理申請用)を提出する運用が用意されています。11 同意書では、代理申請者がjGrantsに登録された者であること、公社が代理申請者に問い合わせや説明を行うことへの同意、申請者との利益関係がないことの誓約が求められています。11
審査の考え方
審査方法とスケジュールの読み方
審査は一次審査(書類審査)と二次審査(面接審査)で行われ、一次審査を通過した申請者に対して二次審査を行い助成事業者を決定します。1 二次審査は指定された期間内の日程のいずれかで実施し、審査は非公開で、原則として日時変更はできません。1 日程面で確保が難しい場合は、申請計画自体の見直しが必要になります。
審査結果は書面で通知され、審査に関する個別の問い合わせには答えられないとされています。1 そのため、事前ヒアリングの時点で論点をつぶし、申請書類で説明が完結する形にしておくことが重要です。
審査の視点を申請書に落とす
審査の視点は、技術的要素、事業目的との適合性、経営の健全性です。1 技術的要素は優秀性、市場性、実現性、妥当性といった観点で評価されます。1 ここでいう市場性は「売上予測の大きさ」だけではなく、臨床ニーズとの整合や、医療機器としての位置づけを踏まえた現実的な到達計画として見せることが重要になります。
事業目的との適合性は、都内ものづくり中小企業の参入促進という制度目的と、申請テーマの関係が問われます。1 経営の健全性は、財務内容や事業予算などが評価対象に含まれます。1 申請書では資金計画を作成する構成になっているため、資金の裏付けと支出計画の整合が重要になります。3
採択後に公表される情報と注意点
募集要項は、採択された場合に助成事業名、企業名、申請テーマを公社ホームページで公表するとしています。1 公表の可否や表現の詳細は公社の運用に従う必要があるため、社内の情報公開方針と衝突しないかを申請前に確認しておくと安心です。
また、審査の結果、申請額と交付予定額が異なる場合がある旨が示されています。1 申請時点で上限額いっぱいに積むより、目標達成に必要な最小限の経費に絞り、説明可能性を上げるほうが結果的に安定しやすいです。
採択後に必要になる実務
交付決定後に気をつけたい基本構造
募集要項は、交付決定は上限額などを示すものであり支払いを保証するものではないと説明しています。事業を実施し報告し、検査をして助成金額を確定した後、請求書提出を経て支払われます。検査の結果、金額が減額になることもあります。1
したがって、採択後は「事業の推進」だけでなく「証拠と説明が残る進め方」を同時に回す必要があります。採択後に配布される事務の手引きに基づいて適正な処理を行うよう求められており、経費の妥当性と適切な経理処理を第三者に対して合理的に説明・立証する必要があるとされています。6
計画変更と事前承認
申請書に記載された内容を変更する場合は、事前に公社の承認が必要です。正当な理由がない場合は内容変更は認められず、原則として申請テーマ、達成目標、成果物は変更できません。6 実務的には、外注先の変更、仕様変更、試験方法の変更などが起きやすいので、変更が必要になりそうな要素は申請時点で代替案も含めて整理しておくと、後の判断が速くなります。
これは制度要件ではありませんが、変更が起きる前提で「どの変更が目標や成果物に影響するか」を社内で線引きしておくと、承認が必要な変更を見落としにくくなります。
実績報告と検査と金額確定
事業終了時等に実績報告を行い、報告時には見積書から支払証拠書類までの経費関係書類と成果確認書類等を提出します。6 検査で達成目標、購入品、経費関係書類を確認し、検査後に助成金額が確定します。交付予定額から減額されることもあります。6
金額確定では目標達成が条件になり、成果物が検査時に確認できない場合は助成金が交付されません。6 開発着手支援の募集要項でも、達成目標の全内容が確認できない場合は助成金が交付されない構造が明確です。1 申請書の段階で「検査で何を提出するか」を想定して目標を作ることが、結果として事業の安定につながります。
完了後の報告と書類保存
開発着手支援の募集要項は、助成事業完了後、完了年度の翌年度から2年間、事業の状況報告提出等を行うことを示しています。1 また、一定期間の関係書類保存も求められます。6 採択後に配布される手引きで運用が具体化されるため、採択時点で保管場所と責任者を決めておくと、後で混乱が起きにくくなります。
申請前にそろえるもの
セルフチェック
申請前確認書は、全設問に回答し、「いいえ」がある場合は申請できないという形式で、要件確認を行う構成です。3 ここでは、申請前に社内で確認しておきたい論点を、確認の切り口としてまとめます。
| チェック観点 | 社内で確認するポイント | 根拠資料 |
|---|---|---|
| 申請者の資格 | 中小企業者または都内創業予定である | 募集要項、申請前確認書13 |
| 大企業の関与 | 大企業が実質的に経営参画していない、資本関係の確認ができる | 申請前確認書、別紙1の注意書き3 |
| 事業実施場所 | 成果物や帳票類を確認できる場所があり、原則都内である | 募集要項1 |
| 連携体方針 | 単独開発か連携体構築か、半数以上都内要件を満たせるか | 募集要項、申請前確認書13 |
