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ブログ|経営・労務

事業承継で生命保険と法人保険はどう使い分けるか? 節税より先に考えたい資金設計

事業承継で生命保険と法人保険をどう使い分けるかが分かります。遺留分対策、納税や代償資金、退職金、株価対策の考え方を、最新の事業承継税制の注意点とあわせて整理します。

補助金フラッシュ 士業編集部公開日: 2026年4月3日更新日: 2026年4月4日
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目次

  • そもそも、遺言だけで後継者に株式を集められるのか?
  • 生命保険は、どの場面で役立つのか?
  • 事業承継税制があるなら、保険は不要なのか?
  • 法人保険で株価を下げる考え方は、いまも通用するのか?
  • 最初に何から決めればいいのか?
補助金フラッシュ 事業計画

事業承継で生命保険や法人保険を検討すると、話がすぐ節税に寄りがちですが、本当に詰まりやすいのは税額そのものより、後継者以外の家族への配慮、納税や代償金の準備、死亡退職金の支払いです。
生命保険と法人保険は、税負担をなくす道具というより、先回りの現金づくりとして考えるほうが失敗しにくくなります。どこに役立ち、どこに限界があるのかを順番に見ていきます。

目次

  • ●そもそも、遺言だけで後継者に株式を集められるのか?
  • 遺留分は金銭請求として残るため、現金の準備が必要
  • ●生命保険は、どの場面で役立つのか?
  • 個人契約は、代償金と納税資金を早く用意しやすい
  • 法人を受取人にすると、死亡退職金や買取資金の原資になる
  • ●事業承継税制があるなら、保険は不要なのか?
  • 税制は強力だが、手続きと長期管理の負担が残る
  • ●法人保険で株価を下げる考え方は、いまも通用するのか?
  • いまは保険料の処理が商品ごとに分かれ、単純な節税になりにくい
  • 相続時は、保険金が資産、退職金が負債になり、株価への効き方が分かれる
  • ●最初に何から決めればいいのか?
  • 商品より先に、誰に何の資金を残すかを整理する
事業承継で生命保険と法人保険はどう使い分けるか? 節税より先に考えたい資金設計

そもそも、遺言だけで後継者に株式を集められるのか?

遺留分は金銭請求として残るため、現金の準備が必要

事業を継ぐ子に株式を集中させたいとき、遺言だけで片付くと考えるのは危険です。中小企業庁が案内する経営承継円滑化法では、遺留分に関する民法の特例が用意されていますが、それが必要になるのは、普通の遺言だけでは株式集中が完結しにくいからです。

後継者以外の相続人は、遺留分を侵害されたときに金銭の支払いを求める余地を持ちます。株式そのものを分けなくても、結局は現金が要る構造だと理解しておく必要があります。12

ここでいう遺留分は、一定の相続人に法律上残る最低限の取り分です。中小企業庁の資料では、後継者に生前贈与した自社株式について、推定相続人全員の合意があれば、遺留分の計算対象から外す除外合意や、価額を合意時点で固定する固定合意を使えると説明しています。

もっとも、この特例は全員合意に加えて、中小企業庁の確認と家庭裁判所の許可が必要です。相続が起きてから慌てて進める話ではありません。たとえば子が二人いて、一人だけが後継者になる会社では、後継者に株式を集めるほど、もう一人にどう報いるかが問題になります。

ここまでで見えてくるのは、株式承継と現金準備は一体ということです。だから保険の役割は、節税以前に、承継の摩擦を小さくする資金づくりにあります。12

生命保険は、どの場面で役立つのか?

個人契約は、代償金と納税資金を早く用意しやすい

意外なのは、事業承継を実施する企業でも、それで資金問題が終わるわけではないことです。2025年の中小企業庁資料では、納付額軽減対策を実施している企業が33.9%あり、その内訳で最も多かったのが生命保険への加入16.7%でした。

中小企業庁は、こうした対策に本来の投資や賃上げに向かう資金が流れる可能性も指摘しています。数字が示しているのは、承継時に動かせるお金の確保が重い課題だということです。3

個人で入る生命保険が役立つのは、代償金、つまり後継者以外の相続人に金銭で埋め合わせる資金をつくりやすいからです。裁判所の案内でも、相続人が受取人に指定されている生命保険金は、その相続人の固有財産となり、原則として遺産分割の対象にならないと整理されています。

