事業承継アドバイザー資格は取りやすい?資格の概要や取得メリット、申し込む前に確認しておきたいこと

補助金フラッシュ 士業編集部

中小企業の支援に関わっていると、事業承継アドバイザー資格という名前を見かけることがあります。気になるのは、何を学べる資格なのか、そして自分の仕事にどこまで役立つのかという点ではないでしょうか。
事業承継アドバイザー資格は、事業承継の全体像を体系的に学ぶ入口としては有力ですが、資格だけで高度な税務や法務の判断までできるようになるわけではありません。
大事なのは肩書きより、どんな場面で役に立つ資格なのかを正しくつかむことです。読み終える頃には、自分が受けるべきかどうかの判断材料がそろいます。

事業承継アドバイザー資格は取りやすい資格?

合格率は約20%

最初に押さえたいのは、合格ラインが100点満点中60点でも、実際の手応えはそれより重いということです。難しさの参考になるのが、公開試験として実施されていた時期の公式成績です。2024年10月27日の実施回は受験者300人中63人が合格で、合格率は21.00%でした。2025年10月26日の実施回も受験者206人中43人が合格で、20.87%にとどまっています。12

この数字だけで、今のコンピューター受験方式(CBT)がそのまま同じ難しさだと断定はできません。とはいえ、少なくとも公式が公表してきた成績を見る限り、事業承継アドバイザーは気軽な暗記試験とは言いにくい資格です。合格基準の数字だけを見て取りやすいと判断すると、準備不足になりやすいです。312

論点が広くて実務寄り

なぜ難しく見えるのか。理由は、幅広い論点を一度に問われるからです。公式の試験概要では、事業承継の基本知識だけでなく、事業承継と金融実務、その他関連知識までが出題範囲に入っています。問題は四答択一式50問ですが、一部は事例付きで、知識を覚えているだけでは解き切りにくい構成です。3

公開試験で正答率が低かった論点を見ると、その傾向がよくわかります。2024年10月実施回では、役員退職金の税務、ファイナンシャル・アドバイザーの留意点、非上場株式の評価が難所でした。

2025年10月実施回でも、株式の集約、法人版事業承継税制、M&Aアドバイザリー契約などが低正答でした。税務、株価評価、第三者承継まわりが苦手なままだと、点数が伸びにくいと見ておいたほうが安全です。12

そもそも何を学ぶ資格なのか?

事業承継の入口を、広く整理して学ぶ

事業承継アドバイザー3級は、銀行業務検定試験の一種目です。公式には、主に営業店の渉外担当者を対象に、取引先の状況把握から情報収集と整理、承継手法に関する助言のための基本知識と実務知識の習得度を測る試験とされています。

つまり、どこか一分野だけを深く掘る資格というより、支援の全体像を整理する資格と考えると実態に合います。34

ここで誤解しやすいのが、事業承継イコール会社売却や第三者への承継(M&A)ではないという点です。公式教材の目次を見ると、学習範囲は事業承継対策の基本と必要性、関連制度、各承継方法共通の知識に加え、親族内承継、従業員承継、第三者承継までまたがっています。親族内だけでも、M&Aだけでもないので、社長交代を支える全体像を把握したい人には向いています。5

この広さは、資格の見え方にも影響します。肩書きだけを見ると事業承継の専門資格に見えますが、実際には、専門家へ相談をつなぐ前段で必要な論点を整理する色合いが強いです。狭い分野の即戦力資格というより、事業承継支援の地図を頭に入れる資格と考えると、使い道を判断しやすくなります。35

試験方式と受けやすさ

現在の実施形態も確認しておきたいところです。経済法令研究会の現行ページでは、事業承継アドバイザー3級はCBT方式で、2026年4月27日から2027年3月31日までの実施期間が示されています。

試験時間は120分、受験料は5,500円で、別途事務手数料330円がかかります。現行の試験種目一覧では、事業承継アドバイザーとして掲載されているのは3級です。36

受験しやすさの面では、CBT方式になったことは大きいです。受験資格は、CBTの案内ページでどなたでも受験可能とされています。全国のテストセンターで受けられ、結果は即時判定です。

一方で、計算問題がある種目でも電卓の持ち込みはできず、画面上の電卓を使う運用です。試験日を選びやすい半面、事例問題を時間内に処理する準備は必要です。7

取るとどんなメリットがあるのか?