| 会員登録 | ものづくり企業は参入支援事業、製販企業等はHUB機構の会員登録が要否含め確認できる | 募集要項、各公式サイト145 |
| 重複助成と併願 | 同一テーマで他助成を受けていない、他の公社助成に併願していない | 申請前確認書3 |
| 納税と債務 | 事業税等の滞納がない、都・公社への債務が滞っていない | 申請前確認書3 |
| 提出体制 | 申請内容を説明できる担当者が対面受付等に対応できる | 募集要項1 |
この表はあくまで入口の確認軸です。各項目の定義と必要書類は募集要項と申請書の指示に沿って確認し、事前ヒアリングで最終確認してください。13
提出書類の整理
申請に必要な書類は、申請書(Excel)に加え、会社概要、開発体制図、開発品資料、確定申告書類、登記簿謄本や開業届、納税証明書など多岐にわたります。3 状況により「別紙」類や補足説明資料が必要になる場合もあります。3 共同申請を行う場合は申請者全社分の資料提出が必要という注意書きもあります。3
| 書類カテゴリ | 主な内容 | 提出の考え方 |
|---|---|---|
| 申請書本体 | 表紙、事業内容、達成目標、資金計画、経費明細 | 表紙は押印してPDF、その他はExcelデータで提出3 |
| 体制と概要 | 申請者と連携先の会社概要、社歴、開発体制図、実施体制相関図 | 連携体の役割分担が説明できる形にする3 |
| 開発品資料 | 開発品と競合品の外見・使用方法が分かる資料、必要に応じ補足説明資料 | A4サイズでページ数上限があるため要点を絞る3 |
| 財務と税務 | 確定申告書写し、登記簿謄本や開業届、事業税等の納税証明書原本 | 法人、個人、創業予定で提出物が分かれる13 |
この表は全量の一覧ではありません。提出要否は事業形態や該当経費、資本関係の有無などで変わるため、申請書内の「申請に必要な書類」一覧と募集要項を突合してください。13
達成目標を作るときの考え方
達成目標は申請時に設定し、期間中にすべて達成し、完了検査で達成確認できる必要があります。達成確認できなければ助成金は交付されません。1 つまり、目標が曖昧だと、技術的には進んでいても「達成したかどうか」が説明できず、制度上のリスクになります。
目標の作り方は制度要件ではありませんが、検査で判断できる形にするためには、次のように「判定方法」と「証拠」をセットにすると安定します。
| 目標の要素 | 具体化の例 | 証拠のイメージ |
|---|---|---|
| アウトプット | 試作品、評価用治具、仕様書など | 写真、図面、版管理された仕様書 |
| 判定方法 | 寸法、性能、耐久性などの評価方法 | 試験成績書、測定記録、検収記録 |
| 合格基準 | 第三者が判断できる合否基準 | 合否判定表、レビュー記録 |
| 期限 | 助成期間内に完了する区切り | 工程表、納品日、試験実施日 |
上表は一般的な作り方の例です。実際の目標設定は、臨床ニーズとの対応関係と、対象経費が最小限になる形を同時に満たすように調整することが重要です。1
よくある質問
Q1. 事前ヒアリングは必ず受ける必要がありますか。
A. 募集要項は、申請要件等を確認するために事前ヒアリングを実施し、要件等に問題がない方に提出方法や対面受付日等を案内するとしています。予約期間と実施期間も示されています。1
Q2. 連携体をまだ構築できていませんが申請できますか。
A. 募集要項は、連携体を構築している、または本格開発までに構築する予定であることを要件に含めています。申請時点で連携体を構築しない場合に一部要件の適用が変わる記載もあるため、状況に合わせて事前ヒアリングで確認してください。1
Q3. ものづくり企業が自社で医療機器製造販売業許可等の取得を予定する場合はどうなりますか。
A. 要件2では、ものづくり中小企業自らが医療機器製販企業等となる予定がある場合は連携体の構築が不要とされています。また、スケジュールの説明でも同様の記載があります。1
Q4. 都内の登記は本店でなく支店登記でも認められますか。
A. 要件2では、申請時までに都内に登記していることが求められ、支店登記でも問題ないとされています。1
Q5. 研究開発の実施場所が都内ではありません。申請は難しいですか。
A. 原則は都内ですが、状況により首都圏内の実施場所であれば要件を満たすとされています。成果物や開発人員等が確認できることが条件です。1
Q6. 都内の住所がバーチャルオフィスのみの場合は申請できますか。
A. 募集要項は、バーチャルオフィスのみの場合に追加条件を示しています。検査等を行える場所の設定と、成果物や帳票類等を保管できる場所の確保が必要です。1
Q7. 対象経費として機械設備の導入費は認められますか。
A. 募集要項は、開業や運転資金、生産用の機械設備導入など、事前検証以外の経費を目的とするものを助成対象事業とならない例として挙げています。具体の支出可否は「助成対象経費」と「対象外経費」を募集要項で確認してください。1
Q8. 外注を多く使って開発を進めたいのですが問題になりますか。