中小企業庁の事業承継ガイドラインでも、指定受取人が受け取る死亡保険金は、原則として遺産分割の対象とならず、納税資金や株式、事業用資産の買取資金に活用しやすいとされています。45

ただし、ここは誤解が多いところです。遺産分割の対象になりにくいことと、相続税がかからないことは別です。

国税庁は、被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は相続税の課税対象になり、相続人が受け取る場合には500万円×法定相続人の数の非課税枠があると示しています。受取人を誰にするか、保険料を誰が負担するかで税務は変わるので、契約形態は最初に固める必要があります。6

法人を受取人にすると、死亡退職金や買取資金の原資になる

一方、法人保険は、法人が契約者になる保険です。中小企業庁のガイドラインは、会社を死亡保険金の受取人にした生命保険を使えば、先代経営者の死亡に伴う死亡退職金や自社株の買取資金に対応しやすいと説明しています。

現預金があっても、相続直後は遺産分割との関係で自由に使いにくい場面があります。その点、保険金は受取人に速やかに支払われやすく、承継直後の資金需要に合わせやすいのが利点です。5

死亡退職金にも相続税の非課税枠があります。国税庁によれば、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金はみなし相続財産となりますが、相続人が受け取るときは死亡保険金と同じく500万円×法定相続人の数まで非課税です。

個人で受け取る生命保険と、会社が受け取って死亡退職金に回すお金は、似て見えても税務上の入口と出口が違います。ここを混同すると、想定していた資金計画が崩れます。

ここまでで分かるのは、生命保険と法人保険はどちらも使えるものの、守備範囲が違うということです。前者は相続人側の代償金や納税資金に向き、後者は会社側の死亡退職金や株式買取資金に向きます。保険を選ぶ前に、誰が受け取り、何に使うのかを決める必要があります。7

事業承継税制があるなら、保険は不要なのか?

税制は強力だが、手続きと長期管理の負担が残る

非上場株式の相続税や贈与税の納税を猶予、免除する事業承継税制は非常に強い制度です。しかも最新情報では、2026年度税制改正大綱で、非上場株式等に係る特例承継計画の提出期限が1年6か月延長されました。

現在の中小企業庁の案内では、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、贈与や相続による承継の実行期限は2027年12月31日です。以前の資料だけを見て期限を誤認しているケースもあり得るので、ここは必ず最新版で確認したいところです。89

ただ、制度が強いことと、使いやすいことは同じではありません。中小企業庁の2025年の中間とりまとめでは、潜在的に制度を使える層が利用を見送る理由として、提出書類や手続きが煩雑であること、納税猶予が取り消されるリスクがあること、後継者育成が終わっていないことなどが挙げられています。

現行の特例措置でも、税務申告後5年間は年次報告や継続届出が必要で、その後も継続管理は続きます。税制は有力ですが万能ではないので、保険で流動性を補う発想は今でも意味があります。

むしろ実務では、税制と保険を対立させるより、役割分担で考えるほうが自然です。株式にかかる大きな税負担は税制で抑え、すぐに必要になる代償金や死亡退職金、専門家費用、手続きの間の資金繰りは保険で補う。そう捉えると、保険を使う理由が節税一辺倒ではないことが見えてきます。109

法人保険で株価を下げる考え方は、いまも通用するのか?

いまは保険料の処理が商品ごとに分かれ、単純な節税になりにくい

法人保険をめぐる話で最も誤解が多いのが、保険に入れば自社株評価が自動的に下がるという見方です。現在の国税庁の取扱いでは、法人が契約者となる保険の保険料処理は、保険の種類、解約返戻率、受取人の設定で分かれます。

定期保険や第三分野保険でも、解約返戻率が高い商品は一定額を資産計上し、後から取り崩す扱いになります。養老保険では、死亡保険金と生存保険金の受取人が法人なら、保険料は契約終了まで損金算入されず、資産計上が基本です。111213

つまり、法人保険は商品で税務が変わるということです。昔の感覚で、法人保険イコール保険料を大きく損金にできる、だから株価対策になる、と考えると外しやすくなります。

株価評価に影響するのは、損金算入の有無だけではありません。解約返戻金の水準、保険積立の計上、保険事故時の受取金、死亡退職金の支払いまで含めて見ないと、実際の純資産は読めません。111213