相談の入口で、確認すべき論点を落としにくくなる

この資格のいちばん大きな価値は、相談の入口で論点を整理しやすくなることです。事業承継の相談は、表面上は後継者の話に見えても、実際には株式の集約、税務、保証、役員退職金、第三者承継の選択肢など、複数の論点が同時に動きます。公式の試験目的が状況把握と情報収集、承継手法への助言に置かれているのは、この複雑さを踏まえているからです。3

たとえば、社長が子どもに継がせたいと考えていても、確認すべきなのは後継者の有無だけではありません。株式が誰に分散しているか、自社株評価が重くならないか、金融機関との関係をどう引き継ぐか、場合によっては第三者承継も残すのか、といった順番で話をほどく必要があります。事業承継アドバイザーの学習範囲は、この最初の整理に必要な視点を身につけるのに向いています。35

強みが出るのは、すでに顧客接点がある人

もう一つのメリットは、資格単体よりも今の仕事に重ねたときに価値が出やすいことです。経済法令研究会の通信講座でも、対応講座の受講対象者は法人営業担当者や管理者向けと案内されています。

つまり、もともと中小企業の経営者と話す立場にある人ほど、学んだ内容をそのまま面談や提案の質に反映しやすい資格です。8

逆に言えば、これだけで税務や法務の最終判断まで一人で担えるようになるわけではありません。国家資格ではなく、公開の検定試験だからです。役立ち方として近いのは、専門家になることより、論点を整理し、必要な場面で税理士や弁護士、M&Aの実務家につなぐための土台をつくることです。万能資格ではなく、支援の土台を作る資格と理解しておくと期待値がずれません。34

このため、単体で完結する資格として見るより、財務、税務、相続、M&A実務などの学習と組み合わせるほうが使い道は広がります。たとえば金融機関の法人営業なら、決算書の読み方や融資の知識と重ねることで、承継後の資金繰りまで会話しやすくなります。

会計事務所やコンサルティングの現場でも、最初の聞き取りで何を聞き漏らさないかという精度を上げる効果が期待できます。資格そのものより、学んだ論点を面談や提案の流れにどう落とし込むかが重要です。358

申し込む前に確認しておきたいこと

向いている人と、優先順位を下げてもよい人

向いているのは、経営者との対話が仕事に入っている人です。金融機関の法人営業、会計事務所や士業事務所の補助者、経営コンサルタント、商工団体の支援担当などには相性がよいでしょう。事業承継の相談で何から確認すればよいかが分からない人には、学習の効果が出やすいです。38

一方で、優先順位を下げてもよい人もいます。たとえば、税務の申告実務そのものを強化したい人や、M&Aだけを短期間で学びたい人には、別の資格や実務研修のほうが近道になりやすいです。

事業承継アドバイザーは範囲が広いぶん、目的が狭い人には遠回りになりかねません。自分が必要としているのが全体整理なのか、個別分野の深掘りなのかを先に決めると、資格選びで迷いにくくなります。

公式教材を軸に勉強する

学習方法は、公式教材を軸に進めるのがもっとも安全です。経済法令研究会は、対策問題集の最新版と通信講座を案内しており、対策問題集は336ページ、通信講座は3か月、添削3回の構成です。問題集の案内でも、テーマ別に精選した問題と模擬問題で学ぶ構成が示されています。58

優先順位をつけるなら、まずは事業承継の基本、次に親族内承継と従業員承継、そして第三者承継やM&A、税務、非上場株式評価の順で広げると進めやすいです。

公開試験で低正答だった論点を見ても、後半で差がつきやすいのは税制、株価評価、契約まわりでした。知識を一通り読んだら、事例問題で、誰が後継者か、株式はどう動くか、金融機関との関係はどうなるかを自分の言葉で説明する練習を入れると理解が深まります。125

CBT試験は結果がすぐ出るぶん、準備不足のまま受けてしまいやすい面もあります。試験日を自由に選べることは利点ですが、それで勉強期間が伸び続けると、かえって集中力が落ちます。受験日を先に決め、問題集を何周するか、事例問題をいつ解くかまで決めておくと、学習のペースがぶれにくくなります。

受験する価値が高いのは、肩書きを増やしたい人より、相談の質を一段上げたい人です。その目的がはっきりしているなら、事業承継アドバイザー資格は十分に検討に値します。7125

  1. 「第 159 回銀行業務検定試験成績発表」銀行業務検定協会

  2. 「第 162 回銀行業務検定試験成績発表」銀行業務検定協会

  3. 「事業承継アドバイザー3級」経済法令研究会

  4. 「検定試験要項」銀行業務検定協会

  5. 「事業承継アドバイザー3級 対策問題集 2026年度受験用」経済法令研究会

  6. 「試験種目一覧」経済法令研究会

  7. 「銀行業務検定試験 事業承継アドバイザー3級」CBT-Solutions

  8. 「営業店の事業承継支援コース (GR)」経済法令研究会

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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