A. 募集要項は、事前検証の主要な部分を申請者以外が行うもの、全部または大部分を委託・外注するものを対象外例として挙げています。申請者が担う主要工程が明確かどうかが重要になります。1
Q9. 申請は郵送や持参ではなくオンラインだけですか。
A. 募集要項は、申請書の提出にjGrantsを使用するとし、申請時までにgBizIDプライムが必要としています。また、提出後に対面受付があり不備確認と是正対応が求められます。1
Q10. コンサルや外部の人に代理申請を任せられますか。
A. 募集要項は、当初申請手続きに限りjGrantsの代理申請機能を第三者が使用できるとしつつ、確認・提出や申請受付以降の手続きは申請事業者の代表者または従業員が行う必要があるとしています。代理申請の同意書提出も求められます。111
Q11. 同一企業が同じ公募回で事業化支援と開発着手支援の両方に申請できますか。
A. 募集要項の注記で、同一企業が第23回の両事業に申請することはできず、テーマが異なっていても申請できないとされています。1
Q12. 達成目標を一部でも達成できないとどうなりますか。
A. 募集要項は、達成目標に設定したすべての内容について達成確認できない場合は事業完了とならず、助成金は交付されないとしています。目標は第三者が到達を明確に判断できる必要があります。1
まとめ
医療機器等開発着手支援助成事業は、本格開発の前段階である技術検証と初期試作を支援し、達成目標の全達成と成果物の完成を助成期間内に求める制度です。1 申請は事前ヒアリングから始まり、jGrantsでの申請と対面受付、是正対応までを含めたスケジュール管理が必要になります。1
準備の順番としては、申請者区分の確定、連携体方針と会員登録の確認、開発場所と証憑管理の体制づくり、gBizIDプライムの取得、事前ヒアリング用の説明資料の作成、という流れにすると詰まりにくくなります。最終的には、募集要項と申請書の指示に沿って、提出物と目標の整合が取れているかを丁寧に確認してください。13
出典・参考資料
執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部
補助金・助成金の活用法からAI導入、業務の生産性向上まで、中小企業の経営に役立つ情報を士業の専門家チームがわかりやすく解説します。
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融資を申し込むとき、決算書や事業計画書に目が行きがちですが、納税証明書も早い段階で確認されることがあります。税金滞納があると、金融機関は単なる税金の未払いではなく、資金管理と返済能力の問題として受け止めます。つまり、滞納を隠すのではなく、完納できるか、いつまでに解消するかを説明できる状態にすることが大切です。 この記事では、納税証明書で何を見られるのか、税金滞納が融資審査にどう影響するのか、申込前に何を確認すべきかを中小企業向けに整理します。

中小企業融資の相談先はどこがいい? 日本政策金融公庫・金融機関・商工会議所・認定支援機関の使い分け
中小企業が融資を考え始めたとき、最初に迷いやすいのが相談先です。銀行に行くべきか、日本政策金融公庫に聞くべきか、商工会議所や認定支援機関に先に相談すべきかで、準備する資料も変わります。 大事なのは、相談先を一つに決めることではなく、お金を借りる相手と計画を整える相手を分けて考えることです。この記事では、創業、運転資金、制度融資、事業計画の場面ごとに、最初に相談しやすい窓口を整理します。

融資は困ってからでよいのか? 借入額・返済期間・資金使途の判断ポイント
融資を受けるか迷う場面で、最初に見たくなるのは金利や限度額です。ただ、実際に大きな差が出るのは、借りるタイミング、何に使うお金か、返済できる月額かという順番です。 融資は資金が足りなくなってから慌てて申し込むものではなく、事業を続けられる前提を数字で整えて選ぶものです。本記事では、創業前後のタイミング、借入額、返済期間、資金使途を、初めて融資を考える人にも分かるように整理します。

融資申込前の資金繰り表はどう作る? 月次資金計画で銀行に伝える基本
融資を相談するとき、決算書や試算表は用意していても、資金繰り表までは作っていない会社があります。ところが銀行が知りたいのは、過去に利益が出たかだけではありません。 大切なのは、借りた後に支払いが続き、返済も続けられるかを月ごとの現金の動きで説明できることです。資金繰り表は、融資を通すための特別な資料ではなく、経営者が自社のお金の流れを説明するための地図になります。 融資申込前に作っておきたい資金繰り表と、6カ月先を見た月次資金計画の基本を、まず一枚作るつもりで読み進めてください。

融資の返済シミュレーションは毎月の返済額だけで足りるのか?
融資を受けるとき、多くの人が最初に気にするのは毎月の返済額です。月にいくら返すのかが分からなければ、借入の判断ができないからです。 ただ、融資の返済シミュレーションで本当に見るべきなのは、返済額そのものだけではありません。返済後にも事業を続けられるだけの現金が残るかまで確認して、初めて資金繰りの判断材料になります。この記事では、毎月の返済額を試算し、その数字を資金繰りに落とし込む考え方を整理します。融資前の確認に使ってください。