相続時は、保険金が資産、退職金が負債になり、株価への効き方が分かれる

この点をはっきり示しているのが、国税庁の非上場株式評価の記載方法です。被相続人の死亡により会社が生命保険金を受け取る場合、その未収保険金は資産の部に計上します。

一方で、被相続人の死亡により相続人などへ支給が確定した退職手当金や功労金は、帳簿に未計上でも負債として計上します。14

何が言いたいかというと、保険金だけが先に立つと純資産が増えて株価が上がる方向に働き、死亡退職金の負債が大きければ逆方向にも働くということです。

したがって、株価が必ず下がるわけではありません。保険、退職金、株式買取、相続時点の評価を一つの図で見ないと、節税のつもりが逆に評価を押し上げることもあり得ます。

ここは保険商品選びより、相続発生時の会計と税務の流れを先に描くべき場面です。法人保険を使うなら、狙いを一つに絞ることが大切です。退職金原資を確保したいのか、相続直後の運転資金を厚くしたいのか、それとも株式買取資金を備えたいのか。目的を曖昧にしたまま、節税も退職金も株価対策も一度に狙うと、設計がぶれやすくなります。14

最初に何から決めればいいのか?

商品より先に、誰に何の資金を残すかを整理する

実務で最初にやるべきなのは、保険商品を比べることではありません。資金の行き先の整理です。少なくとも次の四つは、保険の前に決めておきたい項目です。

  • 後継者にどこまで議決権を集中させるのか
  • 後継者以外の相続人に、どの程度の代償金を用意するのか
  • 相続税、死亡退職金、株式買取資金のうち、何を会社で負担し、何を個人で負担するのか
  • 事業承継税制や遺留分の民法特例を併用するのか

この順番で整理すると、個人契約の生命保険を厚くするべき場面と、法人保険で会社側の資金需要に備えるべき場面が分かれてきます。

反対に、ここを決めないまま保険に入ると、受取人設定と税務処理が目的に合わず、後から契約を組み直すことになりがちです。生命保険と法人保険の活用は、商品比較ではなく承継全体の設計図づくりから始まります。

もし株式集中が主題なら、弁護士と税理士を早めに同席させ、遺留分の民法特例を使えるか、代償金はいくら必要か、税制を併用するかを先に詰めるべきです。もし会社の資金繰りが主題なら、税理士と保険担当者で、死亡退職金の水準、保険金受取時の会計処理、株価評価への影響を同時に確認したいところです。

中小企業庁の制度は使えるものが増えていますが、制度ごとに窓口と要件が違うため、早い段階で役割分担を決めたほうが進みます。事業承継で保険を活かすコツは、節税商品として飛びつかないことです。

大事なのは、資金の行き先を先に決めることです。そこまで見えれば、生命保険は代償金や納税資金に、法人保険は死亡退職金や株式買取資金に、それぞれ役割を持たせやすくなります。

事業承継の成否を分けるのは、保険そのものより、保険をどの資金需要に当てるかという設計です。19

出典・参考資料

  1. 「経営承継円滑化法による支援」中小企業庁 ↩

  2. 「遺留分に関する民法特例のポイント(会社向け)」中小企業庁 ↩

  3. 「参考資料」中小企業庁 ↩

  4. 「遺産分割手続Q&A」裁判所 ↩

  5. 「事業承継ガイドライン」中小企業庁 ↩

  6. 「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」国税庁 ↩

  7. 「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」国税庁 ↩

  8. 「令和8年度税制改正の大綱(2/9)」財務省 ↩

  9. 「法人版事業承継税制(特例措置)」中小企業庁 ↩

  10. 「中小企業の親族内承継に関する検討会 中間とりまとめ」中小企業庁 ↩

  11. 「No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)」国税庁 ↩

  12. 「No.5364-2 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)」国税庁 ↩

  13. 「No.5363 養老保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)」国税庁 ↩

  14. 「取引相場のない株式(出資)の評価明細書の記載方法等」国税庁 ↩

執筆者:補助金フラッシュ 士業編集部

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執筆者
補助金フラッシュ 士業編集部
公開日: 2026年4月3日
更新日: 2026年4月4日

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